空間ゼリーの夏の新作は、キャバレーが舞台!

女性が深く共感できる演劇を目指し、着実に成長を続ける【空間ゼリー】。
彼女たちが次に挑むのは前作とは大きく趣きを変えた、華美できらびやかな非日常の世界だ。
ちょっと昔のキャバレーを舞台に、純粋な女の子・マリーの心の軌跡を描き出す【空間ゼリー】の新作
 ――『さよなら、マリー』は8月16日より池袋・THEATER GREEN AREA171にて。
2006/7/23 インタビュアー・文責:北原 登志喜  撮影・編集:鏡田伸幸

 前作『つの隠し』では家庭の居間を舞台にして、日常の切れ間にのぞく母娘・姉妹の愛憎を静かに、生々しく描いた【空間ゼリー】。
 だが新作『さよなら、マリー』では一転して華やかに賑わう非日常の世界――キャバレーに舞台を求めるという。
 近作の印象からすると、ショー的な要素も伴うというこの舞台設定は少し意外な気もするが――?
本日の稽古場。廃校の教室を利用したスペースは少し手狭だが、役者チームとダンサーチームに分けて稽古を進めているとか。

ホステス、ショーガール、客が入り乱れるシーンはとにかく賑やか。現在、稽古は基本的に“I do, I want”ではなく、一般的な荒立ちのスタイルで進行中。

役者チームでもダンスが得意なメンバーは、こうして踊りを披露するひと幕も。

まだシビアな作り込みの段階ではないので、演出席で芝居を見守る二人からも時に冗談まじりのツッコミが飛ぶ。

前作『つの隠し』で主役を演じた斉藤ナツ子さんは、今作でも主人公・マリーを熱演。

坪田
 やっぱり夏ですからね。夏らしく派手なものをやってみたいと思って(笑)。それと、観てくれる女の子たちに少し、憧れの気持ちみたいなものも抱いてもらえる舞台にしたかったんです。

 「だから決して“ショボい”舞台にはしたくなかった」と語った主宰/作の坪田さん。華やかさを演出するために、ダンサーを含めてキャストも総勢30名を集めたという。
 そうして作られる舞台に込めたもの――「憧れ」について、更に詳しく聞いた。


坪田
 舞台に立つという行為は、もっと「すごいな」とか「格好イイな」っていう目で見られるべきものだと私は思うんです。でも、今の小劇場の舞台に立つ多くの人たちは「貧乏で、ちょっと楽しい人たち」というイメージで捉えられがちですよね。だからこそ、もっと憧れを持って観てもらえるような、そんな舞台を作らないといけないって思ったんですよ。

 創作のモチベーションとなった“憧れ”という想い。それは物語にもしっかりとリンクしていくそうだ。
 主人公の夢見がちな女の子・マリーは、ある日店に現れた男装の麗人・ルイに憧れを募らせていき、やがて――
 ――と、ここから先は劇場で。



 なお、キャストが増える今回は当然、客演も多くなる。よって、前回稽古場レポートで紹介したような作り方も難しくなるのでは、という問いに、演出の深寅芥さんはこう答えた。
深寅
 確かに、すべて自分たちの枠内で出来た前回とは作り方も変えていますね。今回は全体のバランス的な、絵画的なシーン作りをまず最初にやって、そこから崩し始めよう、という作り方をしています。一度作ってから*“I do, I want”で崩していく感じですね。


※I do, I want:英国王立演劇アカデミー(RADA)で行われているスタニスラフスキー・システムのメソッド。詳しくは過去レポートを。

 ただ、この作り方は、実は初めてではないという。過去に実験的な企画公演で試しているというから、この、先を見越しての用意周到さには畏れ入る。

 キャストのみならず、これまでよりもずっと多くの人間が支援者として名を連ねる今作。
 これからは“村”(=劇団の枠)を超えて、より大きなコミュニティーに支えられながら、更なる高みを目指して行こう――そんな意志のもと、【空間ゼリー】の踏み出した新たな一歩の先に、『さよなら、マリー』があることを深寅さんは強調した。


舞台袖では出番を待つ役者たちが、それぞれセリフ合わせや演技の打ち合わせ。ちなみに空ゼメンバーがお揃いで着ているTシャツは劇団オリジナル。

今回は男性キャストも比較的多め。写真は休憩と同時に喫煙所に集まった男子たちの図。
なお、村木藤志郎さんの稽古合流は8月頭だそうで、この日(7月23日)は残念ながら不在。


驚いたのは、必要とあらば瞬時に“I do”(行動)と“I want”(欲求)に解体してシーンを再現できること。「ここ、ちょっと“I do”で整理しましょう」という具合に。空間ゼリーならではだ。

キャバレーのショーの一コマも見所となる今作では、これまでとちょっと違う【空間ゼリー】が見られるはず。そんな新作『さよなら、マリー』に 乞う、ご期待!

 一回り大きな芝居作りのため、そして、なにより“憧れ”を抱いてもらえる舞台世界を実現するため、今後は“色彩感”にも一層の思い入れを注いでいくという【空間ゼリー】。
 そんな彼女たちが“村”の外を巻き込んで立ち上げる新作――その見所は?


深寅
 やっぱり役者陣ですね。出演者それぞれに、キャラクター芝居にはせずに、どうやってドラマを持たせるかが今作の醍醐味だと思ってます。
 料理をするための素材が増えた、というのが料理人としてあるんですけど、素材を活かすために選んだ調理法やおもてなしの仕方が、ちょっとフランス料理っぽいと思ってるんですよ。そんなところも期待して頂きたいですね。。

坪田
 その“フランス料理”の喩えを引き継ぐと、たくさん用意した素材を余らせないように(笑)、お客様がちょうど満足できるようなフルコースにしたいと思ってます。これからまだ少し(台本に)直しを入れるんですけど、いろんな素材が、どこに隠れているか分からないけど、きちんと料理の中で活きるような劇作をしたいですね。
 キャバレーの華やかさとか女たちの愛憎をスパイスに、一番描きたいこと――メインディッシュ――がきちんと映えるような、そういうディナーを楽しんで頂きたいですね。


 そのディナーの皿の上で描かれる物語は、高度経済成長からバブル崩壊へと至る日本の姿と重なるのではないか、そして「今の女性にとっての幸せとは何か」も映し出すのではないか――最後にシェフの深寅さんはそう語った。特に後者を思うとき、描く世界が家庭という日常であろうと、キャバレーという非日常であろうと、“女性のために、演劇”というこの劇団の目指すところに変わりはないのだと、改めて感じた。

 なお、マリー/ルイ/男装の麗人/フランス料理――これらの言葉から、ある連想を抱く向きもあるかもしれないが、坪田さんは「分かりやすさ」を大事にしたそうなので、もしかしたらその連想も物語とリンクするかもしれない。そんなところも、是非、お楽しみに。






さよなら、マリー』

作 坪田文
演出 深寅芥

8月16日(水)〜8月20日(日)
池袋シアターグリーン エリア171
⇒詳細情報はこちら
出演
石井舞 
桜井ふみ 
徳田奈緒 
斉藤ナツ子 
佐藤けいこ 
下山夏子 
竹内春紗 
河野真衣 
大竹甲一 
澤田慎司 
川渕かおり 
井出恵 
釜野真希 
宍戸由佳 
榎本万里子 
西田未希 
山岸未知 
佐藤卓 
J 
大野ユウジ(青春事情) 
高橋征也(劇団芋屋) 
岡野康弘(劇団バームクーヘン) 
村木藤志郎(うわの空・とうしろう一座)


DANCER 
岡本有里加 
太田あかね 
杉村梨紗 
三上結以 
&SPECIAL

関連REPORT
【空間ゼリー】BACK STAGE REPORT(前回公演『つの隠し』)


〜report no.39 〜ゼリーのように――オンナ ガ エガク オンナ ノ キモチ〜
坪田 文インタビュー稽古REPORT

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