〜再生への祈り〜
――InnocentSphere新作『ミライキ』公演迫る。

 深刻な社会問題と対峙しつつ、
“生命感”を描き出すエンターテイメントを追及してきた【InnocentSphere】。
 彼らの新作、『ミライキ』が6月13日よりシアタートラムで上演される。
2006/5/26 インタビュアー・文責:北原 登志喜  撮影・編集:鏡田伸幸
 「未来記」――聖徳太子の作と言われる予言書のことである。
 楠木正成も実書の一部を目にしたというこの幻の予言書は、かつて、世が乱れるたびにその姿を現してきた。
 その未来記をモチーフに、【InnocentSphere】が彼ららしい社会派的視点で描き出す現在(いま)の物語、それが『ミライキ』だ。


 一人の男が立て籠もり事件を起こす。
 じつは彼は過去に、ある事件で世間の耳目を集めた男だった。
 その過去の事件とは?
 男が口にする不可解な言葉の意味とは――?


互いにぶつかるのを避けながら俳優たちが稽古前に確認するのは、慣れないダンスの振り付けだ。
指導するのは こうのゆか さん。


俳優たちに西森さんが声をかける。
「このシーン、かなりエネルギーがかかると思うけど…」――その言葉どおり、本日の稽古では重いシーンが続いた。


稽古はシーンによって本を持ったり持たなかったり、という段階。
なお、真ん中の倉方規安さんが今作で演じる役柄はかなり特殊。注目だ。


 これまでもジャーナリスティックに社会問題を見つめる姿勢を作品に取り入れてきた彼らだが、ことに今作では心の闇、被害者と加害者、マスメディアと個の衝突といった過去作品でも触れてきた問題に、更に一歩踏み込んだ感がある。

西森  
 そもそも劇団を高校時代に始めた頃からマスメディアの問題には注目していたんですけど、そのマスメディアでタブーとされている部分についていろいろと取材することができたので、今回は特にそこを描いてみようと思ったんです。そういうタブーに演劇でどこまで入り込めるか――トコトンやってみよう、って。

 演劇だからこそ踏み込める――そんな確信のもと、長期にわたって徹底した取材を重ねた。公演中のトークセッションに登場する下村健一氏をはじめ、報道関係、精神病院、入院患者の作業所、更には同じく立て籠もり事件を扱った『深川通り魔殺人事件』の著者・佐木隆三氏にも話を聞いたという。

 そうして生まれる今作はどうしても重いテーマ性を抱えるが、そこは【InnocentSphere】のこと、もちろんしっかりとエンターテイメント性も備えた作品に仕上げる。なんでも今回はダンスも披露する、とのこと。
 これまで心理劇の要素が強いもの、エンターテイメント性の強いものと、作品ごとに振れ幅を見せていた同劇団だが、テーマ性を深める一方で見せ方にも工夫をこらす今作は、ある意味で“InnocentSphereらしさ”を具現するバランスの、ひとつの答えとなるかもしれない。


「今回もかなりすごいことになってます」とスタッフの方も言っていた狩野和馬さん。
彼が演じる人物とは? そして「すごいこと」とは――?
是非、劇場でご確認を。


物語の核となる女性を演じるのは黒川深雪さん。…必死の彼女を押さえつける春日井一平さん(劇団上田)がすごい悪人に見える…。
場面は立て籠もりの現場だろうか。


一旦芝居を止めた西森さん。
多分そこで一気に攻めに入るんだよ!
――キリキリと緊張が支配する場面の連続に、演出家の声にも力が入る。


舞台に出て動きを確認する演出家。
逆転する関係、立ち上がる過去――ここには意外な展開が。
一筋縄ではいかない【InnocentSphere】の芝居らしい一コマが作り上げられていく。


三浦知之さんはスパイダーマン役、ということではありません。
手にする小道具や状況が見えないこともあり、芝居の中にしばしば出てくる不思議な身体の動きはどこかダンスめいた印象を抱かせる。


盛隆二さん(イキウメ)はジャーナリストの役で登場。
おそらくこの人物は西森さんが語ったマスメディアへの関心の依り代にもなるのだろう。


いくつもの心がぶつかりあい、軋みを見せるこの芝居。その果てに彼らが見いだす、再生への希望とは――?
間近に迫った上演をお楽しみに!


おまけ。この日は日高勝郎さんの誕生日。稽古終了後にはちょっとしたお祝いのサプライズが!
写真は手渡されたケーキをほおばる日高さん。

 なお、今作を読み解くキーワードは「再生」。最後に、この「再生」という概念を通して今作に込めた思いを、西森さんに語ってもらった。


西森 
 取材の過程で陰惨な事件やとても重たい現実に触れながら、その一方で、出会ったどの人も“その先”を一生懸命見ようとしている――そんな感覚を僕は受けたんですね。
 だからこの作品をやるに当たっては、僕たちなりに、決して安直ではない形で「それでもその先を見ていく」ということが表現できればと思ったんです。『ミライキ』というタイトル自体にもその気持ちは込めています。荒れた時代に「嘘でもいいから未来を見せてくれ」と願う。そんな自然な欲求の結実が未来記だとすれば、そういう人間のエネルギーにはとてもシンパシーを覚えるんですよ。
 とにかく僕たちは精一杯感じて、精一杯表現するだけ。そうしておそらくいま、演劇でしか踏み込めないような問題について真っ向から取り組みます。その結果、観て頂いた方にとって何かを考えるきっかけになる――そんな作品になればいいですね。





ミライキ』

6月13日(火)〜6月18日(日)

シアタートラム
⇒詳細情報はこちら
出演
狩野和馬 
倉方規安 
坂根泰士 
日高勝郎
足立由夏 
四十八願智子 
黒川深雪 
三浦知之 
間野健介 
八敷勝
たにざわすみえ
こうのゆか

久野一洋(劇がく杜の会)
今林久弥(双数姉妹

春日井一平(劇団上田
菅野宏則(優企画
高倉大輔(エメルパス
三嶋義信
盛隆二(イキウメ
伊瀬尚子
小澤恵(劇がく杜の会)
蒻崎今日子

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