【innerchild】が青山円形劇場に進出!

 壮大な世界観を背景に、心の領域へと深く迫る作品が魅力の【innerchild】。
 彼らが11回目の公演にして、ついに青山円形劇場に進出する。

   innerchild vol.11
         AOYAMA FIRST ACT #7 『PANGEA(パンゲア)』


 太古に存在した超大陸パンゲアになぞらえて、解離性同一性障害(多重人格)の問題と向き合うこの作品。【innerchild】の原点と軌跡を刻み込み、待望の再演決定だ!
2006/2/18 インタビュアー・文責:北原 登志喜  撮影・編集:鏡田伸幸
 かつてこの地球には巨大な超大陸が存在した。その超大陸=パンゲア(ギリシア語で「全ての陸地」の意)は今から約2億年前に分裂し、現在の世界地図を描くに至る――ドイツの気象学者アルフレッド・ウェゲナーが1915年に公表したこの説は当初、ロマンチックな妄想として嘲笑をもって迎えられた。
 しかし現在、この説は実証されただけでなく、パンゲア以前にも超大陸が生まれては分裂を繰り返していたことが認められている。

 同様の扱いを受けた事例は心理学の世界にもある。“多重人格”もその一つだ。多重人格はごく最近まで『ジキル博士とハイド氏』のようなフィクションの中でだけ語られる、ファンタジーの産物と考えられていた。ところが現在、「解離性同一性障害」という正式な診断名が与えられたその症例の存在を、疑う精神科医はほとんどいない。
演出席に座る小手さん。自身も出演するので舞台と演出席を行ったり来たり。隣の石川カナエさんは今作で演出助手の才能に開眼!?


町田カナさんと前田剛さんの絡みはのっけから真剣勝負の気配。稽古は台本がほぼ手から離れた段階に入っていた。


ストンと表情が抜け落ちた顔で静かに座る女性――解離性同一性障害という難役を真柄佳奈子さんがどう演じるのかは大きな見所だ。


 超大陸と多重人格。「分裂」と「統合」という過程を互いに持ち、ときに時代に無視されたこの二つの事象を重ね合わせ、【innerchild】が舞台・『PANGEA(パンゲア)』を発表したのは今から5年前だった。

 前作『遙〈ニライ〉』で区切りの10作目に到達した【innerchild】。主宰の小手伸也さんは「今後は過去作品の再演も積極的に打っていきたい」と語っていた。ファンも待ち望んだその再演がこのたび遂に実現するわけだが、第一弾として【innerchild】はなぜこの作品を選んだのだろう。
小手  『PANGEA(パンゲア)』の初演以降、常にアンケートでは「今作は『PANGEA』を超えた」「超えてない」ということが書かれるようになりました。innerchildにとって一つの評価基準となった作品なんですね。それだけにお客さんからの再演の要望も一番多かったし、僕自身、いき詰まった時によく見返す作品でもあった。また、初演の時には舞台に楕円形に砂をひいて上演したんですけど、とにかく“円”の意識が強い作品でもあったんです。だから今回、青山円形劇場で出来ることが決まったとき、一番相応しい作品はこれだって思いました。演出家としても、円形劇場という演出家の手腕が問われる場で2006年の自分として一番勝負してみたい作品はこれだ、と。

 かつてインタビューで小手さんは「ダニエル・キイスの著作のような緻密で情報量豊かな世界を舞台上で実現したい」と語っていた。ダニエル・キイスと言えば『24人のビリー・ミリガン』で解離性同一性障害の現実を世に知らしめた作家でもある。同様の題材を扱う今作。それだけに、そこには小手さんの作劇の原点が垣間見える。自身の原点を軸に5年の時を経て再び向き合うかつての自分。その出会いによって気付いたことを、小手さんは率直にこう語った。

小手 5年前はけっこう論理、論理していたんだなって思いましたね。昔は物語の説得力に対してすごく信仰心を持っていたんです。だから隙のない論理を組み上げて、それでお客さんに伝えようとしていた。でも最近はそこが少し変わってきたんですよ。人間の心には論理でははかれない部分がきっとあるわけだし、そういう、突発的に何かを起こす人間の心の非論理的な部分に惹かれている自分がいるんです。神話や昔話の面白さも実はそういうところかもしれない。突発的に人が死んだり、突然大人が産まれたりっていう乱暴な論理の上に生まれるダイナミズムですね。だから、5年分歳を取った自分としては「もっと乱暴に組んじゃえばいいじゃん」みたいなところがあって、それを当時の自分が「やめてくれ!」って堰き止める。今、そんなせめぎ合いをしています。


「エキセントリックなキャラクターがたくさん出てくる」というこの芝居。そのエキセントリック部門代表たち(?)が顔を揃えた一コマに、稽古場が笑いで溢れる。

稽古場は都内の廃校を転用した稽古施設。十分な奥行きを利用して、今は比較的自由に動きながらの作りが続く。

大幅な改稿が施された今作だが初演を経験した【innerchild】メンバーは小手さんを除く3人いずれも初演と同役。菊岡さんは「当時のセリフがつい出てきてしまい混乱することも」と苦笑いしていた。

演出席にはiPod。音楽を入れながらの稽古で活躍していた。最近、iPodは芝居の稽古場でよく見かけるものNO.1。

舞台上のキャラクターたちはキャストの持ち味を反映させてとにかく個性豊か。互いの間合いを計りながらキャラ全開のポイントへ向けて、稽古は続いていくのだった。

今作では“二の線”から完全撤退を宣言した小手さん。役者として、ヘビーな物語をどう盛り上げてくれるのかも楽しみだ。
 心理学的テーマをエンターテイメントに昇華する――【innerchild】が目指すものに変わりはなくとも、やはりこの5年を見つめ返せば創作へのスタンスやアプローチの仕方には微妙な変化があったようだ。続く小手さんの言葉には、そうして変わっていく自分自身に対する好奇心が表れていた。
小手 『PANGEA』までは心理学的なエッセンスが先にありきで、そこに神話などを持ち込んでいました。でも最近は神話や民話の中に心理学的なエッセンスを見出していくという作業をしています。その逆転した状況にあって、かつての自分が今と真逆の作り方をした作品をどういじれるのか――それも今回楽しみにしているんですよ。

 『PANGEA(パンゲア)』は【innerchild】旗揚げ以前に【早稲田大学演劇倶楽部】で小手さんが手がけた作品、『シマモリ』が基になっているそうだ。その時の手応えが【innerchild】の誕生にもつながったという。そういう意味からも、同劇団の時間軸においてこの作品は重要な意味を持つ。

小手 いろんな意味で、この作品はinnerchildの試金石なんです。2006年だからこそ、今の僕だからこそ描ける『PANGEA(パンゲア)』を、是非見て頂きたいですね。

 2006年、加速する【innerchild】の、待ちに待った再演第一弾
           ――『PANGEA(パンゲア)』
 都会の中にポッカリ生まれた公園とも島ともオアシスともつかない空間で、3億年の夢と心が重なる物語。再び生まれなおす【innerchild】の原点を、どうぞお見逃し無く!

PANGEA』
3月7日(火)〜3月13日(月)

青山円形劇場
⇒詳細情報はこちら
出演
小手伸也
菊岡理紗
古澤龍児
土屋雄
三宅法仁
宍倉靖二
真柄佳奈子
前田剛
町田カナ
杉浦理史
伊藤修子
吉田晋一
太田緑・ロランス
狩野和馬
中谷千絵
櫻井無樹
秋山ひとみ
冨樫舞

稽古場の大きな画像をご覧になりたい方は、こちら

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