すべての健康を愛する人に贈る、もの哀しく懐かしい「命」の話
〜新進気鋭のマシンガンデニーロの新作『クロスプレイ』

笑いやパフォーマンス、映像などにたよらず、あくまで役者の存在感にこだわって、切なく強い人間ロマンの物語を紡ぎだす【マシンガンデニーロ】。彼らの新作『クロスプレイ』は、救急病院を舞台に強盗と患者たちが巻き起こす、どこかもの哀しく懐かしい<生命>の物語だ。旗揚げからまだ3作目という若い劇団だが、今後も観続けていきたい魅力に溢れている。(12月14日〜17日まで。中目黒・ウッディシアターにて)

2006/12/2 インタビュアー・文責:栂井理依  撮影・編集:鏡田伸幸

 脚本と演出を担当する間拓哉(はざま・たくや)と、役者である松ア映子、菊池豪で構成される演劇ユニット【マシンガンデニーロ】。名古屋での演劇活動を経て、上京した間が、当時、松ア映子が所属していた劇団の公演に演出家として招かれたのが、そもそもの出会いだったという。そこに役者として参加していた菊池豪が加わり、3人で演劇ユニットを立ち上げることになった。2005年8月に『SA』で旗揚げ。以来、実力派の個性豊かな役者を招くというプロデュース形式で公演を行っている。

都内某所の雑居ビルを利用した稽古場。プラスチックのビールケースを、舞台である病院のロビーと見立てる。


古畑正文さん(ロックンロール・クラシック)と米田万葉子さんが演じる患者たちが雑談しているところへ、菊池豪さん演じる患者が訪れる。


間拓哉さんが、患者同士の距離感を指示する。呼吸が大事!

「今の科白、もう少し早く言ってみてくれる?」役者にいつもと違うことをさせようとする間さん。

語り合う患者たち。そろそろ何か起こりそう・・・?


 Vol.3となる新作『クロスプレイ』は、雪深い地方の救急病院が舞台。突然、押し入った強盗たちは、入院患者たちに「ここでは、違法な治療が行われている」と宣言する。生と死の薄皮一枚のせめぎ合いの中で、違法な治療とは何かが明らかにされていくと、そこには病院が抱える大きな秘密が―。人間存在の危うさ、そしてだからこそ生きる歓びがあるのだということを突きつけられる。


 僕は、当たりまえの世界で、当たりまえの人間が当たりまえにがんばる物語って、つまらないと思うんです。それだったら、すでに地球のどこかで現実になっているかもしれない、またはもう少しで現実になりそうな世界――僕らはそれを<亜現実>と呼んでいるのですが――のほうが面白いんじゃないか、と。例えば、真っ赤な赤色でも、朱色の中にいると目立ちにくいけど、青や黄の中にいると際立ちますよね。だから、当たりまえではない世界でこそ、人間にとって本当に大切な、普遍的な価値観が輝きを放つような気がします。今回の『クロスプレイ』でも、強盗に占拠される病院に、違法な治療という、患者にとっては絶望的な状況。現実的に考えると、ありえないんじゃない?っていう話なんですけど、当たりまえにがんばる人間たちをより鮮明に浮かび上がらせようという想いを込めているんですよね。

 そして、松ア映子は強盗役を、菊池豪は入院患者を演じる。強盗は、事件の牽引役と同時に、違法な治療の真実を解明しようとする中心人物でもあり、患者たちを驚くべき結末へと巻き込んでいく。あえて<亜現実>の絶望的な状況を作り出して、人間を強く打ち出すという演出に、役者たちはどうこたえるのか。

菊池
 僕らの芝居に出てくる登場人物というのは、いつも『哀しいけれど、笑っている』んですよね。もちろん、楽しい人が笑っていて、哀しい人が泣いているという表現では、素直すぎて、ドラマにはならない。僕は、間(はざま)が描きたいのは、単純に人って二面性があるよってことじゃなくて、どんなに絶望的な状況でも、希望を見い出せることの素晴しさだと思っているんです。そこに人の強さや美しさがある。だから、人っていいよね、がんばろうねってなるんじゃないかな。僕は、そこが伝わるように演じたいと思っています。


松崎
 ただ、一方では、人間ってそんなに強くもないし、美しくもないというのも、本当のことだと思うんです。私は、前回は、揺るがない価値観を持ち、意志を貫き通すという少女を演じましたし、今回の強盗役も同じような女性なんです。だけど、そんな人間だって、やっぱり迷うことがある。私自身も、23歳の女として、いつも悩みや戸惑いを抱えています。そこは、きちんと演じたい。特別な登場人物ではなく、悩んだり迷ったりする当たりまえの人間が、もがきながら、希望を見つける。そのほうが、素敵だと思います

長い病歴を誇り、患者としての心得を熱弁する古畑さん。大真面目な演技が、笑いを誘う。 冷徹な強盗を演じる土田裕之さん。間さんと同じく、名古屋での演劇活動を経て上京してきた。 わがままな妊婦を演じる伊藤ららさん(FIRE WORK)。でも、どうやらこの態度には、何かが隠されていそうだ。 内海詩野さん(壺会)は、いわくつきの病院に勤める、ちょっとおっちょこちょいで可愛い看護師。制服がなんだか色っぽい。

伊奈稔勝さん(Theatre劇団子)は、先週、自らの劇団の公演を終えたばかり。科白と格闘中。

保険会社に勤める気弱な患者を演じる信田素秋さん。演技にかけるまっすぐで熱い気持ちが伝わってくる。

船木美佳さん(NAC)は、病院に勤めるシスターを演じる。真実を知っている難しい役どころ。悩みはつきない。

ロビーを占拠し、患者を捕虜にする強盗を演じる松崎映子さん。さあ、これから、どうする?

松崎さんと菊池さんが、演技のタイミングをあわせる。段取りが多いけれど、ここを乗り切れば、場面が完成するはず。

過去を背負ったボクサーという患者を演じる米田万葉子さんは、これまで演じてきた同年代のギャルキャラから、新境地開拓。
 ところで、役者の存在感にこだわり、物語性を重視するマシンガンデニーロだが、彼らならではの劇世界を作り出す演出の工夫はどこにあるのか。

 僕らの芝居には、歌もダンスも出てこない。お客さんに対して、そういうわかりやすい面白さとかいうサービスはしていない。完全なストレートプレイです。ただ、その分、ひとりひとりの役者の身体、声、あらゆるものが生み出す存在感やその呼吸には、すごくこだわっています。どういうことかっていうと、例えば、敢えて、観客の予想を裏切る演技をしてもらって、役者が本来持っている可笑しみみたいなものを引き出したり。そうすると、役者って、どんどん引き出しが増えていって、本当に面白い。だから、僕は、自分の芝居には、ちょい役を存在させられないんですよね(笑)。『クロスプレイ』でも、結末につながってくるので今は言えないんですが、そういう意味で、役者のいろいろな面が見られる、ちょっと変わった配役にしているんですよ
松崎
 だから、間(はざま)の演出は、役者にとっても、自分の幅を広げながら、ひとつの場面が作られていく過程が実感できるので、達成感が大きい。初めて、彼の演出を受けたときには、それがとても嬉しかったですね。その分、各場面に、どの役者も段取りやルールが多くてたいへんなんですが(笑)。でも、それが、パズルみたいにばっちりはまっていって、劇世界が出来上がっていく快感はすごいんです

 それでは、最後に、お客様にメッセージを。

菊池
 観た人に必ず勇気と希望を与えられる、素敵な作品に仕上がっています。一足早いクリスマスプレゼントを楽しんでいただきたいと思います。それと、寒くなって、風邪も流行っていますが、観に来られるお客さんは、健康に気をつけてくださいね(笑)。僕らの芝居をご覧になっていただけたら、怖くて病気になれないかもしれません(笑)。

 <亜現実>の絶望的な状況から始まる物語だというけれど、懸命に生きる登場人物を演じている彼らの姿は、どこか懐かしく、温かみを感じさせる。それは、ものづくりの同志であるとはいえ、年齢差のある3人が、どこか家族のような印象があるからかもしれない。稽古場の雰囲気も明るく和気藹々としていて、客演として呼ばれる役者たちは、総じて「この現場にくると癒される」と言う。そんな3人が生み出す劇世界の今後が、楽しみである。


クロスプレイ
12月14日(木)〜12月17日(日)
WoodyTheatre中目黒

『クロスプレイ』公演情報
出演
菊池豪 
松崎映子
伊藤らら(FIRE☆WORKS)
伊奈稔勝(Theatre劇団子)
内海詩野(壺会)
信田素秋 
土田裕之 
船木美佳(N.A.C)
古畑正文(ロックンロール・クラシック) 
前田優次(ベストアシスト)
米田万葉子(IMproject)

稽古場の大きな画像をご覧になりたい方は、こちら

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