昨年、東京公演にて多大な反響を巻き起こした『舞台|阪神淡路大震災』
……10周年の今年、リニューアルされツアー公演へ。

 今年2005年で、あの震災から10年という歳月が流れた。

 去る2004年夏、節目の年に先駆けた9周年に、劇団【タコあし電源】による『舞台|阪神淡路大震災』が公演された。
事実を再構築したオムニバス劇として行なわれたその舞台は、地元・神戸出身である主宰の岡本貴也氏の手によって、強烈な衝撃と再現性を観客の目に焼きつけた。
 
 ……被災者である筆者も足を運んだが、冒頭からいきなり始まる阿鼻叫喚とも言える光景に、当時の記憶が鮮明に蘇ったのを覚えている。それはあまり思い出したくない記憶でもあったが、脳裏の片隅に追いやられていた当時の様々な出来事が観劇中に次々と喚起され、忘れていた出来事がどれほどの事であったのかを再確認することができた貴重な舞台であった。
 そして10周年を迎える今年。かつて東京の中野MOMOのみでの公演だった『舞台|阪神淡路大震災』が、ツアーとなって再演される。
 神戸市による「震災10周年記念事業」の一環も兼ねた今作は、「物凄い反響だった」という前作の脚本を全面改稿、キャストも一新し、さらに改良・発展させた作品となっている。
 ツアーのスケジュールは新潟、盛岡、仙台、神戸・西宮……いずれも地震に縁の深い地域での公演である。そして来年には、締め括りの東京公演もすでに決定している。

 前作の取材をさせて頂いた時から、すでにこの『舞台|阪神淡路大震災』に対し、岡本氏は他地域での公演も視野に入れている発言をしていた。当時は関西地方で公演をやりたいという話を伺ったのだが、その頃から岡本氏の頭には今回のツアー公演への目算があったのではないだろうか。
 今やテレビドラマや映画など、多方面で活躍している岡本氏だが、当時の取材で彼は「震災があったからこそ作家になった」とまで語っていた。岡本氏の震災への思いは並大抵のものではない。取材で語る彼の様子からは、執念のようなものさえ感じたものであった。そういう意味では今回の再演ツアー(もはや再演とは言えないのかもしれないが)は、行なわれるべくして行なわれるものであったのかもしれない。
 前作を観終わった観客たちからの「全国でやってくれ」、「色んな人に見せてあげて欲しい」という無数の声にも後押しされ、「劇団は常に新作を公演し続けるべきである」という劇団としての信条を持つ岡本氏は、新たな『舞台|阪神淡路大震災』に着手することを決心した。「やり残したことはない」と語っている前作の脚本・キャストをあえて採用しなかった意図には、そういった背景もあるようだ。

   

 ……そもそも前作『舞台|阪神淡路大震災』は、「実際の被災地とはどういうものだったのか」を伝えることに重きを置いた作品であった。
 被災地の人間からみた「内と外」という構造だった前作に対し、改稿された今作は「被災地での人間の生き死に」、「避難所の人間とは何か」、「友達を亡くすとはどういうことか」など、より生々しい「人間」の姿にフォーカスを当てたものになっている。「場」というものに重点を置いた前作よりも、ヒューマンドラマ的要素が色濃く打ち出された作品となった今作に、岡本氏自身も「観客には、こっちの方が伝わりやすいのでは」と語っている。
 また、今回の脚本は「次回があるなら、中高生でも感情移入できるようなパートが設けられているものを書いてみたい」と語っていた岡本氏の希望が反映されたものになっている。



 「ここ10年くらいの報道というのは、テレビも新聞もそうですが死体というものが映されませんよね。僕は死体はやっぱ
り描かなくてはいけないと思っていますし、死ということはもっと身近なものだと思っています。なので、そこをもっとフューチャーしたいんです。30歳くらいになると親戚の誰かが死んだとかはよくありますが、十代はまだ生き死にというものをあまり知らない世代ですので……死を見慣れていない人たちに、そういうこともちゃんと見てもらいたいという思いがあるんです」

 そのための方法論として、観客に近いポジションの登場人物を据え、感情移入をしやすくしてあるという。「人間」を描くことに重点の置かれた今回の脚本は、そんな思いがまず念頭に置かれて出発したもののようだ。





 「最初は神戸でやっていいものかずっと考えていたんです。嫌な人はやっぱり観には来ないでしょうし……だから地元のポスターは、他地域とは少し違った、トーンを抑えたものにしています。『非常に辛い思い出が描かれていますが、それでもよかったら観に来て下さい』というような文章がずぅっと書かれたポスターでして……。ただ、前公演を打ってから以降も、中越やスマトラで地震があったりして、前回のように震災の凄まじさを伝えるだけでいいのかな? 何ができるのかな? とはツラツラと考えていまして……かつて世界的に有名な大惨事を受けた我々としては、『10年経った今、ここまでできました』という提示をしていく番なのでは? と思ったんです。街を見ればビルは建ってるし、車も走ってるし、人も歩いてる。元の形ではありませんが……。色んな不幸はいっぱいあるんですが、それだけを言っていても未来に行けないような気がして。だから、歪んでいるかもしれませんが、『我々人間が頑張れば、何とかこんなもんにはなるんやで』という未来への希望を、これからは神戸人として発信していきたいんです」
 ……今回のツアー公演に対し、岡本氏は改めてそう抱負を語った。
 被災地の惨状を伝えるための公演であった作品は、被災者たちへのそんなメッセージが根底に含まれた新作として、かくて地元公演に踏み切られることになった。

   

 純粋な舞台作品としても高い完成度を見せた前作。その改稿版だけに、新たに込められたメッセージはもちろん、作品としてさらなる密度、衝撃を持ったものとなるのは間違いない。一観客、一被災者としても、改めて今ツアーに期待が募る。


BACK STAGE REPORT
2004年7月取材、『舞台・阪神淡路大震災 2004年版』

〜未体験者へ贈る、舞台演劇による「阪神淡路大震災」〜

ツアースケジュール

新潟公演(2005年)
■新潟県民会館/小ホール
10月24日(月)よる19:00開場/19:30開演
10月25日(火)昼13:30開場/14:00開演
Pコード 363-639/Lコード35930/前売り2000円・当日2500円(日時指定・全席自由)
○新潟市一番堀通町3-13/025-228-4481<MAP>

盛岡公演(2005年)
■盛岡劇場/メインホール
10月28日(金)19:00開場/19:30開演
Pコード 363-645/Lコード29567/前売り2000円・当日2500円(全席自由)
○盛岡市松尾町3-1/019-622-2258<MAP>

仙台公演(2005年)
■広瀬文化センター
10月29日(土) 19:00開場/19:30開演
Pコード 363-645/Lコード29567/前売り2000円・当日2500円(全席自由)
○仙台市青葉区下愛子字観音堂5/022-392-8401<MAP>

■エル・パーク仙台/ギャラリーホール
10月30日(日)19:00開場/19:30開演
Pコード 363-645/Lコード29567/前売り2000円・当日2500円(全席自由)
○仙台市青葉区一番町4-11-1「141ビル」6階/022-268-8300<MAP>

神戸・西宮公演(2005年)
■神戸海洋博物館・大ホール
11月29日(火)昼13:30開場/14:00開演
11月29日(火よる19:00開場/19:30開演
11月30日(水)昼13:30開場/14:00開演
11月30日(水よる19:00開場/19:30開演
Pコード 363-604/Lコード58518/前売り2500円/当日3000円(日時指定・全席自由)
○神戸市中央区波止場町2-2 メリケンパーク内/078-327-8983<MAP>

■西宮・なるお文化ホール(西宮東高校ホール)
12月2日(金)よる19:00開場/19:30開演
12月3日(土)昼13:30開場/14:00開演
12月3日(土よる19:00開場/19:30開演
12月4日(日)昼13:30開場/14:00開演
12月4日(日夕方18:00開場/18:30開演
Pコード 363-604/Lコード58518/前売り2500円/当日3000円(日時指定・全席自由)
○西宮市古川町1-12 なるお文化ホール/0798-47-7977<MAP>
※西宮公演は、西宮市・西宮市教育委員会・西宮市文化振興財団主催

東京公演(2006年)
■東京芸術劇場/小ホール1
6月23日(金)よる19:00開場/19:30開演
6月24日(土)昼13:30開場/14:00開演
6月24日(土よる19:00開場/19:30開演
6月25日(日)昼13:30開場/14:00開演
6月25日(日よる19:00開場/19:30開演
6月26日(月)昼13:30開場/14:00開演
6月26日(月よる19:00開場/19:30開演
6月27日(火)昼13:30開場/14:00開演
6月27日(火夕方18:00開場/18:30開演
Pコード 363-640/Lコード37162/チケット前売り3500円/当日4000円(全席指定)
○東京都豊島区西池袋1-8-1/03-5391-2111<MAP>

学校公演(2005年)
10月23日(日)新潟・分水高校
10月26日(水)岩手・大東中学校
10月27日(木)岩手・千厩中学校
10月31日(月)岩手・東山中学校、興田中学校(合同)
11月1日(火)岩手・藤沢中学校(縄文ホール)
※原則、一般の方はご入場できません。

スケジュールの詳細に関しては、こちらをご覧下さい。

稽古場の大きな画像をご覧になりたい方は、【稽古風景)】へ

2005/9/20 文責:毛戸康弘 インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

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