アダルト・チルドレン 劇団初舞台・勝然武美 インタビュー


 暴力や依存症、両親の不仲などの機能不全家族の中で親の愛情を感じられずに育ち、人との絆や思いやり、自分自身の人生を生きることを見失ってしまう「アダルト・チルドレン」は、今もなお増加傾向にあるといわれている。
 今回、この一見重い感のある、社会性を持った「アダルト・チルドレン」というテーマを題材に選んだ動機や舞台の見どころを、劇団初舞台代表の勝然武美氏に伺った。

勝然武美
(かつしかたけみ)
(演出家・脚本家・俳優・プロデューサー・演技コーチ)
東京都出身

1985年に、映画「EXIT」(監督・脚本・製作)で、神奈川県映像フェスティバル優秀賞を受賞。

1987年  劇団「初舞台」を結成し、「夢より遠い場所」、「眠りから醒めた天使」などオリジナル作品の脚本・演出を手がける。

1998年より「株式会社スターズ」を立ち上げ、映画、演劇、TVの企画・制作を行うとともに、     俳優養成塾「俳優塾」の塾頭として、若手俳優の育成にも尽力している。

自分にも思い当たる節があった。

―1996年に公演を行った「アダルト・チルドレン」ですが、当初「アダルト・チルドレン」というテーマを題材に選んだ理由・動機は?

当時アルバイトをしていた時に、初めてアダルト・チルドレンという言葉を聞いたんです。クリントン元大統領が自らをアダルト・チルドレンだと公表した、と教えてもらいました。そもそも、「アダルト」と「チルドレン」て、まるっきり反対の言葉が一緒になっているじゃないですか(笑)。それにも魅かれてアダルト・チルドレンってなんだろうと調べてみたら、自分も子どもの時にそういう環境があったな、と。あったんだけど、私は影響を受けるよりそれを跳ね返していっちゃった方だと思うんですね。詳しく調べてみると、当時でもかなりの人がアダルト・チルドレンの症状を持っていたようで、結構割合が多かったんです。だったらこれを題材にして、自分の経験も踏まえた上で、なにか作品にできないかな、と思ったのが最初のキッカケですね。

「アダルト・チルドレン」がどんな人なのかということを説明する舞台ではなく、勇気と希望を持って帰ってもらう話になっています。

―当時、NHK BS7「プライムタイムニュース」、BS11「エンターテイメントニュース」でも紹介されるほど好評を呼んだ「アダルト・チルドレン」ですが、実際に公演を見に来たお客さんの反応はいかがでしたか?

見て頂いた人の反応は、とても良かったです。「自分にも思い当たる節がある」、「元気や勇気をもらった」、「考え方が変わった」と言ってくれる人がたくさんいました。本当にやってよかったと思っています。BSのTVを見て来てくれた人もいました。
また、アダルト・チルドレンについての本を書かれた 信田 さよ子 さんという方も見に来てくれました。

   

今もなお色褪せていない・・・。

―9年経った今、再演を決めた動機は?

劇団初舞台はこれまでコメディ中心でやってきたのですが、一番作風が変わった話がアダルト・チルドレンだったんですね。今まで自分たちは、場面がどんどん変わる、セットがどんどん変わる舞台が好きでした。映画のように場面が変わっていくんですよ。早や変わりで。しかし、アダルト・チルドレンは素舞台に近いんですね。要するに、セットに頼らないで、素舞台で本当に自分たちの演技がどこまでできるかっていうことに挑戦したかったという気持ちもあります。セットがないとか、今までの方向性が変わった、社会的なテーマが入って来たという点で、記念的な作品が「アダルト・チルドレン」になるんですね。個人的な思い入れでいうと、私も当時役者として舞台に立っていたのですが、一番心に”グッ“と来たのがこの作品でした。ちゃんと心に訴えられていたなと思えたんです。それから、僕はあまり信用していなかったのですが、初めて舞台上で見えないものを信用できた時間があったんですよ。なんか、こう・・・・・・。魂ってあるんだな、というか。
もう一度、今になって世の中を振り返ってみると、当時とあまり変わっていなくて、アダルト・チルドレンのような「生きづらさ」を抱える人たちがさらに増えているかもしれない・・・・・・。改めて1996年当時の脚本やビデオを見たのですが、全然色褪せていなくて、逆に今求められているかなと思ったのが、この作品を選んだ理由ですね。

この作品を見たら、きっと「自分」を発見できる。

―舞台を見に来る観客の人たちに伝えたいこと、感じて欲しいことはありますか?

僕はいつも思うんですけど、世の中ってすごく緊張感だらけで、ほとんどの人が自分の心を閉ざしているんです。でも実は、自分が心を閉ざしていることに気付いていない。交流していると思っているけど本当は交流できていない。では何をすればいいかというと、自分を解き放つことなんだけど、どうやって開放していいかわからない。「どうやって自分の心を開いたらいいか」ということが、この作品をみると少しわってもらえるかな、と思います。
人と人が触れることがなくなってきちゃっていて、なかなか人を信用できないじゃないですか。本当に相手を受け入れることもしないし、信用することもしないし・・・・・・。だから当然、孤立化が始まって、最後にはそこに居られなくなってしまう、という状態になってしまうと思うんですね。
また、「アダルト・チルドレン」についてだけでなく、舞台を通して感じて欲しいのは、言葉だけじゃなく、言葉の向こう側にある部分ですね。台詞には言葉の限界がありますから、その書かれていないところを、俳優さんたちが体を使って表現して、見えない魂にぶつかって、「ひょっとしたらこんなことを言ってるんじゃないかな」、「僕にも思い当たる節がある」と感じる。そして、それをヒントに「こうやってみよう」、「ああやってみよう」と考えるようになってもらえたら、きっと「自分」を発見できるのではないかと思います。

    

数々の舞台作品を創出してきた勝然さんご本人の中でも、最も印象的な作品である『アダルト・チルドレン』。現在は、演技コーチとしても活躍中で、先日もアメリカで新しい発声法を学んできたとこのこと。今回は、演技指導も勝然さんご自身が担当するそうで、9年前の作品よりもさらにパワーアップした舞台になるであろう。

2005/8/7 文責・インタビュアー:小林彰 撮影・編集:鏡田伸幸

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