AAF戯曲賞ドラマリーディング 風琴工房・詩森ろば インタビュー


ことばという美しい音楽を奏でるための楽器でありたい――そんな願いを劇団名に込めた【風琴工房】。その想い、そして“対話”。この二つを軸に彼らが描いてきた繊細かつ骨太な物語世界は、常に高い評価を集めてきた。そんな【風琴工房】にとって、ドラマリーディングも東京を離れての公演も、いずれも初めての試み。この試みで、彼らは何を目指すのだろう?

風琴工房
1993年、旗揚げ

座付き作家の詩森ろばによる硬質なリリシズム溢れる劇世界が高い評価を集める。“対話”にこだわり、現代的・社会的テーマを多彩なスタイルで表現し続けている

1997年、『病の記憶』シリーズをスタートさせる

なお、風琴とはオルガンのこと


公式HPは此方


詩森ろば
【風琴工房】主宰・劇作家・演出家
岩手県盛岡市出身

少年犯罪、セクシャリティ、児童虐待などの社会的なテーマを個人的視点で捉えなおし、詩情溢れる舞台へと昇華させる手腕が多くのファンを持つ

2000年 『ヤフーの媚薬』テアトロ戯曲賞最終候補

2002年 『箱庭の地図』テアトロ戯曲賞 最終候補

2003年 『紅き深爪』劇作家協会新人戯曲賞 優秀賞受賞

繋がる身体を目指して

―【風琴工房】は今回、初めてドラマリーディングに取り組みます。なぜ、ドラマリーディングをやってみようと?

まず、単純に「難しいだろうな」って思うんです。戯曲を読んで見せて、それをお客様に面白いと思ってもらうのは非常に困難だろう、と。そういう難しいことをカンパニーとして、一回通過しておいた方がいい、というのがまずありましたね。
それと、私は“身体”にすごく興味があるんです。“言葉”みたいに、パワーはあるけれども止まってるもの、戯曲に書かれた段階では止まっていてエネルギーが0のものに、人間の身体がどれだけ運動エネルギーを与えられるのか。ドラマリーディングでは役者は、それは多少は動きますけど、でも基本的には動かないですよね。そんな風に身体の動きが無くても、言葉にエネルギーがあるっていうのはどういうことだろう?……そういうことにすごく興味があったんです


―また近年、【風琴工房】は「対話」というものを強く意識しています。「対話」「コミュニケーション」という点で、ドラマリーディングだからこそ得られるものは?

ドラマリーディングでは戯曲を手に持って読みますので、どうしても“戯曲を持っている”という状況に頼ってしまう。でも、それを持ちつつ、それでもいろんな人と繋がっていけるとしたら、普通にセリフを覚えて話す時には自然に“繋がる身体”になっているんじゃないかって思うんです。
「【風琴工房】は“対話”を中心に据えて作品を創っています」って言っても、私自身、自分の舞台でそれを感じられないこともあるんですね。まだまだ手探りというか。“対話”を表出させるという私達の目標に対して、では何をしていけばいいのか…。その点でも、カンパニーの体験値として、このドラマリーディングにはすごく期待しています


想いを重ねる余地、という魅力

―今回、【風琴工房】が取り組む戯曲『アナトミア』。【フラジャイル】の小里清さんの作品ですね。普段、【風琴工房】では詩森さんの戯曲を上演しているわけですが、他の人が書いた戯曲に取り組んでみて、面白さ・難しさは?

面白さが大きいですね。ずーっと作・演出でやっていると、演出の部分を単独で評価されることがあんまり無いんです。…って、別に評価が欲しいわけではないんですけど(笑)。よく私は「劇作家の詩森さん」って言われる。でも、実は私のアイデンティティーとしては「演出家である」という思いが強いんです。ただ、それを他の人にも認めてもらうためには、やっぱり自分の戯曲以外の作品を演出していかないと駄目ですよね。そういうことも含めて、他の人の戯曲を演出するのはとにかく面白いですね

―この『アナトミア』という作品の魅力をどのように感じてらっしゃいますか?

「生とは何か、死とは何か」といった、抽象性は高いけれども決して避けては通れない事象。それについて書きたいという作家のモチベーションにまず、すごく賛同できます。そこに向かって作家が足掻いた軌跡みたいなものに、私や、演じる俳優たちの死生観、あるいは自分たちが生きている不安みたいなものを、どう乗せていけるか。私はこの作品を演出する上で「問われているのは作家の死生観ではなくて、私たちの死生観なんだ」って俳優たちにも話していますけど、そういう風に、誰もが抱えているものを重ねていく余地のあるところがこの作品の魅力だと思いますね。もちろん内容の全てに賛同する訳ではない。でも、深く賛同できる部分もあれば「そんなんじゃないだろう?」と感じる部分もある中で、私たち自身の多層的な肉体の声みたいなものを重ねていく余地がある。それがこの作品の魅力です

―最後に、AAF戯曲賞ドラマリーディングに参加される上での抱負・ファンの皆様へのメッセージをお願いします

これまでずっと、地域に出かけて行くことに対してモチベーションが低いタイプだったんです。それは海外公演や海外研修にしても同じなんですけど…「まだここでやるべきことがあるだろう」っていう思いがすごく強かったんですね。だから外に出かけようという気にならなかった。東京にいてさえろくに何もできていないのに、それを地域に持って行ってどうするんだっていう。でも今年、愛知でのドラマリーディング、そして年末の京都公演と、外の観客に出会いたいというモチベーションが出てきました。カンパニーが次のステージへと――自覚するとせざるに関わらず――踏み出そうとしている。そんな感じがするんです。何かしら、「自分達の表現はこれなんじゃないか」っていう思いが少し自信を持った形で提示できるかもしれない…その一歩なので、是非それを楽しみに観にいらしてください


『アナトミア』の作者、小里清さんと詩森さんは、実は互いによく知る仲だという。
廻り合わせ……やはりここが【風琴工房】にとって、新しい何かが動き出すタイミングだったのだろう。
カンパニーとして更なる一歩を踏み出す【風琴工房】。彼らの新しい表情を、演出家競演という贅沢な舞台で発見して欲しい。
なお、今回のドラマリーディングでは生演奏をバックにパフォーマンスも挿むという。その一事だけとってみても、ドラマリーディングのイメージを裏切る意外性もまた、十分に楽しませてくれそうだ。

2005/8/2 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

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