AAF戯曲賞ドラマリーディング reset-N・夏井孝裕 インタビュー


【reset-N】の夏井孝裕さんが今回目指すのは、「ただ読んでいるだけなのに面白い」というドラマリーディングの王道。俳優が椅子に座って戯曲を読むオーソドックス・スタイルだ。もっとも、そこで俳優たちは戯曲を「ただ読む」わけではない。それは稽古中、夏井さんが俳優たちにかけた言葉が物語っている。
「顔を上げて。台本はビート板、自分で進む感覚を忘れないで!」
そんな夏井さんに、オーソドックスゆえの面白さや工夫と合わせて、ドラマリーディングの魅力を語ってもらった。

reset-N
劇作家・演出家夏井孝裕の主宰する現代演劇カンパニー。

1995年起動。2001年に劇団化。

独自の美意識と知性に裏打ちされた硬質の舞台は高い評価を集める。

2004年にはW.S.バロウズ作『裸のランチ』を世界で初めて舞台化するなど、夏井戯曲以外の上演も行う。

2006年にはマルセイユの演出家との国際共同制作も予定されている。


公式HPは此方



夏井孝裕
【reset-N】主宰・演出家・劇作家・massigla lab.代表。
1972年、長崎県・五島生まれ。

上智大学在学中に上智小劇場で演劇活動を開始。劇団橄欖舎で処女作『鉛ノ月』を上演。
後に退団し、劇団reset.を旗揚げ、4本の作品を発表後、解散する。

白石加代子作品、ク・ナウカなどで演出助手をつとめたのち、1995年、reset-Nを起動。

1999年、『knob』で第四回劇作家協会新人戯曲賞を受賞。

2001年、『黎明』がロンドンで上演される。(英訳Susan Meehan、演出田野邦彦)

ちゃんとやれば、ちゃんと面白くなる

―まず、今回のAAF戯曲賞ドラマリーディングに参加しようと思った理由から聞かせて下さい

ドラマリーディングはとても面白いと以前から思っていたんです。実際、【reset-N】でも一度ドラマリーディングの公演をやってますけど、その時もやっぱり面白かった。ただ、その時はまだいろいろ分かっていなかったので、すごく稽古して、試行錯誤して……それでちょっと掴んできた感じがするんですね。だから、このAAF戯曲賞ドラマリーディングはいい機会だと思いました。
また、作品を読んでみると、とてもシンパシーを感じて。この作品でやれることになったのは本当にラッキーでしたね


―夏井さんはドラマリーディングの魅力をどんなところに感じています?

たくさんあって、話すととんでもなく長くなっちゃうんですけど(笑)……ドラマリーディングはすごく上手くいった場合、脚本が想定している通りに普通に上演するよりも面白くなる可能性があると思うんです。しかもそれが、かなりの低コストでできる。それは大きな魅力ですね

―面白くするための最大のハードルは何でしょう?

役者が、その戯曲にしかないものを拾えるかどうか。そこがとっても大きいですね。
それと、お客さんに聞かせるものなので、(台本を持つ)手許との格闘になると良くないってことは痛感します。「こう読まなきゃ」って一人でグルグル、ハムスターが車輪を回すようになっていくと、もうつまらない。
ちゃんと渡し続ける、ちゃんと発信し続ける、――それは普通の芝居と同じなんですよ。「脚本によっかからない」という当たり前のことをやっていれば、ちゃんと面白くなると思うんです


―特に演出する上で感じることは?

俳優と戯曲との関係っていうものが、いろいろと再発見できました。それはとても大きい収穫でしたね。
これまで、役との距離感をどう置くかは役者さんそれぞれのやり方やセンスに任せている部分があったんです。でも、ドラマリーディングだと「ここまではあなた。ここからは役」「ここはあなたでもないし、役でもない」っていうところがクリアじゃないと、バラバラになっちゃう。熱演すればいいっていうものでもないし、朗々と明瞭に読めばいいっていうものでもなくて、「ここだ」っていうところ。それを揃えなくちゃ駄目なんですね


観客を引き込むために

―今回、【reset-N】は俳優が椅子に座って戯曲を読むという、ドラマリーディングの王道スタイルを見せてくれるようですね

はい。だから、参加する4団体の中では一番地味かもしれません(笑)。でも、僕が客としてドラマリーディングを観る時に、やっぱり“いじり過ぎ”があると気になるんですよ。「これだったら文字で読んだほうがずっと分かるんじゃないか」って。僕らも初めてドラマリーディングに取り組んだ時には「本当に読むだけで面白いのかな」っていう疑念があって、いろんなことを考えましたけど……今回は最初からこのスタイルでいこうと考えてました

―稽古を拝見して感じたのですが、離れて座っている人たちが戯曲を読む。それだけでも何とも言えない緊張感が生まれるものですね

そうなんですよ。そして、僕なりに考えたこととして、お互いに決して目を合わせないことが大事なんです。そうやってお客さんに言葉をかけていると、お客さんは自分に言われているような錯覚に陥ることがある。すると、物語の中に入れるんですね。もちろん、ただ読んでいるだけでは絶対にそうはならないんですけど。(戯曲にあるものを)拾って、空中の誰かに向けて喋る。役者にとっても結構高度なことをやっていて、そういう面白さもあるんですね

―そうしたドラマリーディングの面白さに改めて触れた訳ですが、今後、【reset-N】としてドラマリーディングに取り組む機会も増えそう?

やりたいですね。やりたい戯曲はいっぱいあります。同世代の、あんまり出版されていないような小劇場の作品とか、上演される機会の少ない外国の戯曲とか、或いは僕が学生時代に書いたものとか…。(普通の芝居に比べて)簡単にできるし、場所だって劇場じゃなくてもいいですからね。
もっとも、ドラマリーディングは下手なのがバレやすいので、なるべくボロがでないようにはしないと(笑)。その点、『so bad year』だと得意分野に近いテイストの戯曲なので、気は楽です
―その『so bad year』。宮崎の【劇団こふく劇場】の永山智行さんの戯曲ですが、夏井さんはこの戯曲の魅力をどのように感じてらっしゃいますか?

いろいろあるんですけど…“夫婦の関係”っていう最小単位なところから“日本への違和感”っていうすごくスケールの大きい孤独感までっていう、その振幅がすごいと思うんですね。で、その中間がポッカリないところもまた良くって。登場人物は仕事は何してるのかも分からない(笑)。そういうところも、とても面白いですね

―最後に、AAF戯曲賞ドラマリーディングに参加するに当たっての抱負、或いは名古屋の演劇ファンに向けて【reset-N】のアピールをお願いします

抱負としては、これをきっかけにドラマリーディングが、それも良質のドラマリーディングが流行るといいな、と思います。
【reset-N】をアピールすると、僕たちは演劇にセクシーさとインテリジェンスを持ち込みたいと思っているんです。ついつい見ちゃう。見ていると、そこには何か、本物の思考がある。そういう劇団でありたいと思っていますので、そうしたことを今回のドラマリーディングからも感じてもらえればいいですね

【reset-N】が取り組むオーソドックス・スタイルのリーディングは、今企画で提示されるドラマリーディングの可能性、その振れ幅を更に大きくしてくれることだろう。
ちなみに、この『so bad year』は【Ort-d.d】の倉迫さんが昨年、長久手町文化の家などで舞台化した戯曲でもある。それは夏井さんも、もちろん意識している様子。その舞台を観た人であれば、この“演出家競演”を更に楽しめること間違いない。

ドラマリーディングとは何かを問うにはもってこいの企画、AAF戯曲賞ドラマリーディング。お近くに住む演劇ファンは、是非ともこの機会をお見逃しなく!

2005/8/18文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

稽古場の大きな画像をご覧になりたい方は、【稽古風景)】へ

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