愛と愛が織りなすミステリー
-------【ハーフムーン・シアター・カンパニー】の英米名作シリーズ第二弾は、本邦初演!
テレンス・ラティガン『愛を称えて』

 【ハーフムーン・シアター・カンパニー】の英米名作シリーズは、まだ日本に紹介されていない20世紀英米の名作を連続上演する目的ではじまった。今回の『愛を称えて』はその第二弾。テレンス・ラティガンの最後の秀作で、日本で公開されるのは初めてだ。板橋区大山の演劇フリースペース・サブテレニアンよりお送りする稽古場レポート[from SUBTERRANEAN]。普段のBACK STAGEとは趣きの違う作品だがとくとご覧あれ。
2006/8/22 インタビュアー・文責:さたけれいこ(サブテレニアン)  撮影・編集:鏡田伸幸


 テレンス・ラティガンはイギリスではサーの称号を授けられた劇作家!コメディとシリアスな作品を同時に上演する形式(ダブル・ビル形式)でいくつも作品を書いています。『愛を称えて』は、その形式で書かれた、シリアスな方の作品。1970年初頭のイギリスが舞台です。第二次世界大戦中にイギリス秘密情報局将校だった頑固な評論家と、ナチスの強制収容所で九死に一生を得たエストニア難民の女性。この夫婦が、30年近くの結婚生活を経て、人生最大の危機に直面します。

俳優が動き出すと、稽古場の空気ががらりと変わる!

吉岩さんは自分から俳優に近づいて優しい口調で指示を出します。

母と息子の関係。国や時代が違っても共通のものなんだな、と実感。

父の帰宅が波乱を呼びます。


チェスに向かい合う旧友。この感じは昔からずっと変わらないんだろうな。時間を忘れる一瞬です。

 ふだん若い世代の小劇場を見ることが多い私にとって、ちょっと構えてしまうくらいのお話。それに、第二次世界大戦中に生きた人の人生に思いを馳せるのは、難しいようにも感じます。彼らの息子の世代が、ちょうど今の50代、60代の人々にあたるくらいなのです。ですが、夫婦、親子の愛の話は私たちにも共通するところがあります。時代、国が違っても通じるものはあるでしょう。

 【ハーフムーン・シアター・カンパニー】の代表であり演出を努める吉岩正晴さんは、現代イギリスを代表する劇作家ハロルド・ピンターの連続上演や現代イギリスの最新戯曲の紹介・演出に努めています。
吉岩
 この作品で扱っているのは、普遍的な愛の話。台詞にも出てきますが、「嘘も方便」という言葉があります。愛の本質がそこにあると、この作品は伝えています。愛には嘘も必要。愛の表現の仕方は、時として嘘として表現されることもあるんですね。

 吉岩さんの言葉に、出演者の古坂るみ子さんはこう言いました。

古坂
 母親が息子に「嘘も方便」と教えるなんて、最初は受け入れがたいところもあると思うんです。普通なら、正直に生きなさい、と教えるところでしょう?

 「嘘も方便」が愛の本質?愛に嘘が必要?実は、この嘘こそがミステリーの鍵であり、作品の最大の魅力なのです。それは、鮮やかに私たちの胸を打つことになります。

吉岩
 人間が一番大切だということ、これもまた作品が伝えていることの一つです。究極の局面において、政治的信条、宗教、国の違い、その他の何を差し置いても大事なもの、それは人間だ、ということです。

 登場人物四人は、生まれた国や立場がそれぞれ違います。加えて、父と子の世代の違い。それらの軋轢がドラマとなります。

吉岩
 愛のあり方、この普遍的なテーマを作品全体を通して探っています。

 この作品では、様々な愛が絡み合っています。夫婦、親子、恋人同士、友情。それらは長い時間をかけて育ったものです。たった四人の登場人物の中に、これほどたくさんの愛情の揺れがあるものなんですね。

 出演者の安原義人さんは、こう言います。

安原
 見る方も体力のいる話かもしれないな。

吉岩
 でも、イギリスの作品にしては珍しくハッピーエンドで、ほっとする終わり方です。ラティガンの作品はそういう要素が多いですね。日本人が共感を覚えやすいんじゃないかな。

 嘘で表現しなければならないほど大きな愛。まだまだ若い私には、正直言って実感するのは難しいです。でも、この作品に触れることで、その片鱗を感じることができるかもしれません。苦難に満ちた人生と、その上に築かれた大きな愛を想像させてくれることと思います。
もの書きの話なので、舞台には小道具の本がたくさん。 (こちらも小道具。)イギリスでは、昼間からお酒を飲むのが普通とのこと。 表情一つに、感じるものがたくさん!大人の魅力ですね。


今回出演する俳優に、自分の演じる役柄についてどう感じているか語ってもらいました。
安原義人(テアトル・エコー)
 演じるにあたり、自分との共通点を見つけるようにしています。頑固、エゴイスティック、勝手なところ、など。愛の表現が不器用なところは、日本人にも共通しているように感じています。昔の日本男児のような。自分の親父を思い出すこともあります。
古坂るみ子(文学座)
 自分が演じるのは、過酷な過去を持つ女性です。彼女は愛の決着のつけ方を探っているのだと思います。愛し、愛される人たちに囲まれて出す、彼女なりの愛の結論とは。本番を楽しみにしてもらいたいです。
井上倫宏(円)
 自分は聞き役、話の引き出し役に徹しています。異邦人だったり温和な性格の役柄から、奉仕する役目になっていますね。(観客が感情移入して見るのは、井上さんの役なのかもしれません。)
菊地真之(長沢演劇グループ)
 役と今の自分とはかけはなれていると感じています。自分はそれほど真っ直ぐだったり、意見を滔々と述べるような若者とは違うので。(菊地さん演じるのは70年代の若者の役ですが、現代の若者の菊地さんはかけはなれていると感じるそうです。)

ハーフムーン・シアター・カンパニー公演 英米名作シリーズNo.2
愛を称えて In Praise of Love by Sir Terence Rattigan

9月6日(水)〜9月10日(水)
アイピット目白
入場料 一般4,000円 学生 3,500円
お問い合わせ:
ハーフムーン・シアター・カンパニー 03-3368-6714 
my@halfmoon-jp.com
http://www.halfmoon-jp.com

作 テレンス・ラティガン 
訳 荒井良雄 
演出 吉岩正晴

出演
安原義人(テアトル・エコー) 
古坂るみ子(文学座) 
井上倫宏(円) 
菊地真之(長沢演劇グループ)

[from SUBTERRANEAN]

サブテレニアンでは、これからもBACK STAGEのなかで[from SUBTERRANEAN]として、サブテレニアンを連続利用している団体からピックアップした公演の稽古場レポートをお伝えしていきます。またサブテレニアンWEBSITEでは、他にも随時稽古場レポートをアップしていますので、是非そちらもご覧下さい。

演劇フリースペース サブテレニアンについて
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