BACK STAGE REPORT〜【Zero Project】【鈴木完一郎インタビュー(1)】〜
【Zero Project】の記念すべき第10回企画公演―『ジュリエット』。
設立4年目を迎えるこの企画製作団体にとって、新境地とも言える作品である。

「誰にだって恋をして幸せになる権利がある!!」女性ばかりの職場の中、そんな一言から始まった企画です。       (公演企画書より)

そんな今作の演出を請け負ったのが、【青年座】演出部所属の鈴木完一郎さんだ。
【青年座】といえば、今年創立50周年を迎える老舗劇団。4年目と50年目、この両者の出会いがまた興味深い。
恋するために生まれてきた女たちへ…そう副題を打たれたこの作品を、「イメージの暴れん坊」と評される鈴木さんは、どのように料理するのだろうか。

鈴木完一郎 氏(青年座)
1948年生まれ。大学卒業後、劇団青年座に入団。
1976年劇団公演「死のう団」で初演出、その後2年間の公演で青年座の演出家としての地位を確立。1986年文化庁在外研修員としてスペインに滞在。翌1987年帰国し、以後劇団公演の他フラメンコ、日舞公演の構成演出、商業演劇、他劇団公演の演出家として活躍し現在に至る。
デートの気分を出していこう
―今作『ジュリエット』。まず、集まった役者さん達のバックグラウンドがバラエティーに富んでいて面白いですね

そうですね。僕は湯浅(実)さんを除いて全員、初めてなんですよ。役者さんが初めての時は、一種のお見合いのような興奮がありますね。初デートですから、それを可能な限り面白く持っていこう、初デートの気分を出していこうっていうのが、まずあるんですよ。
今回のメンバーは育ってきた演劇の場所がみんな違うでしょ? 僕は本当の新劇だし、山野(海)さんなんかは小劇団でやってるし。そこでのいろんなズレみたいなものがあるんだけど、そのズレが凄く面白いですね。多分、役者さんの方も「こんなに違うんだ」って感じてると思うんですよ。そうしたズレのすり合わせが面白い


―お名前の挙がった山野海さん。今回主役を演じる彼女の印象は?

熱心ですね、とっても。一生懸命やっていて。
彼女は劇団も主宰してたりしますから、そこでの癖みたいなものがある。つまり、彼女がターゲットとしている観客がいるわけですね。そして、僕の中にもターゲットが在る。そこのズレ合わせを今、している感じです。「ここをどうやって表現するか」ではなくて、「誰に、何を見せるか」という部分ですね。その手段として、演劇っていう表現があるわけですから。
その「誰に、何を」っていうところを、これからお互いにもっと話していくでしょう。そうすれば、その表現としての、手段としての演劇という中で、お互いに共有できるものがもっといっぱい出てくるんじゃないかな。
ここまで見ている感じでは、非常に熱心でセリフもほとんど入っているみたいだし、これから楽しみですね
感が良いというのは大事です
―また今回、杉浦太雄さんの初舞台としても注目されています

彼の良い点はね、まず素直なこと。初めての舞台ってことで、すごく素直に、身体ごとぶつかってます。
それからもう一つ。彼は音楽をやっているだけあって、音感がすごくいいのね。役者さんにとって耳が良いか悪いかっていうのはとても大事。その耳がね、すごくいいって感じています


―「耳」が大事というのは、具体的にどういうことなんでしょう?

結局ね、セリフとか動きっていうのは、リズム感と音程の取り方なんですよ。だから、リズム感があるっていうのはまず良いでしょ? 
もう一つ、音程だけど……例えば「おはようっ!」って明るく言う。これって和音で言うと「ド/ミ/ソ」なの。これが疲れている時、二日酔いの時の「おはよう…」になると、「ラ/ド/ミ」になる。そういうことが彼にはちゃんと伝わるわけ。「ここは元気良く」とか「明るく」じゃなく、「ここはメジャーのコードでいってよ」って言って伝わるんです


―実際にそういう風に演出しているんですか?

うん、やってます。セリフを口にする時に「字」を読んじゃダメだよ、音楽をやってるように、演奏しているようにやるんだよ、って。人間は頭を使って会話してないんだから。犬がワンワンって吼えたり、クンクンって甘えてきたり、っていうのと同じように言葉を使っているんだから、って。そういうこちらの説明がね、音楽やってるから、彼にはすごく分かるわけ。「音楽ってさぁ、頭使ってやんないだろ? フィーリングだろ? 会話もそうだよ」っていうことがね。もう台本読むとね、それで頭がコチコチになっちゃう奴が多いわけよ。彼にはそれが無いから、凄くいい感じでいくんじゃないかな
なたも共犯者」ってなればいいね
―今回、劇場が東京芸術劇場小ホール1。舞台を好きに組めるブラックボックスの性質が強いスペースですね。舞台の設計はどのように?

今回の舞台は刑務所なんですよね。医療刑務所っていう設定なんです。そこに収監されている死刑囚の女が、自分を『ロミオとジュリエット』のジュリエットだと思い込んじゃう、っていう。だから、あそこのメタリックな冷たい感じをそのまま全面的に、刑務所っていう舞台に利用しちゃってね、全体を使おうと考えています。劇場自体が小さいから、その臨場感をどうやってお客さんと共有するかってことで…劇場に入った瞬間、舞台セットの中に入りこんだ様な印象に持っていきたいわけです。牢獄の中に自分も足を踏み入れて、一人の女性の人生を覗き見するような設定になれば、って。劇場が小さいっていうのは、そうした臨場感、ライブ感の部分が一番面白いわけですからね。
お芝居っていうのはつまりライブだから、大きい劇場でももちろんライブ性っていうのはあるんだけれども、それでもプロセニアム(額縁舞台)がある大きい劇場だと、どうしてもお客さんが観察者になっちゃうでしょ? 小劇場、狭い空間の効果っていうのはまさにその「狭い」という所を逆手にとっての臨場感、ライブ感ですからね


―観客も牢獄に入る感覚、というのは面白いですね

そう。「あなたも共犯者」っていう感じでね(笑)。あなたも共犯者になれる、っていうのを狙ってはいるんですよ
クゾク怖い ワクワク美しい
―光の仕掛けが大変凝っているとか

光のページェントをやろうと思ってます(笑)。…演出家には音の好きな人、ライトが好きな人、いろんな人がいるんですけど、僕はことさらライティングが好きなんですね。できれば自分でやりたいくらいなの(笑)。でも、嫌がられるからね、照明さんに(笑)。
そんなわけで、僕自身は光がすごく好きだから、ああいう小屋でやるならどうしようかって考えて……やっぱりね、たくさんの若い女性に観て欲しいから、ロマンチックでキレイな舞台を作りたいんです。特に、主人公が死刑囚でしょ? 死刑囚がジュリエットになってロミオを夢見ているっていう話で、半分は怖いけど、半分はとってもキレイな話になっているからね


―その女性の視点を描く上で、今作、気を使う点は?

女性に演技の話をする時に、僕はよく「君は女性をどれくらい演技してる?」っていうことを言うんですよ。男なら「男であることをどれくらい演技しているか?」って。その演技している「女」や「男」を削ぎ落としていった先、男でもない、女でもない…つまり人間としての共通の部分がどのくらい分量としてあるんだろう、って。
今回、主人公が殺人者でしょ? その彼女は、極限状態の中でどのくらい彼女であったのだろうか? どのくらい一人の人間として在った部分があるんだろうか? そこが出てきて欲しいわけですよ。「男臭い」とか「女臭い」とかってあるけど、多分、その先にあるものがテーマなんです。つまり、人間が持っている非常に残酷な部分と、それから非常にキレイな部分、そこの際(キワ)まで行かないと、この作品はきっとうまくいかないんじゃないかって気がするんですよ。ゾクゾク怖い。ワクワク美しい。ゾクゾクとワクワクですよ、このお芝居は。で、共犯者になれるわけだから、お客さんは2倍楽しめるわけですね(笑)


―今までの【Zero Project】作品のイメージから、今回も骨太なお芝居になりそうだとは思っていましたが、やはりロマンチックなだけではない、そこを突き抜けるお話になりそうですね

うん。突き抜けたところにある、人間が持っている透明なもの、純粋なものが見えてくれば、って思っています。その「透明な」「純粋な」っていう部分で、多分、これまで【Zero Project】が描いてきたものとも重なるんじゃないかな?

→【鈴木完一郎インタビュー(2)
(文中、一部敬称略)
2004/12/4 文責・インタビュアー:北原登志喜  撮影・編集:鏡田伸幸

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鈴木完一郎インタビュー(2)

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