BACK STAGE REPORT〜【Zero Project】【伊藤綾美インタビュー(2)】〜
伊藤さんのお話を伺っていると、言葉の端々に「挑戦」という言葉が出てくる。彼女のこだわるテーマの一つでもあるこの「挑戦」という言葉には、一体どういう思いがあるのだろうか。
そして、その「挑戦」という言葉に込められた【Zero Project】の今後の展望とは、間近に迫った公演・『ジュリエット』に込められた思いとは、どのようなものなのだろうか。

Zero Project】の、これからの挑戦
―舞台演劇だけでなく、音楽コンサートもプロデュースされておられますが、これは何か理由が?

私の中で、音楽というものも、舞台演劇と共通するものがありまして……なので、もう少し砕いた感じでそういうことができないかな? と思ったんです。通常のコンサートよりも、もう少し小さな建物でそういうことができないかと。

―当初から、そういうことも手掛けようという展望があったのですか?

初めはありませんでした。でも、今では音楽コンサートというのも進めていきたい企画の一つですね。

―音楽コンサートというのは、演劇プロデュースとはまた違う、未知の領域だったのでは?

そうなんですけど、そこはあまり難しく考えないで、自分が観客として聞きに行ったらどうだろう? という目線で進めることにしました。詳しく知らないだけに出来ることもあるんじゃないかと(笑)。

―これからの展望として、「女性が気楽に立ち寄れる劇場」を作りたいという思いもおありとのことなのですが。

はい。ただ、あまり大きな劇場というのは展望としては考えていないんです。大きな劇場というのは、都や国にお任せして(笑)。作れる作れないは別として、私たちが作りたいのはやっぱりライブ感というものを肌で感じられる距離で観れて、ロングランができて、そして一年の何ヵ月かは若い脚本家や演出家の方が公演を打てるような……そういう劇場ですね。

―若い人が公演を打てる場所?

そういう方たちとの出会いというものも、大切だと思っていますので。

―なるほど……。

あとは、そうですね……例えば夜中に演劇が観れる劇場があってもいいんじゃないか? と。レイトショーではありませんが、もう少し映画を観るような感覚で、「あ、今からやるみたいだから、ちょっと入ってみようよ」といった感じの……。やっぱり、お芝居を観に行くことって、まだ少し構えてしまうところがあると思うんです。もっと気軽な、例えばお食事ができたり、お酒が飲めたり、そういうトータルで楽しめる場所がいつか作れたらいいなと思いますね。ただ、初めは無理でも、最終的には貸し劇場という形ではなく、あくまでウチが企画を打って、プロデュースをするための劇場にしたいです。単なる貸し劇場を経営するだけなら、私がどこかの劇場にお勤めすれば済む話ですので(笑)。

―劇場を含め、より経営者的な展望をご自身の先に見据えておられると……。

そうですね。いつまでもボランティア意識のままでいると、そこで終わってしまうような気がするんです。「お金」というのは苦手な分野ではあるんですけど、やっぱり経営という部分はしっかりとしたものにしておかないと、これから大きくなれないと思いますので。

―これからプロデューサーという仕事をやってみたい、または何か挑戦したいことがある人へ向けての、経験上からの送る言葉などありますか?

もうとにかく、一歩踏み出すということですね。クリエイティブな部分で頭のいい人って、たくさんいると思うんです。でも、頭で色々な計画を描いて、方法を綿密に考えても、そこからアクションを起こすのってやっぱり物凄いエネルギーがいると思うんですね。何かチャレンジしたい事があっても、多くの人がまずその一歩でためらったり、つまずいたりしてしまうと思うんです。でも、そこで恐れずに一歩踏み込んでみる。そうすると何かが変わる。その踏み出しと変化を続けていけば、夢は最終的に絶対叶うと思うんです。
境地となる最新公演・『ジュリエット』
―今公演について聞かせて下さい。今回はタイトルも『ジュリエット』ということで、『ロミオとジュリエット』をベースにした作品だと思うのですが。

はい。今回ジュリエット役を山野海さんにやって頂くんですが、その山野さんの夢が「三十代の内にジュリエットをすること」だと聞きまして、これは凄く面白いな、と。

―まず山野さんがあっての企画だったと?

そうですね。まずウチならではのジュリエットということで、山野さんというのが先にあって……そこから、じゃあ脚本家はどうしよう? 演出家はどうしよう? という流れですね。

―脚本に中島淳彦さんを起用したのには、何か狙いがあったのでしょうか。

二年くらい前に中島さんの『エキスポ』という作品を観たときに、「笑って笑って、少し泣いて……という人情喜劇をとても面白く書く人だな」と思ったことがあったんです。それで、今回の脚本家としてどうだろう? と考えていたら、たまたま山野さんが中島さんとご縁があって、引き合わせて頂いて……という感じですね。

―これまで喜劇を多く手掛けてこられた中島さんの「シリアス劇」というのも、今回の一つの大きな売りですね。

そうなんです。今回は六人のキャストになるんですが、登場する人物に悪人がいないといいますか……役的に悪の色があったとしても、最終的には何かしら「いい人間」としてのポジションがあるという。その人がどういう風に変わっていくか、という心理描写なども面白いと思います。今回は本人も「自分の作品じゃないみたいだ」と言ってるくらい、新しい中島淳彦が見られるシリアス・ストーリーですので、ファンの方は本当に必見ですね。

―もう一人の主演が、初の舞台出演となる杉浦太雄さんですが、これは伊藤さんがオファーを?

はい。ロミオに関しては凄く慎重になりまして……最初は年配の方も考えていたんですけど、それだとハマり過ぎてしまうんじゃないかと。それじゃあ若いロミオを持ってこようと考えたときに、「いいな」と思う人をタレント名鑑なんかからどんどんリストアップしていきまして……。

―その中から杉浦さんを?

演出の鈴木さんからも「面白いドキドキさせるような人物を演出させて欲しい」というお言葉を貰いまして。そういう風におっしゃってくれるのだったら、初舞台になる杉浦くんでもきっと面白く、良い感じに作って頂けるだろうと。
ジュリエット』という、新しいプロジェクト
―今公演は、主に女性をターゲットに絞ろうという意図があったのでしょうか。

特に女性をターゲットにという意識はなかったんですけど、私たちも女性ばかりの職場でして、その中でやっぱり一度「女性ならでは」というテーマの作品を発信してみたいという思いはありました。最近では「勝ち組、負け組」なんていう言葉もありまして、この『ジュリエット』にも「負け組女性たちへの応援歌」というコンセプトがあるんですけど、実際はそういうことをあまり意識せずに観て頂きたいですね。

―企画書などを拝見した感じでは、比較的ダークなテイストのお話になるのかなと思ったのですが。

そうですね……物語上、やっぱり全体的なトーンというのは黒やグレイなんですけど、観終わったあとには薄いピンクかオレンジのような気持ちの色で帰って頂きたいと思っています。最初の暗い色のイメージのままで帰ってもらうことはないように、と。

―手応えもかなりありますか?

はい!(笑)。稽古場に入ったときの雰囲気などを感じる限り、これは絶対にいいものが出来るな、という確信はあります。「TAIZO企画」とはまた別に、この『ジュリエット』も今後ずっと続けていきたい企画ですね。

―【Zero Project】としての、新しいプロジェクトになっていくと……。

はい。「女性」をテーマにして、男女のピュアな部分であったり、人を愛する気持ちであったり、そういうものにこれからもっと真っ向から取り組もう、と。最近は悲しい事件が増えたり、人と人が向き合う機会が減ったりということが多いと思うんですけど……今回の脚本の中には、人間の誰もが持っている、眠らせているものがいっぱい詰まってると思っています。善悪であったり、孤独であったり、恐怖であったり、喜びであったり……そういったものが全部込められた作品だと思うんです。そういう意味では、これからもっともっとこの企画を暖めて、将来的に十二月のクリスマスの時期になったら、この「愛」をテーマにした『ジュリエット』という公演が毎年できないかな、と。

―時節柄に則した企画にしていきたいと?

そうですね。例えば一ノ瀬泰造さんの企画の場合、十一月が誕生日だったり命日だったりという、その時期にイベントをする意味というものがあると思うんですけど……そういう形でこの『ジュリエット』も、来年再来年とクリスマスの時期にできたらいいなと、今の段階では思っていますね。

―最後になりますが、インタビューを読まれる方にPRをお願いします。

聖夜のクリスマスに、一人の方はお一人で、恋人の方たちはご一緒に、家族のある方は皆さんで来て頂いて……是非ピンクやオレンジの気持ちになってもらいたいです。きっとクリスマスの良い思い出になると思いますので、勇気の一歩を踏み出して、是非池袋までお越し願えたら、と(笑)。

―本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。
「愛、夢、挑戦」という言葉は、一聞すると凡庸なようにも聞こえる。
しかし、これらの思いを一貫して追求してきたからこそ、【Zero Project】という組織の現在があるのも紛れもない事実である。
今回の取材を通して改めて感じたことは、「面白い」ということは当然の前提として、複雑なテーマを掲げて難解な作品を提供することよりも、人間の持つ最も基本的なこれら凡庸なテーマにこだわり提供し続ける姿こそが、結局は演劇というものの最も基本的な姿なのではないかということだった。

伊藤さんがプロデューサーとして模索し、その末に行き着いた「愛、夢、挑戦」という人間の根っことも呼べるテーマ……これらのテーマへ再び行き着き、再び出会ったことこそが、もしかしたら伊藤さんの最大のセレンディピティなのかもしれない。
(文中、一部敬称略)
2004/12/4 文責・インタビュアー:毛戸康弘  撮影・編集:鏡田伸幸

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伊藤綾美インタビュー(1)

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