BACK STAGE REPORT〜劇団 夢桟敷 公演「新・観客席」〜
前回の香川高松に続き、今回は熊本からお送りする。ご紹介するのは、【劇団夢桟敷】。
東京での旗揚げから数えれば20年以上活動を続けてきた劇団、けれども現在の劇団員は中・高生が中心、けれどもアングラ集団、という独特な劇団である。
〜〜・・・第一次の東京時代は「天井桟敷」「状況劇場」「演劇団」「転位21」 さらに「暗黒舞踏」などに圧倒されるばかりでした。 ・・その熱い風を受けて来た私共(山南と夢現)は今、 熱い風を送り出すことが出きるのだろうかと、この熊本でふと思うことがあります。 確かに消耗戦を続けています。 ここまで来たら、子どもたちのために燃焼戦をやり遂げるしかない!劇団夢桟敷の未来は熊本の文化に閉じこもることなく、 この目もあの目もアジアの戦争の暗闇や世界的規模での個人喪失に向けて見せます。・・・〜〜劇団夢桟敷HP「プロフィール」より抜粋
今回のBACK STAGE REPORTでは、この【劇団夢桟敷】主宰/山南純平さん、公演座長/夢現さんのインタビューと次回公演作『新・観客席』の稽古風景をお届けする。
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BACK STAGE REPORT〜劇団夢桟敷公演「新・観客席」 【取材リポート、稽古リポート】〜


「稽古を見ていただく前に、阿蘇山に行きましょう。」
昨日の山南氏のご提案で、10時に水前寺公園で待ち合わせ、雲ひとつ無い晴天の中、熊本城の力強さ、阿蘇山の威容を満喫した。
15時、本日の稽古場に到着。「吉野スタジオ」それはJR武蔵塚駅近くの住宅が立ち並ぶ一画にあった。
スタジオの中は結構広く、30畳ほどはあるだろうか・・・奥の壁は一面鏡張り。聞けば、元はダンス専用スタジオであったらしい。稽古には、夢現氏の他、10名の劇団員の方が参加していた。
しばし稽古場を見渡す。若い・・・兎に角若い。
山南・夢現氏を除けば、皆未成年ではないだろうか。
昨日のインタビューで山南さんが「ウチの稽古を見たら驚きますよ」とおっしゃっていたが、予想以上に若い。中高生中心・・・いや、小学生も参加しているようである。
15:15山南氏の簡単なシーンの説明の後、シーン稽古が始まる。
静かな物悲しい音楽が流され、感傷的なセリフが発せられる。聞き取ろうとするが、別の役者のセリフがそれにかかり、セリフとセリフがループして・・・いつしか叫びにも似た、嗚咽にも似た鳴動、それだけを感じていた。
のっけからアンダーグラウンド、のっけから表象主義。いつの間にかに宇宙の感覚。
次のシーンでは、小中高生中心に行進(?)をしながらセリフを発する稽古であるが、当シーン練習はまだ少ないであろう、役者の皆さんは台本を持ちながらの練習である。
「音がでるものを持ってやってみようか」
山南氏が、指示を出す。
各自お盆や瓶などを持って、再びシーン練習。ガシャン・ギャシャン・ガシャン。ガシャン・ギャシャン・ガシャン。
「うーーん、もうひとひねり」・・・山南氏が呟く・・。
山南氏のシーン創りには、型にはまったモデルは無いのであろう。ありとあらゆる物を利用し、役者のエネルギーを放出してゆく。実験・実験を繰り返し、そのエネルギーがぶつかり合う瞬間に一番輝いたものを拾い集めているのではないだろうか。
シーンを見る山南氏の眼は、何かを待ち構えているようである。

少々の休憩の後、役者の皆さんが鏡の前に集まり歌の練習が始まった。
いや、これは歌の練習ではない。喧嘩である。しかも演歌!演歌で喧嘩だ!
目の前に映る自分自身へ向かって、その向こうにいる誰かに向かって、思いの限り演歌で喧嘩だ!
繰り返し、繰り返して行くうちに、役者の表情は鬼となり、歌は想いとなる。
それを見る山南氏は、ボクシングのセコンドか・・・。
「ほらっ!もっとパンチを入れろ!打て!打て!打て!」
「思いを俺にぶつけて来い!もっとだ!もっと!」
「どうした!かかってこい!」

瞠目すべきは、山南・夢現両氏の子供でもある、悠夢・坂本冬馬・桃色咲希さんである。
パフォーマンス集団「転生組」の三人でもあるが、その表情はすでにアマチュアのそれではなく妖艶な美しささえ感じる。
両親のDNAを受け継いだ彼ら。やがて大人になり創り出す宇宙はどのようなものなのか・・・感じてみたいものである。

16時を回り、任意の観客役の参加者が入場。
当公演「新・観客席」はその名の通り観客席に重点を置いた公演である。
「今まで安全だった観客席が、そういう意味では恐怖の観客席になってしまう。」夢現氏の言葉である。
実際稽古中にも、役者を観客に見立て、その観客(役)に対して言葉を投げかける。
ともすれば暴力沙汰になるかもしれない・・・。
しかし山南氏は言う、「ハプニングを色々考えてます。」と・・・。
一般的な公演であれば、パプニングは無いに越したことは無い、しかしながら山南氏はそんなパプニングを望んでいる。そう心から。

16時45分 山南氏の「切ります」という言葉で本日の稽古が終了した。
アンダーグラウンド・・・やはり全てを体現するにはまだ若すぎるのかもしれないが、そんなことはお構いなしの山南氏。
戦略・戦術に囚われることなく、今此処にあるものに全てを捧げる。だからと言って、小さくまとまることはい。
山南氏は宇宙、夢現氏は其処と此処との仲介役。そんな宇宙で動き回る役者。
そんな感じである。
ふと、阿蘇山で見た風景を思い出す。
パノラマで広がるそこには、天と地が同時にあり、その境界線で振り上げられたこぶし、阿蘇山の、原初的な力強さ。
・・・此処では現実的な話やめよう。
想いは空へと遠く吸い込まれてゆく・・・。

(文中、一部敬称略)

2003/9/28 文責・撮影・編集:鏡田伸幸

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