BACK STAGE REPORT〜劇団 夢桟敷 公演「新・観客席」〜
前回の香川高松に続き、今回は熊本からお送りする。ご紹介するのは、【劇団夢桟敷】。
東京での旗揚げから数えれば20年以上活動を続けてきた劇団、けれども現在の劇団員は中・高生が中心、けれどもアングラ集団、という独特な劇団である。
〜〜・・・第一次の東京時代は「天井桟敷」「状況劇場」「演劇団」「転位21」 さらに「暗黒舞踏」などに圧倒されるばかりでした。 ・・その熱い風を受けて来た私共(山南と夢現)は今、 熱い風を送り出すことが出きるのだろうかと、この熊本でふと思うことがあります。 確かに消耗戦を続けています。 ここまで来たら、子どもたちのために燃焼戦をやり遂げるしかない!劇団夢桟敷の未来は熊本の文化に閉じこもることなく、 この目もあの目もアジアの戦争の暗闇や世界的規模での個人喪失に向けて見せます。・・・〜〜劇団夢桟敷HP「プロフィール」より抜粋
今回のBACK STAGE REPORTでは、この【劇団夢桟敷】主宰/山南純平さん、公演座長/夢現さんのインタビューと次回公演作『新・観客席』の稽古風景をお届けする。
BACK STAGE REPORT〜劇団夢桟敷公演「新・観客席」 【取材リポート、山南純平・夢現インタビュー】〜
→ 【稽古リポート】

劇団夢桟敷 主宰
山南 純平 氏

2003年9月27日夏の暑さが去り、心地よい風の吹く熊本市内。
路面電車で熊本城近くの「交通センター」で、【劇団夢桟敷】山南さん、夢現さんとお会いする。
熊本市国際交流会館の4Fにあるレストランで、お話を伺う。

今、花盛り!

―熊本の演劇事情についてお聞かせください

山南熊本の演劇事情、ですか・・・浄瑠璃や能だとかの伝統芸能や、ひごにわか(熊本弁の漫才)、大衆演劇といったものが九州は結構強いんですよ。江戸時代から続いていて、その文化を継承するという部分があるんです。40代ぐらいの若手が引き継いで、自分の子供たちも巻き込んで活動をやっている、っていう。そのような独特な伝統芸能・大衆演劇の中から、もしかしたらですよ、新しい価値観が生まれてくるエネルギーがあるかもしれませんね。
小劇場については・・・二人は今から十九年前に東京から(熊本に)戻ってきたんですけど、その頃はいわゆる‘小劇場’と呼ばれる活動が熊本には無かったんです。関門海峡を渡って九州に来るっていうのは、文化的には遅れて来るんですよ。そんな中で、うちは小劇場・アンダーグランドだったから、凄く目立った。
・・・それが今、小劇場だらけなんですよ。いわゆる若手の劇団、今三十代、そういう人達がどんどん出てきてて・・・。こうして考えてみると、我々が今までやってきたことが、「今」ですね! 今、花が咲いてるんですよね。花盛り!


―劇団同士の交流と言うものは?

山南他所はやっている。ウチは嫌われているみたいで(笑)、アブナいだとか・・

夢現 「勝手にそう思っているだけですけど(笑)。他の劇団同士だったらお互いに観に行ったりだとか、そういう交流はあるんですけど、うちは独特なものがあるからなんでしょうかね・・・確かに、他の劇団の方が積極的に観に来るだとかは無いんですよね。むしろ興味を持ってくれるのは美術の方だとか違う業界の方、そういう人がかなり関心を持って観に来てくれています。
・・・こっちに戻ってきた時には老舗の新劇しかなかったんですよ。そういう人たちがコツコツと自分達の公演を、単発的にやっていた。だから‘演劇界’という形での動きは停滞してる状態だったですね。じゃあ、私達が帰ってきたことによって、活性化させよう。そう思って演劇フェスティバルを企画して、皆さんと一緒に何回かやったことはあるんですけど・・・


山南 やったけども、劇団同士が団結できなくってね。形式的になっちゃって・・・市から補助金を貰っている、お金があるからやろう、って。そういう所に、こっちとしては不満が出てきたんです。演劇はお金があるからやるんじゃなくて、気持ちの先行でやっていかないとエネルギーが沸いてこないんですよね。・・・それに、最終的に行政の方に泣きついて、結局は全体的に媚を売るような形になってしまって

小さいところで宇宙の感覚

―東京との違いと言うのは?

山南 東京、と言っても、20年前の話ですからね・・・

夢現 東京は人口が多いから、お客さんも多い。その点の違いだけじゃないでしょうか

山南 ウチの劇団員にはね、東京に憧れを持っている者もいるでしょうね。でも、山南と座長は憧れが無いんですよ。6年間経験しているし・・・憧れがあってもそれは、東京がどうのって言うより、寺山修司とか唐十郎とかへのものでしたから

―熊本の演劇をどうして行きたいですか?

山南 「こっちはもう、地域密着演劇じゃないから − やってる本人は地域密着ですけど − 無国籍と言うか、地球レベルでやりたいな、と。・・わけのわからん世界に迷い込んで、そういう世界の人たちと交流しながら、なんかコミュニケーションはかっていきたいなぁ、と。そういう、レベル・スケールが違うものを小さい小屋でやる。小さい所で宇宙の感覚、ですね。
それと、こっちは大衆演劇も盛んなんですけど、それが寺山の言っていた「見世物小屋」に通ずるものがあると思うんですよ、その‘匂い’とでも言うものが。我々は大衆演劇は出来ないんですけど、その意志は受け継ぎたいね。日本独特なものを持っているんで、歌舞伎とか能とかいうものの魂は、形は違っても受け継ぎたいですね

寺山修司・唐十郎・流山寺祥・山崎哲

―【劇団夢桟敷】についてお聞かせください

夢現 ウチの劇団は10代と私達40代・50代なんですけど、間の20代・30代がいないんですよね

山南 凄い劇団ですよね(笑)

夢現 あいだが抜けてしまっているんです。でも20代・30代の役者じゃないと無い表現力っていうのがあるんですよね。それが欲しいんですけど、十代の子達には求められない。そこがちょっと、芝居作りには厳しいかな、と・・・。子供劇団というイメージが強すぎて、自分達の年齢では入れないと思われるのか・・・

山南 あるいは俺が気持ち悪いからなのか(笑)。・・・結構世間では評判悪いんです

夢現 熊本の人じゃないんですよ。山口県の下関で、気質が違うんですね。けっこう押しが強い人っていうのは熊本では嫌われる

山南 こっちじゃ黙っとけばいいんですよ、男は。でも俺はベラベラと良く喋りますから(笑)

―舞踏や寺山の影響が強く感じられますが

山南 東京に出る前に唐十郎の赤テントが地元にやって来て・・・公演終了後、一緒に飲み始めた席で「こんな下手な演劇見たこと無い」って言ったんですよ。そうしたら「そんなんなら勝負しようか、東京出て来い!」って。そして東京に出て、天井桟敷に出逢ったんですよ。そしたらひっくり返ってね。
いわゆる憧れ・・・寺山修司・唐十郎・流山寺祥・山崎哲だとか、本当に東京でアンダーグラウンドを引っ張っていた人たちに吸い込まれてしまって

大切なのは想像力

―旗揚げ以来、犯罪者心理などを題材にして、「人間の狂気」をテーマに活動していると伺ってますが

山南 例えば犯罪を見るとその中に狂気があるわけですよね。それを演劇で拾って表現してきました

夢現 その犯罪そのものをドキュメントタッチでやるわけではなく、その中でどんどん想像力を膨らませて、全く違う話に持っていくわけですけど、その狂気がどういう人間を作り出していくのか・・・その人間が何かを夢見る事があるのなら、それを作ってみたりだとか。そういう形で芝居作りをしてきました

山南 現実にあったことをネタに現実で終わらせるんじゃなくて、夢の中にポーンと放り投げていくんです。<夢と狂気>というものは、魂と言うか、心の問題。それをいかに表現するか。それが演劇の本質みたいなものを見ることなんですよね。寺山やJ・A・シーザーが『大事なのは想像力なんだ』と言っていますけど、やっぱり想像力っていうのは人間にとって凄く大事なんです。これがなくなると演劇はまず必要ない。<夢と狂気>を表現、それもいろんな角度から表現していきたい。・・・怖いもの見たさって言うか、子供がいつまでたってもオカルトが好きだったり、そういうのと一緒ですよね。狂気の人って怖いですよね。この人(夢現さん)がもしも狂ったら、それだけで怖いでしょう? でも、怖いけれども見てみたい、っていう。・・・狂気という想像力が無いと演劇はやっていけないな、という思いがあるんですよね

―お客さんの反応は?

山南 お客さんは不安なんですよね、『一体何が言いたかったのか?』って。こっちのたくらみは『夢で会いましょう』、つまり自分の中で創って下さい、なんですけどね。でも、言ってしまったらおしまいだからね

夢現 でもお客さんって、特にこっちに帰って来てから思ったんですけど、答えを求めるんですよね。『今の演劇は何が言いたかったんですか?』『メッセージはなんですか?』って。解り易い演劇に慣れていますから、私達のような解り難いものに対して拒否反応を起こしてしまうと言うか・・・

山南 決して哲学はやってないんですよ。難しい言葉も使っていない。それでも難しく見えてしまうというのは、あんまり経験が無いからでしょう

夢現 一生懸命、ストーリーを追おうとするので、お客さんが疲れてしまうんですね。大衆演劇なんかは本当に解り易く芝居を作りますけど、うちはそういう形ではないんで・・・。でも、訳の分からない芝居でも、視点を変えて見てくれたら、と思うんですけど・・・

山南 それは言っちゃ駄目。・・・そういう風に洗脳していくんですよ(笑)。ウチを何回も観たら中毒になる

―以前、取材で某劇団の方が「観客の思いの上を越えろ!」と言っていたのを思い出します

山南 分かる。そういうの

夢現 そういうことだと思うんです。お客さんが『そうだ。そうなんだ』って、本当にこちらとその場でそのまんまのキャッチボールが出来てしまったら、その場限りで終わってしまう。『そうだったのね』って言って劇場出て、後はもう違う事を考えながら帰って行く。でも、お客さんの思いを越えた芝居をこちらがやれたなら、お客さんには劇場を出た後にも『今の芝居は何だったんだろう』って考えながら帰って貰える。・・・と言って、あんまり頭で考えて貰うだけでもいけませんけどね

山南 それが文学と演劇の違いなんでしょうね、文学はもう一回読み直せますけど、生の舞台だと読み返せないんですよ。『あっ、そういえばあんなこと言ってたな』って、すぐに記憶になってしまいますからね。そうすると自分に置き換えて作っていくんですよね。それぞれのお客さんが、違ったドラマを創っていく

夢現 だから、こっちが意図したこととは全く違う想いでお客さんが受け止めてくれて、別のドラマを創ってくれてもいいんですよね

山南 逆にありがたいことですよね

劇団夢桟敷 座長
夢現 氏

早く早く早く大人になって!

―劇団員はご自身のお子さんを含め、中学・高校生が中心ですが

夢現 (山南氏は)作品を創っていく上で、想像をどんどん膨らませていくので、劇団員も訳が分からなくなるんですよ。台本読んでも分からないんですよね、書いてある事が。あっち行ったり、こっち行ったりで、まとめようとしないで書いてますから。想像が膨らみっぱなしと言うか、それをまとめて最後に持っていこうという感覚も無いので、役者としては非常に困るわけですよね

山南 慣れたらこれほど面白い世界は無いですよ

夢現 慣れたらやみつきになる。私は二十何年間付き合ってますからそういうのは慣れているんですけど、今、特に若いですからね、劇団員が。自分でまだ考えることが出来ない年代ですから、あるヒントを与えながら表現力を掻き立てていかないと。だから『これは、こういう意味よ。言葉を変えればこういうことよ』って、フォローしながら続けている状態です。どうしても、演劇の『え』の字も知らないで入ってくる子が多いですから、声の出し方から動きから・・・『早く早く早く大人になって!!』って感じですね。でも、何て言うか・・・素直なんで、こちらが言った事に対して、反応も素直に来る。変に考え込まない。それだけに、こちらが包み込む感じでやらないと、育っていかないですね

―以前、【万有引力】のJ・A・シーザー氏にインタビューをした時に、「今はもう、僕らは小学生に向けて僕らの演劇や寺山さんの作品を見せることで、そこから彼らの想像力を作ってしまおう、という考え方が強くなってきています」とおっしゃってましたが

山南 その通りですよ、うちがやっているのは。ウチはそういうことやってるもんね、今

夢現 偶然ですけど、同じことやってるんだな。若ければ若いほど、その寺山の精神って言うか、その世界みたいなものが、すーって入っていくんじゃないかな。まだまだ世間の枠っていうものに囚われない、子供たちのやわらかい頭の方が、すんなりその世界に溶け込めるのかな

何が起こるか・・・

―今回『観客席』を扱うきっかけは何ですか?

山南 きっかけはやっぱり寺山修司が亡くなって二十年ということですね。

―今までは寺山作品は扱ってこなかったそうですね

山南 台本としてはですね。

夢現 二十周年ということで、それこそ、インターネットとかで開くと、あちこちの劇団がやっている。天井桟敷の蒔いた種がこんなふうに飛び火して、それを育てようとしている劇団があるんだなと実感したわけですよね。で、それを熊本でやれるとしたらたぶん【夢桟敷】だけだろう、と。もう一度やっぱりね、自分達の劇団を見直すっていうか・・・

―原点に戻る

夢現 そうですね。・・・改めて寺山修司は凄いなと思いますよね。三十年前に書かれた台本が今でも十分に通用する

―見所についてお聞かせください

山南 そうですね。ハプニングを観て貰いたいですね

夢現 やっぱりね、お客さんにドキドキしてもらいたい。今回の芝居を観に来た人は、、いつ自分が主役になるのか、いつ自分が脇役にされるのかって、じっと座ってられないんじゃないかな。今まで安全だった観客席が、そういう意味では恐怖の観客席になってしまう。決して安全ではいられない。そういう演劇的楽しさを味わって貰いたいですね

―最後に、今公演への抱負を

山南 これがきっかけで、熊本の演劇シーンが変わってくれればいいな、と思います。今回、任意のお客さんが参加するんですけど、今回のことがきっかけで何かが変わってくれればと思いますね。何かに繋げて貰いたいな、と

―有難う御座いました。


約一時間半のインタビューの後、「ラーメンでも食べに行きましょう」という山南さんのご提案で、熊本市街地へ繰り出す。
深い味わいながらもさっぱりとしている熊本ラーメンを熊本焼酎でやりながら、お二人に東京時代のお話などを伺った。
本当に良くしゃべる山南さん、それを纏めるように話す夢現さん・・・面白い。ひごにわかってこんな感じか・・・。
聞けば、お二人は夫婦だと言う。納得、納得。
明日の稽古場が楽しみである。

(文中、一部敬称略)

2003/9/27 文責・インタビュアー・撮影・編集:鏡田伸幸

BACK STAGE REPORT〜劇団夢桟敷公演「新・観客席」 【取材リポート、山南純平・夢現インタビュー】〜
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