BACK STAGE REPORT〜劇団東京ヴォードヴィルショー 京極圭プロデュース『ハイポキ』【稽古REPORT】〜
「地に足が着いている」と京極氏が惚れ込んだ蓬莱氏を迎えた今作。それは【劇団東京ヴォードヴィルショー】と【モダンスイマーズ】のコラボレーションと捉らえることもできる。一見すると、毛色の異なるこの二つの劇団は、いったいどのようにして一つの作品を作り上げようとしているのだろうか。
二年越しのプロジェクトに賭ける京極氏の意気込みと狙い、そして蓬莱演出の一端を垣間見ることができる、京極圭プロデュース公演『ハイポキ』の稽古場レポートをお届けする。
高田馬場の閑静な住宅街にある星あかりビル。この【劇団東京ヴォードヴィルショー】の事務所の2階にある40畳ほどの稽古場で『ハイポキ』の稽古は行われている。
作・演出の蓬莱氏が来る前にすでに出演者たちによる稽古が始まっていた。アップをしながら、座って台本を読みながら、動きを付けながらと思いおもいの格好で全員でセリフの稽古をしている。1シーン終了すると、年長者の櫻庭博道さんが自然と今のシーンのダメだしをする。

「確認してから、行きましょう」そして、今公演をプロデュースする京極さんが、指示を出す。
今作は無人島を舞台にした、大学の水泳部の話。どこにでもいそうな水泳部員を【劇団東京ヴォードヴィルショー】と【モダンスイマーズ】の劇団員を中心に12人の役者たちが演じている。
セリフのみで稽古をしていたシーンが今度は動きを付けて再び始まった。
このシーンでは、ロープを向こう側へ泳いで渡しに行く人間を決めようとするのだが、なかなか意見がまとまらず、そのやりとりだけで、12人の人間関係や人物造形がうまく表現されている。
   
途中で蓬莱さんが稽古場に入ってくる。ポロシャツにジーンズというラフな格好で、演出席から静かに稽古を見つめる。
海を表現するための波パネル。
舞台監督の古屋治男さんがその試作品を持ってくると「実験してみましょう」と蓬莱氏。
舞台の見取り図を見ながら、パネルをどういう風に置くか相談が始まった。
「これは後ろで、この前にもう一枚布を持ってこようと思う」
「この布の間に入って、泳ぐ演技をするんだけど……邪魔かな?」
古屋さんも積極的に意見を出してチームワークの良さを感じる。
   
その後、稽古を再開。
赤木(桜庭博道)をモデルにした新入生勧誘用のビデオを撮影しようとするシーン。
「最初の三沢(上滝明美)良くないな。赤木に良いボールを投げてない。やっぱり芝居をどうやってやろうか計算しすぎだと思う」
「赤木をどういう状態にすれば良くなるか、という逆算のボールが欲しい。もう少し広い視野で見ないと。それがあれば自分の演技も楽になると思う」
「最初のくだり、セリフを無頓着に言っている。『お疲れ様』というセリフを反射的に言い過ぎ」

厳しく感情的にダメ出しをするというわけではなく、冗談を交えながら、ゆっくりと丁寧に自分のペースで演出をつけていく蓬莱氏。ダメ出しは細かい感情の表現の仕方に対するものが多い。その時、その人物はどういう感情なのか。そして、それをどう表現するのか。
「モダンスイマーズで演出を付ける時より、言葉を選んで丁寧に説明しているようですね」
モダンスイマーズ座長の西條義将氏は蓬莱氏の演出をそう評価する。
「蓬莱の台本は一見すると、すごく簡単にできてしまうように読める。ヘタをしたらギャグになってしまうくらい、という意味で。でも、本当に大事にしているのは心です。それが初めて台本を読んだ人には分からない。だから、そういう説明を丁寧にしていますね」

確かに、蓬莱氏のダメ出しの中には「計算をしないで」という言葉が何度か出てきた。役者が笑いを計算して演技をした時、それをことごとく潰していく。
「笑いが嫌いというわけではないんです。もちろん台本にも笑いは入っていますよ。でも、笑いを狙って、計算して作ってしまったら、その笑いが滑った時、その部分の芝居に意味が無くなってしまうわけでしょう? そういう、シビアなことを考えている奴なんですよ。
だから計算するよりも『自然なままを出して、それが可笑しかったら笑ってもらえばいい』という考え方なんですね。……それはつまり「役者の所為にはしない」ということでもあると思います」(西條氏)
   
蓬莱氏の演出は続く。
「座椅子の話をする時、本当に座椅子が欲しかったんだという勢いが欲しい」
「『プールじゃ負けたことないよ』と言うシーンで三沢に詰め寄っているが、何で三沢なのかという根拠がないから、成立していない。面白いけど、惰性になっている」
計算したテクニックだけの演技ではなく、あくまでその人物の感情の動きやライブ感に注目する蓬莱氏。
ふと、出番のない役者の方を観ると、柔軟や背筋などの運動をしている。出番のない時まで筋トレをしているのかと思っていたら、どうやら「水泳部の合宿」という設定通りに、実際に水泳部としての運動をしているようだ。それは、役と近い状況に自分を置くことで、計算では出てこないライブ感を表現するためにしているのだろう。蓬莱演出をいつも受けている【モダンスイマーズ】の役者たちは慣れているようだが、軽演劇を追及している【劇団東京ヴォードヴィルショー】の役者たちには馴染みがないかもしれない。今まで「わかりやすい喜劇」にこだわり続けてきた【劇団東京ヴォードヴィルショー】とは異なる演劇の方法論を吸収すること。若手公演をプロデュースするに当たって、蓬莱氏に作・演出を依頼した京極氏の狙いはこんなところにもあるのかもしれない。
   
稽古場の大きな画像をご覧になりたい方は、【稽古REPORT(2)】へ
2005/4/30 文責:浅井貴仁 撮影・編集:鏡田伸幸 監修:毛戸康弘

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