BACK STAGE REPORT〜劇団東京ヴォードヴィルショー 京極圭プロデュース『ハイポキ』【京極圭インタビュー(2)】〜
今回プロデュース公演の始まりとなった蓬莱竜太氏との出会い。インタビュー後半ではその蓬莱氏の話から、今作『ハイポキ』にかける想いまでを、熱く語ってもらった。多くの期待を正面から受け止めて、この舞台が目指すものとは?

京極圭インタビュー(1)
蓬莱作品の魅力
―作/演出の蓬莱竜太さん。今、とても注目されている若手劇作家・演出家ですが、どのように知り合ったのですか?

一番最初の出会いは、僕が出た芝居の舞台監督を蓬莱さんがやられてた時。でもその時はほとんどお話しもできずに終わってしまったんです。その後に、今度は蓬莱さんが役者として出た舞台に僕もたまたま出演して、つまり役者同士として共演したんですね。その時に初めていろいろお話しました。【モダンスイマーズ】の公演はそれ以前に観ていて「面白い!」って思ってましたから、もう、芝居が終わったらすぐに電話して、「ちょっとお話が…」みたいな(笑)。その時には既に「プロデュース公演をやるなら蓬莱さんしかいない!」って勝手に思い込んでましたから、一か八か「お願いします!」って。そうしたらすぐに「やります」って言ってくれた。それからですよ、何をどう準備すればいいのかを考えたのは(笑)

―蓬莱さんの作品に惹かれた一番の理由は?

蓬莱さんの作品は「地に足がついている」っていう感じがするんですね。蓬莱さんは歳も僕より若いし、いわゆる‘若手’という部類に入ると思うんですけど、書いている作品は……ある意味で地味というか。面白おかしい要素も織り交ぜつつ、でも軽いだけでは終わらない、というか。そういうところはとにかく「凄いな」って思うんです。もちろん笑いもふんだんにあるんですよ。でも一方で、決して「笑い」に飛びつくことはせず、そこをシビアに我慢している。それはなかなかできないことなんじゃないかと思いますね

―演出を受けてみた感想は?

今回、蓬莱さんとは初めての人がたくさんいるので、最初の頃はその役者自身の‘在り方’みたいなものを凄く見ている感じでしたね。最近はその部分を踏まえて細かいところまで言ってくれるようになって。蓬莱さんの作品は人間関係を丁寧に探っていくものですけど、それは稽古場で役者に対しても同じで、そこで掴んだものを多分蓬莱さんはまた台本に取り込んで演出していくんだろうと思うんですよ。だから、稽古はどんどん面白くなってきてますね
「それなり」の作品では終わらせない
―今回幾つも用意された出会い。こうした出会いにプロデューサーとして期待するものは?

やるからには一期一会、このメンバーでしかできない芝居、このメンバーを蓬莱さんが演出することでしか実現しない芝居を作る…それだけだと思うんです。
…だから、それはひょっとしたら【東京ヴォードヴィルショー】の芝居じゃなくなる可能性もあるんですけど、そのときは「ごめんなさい!」って(笑)。でも、絶対面白いものにはなると思いますし、ある意味、【東京ヴォードヴィルショー】の若手公演っぽい公演にだけはしたくないんです。そこを目標にしてしまうとつまらないでしょう。
劇団に喧嘩を売る、とまでは言いません(笑)。先にも言ったように、劇団の作品は好きだし、三谷幸喜さんの作品とかにも出たいっていう想いはありますから。でも一方で、僕らの世代で面白い芝居を作って劇団にぶつけていきたい、っていう想いもあるんですね。それをやらずに、「それなり」の作品で終わらせていたら、(佐藤)B作さんだってたぶん面白くないと思う。それはよく言われますからね。「ヘタでもいいからやりたいもの、『俺はこれしかできないんだ』っていうのをとにかくやって、ダメだったらやめりゃいいんだ」って。その意味では今回、間違いなく面白いと思えるものを「これしかいない」というメンバーで作っていますから。
…僕はB作さんの付き人のようなこともさせて頂いた時期があるので、その時にいろんな事を教えてもらいました。B作さんは役者としてももちろん素敵な方ですけど、それと同時に、プロデューサーとして、劇団の座長として、劇団をどう盛り立てていくか、そのエネルギーがものすごいんです。そこに一歩でも近付きたい……そういう想いも今回、僕がプロデュース公演をやる上でありまして……って、全然レベルが違いますけどね(笑)。
でも、ひとつ面白いものをあの人に見てもらいたい。それがエネルギーになっているのは事実ですね


―では、老舗劇団の看板を背負っているというプレッシャーはない?

そうですね。…と言っても、看板を背負っているのは事実だし、その看板に対するお客様の期待には応えなければいけないと思ってます。でも、その期待を越える何かを創るつもりじゃないと、新しいものは生まれないですから
東京ヴォードヴィルショーの役者は四苦八苦!?
―今回の『ハイポキ』。どんなお芝居になるのでしょう?

『ハイポキ』はですね、ある意味でかなりシンプルな芝居です。舞台もほとんど役者しか見るものが無い、登場人物の人間関係しか見るものがないという……そこの部分、サスペンスであったりとか、不安だとか、そういうものをどれだけお客様に見せられるかという。だからこそ役者としては相当気合を入れないといけないし、その分楽しいですね。やりがいがありますよ

―ちなみに、この作品は【モダンスイマーズ】が2002年に北海道で上演した作品『ハイポキシック・春』をリライトしたものだそうですね

ええ。これは蓬莱さん自身も言っていたことですけど、蓬莱さんの作風も昔と今とでは変わってきている。今回、再び『ハイポキシック・春』という題材を扱うわけですが、これは蓬莱さんが昔に書いた芝居ということもあって、多少‘跳ねてる’というか、蓬莱さんの作品の中ではエネルギッシュな部類に入るんですね。その作品を今、敢えてやるというのは蓬莱さんにとっても挑戦だし、自分を見つめ直すことにもなる。そういう意味も蓬莱さんの中にはあるようです。
ともかく、今回僕がキャスティングしたメンバーに一番合っているということでこの作品を提出して頂きました。もちろん設定は以前のものと一緒なんですけど、また違ったチャレンジを蓬莱さんもしてくるでしょう


―「ここが蓬莱戯曲だ!」と感じる部分は?

とある島に合宿に来た大学の水泳部員たちの話なんですけど、よくある“青春群像”みたいな感じではやりたくないって蓬莱さんは言ってるんです。無理にいい話にするんじゃなくて、ギスギスしたままで終わってもいい、日常なんてそんなもんなんじゃないかって。2時間の芝居の中で終わらせないというか、その切り取り方はさすがだな、と思いますね

―一方で、【東京ヴォードヴィルショー】の公演に抱く観客の期待、それにも応えなければならないわけですが、「ここが【東京ヴォードヴィルショー】だ!」という部分は?

それはですね、多分自然に出るんじゃないかと(笑)。特に【東京ヴォードヴィルショー】の役者陣は僕も含めて、どうしても芝居が‘笑い寄り’になってしまいがちなんです。これはダメ出しでも指摘されるんですけど。蓬莱さんには「真剣にその時の状況に在れば在るほど面白いのであって、そこで何かやらかすとかそういうことはまったく要らない」って言われてます。だから【東京ヴォードヴィルショー】のメンバーは四苦八苦している(笑)。
でも、そうした葛藤が面白いんですよ
やりやすい環境だからこそ、逃げ場無し
―その他にプロデューサーとして「ここを見て欲しい」と思うところは?

蓬莱さんの作品だから観に来て下さる、そういうお客様も大歓迎ですし、その人たちにも満足して頂きたい。でも、やっぱり今回の公演は「京極圭プロデュース」ですから、僕のプロデュースだからこうなった、という部分を出したいんです。もちろん今作は蓬莱さんの作品なんだけど、それに負けないくらい「僕の作品」という想いがあるので、そういう想いを蓬莱さんと僕、お互いにいい形で出せればと思っています。そこを見て頂きたいですね

―稽古場ではプロデューサーとしての意識ってあります?

完全に一役者として楽しんでますね。本当はもっと進行のこととか考えないといけないんでしょうけど(笑)

―【東京ヴォードヴィルショー】の先輩、櫻庭博道さんや同期の方たちも出演します。そういう部分では初プロデュースとはいえやりやすい環境?

そうですね。やりやすい環境なんですよね……だからこそ、逃げ場は無いというか(笑)。もちろん逃げるつもりはないですけど、これだけ整ったらもう、面白いもの作らないとしょうがない

―最後に、今回公演を楽しみにしている方々に向けて一言お願いします

劇場に足を運んで頂けるって、すごいことだと思うんですね。その日・その時間という限られた貴重な時間を、僕たちと一緒に過ごして頂ける。そのことに対しての責任は必ず取ります。だからどうぞ、是非とも楽しみにお越し下さいませ
言葉のはしばしからもれる、今回公演への自信。
やりたいことをやれている、という充実感。
老舗が培った蓄積と新しい才能との出会いが生み出す、新しい何か――
劇団東京ヴォードヴィルショー 京極圭プロデュース 
『ハイポキ』
多くの期待に応えるべく着々と練り上げられていくこの舞台には、いろいろな楽しみが待っていてくれそうだ。
(文中、一部敬称略)
2005/4/30 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

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