元劇団四季のメンバーを中心に2000年に旗揚げし、既存の大規模一般向けミュージカルとは異なった、日本発の新しく刺激的なミュージカルを小劇場で上演し続けている【劇団天才ホテル】。一年ぶりの新作『BAROCCO〜残された者〜』では、東電OL殺人事件に想を得たストーリーにコンテンポラリー・ダンス、打ち込みによるクラシックとノイズ音楽の融合など、既存のミュージカルのイメージを破壊し、変えてしまうような様々な試みが大胆になされている。

今回のBACK STAGE REPORTでは、BACK STAGE読者にはあまり馴染みがないかもしれないミュージカルの作り方・芝居との違い・そして新作について、主宰の神谷憲司氏、作・演出の藤澤智恵子氏、音楽監督補の彩花氏の三名にお話を伺った。


BACK STAGE REPORT〜劇団 天才ホテル『BAROCCO〜残されたもの〜』〜 【ンタビュー2】〜
ンタビュー1】 【ンタビュー3】【古REPORT
澤智恵子(佐藤智恵) 氏(劇団天才ホテル 作・演出)
埼玉県出身。演出家/作家/ダンサー。
天才ホテル以外で関わった主な作品:劇団四季『ジーザス・クライスト・スーパースター』(出演)『美女と野獣』(出演)他。大原高等学院 芸能・演劇コース演劇講師・演出。一橋高校・演劇講師
←【ンタビュー1
み合わせのための事前稽古が必要
―今作を例に、【劇団天才ホテル】のミュージカルを作る流れを教えてください

藤澤:台本は公演の一年前から書き始めます。10稿目ぐらいまで書いて、完成稿に近いものができたところで音楽、今回は夢乃あつしさん・彩花さんのユニットに作曲を依頼したのが、ちょうど半年前ですね

彩花:半年前だと、駆け足で作る感じですね(笑)

藤澤:でも、今回の楽曲は本当にすばらしいですよ


―その楽曲ですが、第一幕だけで16曲もあると聞きました

彩花:ええ。迫力のある曲が多くて、曲だけでも楽しめます。曲が言葉を伝えられるように心がけて夢乃が作曲しました

―その音楽ができてから、いよいよ稽古に入る?

藤澤:はい。脚本・音楽ありきで入らないと、どうしても見えてこないですから

―そういうところは、普通のお芝居とは違いますね

藤澤:そうですね。生音なら平行していくことも可能だと思うんですけど、打ち込みなので……どうしても日本では予算が出ないですから(笑)。
それで、本番の三ヶ月前から役者の読み合わせに入るんですが、その前に、読み合わせのための事前稽古として、曲ができたら順々に歌唱稽古をしてもらっています。いきなり歌は歌えないですからね。それができてから読み合わせに入ります。一週間ほどテーブル稽古をして、全体の流れを組んでもらって、スタッフさん・作曲家さんに入ってもらって、普通の芝居で言う、いわゆる立ち稽古に入ります

―そこからはもう歌のパート、芝居のパート、と分解せずにシーンを丸ごと作っていく形になるのですか?

藤澤:ええ。ただ、今回は特に、コミュニケーション不全に陥っている状態を描いているので、普通の会話があまりなく独白が多いんですね。そういう意味ではセリフの抜き稽古はしていますけど、それ以外は基本的に全体でやっています。ほぼ毎日稽古をやって、本番を向かえるという形ですね。打ち合わせも毎日して

神谷:稽古時間は限られた時間しかないので、その中でいかに集中して進めていくか、というのがあります。大きい劇団なら朝から稽古場を一日借りてできるんでしょうけど……(笑)

藤澤・彩花:お金があれば……(笑)。
性自身がいかに枠から抜けられるか
―今作に参加するみなさんはそれぞれ専門の分野でお仕事を持っていらっしゃいますよね。歌唱の講師をなさったり

彩花:宣伝してよろしいでしょうか……?(笑)あ、やっぱり自分で言うのもなんですから(藤澤さん)言ってください

藤澤:はい(笑)。作曲の夢乃さんなんですけど、「彩風(あやかじ)」というユニットを組んでいまして、最近ですとTBSのドラマ『離婚予定日』の主題歌として、さだまさしさんのカバーをしていたり、旅番組の曲を作ったりしています


―彩花さんも「彩風」の活動に参加していますよね

彩花:はい。作詞を担当しています

藤澤:今回はお二人に完全にユニットとして参加してもらいました。作曲は夢乃さんになっていますが、最終的にはお二人とも作曲をしてくださることになりまして、特にノイズの方向性が強いものやバックにテクノのメロディーラインが入ってくるものは彩花さんで、クラシック的なものは夢乃さんが作曲される、という形ですね


―基本的には「こういう感じで」と藤澤さんからリクエストを受けて曲を作っていくのですか?

彩花:そうですね。アドバイスをいただいて。それと、脚本を読んだ印象がとても曲に活きたなと思いますね。女の人の悲しい気持ちやうれしい気持ちを歌で表現するということに徹して作ったので、聴いてくださって、伝われば良いなと思います

―その印象ですが、彩花さんは脚本を読んでどのように感じましたか?

彩花:私たち女性にとっては、社会が戦後新しくなって、外国のまねをして「男女は平等だよ」という社会に変えて、名目上はそのようになっていますが、本当にそうなのかなと思うところがあります。仕事もしにくい。家庭でも生きにくい。このままだと優秀な女性は海外に出て行ってしまう……そうした例は実際に私の周りでも多いんですけど。もちろん男性も大変な状況だとは思いますが、ギャップといいますか、実際には戦前から変わらず引きずっているものがあって、このミュージカルを観るときっとひびくものがある、そう思いました。家庭でも、仕事でももがいている主人公の「さやか」を通して、色んなことを一人ひとりが考えるきっかけになるんじゃないかな、と思います。…藤澤さん、どうでしょう(笑)?

藤澤:すみません、付け足しても良いですか(笑)?
一番描きたいところは、女性が女性自身で作ってしまった枠から逃れられないというところなんです。もちろん、男性は男性で「家庭を築かなきゃいけない」とかの枠があります。女性は、たとえば学校の中でのアイデンティティー、先生に認められなくちゃいけないとか、勉強をがんばらなくてはいけないという男性も持っているもののほかに「男性に認められるかどうか」という目線が強くなるっていうのがあって、男性よりももう一個抱えなくちゃいけない枠があると思うんです。でも、その枠から抜け出すのは、結局女性自身で、その部分が一番のテーマなのかなと思います。彩花さんが言ってくれたように女性が社会で苦しんでいる、というのももちろんのことですけど

彩花:そこから抜けられないんだよね

藤澤:抜けられないんですよね。それに気付けないで、幼い頃からの環境を引きずっているのが主人公のさやかさんで、それを大きく変えようとして破壊しようとした。今までの環境、たとえば足を組まないとか、行儀よくしなきゃいけないとかの当たり前のもの、それを破壊することが売春行為に繋がっていくんですけど、その破壊から変身願望と言うか、自分が変身して、違うものになって、違う道徳・倫理観を再構築するっていうことをこの家族3人ができるか、女性自身がいかに抜け出られるかっていうことが今回のテーマなんですよ
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(文中、一部敬称略)
2004/8/16 文責・インタビュアー:浅井貴仁 撮影・編集:鏡田伸幸 

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