BACK STAGE REPORT〜【面接の人達】【稽古REPORT】〜
インタビューを終えて、岡本さんと稽古場へ。「今回は役者がいいですよ〜!」と嬉しそうに岡本さん。今作の出演者は、映像出演の大木凡人さんを含めて総勢18名。その大木凡人さんを除くほとんどが今日の稽古には参加しているそうだ。
実践と実益を備えた演劇……そう聞くと、その「実」の重なる部分が醸し出す軽い違和感に、「稽古場にも異質の空気が流れているのでは?」などと妙な期待と不安を抱いてしまうが……果たして、実際の稽古場の様子とは?

稽古場は小金井市某所のビルの地下。多目的のそのスーペースはなかなかの広さを持っていたが、この役者の人数にスタッフを加えると、少し手狭な感も否めない。
長机で囲われた舞台中央に椅子が数脚並んでいる。舞台装置らしい。その周囲で役者たちが思い思いに段取りの確認などをしていた。
演出席には、今作の演出を受け持つブラジリィー・アン・山田さん。なんとも“まろやか”な雰囲気を持った方だ。その後ろではデジタルハリウッド大学院大学側のスタッフ3名が忙しく制作面でのやり取りを交わしている。
演出席の横にプロデューサーの岡本さんが座ったところで、稽古開始の声が上がった。
「シーン1からお願いします」
ブラジリィー・アン・山田さん(以下、山田さん)の声に、ほとんどの役者たちが部屋の中央に集まる。舞台となる就職塾での、芝居冒頭の一コマ。
塾長の訓示を受ける塾生たち。これから就職活動に身を投じる来春新卒者たちの、「不安はあるけど、どこか楽天的」な顔、顔、顔。そんな中に混じって冴えない表情を見せるのは、どうやら再就職組らしい。彼ら塾生たちの、どこかズレた会話。そこに塾長の‘熱さ’が加わって、セリフの掛け合いは自然、テンポを加速させていく。
現段階ではまだ作りに荒さも感じるものの、正論とボケが入り混じって切実さが横滑りしていく様子には、思わず笑ってしま…
「ふひゃははははは!!」
ギョっとして見れば、すぐ横で岡本さんが爆笑していた…。
……「楽しくてしょうがない」という言葉は本当のようだ。
このシーンを通したところで、山田さんがダメ出しを始める。
役者一人一人に、演技で気になった部分を伝えていく。その作業は一言でいうと「サルベージ」だ。このシーンは笑いを散りばめているだけに、テンポが大事となる。だが、その“テンポの流れ”にともすれば埋没してしまいがちな“感情の流れ”。それを山田さんは丁寧に掘り起こしていく。ちなみに、言葉遣いも丁寧。最初の印象通り、やっぱり“まろやか”な人だ。
ダメ出しを受けた役者さん達の反応で一番多いのは「あ、そうか!」。
ダメの通りが良い。
「役者がいい」と言った岡本さんの言葉を裏切らない、その消化の速さは頼もしい限りだ。
続いて、職業安定所のシーン。
このシーン、まだ作りが浅いようで、通しをする前に役者たちがそれぞれの意見を出し合って、細部の作り込みをしている。その様子を口を出さずに、というかむしろ面白そうに傍観している山田さん。
さて、役者間の確認も済み、いざ、通しへ。役者同士での作りの段階では口を出さなかった山田さんだが、通しとなると一転、どんどんダメを出す。つまり、さっきは敢えて口を挿まなかったわけだ。
山田さん、少なくともこの現場では「まな板に上がったら料理しますよ」というスタンスらしい。好きにやらせておいて叩く、というあたり、実は“まろやかだけど結構辛い”人なのかもしれない…。
この、役者が作った‘型’に、山田さんが‘気持ち’と‘リズム’を吹き込んだところで、このシーン終了。
この後は、ウォーム・アップのためのゲームの時間。頭と身体を使う、ちょっと複雑な鬼ごっこが始まる。
簡単に説明すると、まず一同輪になる。そして鬼を決める。これで鬼ごっこがスタートするのだが、普通の鬼ごっことちょっと違うのは、鬼に追いかけられた人が現在鬼役の人とは違う人の名前を叫べば、今度はその名前を呼ばれた人が鬼にチェンジする、というところ。つまり、鬼がコロコロと変わっていくのだ。で、鬼にタッチされたらアウト。輪から外れなければいけない。

このゲームが身体だけでなく心もほぐし、コミュニケーションの向上に役立つのは一つの事実から明白だった。
その事実とは、何度やっても最後まで残るのは【劇団タコあし電源】で普段一緒にやっているメンバーばかりだということ。
【タコあし】以外のメンバーが普通に最後まで残るようになったとき、このカンパニーのチームワークは完成するのだろう。
その暁には、就職活動という前提なくしても楽しめる芝居にきっと仕上がる……そんな楽しみを抱きつつ、笑い声がこだまする稽古場をあとにした。
実践や実益を謳っていても、演劇は演劇。その稽古場に満ちる空気は、面白い芝居を作ろうと志す人々がぶつかり合い励み合う、幾多の稽古場でお馴染みのあの空気と、なんら変わるところはなかった。
マニュアルで終わることを良しとせず、かと言ってパロディーには流れず、真剣に就職活動の現場を楽しい舞台に仕立てて見せようという今回の試み。「内定云々」のご利益以前に、純粋にエンターテインメントとしてどんな成果を残すのか。
その成果を、期待を込めて見守りたい。
稽古場の大きな画像をご覧になりたい方は、【稽古REPORT(3)】
2005/1/10 文責:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸 

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