劇場と劇団との関係は、舞台公演を実現する上で切っても切れない関係である。
今回のBACK STAGE REPORTは、場を「貸す」「借りる」というだけの関係を超え、<劇場の存在意義>を問う試み 
― シアトリカル應典院主催の【SPACE×DRAMA】を紹介する。
劇場と劇団が「対等な関係で協働する」というこの演劇祭、その試行錯誤の先に見える、劇場と劇団の新しい関係とは?
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BACK STAGE REPORT 〜SPACE×DRAMA 【しかばんび観劇レポート】〜


八月六日、大阪。
梅雨もすっかり明けて、雲ひとつない快晴、そして最高気温34℃の猛暑。
ギラギラの太陽の下、JR大阪駅から地下鉄谷町線を乗り継ぎ、目指す「シアトリカル應典院」の最寄り駅である谷町九丁目駅にやって来た。
大阪を南北に長く走る松屋町筋という大きな道路沿い。「應典院」という厳かな名称をイメージに探せば、ともすれば見落としてしまいそうなモダンな白い建物が、立ち並ぶいくつもの寺々の先陣を切るようにして建っていた。

入口のすぐ横には、「賢明に、そしてゆっくりと、速く走るやつは転ぶ」というシェークスピアの格言が達筆で書かれた紙が貼られている。
宗教・宗派を問わない文化創造を提唱、模索する應典院の「SPACE×DRAMA」らしい、フレキシブルな姿勢をいきなり垣間見た気がした。

客席はすでにかなり埋まっていた。観客のほとんどが二十代と思われる若者、男女の比率は同じくらいであろうか。熱心にパンフレットに目を通す人たちの姿は、それが開演へ向けて自分の気分を高めていく準備のように見えた。
開演前の舞台上では、着物姿の女性が一人、背を向けて何やら作業をしている。何らかのアクシデントが起こり、至急セットを直しているのかと思いきや……果たしてよく見ると、一心不乱に藁人形を打ち付けていたのだ。
周りの壁や柱に改めて目をやると、来た時は気付かなかったのだが、客席の至る所にまでビッシリと無数の藁人形が! 先程までの外の猛暑が嘘のように、たちまちヒンヤリと涼しい心地になった。……開演への布石はすでに始まっているのだ。

今日の公演は、「しかばんび」としては六回目の公演となる「ひトで」。
死、そして呪いという人間の暗い情念が、ある血脈、場所を通じて2003年と1185年という時を交錯する、夏の夜の不思議な物語。
納涼としてもおあつらえ向きの作品ではないだろうか。

公演後には、「しかばんび」の代表であり作・演出を手掛ける大橋学さんによるアフタートークが行なわれた。
半数以上の観客が残る中、「SPACE×DRAMA」のプロデューサー・西島氏が司会となり、質問形式で様々な思いを語ってくれた。

2001年6月の旗揚げから、実に今回で六回目の公演を迎える「しかばんび」。そんな中、前回、今回、そして来年一月に予定されている次回公演には、実は一貫したテーマがあるのだという。
そのテーマとは、「世代は死を内包する」……一聞すると難解な言葉だが、これは時代の変遷に従って変化してきた私たちの「死」という概念に対し、大橋氏が抱いた思いであり、疑問なのであろう。
時代が変われば、概念も変わる。それは人間の永遠のテーマとも言える「死」でさえ例外ではない。「死」は今や、人生の一選択肢として認識され、定着すらしていないだろうか……?
そんな「死」への概念を改めて見つめ直し、観る者に提唱したいというのが、今回の三部作(?)の試みである。
絶望によるネガティブな死、希望を見出したからこその死……大橋氏の、そして演じる役者さんたちの様々な「死」への見解が、各作品ごとに差別化を図られて盛り込まれているのだ。

今公演「ひトで」は、様々な形で「しかばんび」という劇団に新たな可能性をもたらしたのではないだろうか。
「目指すものが異なる七つの劇団が集まる中、やはり演劇祭のような形になると劇団員の士気も上がる。得るものが多いです」と語った大橋氏。
集まった各劇団が良い意味で競い合い、インスパイアを受け合い、現段階で「SPACE×DRAMA」は期待通り……いやそれ以上の成功を収めていると言えるだろう。
それを象徴するように、「しかばんび」をはじめとする現在まで行なわれた三つの公演は、いずれも各劇団の過去最高動員数を記録しているという。

今後もまだまだ続く「SPACE×DRAMA」、そしてその後もずっと続いていく「しかばんび」の公演。
興味を持たれた方は、是非足を運んでみてはいかがだろうか。

2003/8/6 文責:毛戸康弘

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