BACK STAGE REPORT〜SOUKI 『Gray ticket, Green ticket 銀河鉄道の夜』【稽古REPORT】〜
宮沢賢治の言葉・物語世界を、パントマイムのテクニックを駆使して動きだけで表現するという今回の【SOUKI】の試み。
その公演も間近に迫った稽古場から、彼らが新境地へ取り組む姿を紹介する。
「セリフの応酬が無い稽古場」という、ちょっと不思議な空間で、彼らの身体はどんなやりとりを繰り広げているのだろうか?
東京・田原町スタジオaRt/Pit。この【SOUKI】の拠点に入室すると、ちょっと変わったものが真っ先に出迎えてくれる。重量感を湛えてブラ下がる、黒革の袋……サンドバッグだ。実はこのスタジオ、国際空手道円心会館の浅草道場にもなっているとか。と言って、汗臭いだとか男臭いだとかいうことは無く、壁の片側一面がガラス張りの窓という採光の良さも手伝って、明るく開放的なスペースになっている。
窓を透って広がる午後の柔らかい陽光を受けながら、稽古場では演者たちが激しいダンスに取り組んでいた。テンポの速い音楽。揃って躍動する肉体。のっけから「パントマイム」のイメージを覆すアップビートに、軽い戸惑いを覚える。
今作『Gray ticket, Green ticket 銀河鉄道の夜』は【SOUKI】にとって、マイムという彼らの原点、「身体で物語る」ことの原点に立ち返える試みでもあるという。それだけにマイムを前面に押し出す作りになるというが、こうしたダンスもまた【SOUKI】らしさとして楽しみの一つとなるだろう。
このダンスの合わせが終わると、床に幾枚もの木板を並べていく演者たち。…何事かと見る間に、部屋の真ん中に一本のレールが姿を現した。やがて、鉄と枕木(まくらぎ)が交差するその上に、衣装に着替えた演者たちが立ち並び……ゆっくりとゆっくりと、行進が始まった。
厳かな静謐が満ちる幻想のなか、行進は続く。幾多の別離を繰り返しながら……。
横から構成・振付の江ノ上陽一さんが、丁寧にシーンの解説をしてくれた。話の内容は本番の楽しみのため敢えて伏せるが、その解説に対して抱くのは納得の思いが大部分だ。演者たちの身体は隅々にまで気が配られ、多弁である。張りつめ、たわめられ、静と動を繰り返す肉体が物語る想いは、とても分かりやすく、観る者の胸に届く。
ドラマティックな銀河鉄道の入線を経て、続くシーンでもマイムのテクニックはふんだんに生かされている。
重い荷を抱えて、己が身体を引きずるように歩く演者たちの仕草。いかにもマイムらしい、訓練された身体の動き、姿形に思わず見惚れてしまう。このシーンもまた幻想的ではあるが、身体と外界との関係性を取り出して表現してみせるマイムならではの饒舌さで、抽象=難解という図式を回避している。
シーンは続く。教室、活版所、銀河鉄道の車内……宮沢賢治の心象風景を垣間見せる重層的な構成と、マイムならではの圧縮された表現をとりつつも、全体として原作をしっかりとなぞる作りになっているようだ。原作を知る身としては「あぁ、あのシーンだ」と手を打つことしきりで、セリフの不在がまるで気にならずに素直に物語世界を楽しめる。「分かりやすさを意識した」という江ノ上さんの言葉にうなずきつつ、稽古であることも忘れ、しばし‘セリフの無いセリフ劇’の趣き漂う世界を楽しんだ。
言葉は発せられないのに、騒がしいシーンはちゃんと騒がしい。そんな舞台の様子を見ていて、いくつものことに気付かされた。
人間は身体の動きのみでいかに多くのことを伝えているか。
ときに身体は外界からどれほど不自然な姿形を強いられているか、などなど。
パントマイムの動きはそこに若干の誇張があれ、誰もが普段意識せずにしていることでもある。だからこそ、そこで発見することは新鮮な驚きをともなう。
鍛錬を積んだ動きの妙。イマジネーションへの心地よい刺激。マイムを楽しむポイントは数あれど、その面白さは何よりも、マイムの身体が日常の僕たちの身体の延長線上にあるからこそ生まれるのだろう。
稽古場の大きな画像をご覧になりたい方は、【稽古REPORT(2)】へ
2005/3/22 文責:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸 

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