BACK STAGE REPORT〜SOUKI 『Gray ticket, Green ticket 銀河鉄道の夜』【稽古REPORT】【江ノ上陽一インタビュー(2)】〜
設立15年目にしてマイムの王道に立ち返るという【SOUKI】。インタビュー後半では、その期待の新作『Gray ticket, Green ticket 銀河鉄道の夜』の話題を中心に聞いた。これまでの【SOUKI】とはちょっと、いや、かなり違う今作で彼らが目指すものとは?

江ノ上陽一インタビュー(1)
〈日本の偉い作家シリーズ〉第一弾!?
―さて、少し話の出た今作、『Gray ticket, Green ticket 銀河鉄道の夜』についてお聞きします。稽古を拝見した限り、原作を丁寧になぞる作りになっているように感じました

そうですね。さっきも言ったように、分かりやすく作ろうとは考えています。…ただ、みんなの演技がまだちょっと子どもっぽいので、そこの質は変えていきますけど。やっぱり彼らの中にも原作のイメージがあるんですね。原作ではカムパネルラとジョバンニは子どもですから、僕がいくら「子どもではやらない」って言って振りをつけていても、どうしても子どもっぽくなってしまう

―大人っぽい作品にしたい?

その中間に行きたいんですよ。子どもと大人のちょうど中間のイメージ。大人が観て「あぁ、懐かしいな」だけではつまらないですから、あまり子どもっぽくしたくない、ということなんです。作品のテーマは誰にでもあてはまるものですからね

―なぜこの作品、『銀河鉄道の夜』を選んだのでしょう?

僕たちはこれまで、原作ものを忠実にやったことがなかったんですね。ほとんど僕が作ったオリジナルをやっていましたし、原作ものをやる場合でもかなり抽象的に作ってましたから。だからここでひとつ、いい勉強の機会として、多くの人が原作のイメージをしっかりと持っている作品をやってみたかったんです。そこに、僕たちがどれだけのものを提示できるのか。…宮沢賢治は熱心なファンも多いですから、きっといろんなことを言われるでしょう(笑)。でも、そういう怖さを背負うためにも、敢えて取り組んでみよう、と。
実は今年はうちの内部で「“日本の偉い作家シリーズ”で行こう!」って言っていて(笑)、…それでまずは宮沢賢治に取り組んで、秋には三島由紀夫でやろうかなと考えています
動きにも句読点は大切
―【SOUKI】にとって第三の方向性を持った作品。取り組む出演者たちの反応はいかがですか?

夜、うなされてるみたいですよ(笑)。「夢に出る」って言ってます。
顔に表情が出るように、心の中でセリフを喋っていれば身体にもちゃんと表情が出てくるはずなんですけどね。でも、みんなそれを出すのに馴れていないから、何をやっていいのか分からない…そんな状況から始まりましたね。
…で、そこを過ぎると今度は「作る」ことをするんです。するとリアリティーが無くなるから、自分の心と身体が違うことをやり出す。俗に言う「クサく」なる訳です。
例えば、何かに注目させたい時に指をさす。これってすごく楽なやり方ですよね。ただ指をさせばいい。でも、日常で指をさすっていう行為をそんなにするだろうか?…しませんよね、そんなには。じゃあ、指をささないで、どうやって自分の見ているものに注目させるのか……そういうところで、みんな苦労してます。でも、そういう段階を踏んで、だんだんと上がっていかないといけないんですよね。
あと難しいのが、マイムって間(ま)の演技なので、間をどれだけ使えるか、遊べるかって部分ですね。文章の「、」とか「。」と同じで、人間だって動き続けてしまうと読めないし理解できない。だから間で表現しなければいけないことがたくさんあるんですけど、間をとるのってかなり度胸がいるので、それも苦労しているみたいです


―今回、演出が元【遊◎機械/全自動シアター】の吉澤耕一さん。吉澤さんはアジアマイムフェスティバルの総合演出を担当するなど、もともとマイムのフィールドでも活躍されていますが、吉澤さんの演出を受けた感想は?

心強いですね。…マイムの演出をする人って、なかなかいないんですよ。つまり、マイムのことをよく知っていて、なおかつ舞台の演出もできるっていう人は。僕自身、人に演出をつけてもらうこともなくなってきてますから……だから吉澤さんに稽古をつけてもらうのは楽しいし、新鮮ですよ。
吉澤さんとは実はもう十何年も前からの知り合いなんです。前から「一度、一緒に仕事しよう」って言ってたんですよ。で、今回「この機会にやりたいな」と思っていたら、偶然飲み屋で会って(笑)。そういうタイミングってあるじゃないですか。で、話が盛り上がって……次の日、「酔ってたけど、アレ、本当だよね?」っていう確認をお互いに電話でして(笑)
結構しつこいタイプです(笑)
―劇場が彩の国さいたま芸術劇場・小ホール。この劇場を選んだ理由は?

前から舞台を観に行っていて「良い空間だなぁ」って思っていたんですよ。ただ、埼玉だし与野本町だし、ちょっときついかな?…とも。
そうしたら、【SOUKI】の照明をやってくれている加瀬さん(注3)の仲間があちこちの劇場にいるんですけど、その繋がりでさいたま芸術劇場の方たちも僕たちのこと知っていてくれて……で、「【SOUKI】さん、うちでやらないの?」みたいな話になった。
僕たちは最近、東京ではずっとスペース・ゼロでやっているんですけど、関東での【SOUKI】の舞台を増やしたら?っていう声も頂いていたんですね。東京で一回だけじゃなく。だったら、さいたま芸術劇場の話も来たこのタイミングかな、と。それで改めて見に行くと、やっぱり面白い空間なんですよ。で、「やりたいな」って思ったら……空いてなくてこの一日しかとれなかったという(笑)。「埼玉、平日、一日公演……どうなるんだろう?」って最初は心配しましたけど…


―心配は杞憂に終わったようですね。既に夜公演のチケットはほぼ売り切れとか

そうですね。逆に驚いてます

―すごく高い天井に、客席に張り出した半円形の可変舞台と、とても面白いスペースですね。あの空間をどう使うかのプランはすぐに決まりました?

すぐに、ではないですけどね。僕はいろんな人に力を借りるタイプなんです。周りにたくさん優秀なスタッフがいるので、そういう方たちと話して、その中からああしよう、こうしようっていうアイデアを決めていきました。
また、そもそも、1年で劇場を使いこなせるとも思ってないですしね。僕、結構しつこいタイプなので、1回行くと3年以上はやるんですよ。ま、今回一発目でコケたらやめようと思ってましたけど(笑)。「切符が全然売れない」みたいな負け戦をした場合には考え直そうかとも思ったんですけど、今回の感じでいけば、また3年はやるでしょうね。そのぐらいやらないと分からないんですよ


―では沼津でのクリスマス公演のように毎年恒例になるかもしれませんね。ちなみに、この沼津公演は今年も?

やります。群馬にしてもそうですけど、毎年呼んで下さるんですよ。僕のしつこい性格が似た人を呼ぶのかもしれないですね(笑)。ただ、毎年作品を総入れ替えしたり、新作を入れていくので、やっぱりプレッシャーもありますけどね。とにかく、なんとかアイデアを搾り出して……なんか試されているような気もするので(笑)

(注3)加瀬隆純:舞台照明家。カセ・プランニング・オフィス代表。田原町スタジオaRt/Pitを【SOUKI】と共同で企画・運営。
受身にならず自由な解釈を
―最後になりますが、マイムを含めパフォーマンスは総じて‘難しい’というイメージもあるかと思います。初めてマイムを観る人に「こんな風に楽しんでもらいたい」と声をかけるとすれば?

まず、非日常の空間を楽しんでもらえればいいなと思います。劇場っていうのはそういう空間ですから。居間でテレビやDVDの映画を観るのとは全く違う時間が楽しめるところなんです。
それと、マイムっていうのはお客さんとキャッチボールしないと成立しないものです。お客さんに、僕たちの顔や身体の表情から想像して物語を構築してもらうものなので、受け手にならずに、存分に自分の頭の中で作っていってもらえればいいなって思います。ちょっと考えることが面白いんだし、その考えたことが間違いだなんて言う奴はどこにもいないんですから。解釈を自由に楽しんでもらえるようになれば、心も豊かになっていくんじゃないでしょうか。
…そもそもね、パントマイムって、日常で皆さんも知らずにやっていることなんですよ。外国人よりオーバーじゃないってだけで、日本人だって身振り手振りはかなりしてますからね。だから、パントマイムを難しいものだと考える必要はないんです。
今、本当に一方的というか、受け身になることが多いですよね。なんだか本来のものの楽しみ方がちょっと減ってるような気がしてて……。自分たちも考え、自分たちも参加して楽しむ。本当に気楽に楽しんで欲しいですね
これまで様々な身体表現を柔軟にとりこみ、独自の黙舞劇を作り上げてきた【SOUKI】だが、意外なことにマイムの王道‘マイム劇’は空白の地図として彼らに残されていた。満を持して、ついにそこへと足を踏み入れる2005年の【SOUKI】。
「想像力が回転するヒントをどれだけ多く提示していけるか」
今作のポイントを、江ノ上さんはこう結んだ。
彼らの眠られぬ夜が産み落とす銀河鉄道の警笛は、観客をどんな場所へと運ぶのだろうか。この【SOUKI】の挑戦に、思いきり想像を遊ばせてみたい。
(文中、一部敬称略)
2005/3/22 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

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江ノ上陽一インタビュー(1)

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