BACK STAGE REPORT〜下北沢シュワッチ!演劇公演「マスター・ミザリー」〜
下北沢・・・下北。
演劇の街と言われて久しい。でも最近、「若者の街」というブランドに取って代わられてないか?
ん?この企画は・・・?下北の街にあるもの全てを巻き込んだイベントか・・・演劇メインではないか・・・。
でも、なんとなくシックリくる、下北と演劇。全然違和感が無い。こんな街、他には無いんじゃないか?
今回のBACK STAGE REPORTでは、複合イベント「下北沢シュワッチ!」演劇公演「マスター・ミザリー」で初演出を行なう大越真木さん、
オーディションで選ばれた役者の皆さん(1名不在)への質問と稽古風景、事務局から石井梨沙さんのインタビューをお届けする。
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BACK STAGE REPORT〜下北沢シュワッチ!演劇公演「マスター・ミザリー」【取材リポート、稽古リポート】〜
【事務局長 石井梨沙、インタビュー】

大越さんへのインタビューを終えて、稽古場に入室する。中では、アップを終えた6名の役者さんが待っていた。
石坂いつかさんの顔だけが見えない。今日はお休みだろうか。 
床に車座になって、少しの間、役者さんたちにお話を伺う(この時にした質問への答えは、役者プロフィールに記載)。
全員オーディションで選ばれたというが、既に、長く共に活動してきたカンパニーのような打ち解けた雰囲気があり、これまでの稽古の実りが実感できた。
10分後、役者さんが舞台に椅子を数脚配置し、稽古の準備完了・・・と、ここで山道貴子さんが都合により退室する。今日はこのまま、5人での稽古となるようだ。

まず舞台に登場したのは三島サチエさんと中村利裕さん。引越しの場面か。ちょっと重苦しい雰囲気からして、単に「恋人の引越しを手伝う彼氏」というだけではなさそうだが・・・
目の前の芝居の展開もさることながら、それ以上に気になったのは、舞台を取り囲むように据えられた椅子、その椅子に着いた役者さんたちだった。先ほどのインタビューで大越さんが、シーンに出ない役者も舞台上に残ると言っていたが、ただ休んでいるだけでもなさそうだ。じっと動かず、息を詰めたようにしている。そういえば大越さん、「その人間は一体何なのか、というのもお客さんの自由な想像に委ねたい」とも言っていた。なるほど、では想像してみよう・・・他人のアパートの部屋の隅で、微動だにせずじっと息を詰め、住人を見つめる存在・・・・・・霊?
ややあって、大越さんが一旦芝居を止める。出されたダメは、二人の想いに挟まれて引き伸ばされ、押し縮められる「時間」、それをもっと表現して欲しいという繊細なものだった。このダメを「そうか・・・そうですよね!」と快活に声をあげて受け止め、どこがいけなかったのか話し合う二人。この辺のレスポンスの良さにも、オーディションを勝ち抜いた実力の片鱗が伺える。
三島さんが、脇で椅子に座る森山太さんに投げかけた質問を聞いて、少しほっとした。
三島「・・・森山さんは何ですか?」
三島さんも分かっていなかったのだ。
おもむろに、森山さんの太い声が室内に響いた。
森山「トイレ」
 ・・・??? 
更に中田寛美さん、小坂理紗子さんにも同じ問いをかける三島さん。
それぞれに応えて曰く、
中田「たんす」
小坂「鏡です」
・・・家具とは! どうやらこちらの想像力の遊ばせ方が全然足りなかったようだ。

話は進み、三島さん演じる女性の姉夫婦(小坂さん、森山さん)が登場。仲が良いのを通り越して、かなりきっつい夫婦だ。原作の主人公・シルヴィアの友人夫婦(エステル&ヘンリー)に相当するのだろうが、イタさはこちらが断然上。さすがオペラの舞台に立っている森山さん、その、よく通る声が更にイタさに拍車をかける。小坂さん演じるキャラに至ってはほとんど暴走状態で、周囲の「無機物」が爆笑してしまう程。その小坂さんが一通り暴れたところで芝居を止めた大越さん、苦笑しながら一言漏らした。
「言おうとしてたこと、全部忘れちゃったよ・・・」

大越さんもインタビューの中で言っていたが、原作の『Master Misery』は暗く、救いのない話である。主人公のシルヴィアは内向的な性格と大都会ニューヨークの相乗効果によって、孤独へ、自棄へと追い込まれていく。だが、この芝居(ここまで見た限りでは)、三島さん演じる主人公は前向きで、孤独なんかに構っていられない、そういうタイプの女性として描かれている。大越さんが語った「明るく、力強いものにしたい」という言葉通りだ。姉夫婦といい、いかにも打たれ強そうな、クセの強いキャラクターたちが繰り広げる物語。きっと「不幸という名のご主人様」に、このカンパニーは強烈なカウンターパンチを放ってくれることだろう。

場面は変わり、レストランのシーン。ここで中田さん、やっと家具から人間に昇格。三島さん演じる女性が、中田さん扮するキザな男と食事をしているシークエンス。中田さんの、架空のブランデーグラスを弄ぶかのような右手の動きが、いい感じに気色悪くて笑いを誘う(ただし、この動きが本番でも見られるかは不明。なにしろ配役がまだ決定ではないようだから)。
・・・この場面、まだセリフの入りが100パーセントではない事もあり、大越さん、多くを語らずじっとシーンを繰り返させていた。ある程度固まるまでは役者さんに色々試させる、そういうことだろう。試す側の役者さん−「臨機応変」と大越さんが称えた役者さんたち−に溢れるのは、熱気というよりも、好奇心か。こうやったら相手はどう返してくるだろう。そんなアクションのドミノ倒しを楽しんでいる感もある。このドミノの配置が全て終わり、最後の一片までが見事に倒れた時、そこに観客はどんな絵を見るのだろうか・・・

レストランのシーンの3回目が終わったところで、一旦休憩に入る。
ふと部屋の隅に目を向けると、そこにはシュワッチ!事務局長・石井梨沙さんの姿が。いつの間にか、約束の時間になっていたらしい。この後の稽古の展開にも惹かれるが、ここがタイミング。我々はこれで失礼することに。
お別れの挨拶に代えて「頑張ってくださいね!」とかけた言葉に、「はいっ!」と返ってくる声。その声に満ちる自信が頼もしい。<下北沢・シュワッチ!>演劇部門を担う精鋭たちの、気負いの無い笑顔に見送られながら、石井さんと共に稽古場をあとにした。

(文中、一部敬称略)
2003/9/30 文責:北原登志喜  撮影・編集:鏡田伸幸

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【事務局長 石井梨沙、インタビュー】

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