| 名古屋で今、最も人気のある劇団の一つである【劇団あおきりみかん】。その実力は2003年東京池袋シアターグリーンフェスティバルでシアターグリーン大賞を受賞するなど、名古屋以外の地域でも高く評価されている。「アマチュアだから」・「名古屋だから」…そうした枠に囚われず、自分たちのスタイルを貫き続ける【劇団あおきりみかん】。そのモットーは「思いっきり笑えて、最後にあたたかい気持ちになれる、ほんわか喜劇」を観客に届けること。そんな【劇団あおきりみかん】の主宰 / 鹿目由紀氏並びに制作チーフ / 石丸徹氏へのインタビュー、更には本番直前の次回公演「プラクティス・プラクティス」の稽古風景をお届けする。 |
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| 稽古場に足を踏み入れて、まず目を引かれたのは「箱」だった。舞台は、八角形に組まれた長い「箱」で、綺麗に囲われていた。型に関しては、千種文化会館の円形(正確には八角形)舞台に会わせたものだろうが、ちょっとした現代アートにも見える。単なるオブジェだろうか? その八角形の一片は開かれ、舞台奥の引き戸の仕掛けに通じている。 | ![]() |
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その八角形の内部で、女性ばかり5人の役者がちょうど、歯切れのいいセリフの応酬を繰り広げていた。公演まで2週間を切った今、当然ではあるが、全員の手から台本が離れている。動きもかなりの部分、作られているようだ。 |
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……シークエンスごとの通しだろうか? そう思った一瞬後、 「バタバタバタバドタッ!!」 あっという間の転換で、舞台上の人物は男性4人、女性1人のチームに入れ替わった。 |
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呆気にとられて見る間にも、新たに現れた男女混成チームが、何食わぬ顔で芝居を始めて……ややあって、鹿目さんの止めが入った。 「ここ、足踏み長くねぇか?」 ……男言葉ですか? |
| 最初は戸惑ったが、今やっているのはどうやらインタビューで言っていた「男性の時間と女性の時間」、その入れ替わりの場面らしい。 このあと、この転換部分に少しずつ修正が加えられ、繰り返された。役者たちが何回も、ひたすら走り回る。ちょっと肌寒いくらいの今日の気候では「飛び散る汗っ!」とまではいかないが、それでもこれは結構な運動量だ。 「こっちの方がええよなぁ!」 「気に入らないねぇ」 |
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仕切り直すごとに、鹿目さんの男らしいコメントが入る。対する役者はそのたびに、自分はどう動くか、相手はどう動いたら良いかを声高に言い合う。演出の鹿目さんにも、こうしたらどうかと聞き返す。 「これ、こっちにしてみたんだけど、不自然に見えません?」 「大丈夫だよ」 「じゃ、こっちで行きますっ!」 この活気、このスピード感。成る程、いかにも勢いのある団体の稽古場らしく、変な滞りが見当たらない。 |
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| 今回の公演は『ぽんかん劇場』と銘打った、特別公演の第2回。劇団外からの参加者も多いはずだが、遠慮も物怖じもなく、皆が考え、意見を伝え合う。皆が動く。というか、動きまくる。たまに、とみィさんの意味不明のボケも入る。そこに笑顔がはじける。そして、鹿目さんが口を開くと全員が動きを止めて、その顔を見つめる。その目の真剣さといい、参加意識の高さは見ていて気持ちが良かった。 | |
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転換の調整は続く。今度は男性チームが女性チームに入れ替わる場面。幾度かの試行の後に、男性チームの一人、松井真人さんが自信満々に言い放った。 「男チーム、もう完璧!」 「じゃ、いってみよう」 ― 鹿目さんの声に、男チームの元気のいい返事が、揃ってこだました。 「オイッス!!」 |
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こちらが構えたカメラを目にして、松井さんが皆にハッパをかけた。 「よし! イイところ見せよ!!」 すかさず鹿目さんがツッコむ。 「こらっ、変に意識するな(笑)」 ……鹿目さんの懸念が当たり、ここでの男チーム、コンビネーションがもうボロボロ。 シュートを外したフォワードよろしく頭を抱えてヘタり込む松井さん。その背中に、 「雑念だらけじゃんかあぁぁっ!!」 鹿目さんが一声吼えて、広い広い稽古場を笑いが満たした。 |
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『ぽんかん劇場其の弐 プラクティス・プラクティス』−そのキャッチは「競い合っちゃう?」なのだが、面白いのは稽古の中でも男性チームと女性チームが面白おかしく張り合っている点。男性チームは体力に物言わせ、女性チームは知力とチームワークで、どちらが鹿目さんのOKを先に貰うか「競い合っ」ている。が、全体を見れば、これが見事に良いバランス。だから稽古はテンポよく、緩むことなく進んでいく。 ちょっとだけ女性チームより図々しい男性チームが、再びソフトな挑発の声を上げた。 「よし、ここ、男性チームは完璧です!」 で、実際はと言うと…… 鹿目「……はい、すみません。男性チームのせいで、もう一回お願いします。女性チームは完璧!」 …………。 |
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| ここで気付いたのだが、どうも鹿目さんが男言葉になるのは、男性チームにダメ出ししている時がほとんどのようだった。このあたり、「相手に一番伝わりやすい言葉で伝える」という鹿目さんの姿勢が自然と出ているのかも知れない。 | |
| それにしても、舞台装置は(今のところ)非常にシンプルかつアナログなもの。だが、 鹿目「はい、次にいきます。女性陣、転がって出て来ま〜す」 こんな謎の言葉を生むような、なんとも言えない味がある。ことに、千種文化小劇場の特性を考えると、鹿目さんは「円形劇場であることはあまり意識していない」と言っていたが、なかなかどうして、プラスアルファ的な楽しみも出るのではないだろうか。 |
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転換の練習はまだまだ続くようだ。どうやら今日は全体の転換部分をまとめて詰めるらしい。 「ここ、きっかけはどうする? 誰きっかけでやるか決めて」 鹿目さん、役者に任せるところはしっかり任せる……かと思いきや、 「いや、それは駄目」 結構、蹴る。 しかし役者も全くメゲない。鹿目さんの要求に、 「いや、それはかなり難しいですよ」 と異を唱えたと思ったら、返す刀で、 「じゃ、ちょっと練習してみようか!」 あっさりやって見せたりする。そうした、駆け引きにも似たやりとりも含めて、皆が稽古を楽しんでいるようだった。 舞台奥の引き戸の仕掛け、その木肌に、スローガンのようなものが書いてあった。 「びびらずに楽しくいこう」 「いっしょうけんめい」 この二つの言葉が、この稽古場の雰囲気を端的に表していた。 |
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| 「あははははっ……何だアレ」 自分で指示してやらせたくせに、鹿目さんのこんな非道な笑い声が稽古場に響いたところで、ようやく休憩が入る。気が付けば、窓から注ぐ陽も薄れ、室内は随分冷えていた。そんな寒さを微塵も感じさせない、稽古場の熱い空気に未練を残しつつ、ここで退室する。去り際に、休憩を中断して、わざわざ整列して見送ってくれたメンバーの声が耳に心地よかった。 |
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| 2004/2/29 文責:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸 | |
BACK STAGE REPORT〜report no.12 名古屋 【あおきりみかん】【稽古REPORT】
【主宰 鹿目由紀 インタビュー】【制作 石丸徹 インタビュー】

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