名古屋で今、最も人気のある劇団の一つである【劇団あおきりみかん】。その実力は2003年東京池袋シアターグリーンフェスティバルでシアターグリーン大賞を受賞するなど、名古屋以外の地域でも高く評価されている。「アマチュアだから」・「名古屋だから」…そうした枠に囚われず、自分たちのスタイルを貫き続ける【劇団あおきりみかん】。そのモットーは「思いっきり笑えて、最後にあたたかい気持ちになれる、ほんわか喜劇」を観客に届けること。そんな【劇団あおきりみかん】の主宰 / 鹿目由紀氏並びに制作チーフ / 石丸徹氏へのインタビュー、更には本番直前の次回公演「プラクティス・プラクティス」の稽古風景をお届けする。
BACK STAGE REPORT〜report no.12 名古屋 【あおきりみかん】【宰 鹿目由紀 インタビュー】
作 石丸徹 インタビュー】【古REPORT
鹿目 由紀 氏
(劇団あおきりみかん主宰)
 名古屋市内某所。
足を踏み入れた【劇団あおきりみかん】の稽古場は、思いのほか広かった。そこでは間近に迫った特別公演『ぽんかん劇場其の弐 プラクティス・プラクティス』の稽古が今まさに行われている。舞台上には作りかけのセットが置かれ、その中を役者たちが元気一杯に走り回っていた。彼らが床を踏み鳴らす音、それだけを聞いていると、まるで何かスポーツの練習をしているかのよう。その足音に、頻繁にとられる役者同士のコミュニケーション、セリフの掛け合い、そして笑い声が続き、室内に音の絶えるいとまがない。
そんな活気ある稽古の合間をついて、場所も場所、セットのど真ん中で、作 / 演出の鹿目由紀さんに、名古屋の演劇のこと、公演のこと、色々とお話を伺った。
軟な対応で、やり易く
―いきなりですが、鹿目さんから見た名古屋の演劇事情をお聞かせ下さい。ずばり、名古屋は演劇がやり易いところですか?

私自身は「やりにくい」と感じたことはないですね。「名古屋は特別な場所」なんて言われることも多いみたいですけど、そんなことはないなって。小屋事情にしても、確かに中ぐらいの小屋は少ないので、ちょっと大きくなり始めた劇団さんが「やる小屋が無い」って言うのもよく聞きますけど、でも……。
……私たちも初め、すごく小さい小屋をホームグラウンドみたいにしていたんですね。スタジオ・座・ウィークエンドという、70ぐらいのキャパの小屋なんですけど。それで、確かに初めは「キャパシティが難しいな」って思ったんですけど、やっぱりね、やり方次第といいますか。……例えば2年くらい前になりますけど、そのスタジオ・座・ウィークエンドで『とけないまほう』という作品を上演した時には、2週間連続でやらせて貰って。そういう形で調整をしていました。今は「愛知県芸術劇場小ホール」がだいたいホームグラウンドになっていて、そこになってからはもうキャパシティのことで困ることもなくなったし。だから我が劇団としては、柔軟に対応することも手伝って、やり易い環境でやらせてもらってますね


―稽古場にも困らない?

そうですね。他劇団さんとの繋がりの結果もあって、今まで稽古場に困ったこともあまり無いですね
っこう交流はありますよ
―その「他劇団さんとの繋がり」ですが、名古屋全体では劇団間の交流は?

ありますね。うちはどうでしょう、結構少ない方かも知れない(笑)

―そういう繋がりはどんな所から生まれるのでしょう?

やっぱり、その劇団の芝居を観に行って、ちょこっと顔を合わせる程度から始まって、そのうち物の貸し借りですとか、打ち上げに参加したりですとか、バラシを手伝ったりですとか、そういうことで交流が深まっていく感じですね

―何か、あるいはドコかが中心になるのではなく、個々に築き上げるネットワークですね

そうですね。若手の劇団同士の繋がりでいえば、まぁ、年が近いから結構お互い意識している部分もあるし、だから何か近付くキッカケがあった時にじゃあ、って。そこからちょっとずつコネクションが広がっていく
わらずにいけばきっと通じる
―【劇団あおきりみかん】さんは過去に東京でも公演を行っていますが、そうした経験から、名古屋の演劇、観客の特性というのは感じますか?

いえ、基本的に変わらないですね。東京に行った時は初め、ちょっとドキドキしたんですけど、非常にあたたかく迎えて頂いて。何か感覚とか、例えばうちは喜劇をやっているものですから、笑うポイントとかが違ったりとか、シビアな目で見られるのかな?とか、逆に変なウケ方をされて困らないかな?とか、色々考えたんですけど、そんなことは全く無くて。だから、「あぁ、やっぱりおんなじ日本だな。どこも変わらないんだな」というのが、その時の一番の印象だったんですね

―では今後も、例えば東京で公演を打つといった時にも、アプローチを変えることはない?

変えません。自分たちのスタイルみたいなものは、もうどこに行っても変わらない。それがどんな遠い場所であろうと、多分、変わらずにいけばどこか通じる部分がきっとある、そういう想いでやっていますから
劇という言葉を使っていきたい
―劇団についてですが、まずはその成り立ちから教えて下さい

南山大学という大学があって、私や旗揚げメンバーはそこの演劇部だったんですよ。そして卒業して、初めは一回きりのつもりで「旗揚げ&旗下げ」みたいな感じで公演をやったんですけど、その時に結構楽しくやれて……それで2回、3回と公演が重なっていったんですね。で、4回目の前に、「今後どうしようか?」みたいな話し合いを真面目にする機会がありまして、そこから「じゃあ、ちゃんと劇団にしてやっていこう」となって。だから4回目からわりと劇団色が強くなって、という……そんな形でやってしまいました(笑)

―さきほど「自分たちのスタイル」という話がありましたが、そのスタイル、あるいはポリシーは?

ポリシーは、「『喜劇』をやっている」ということ、それだけですね。……この喜劇という言葉をコメディーという言葉で表現していた時期もあったんですが、自分としてはコメディーというのは結構幅広い意味合いにとられかねないな、という思いがあって。……例えば「エンタメ系」という言葉がありますよね。私は「お笑い」から何から幅広く含まれるエンターテイメントという枠組みよりも、やっぱり芝居という枠組みを意識してやっている、というのがあるんです。で、コメディーという言い方をすると、どうしてもそのエンターテイメントの部分が強調された見方をされることが多くなってしまうんですね。例えばコントもコメディーと紙一重な部分を含んでいますし。
……うちは途中からワンシチュエーションの芝居がメインになってきたんですが、その中で「何か笑わせることをやってやろう」というのではなく、そのシチュエーションそのものの面白さだとか、その中で展開される会話の面白さだとかを観てもらってお客さんに楽しんで頂く、という形なんですね。そういうことですから、芝居という意味でなら喜劇という言葉を使っていきたい、と。だから、去年の『ぽんかん劇場』からは喜劇という呼び方で統一しています
んかん劇場其の弐 プラクティス・プラクティス』
―今、お話の出た『ぽんかん劇場』ですが、名古屋の若手演劇人を集めて行う特別公演で、昨年が第一回目だったそうですね。こういったことをやろうとしたきっかけは?

今までうちの劇団員はわりと外に出ることが少なかったんですね。それもあって、いつもやっていること自体を違ったメンバーでやることで、何か変わったものが見えないかな、と。それにもちろん、本公演とは違った企画にしたいっていうのもありましたから、だったらもういっそのこと、他劇団さんから全て呼んでやってみるっていうのが、内部にとっても良い刺激になるんじゃないかと思いまして

―その『ぽんかん劇場』の第二回目、『ぽんかん劇場其の弐 プラクティス・プラクティス』、現在稽古中ですけど、どんな舞台になるのでしょう?

『ぽんかん』だから何か違ったことをやりたいということで、ちょっと構造的に変わったものを一回やってみたいと思いまして。だから今回は構成とか構造に非常にこだわった舞台になります

―さきほど場の転換の稽古を少し拝見しましたが

はい、はい。おんなじ舞台を使いながら、女性のいる部屋と男性のいる部屋と、別々に見せて

―それがバタバタと目の前で入れ替わる

そうです、そうです。基本的にですね、うちはアナログ部分を非常に大切にしていまして……まぁ、私が機械に疎いせいもあるんですけど(笑)、なるべく自分たちで出来ることは、自分たちの生身の姿で見せていく方が、お客さんにも伝わり易いんじゃないかと、そういう感覚でやってますから、となると、さっきみたいな形になるという(笑)

―本公演と変えていこうということでは、実験的な要素もある?

そうですね。時間的な進み方の構造が今回はちょっと特殊なんですよ。あの、女性の時間と男性の時間とが、同時に流れるのをお見せする、ですとか
人面談演出、ですね(笑)
―劇団外の人達と一緒にやる上で、演出面で気をつけている点は?

私自身はもともと役者をやっていて、それから作 / 演出に転向した人間なので、あんまりガチガチなのは好ましくないと思っているんですね。あまり縛りつけずに自由な発想の元でその人を活かせれば、とは思っています。ただ、自分のポリシーもありますから、それとの兼ね合いを上手く考えながらやっていますね

―確かに役者さんとのやりとりは頻繁にありましたね

そうですね。皆さんが言いたいこと言ってもらって、それを聞いて、自分が言いたいことを言う。シンプルなやり方ですけど、それが一番みんなもやり易いんじゃないでしょうか。ただ、伝え方は人によって変えますけれど。一番伝わり易い言葉を選ぶ。役者にも色んな人がいますからね。だから、公演の稽古が始まる前には個人個人と必ず話をします。その人が今、どういうことに興味を持っていて、どういう風に自分がなりたいと思っているかを確認する。個人面談演出、という性格が強い(笑)

―外部の人達とやる面白さは?

たくさんあり過ぎて、どれとは言えないですけど……例えば、自分は喜劇路線じゃないと思っている役者さんもいるわけですよね。その人の劇団の中ではすごくシリアスなことしかやっていなかったりとか。でも実際にやってみると、ものすごく喜劇に向いていたりする。そういう、自分がダメだと思っている部分、良いと思っている部分っていうのは環境にもよるわけで、だから「自分はこれこれはダメです」みたいに言ってきて貰っていることを逆に活かしたりするのは楽しいですよね

―では、こうした企画に役者さんを誘う時にも、「この人に喜劇やらせたら面白そう」というのが決め手になる?

そうですね。……私自身は実はアングラなお芝居が好きだったりするんです。そういうものを見る方が逆に、自分の作品を書く刺激にもなったりする。だから結構、ドロドロした恋愛物だとか好きなんですけど(笑)……で、そういうのに出ている人を見て、ああ、今はすごいシリアスで死ぬ役だけど、この人がもしうちに出て喜劇の中にどっぷり浸かったら面白いだろうな、とか想像はしますしね。だから、「この人に喜劇をやらせたい」というのが大きいかな。あとは、うちの役者と絡んだらどうなるか、とか、そういう部分を考えて
負わず気楽に観に来て欲しい
―今回、ここを見て欲しい、というのは?

全部、と言うのが一番いいと思うんですけど(笑)、やっぱり女性シーンと男性シーンの、流れる時間も含めて違いというか、そういうところが結構面白いんじゃないかな、と。『ぽんかん』の一回目の時は、男性7人、女性1人、その女性も3シーンくらいしか登場しないっていう、ほとんど男性主体のお芝居だったんですよ。やっぱり男性ばっかりっていう空気って、全然ちがうんですよね。で、今回は男性ばっかり、女性ばっかりと、両方ありますから、その雰囲気がそのまま舞台に乗ってくれれば面白いものになると思うので、そこを見て欲しいですね

―では、『ぽんかん劇場其の弐 プラクティス・プラクティス』、この公演に向けての抱負を一言

とにかく軽い気持ちでふらっと来て頂ければいいですね。何の気負いも無く観に来て頂いて、十分に楽しんで帰っていただければ、と。

名古屋 / 東京本公演のこと

―本公演のことも少しお聞かせ下さい。6月に名古屋、7月に東京での公演ですね。こちらはどんな舞台にしたいですか?

まだ、何も考えていないんですけど(笑)。……ただ、うちの定番のスタイルがやっぱりワンシチュエーションなんで、その縛りの中で一番面白いものをやれたらいいな、と。とにかく、流行だとかにあまりとらわれずに、生身の人間が一生懸命やっている面白さっていうものが伝えられれば、たぶん名古屋、東京というのはあまり意識せず出来るんじゃないかな、って思っています

―東京の演劇ファンに7月本公演の宣伝を一言!

東京の方たちに観て頂きたいのは……こう、おんなじ地続きのトコロに住んでいるわけですから、うちは東京に行っても名古屋でやってきたスタイルを変えませんけれど地域差みたいなものを感じさせないお芝居であると思うので、はい、あの、とにかく一度観てみて下さい。きっと気に入って頂けると思いますので

―ありがとうございました
(文中、一部敬称略)
2004/2/29 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸
BACK STAGE REPORT〜report no.12 名古屋 【あおきりみかん】【宰 鹿目由紀 インタビュー】
作 石丸徹 インタビュー】【古REPORT

BACK


Questions?Problems?Suggestions?Contact backstage@land-navi.com
BACK STAGE【SideA】 Since 1999/09/01.2000/10/01.Presented by LAND−NAVI
Copyright (C) 2004 LAND-NAVI .All Rights Reserved.