BACK STAGE REPORT〜劇団め組 公演『歌舞伎草紙 ひとり忠臣蔵 』〜
「演劇で食べていきたい」・・・そう考える劇団が数多ある中、実際演劇で「食べて」いる劇団。
それが今回ご紹介する【劇団め組】である。
株式会社という形態を持つ、プロの劇団。それ故に、常に完成度の高い作品の提供が求められるとも言える。
その内実は如何なるものか・・・そのプレッシャーとは・・・?
今回のBACK STAGE REPORTでは、【劇団め組】演出兼社長/与儀英一氏・脚本/合馬百香氏と主演俳優の藤原習作氏・新宮乙矢氏のインタビュー、更には次回公演作『歌舞伎草紙 ひとり忠臣蔵』の稽古風景をお届けする。
BACK STAGE REPORT 〜劇団め組 公演『歌舞伎草紙 ひとり忠臣蔵 』【取材リポート、与儀・合馬インタビュー】〜
→【取材リポート 主演俳優インタビュー】 →【取材リポート稽古風景

社長兼演出/与儀英一(写真 左)・脚本/合馬百香(写真 右)


膠着状態の中から、何が生まれるか

―現在、次回公演の真っ最中だと思いますが、今、稽古ではどんなことを?

与儀 基本は一日一回、まず通してやるんですよ。ストーリーを一回通す。で、その後どうするかというと・・・通してみて、じゃあここを変えよう、あそこを変えようって言っても、その日の内にそんなに変わるものではありませんよね。だから一度家に持ち帰って、お天道さん上がってからまた、みたいな。メンタルな部分が大きいですからね。表現に問題がある人も、そうやって詰めていく。だから2時間くらいずっと見ている、なんて場合もあります。

―何も口を出さずに?

与儀 そうですね。で、何が出るか?ってやっていく。例えて言うと'人質と犯人'みたいな、そういう膠着状態の中から「何が生まれるか」って、そうやって作っていくんです。・・・だから、ものずごく時間がかかるんですよね(笑)。ただ、本当にコミュニケーションはとれていますから、変な話ですけど、それが一番はかどる方法かな、とも思うんですね

「ちゃんと」したいから

―【劇団め組】は当初から株式会社として運営するおつもりでしたか?

与儀 ええ、最初から株式会社を目指していました。というのは・・・これは僕の勘なんですけど、やっぱり同人誌的に<仲間>でやっていくと、きっと解散が待っていると思うんですよ。だから、ミニ・ミニ・ミニ宝塚・・・もっとミニをつけてもいいんですけど(笑)・・・

そういう組織として、ちゃんとしたかったんです。だから、株式会社というのは意識しました


―そして実際に・・・

与儀 ええ。最初の一年くらいを除いて、ずっと株式会社としてやってきました

―役者さんたちは「社員」という形なのですか?

与儀 法律上の「社員」ではありませんが、でも感覚としては本当にそんな感じですね

―(株)め組と(株)ヨギプロダクション、両者の関係は?

与儀 与儀 最初から劇団とプロダクション、っていうのは別に作ろうって考えてたんですよ。というのは、「劇団」って言うと例えばテレビ局などでは、いわゆる「好きでやってる人達」、「カップラーメンすすりながらでも芝居が出来れば幸せな人達」みたいに取られかねない。そうならないために、劇団に平行してプロダクションを設立したんです。実際は、代表も一緒ですし、め組もヨギプロも一緒なんです。窓口を分けたということであって。外に行った時に「ヨギプロダクションです。劇団め組所属の」となるように。

真っ当に、方法論を持って

―学校上演についてお聞かせください。立ち上げ当初から全国の小・中学校で公演を行っていますね

与儀 はい。今もうちは学校上演というのがベースであるんです。今は一斑9人、それが三班あって、全国の小・中学校を回っています。これも真っ当に、ちゃんとやっていきたいですね。やっぱりちゃんとしたものをお見せしたい・・・。ただ、そう出来るようになるまでには、随分時間はかかりましたね

―どんなところが難しかったのですか?

与儀 ・・・あの、ちょっと話が逸れますけど、反町隆史さんっているじゃないですか。僕、反町になりたかった(笑)。ただ、ああいうのって、宝くじに当たるようなものですよね。反町さんだって自分がバーンと売れて、驚いたと思いますよ。だって、いくら顔がカッコいいって言ったって、そういう人は世の中いくらでもいるんですから。やっぱり運も縁もあって、タイミングと時代のチャンネルが一瞬合うっていうの、あるんですよね。羨ましいと思います。
でもね、そうじゃない限りは、自分が反町でない限りは、ちゃんとした方法論を持って出て行かないといけないと思うんです。それは学校劇でもそうなんであって・・・だから、学校劇の部分もちゃんとやりたい、と。
で、質問に戻りますと、学校劇、いわゆる児童劇って、演じる側が馬鹿にしてかかっちゃうんですね。本当に子供に観せるように、「〜〜にぃー、〜〜してぇー」なんてやってしまったり。でもそういう芝居にはきっと未来は無いって思ったんです。子供の感性って、そんな程度のものじゃありませんからね。だから、大人に観せても、つまり先生が観ても楽しんでもらえる芝居を最初から目指していました。でも、それがちゃんと出来るようになるまでに・・・10年はかかりましたね。やっぱりみんなどうしても馬鹿にしてかかるんですよ。メジャーになる前の、一段低い練習みたいに考えて


―演じる側の心構え、ですか

与儀 ええ。ただ「ちゃんとしてやりたい」ってだけなんですけどね、反町を外れた限りは(笑)。・・・反町、カッコいいですよねぇ。若くしてマンションいくつも持って、大河ドラマに出て高視聴率取って・・・芸能界って、ああいう人もいていいんですよね。だからもう、全然否定はしてないんですよ。僕もメジャー志向ですし、『笑っていいとも』とか出たいですし(笑)

人事管理は僕の係り

―社長業と演出家業、この兼ね合いもまた大変そうですが

与儀 いえ、経理は任せてありますから、基本的に僕は演出に専念させて貰っているんです

―学校上演と本公演を合わせると、年間200ステージにも及ぶとか。演出に専念するにしても、大変な作業では?

与儀 実は、お芝居の演出に関しては、一度作ればあとはそれ程大変でもないんですよ。各班に責任者を置いていますから。各班の中に現場責任者がいて、それ以外にもそれぞれの班に、演出も出来る責任者が付くんです。この役を務めるのが【め組】の幹部で、主役・準主役を演じている3人。その人達が東京でやりとりしながら、現場に行って演出もする。教えることで、勉強にもなりますしね。
むしろ大変なのは、人事管理ですね。やっぱりそうやって全国回ってると、色々あるんですね。人間関係だとか、或いは自分のビジョンとやっている事が噛み合わなく感じられたりだとか。だから、そういう部分をケアしたり、っていう管理はありますね。それは僕の係なんです。

稽古場ではMCなんです

―さて、今作ですが、元禄忠臣蔵シリーズ第二弾ですね。このシリーズは幕末維新シリーズとはまた違った趣きのシリーズになっていくのでしょうか?

与儀 それはですねぇ、この人(合馬さん)に聞いて頂いた方がいいでしょう。僕はですね、演出となってはいますけど・・・実はMCなんですよ(笑)。稽古場の司会者なんです。僕は会社を立ち上げました。お金では苦労したけれど、それも僕はちゃんとやりました。役者も集めました。あとはこの人に、ってことなんですよ。・・・ただ彼女、稽古場であんまり喋らない方なんですね。そこで、僕が糸口を出す。今はそんな形にスライドしながらやっています。だから、作品のことは彼女に聞いて下さい

―では、稽古場にはいつもお二人で入る?

与儀 ええ。もう、常にいます。僕は、遊んではいないですけど、横でペラペラ喋りながら司会してます。本当ですよ。だから、劇場に共同通信の記者さんなんかがいて、難しいこと訊かれそうだなって思ったら、僕、逃げちゃう(笑)。

『赤毛のアン』より『三銃士』の方が好きだった

―では、ここからは合馬さん中心にお伺いします(笑)。シリーズ第一弾『玄蕃と十平次』は、幕末維新シリーズよりもスケールを絞った分、より叙情的な作品になっていると感じました。これはこのシリーズの意図なのですか?

合馬 いえ、それは特に意識はしていないんです。ただ・・・実のところ、春休みや夏休みっていう時期ですと学校を回っている子たちも本公演に参加出来るんですけれど、それ以外の時期、例えば12月の頭の時期なんかですと、まだ学校もやっていますから、みんな回っているわけです。そうなると公演はどうしても学校上演を卒業した人達10〜11人で、という規模になってくるんですね。その結果、必然的に登場人物を絞って、という形になったんです。

―【め組】のお芝居の特徴として、時代の流れに翻弄されながらも己の生き様を貫く男達が力強く描かれていますね。こうした男臭い話を、女性である合馬さんがお書きになる、その難しさと面白さを教えて下さい。

合馬 それってよく皆さんに訊かれるんですけど、実は意識してそういうものを書き始めたわけではないんです。ただ・・・子供の頃から、例えば小説だと、女の子は『赤毛のアン』を読むものなんでしょうけど、私の場合は『三銃士』の方が面白かったりとか(笑)。本能的にそういのが好きだったんでしょうね。はっきりしたかたちではないですけど、もともとの嗜好がそうだったのかなって思いますね

男性がカッコいいと、女性もカッコよくなる

―与儀さんから「こういう話で書いてくれ」というように持ち掛けることはないのですか?

与儀 ないですね

合馬 ただ、会社の成り立ちから来るものもあったとは思います。やっぱり「硬派」っていうか、かなり男っぽい素材から始まったところがありますから。社長は映画だと『ゴッド・ファーザー』みたいなもの、ちゃんと一人一人の人間を描いていて、侠気があって、っていうものが大変好きですし。そういうところで、趣味の一致じゃないですけど、やっぱり嗜好が合ったんですね。だからこれで「女の一生」みたいなの書いたら、社長、歴史モノ以上に混乱しますよ(笑)

与儀 いや、それは本当(笑)。だから、こういうものの方がいいんですよ

合馬 ・・・今、社会の中で女性が非常に力強くなっていると思うんですけど、やっぱりいつの時代も男性が土台を作り、それを女性が同じぐらいの力でもって支えていくっていう、両方の上手い役割分担というか、そういうものってあると思うんです。そう考えたときに、男性的なもの、父性、お父さんが今、ちゃんと存在しているのか?っていうところで、改めて男の人の力っていうものを考える、そういう時代なのかな、とも思うんです。 あの、私は女なんで、反対に言えば男性に対する憧れがそこにはあるのかもしれませんけどね。やっぱり男の人には元気でいて欲しい。今、女の人が元気ですけど、それ以上に元気でいて欲しいっていう。といって、イキがるとか、そういうことではないんですけどね

―そういうところが、観る方に共感を生んでいる?

合馬 どうなんでしょう。・・・私は書きたいものを書かせて頂いているという、わがままなことしかしていないんですけどね(笑)。ただ、男性がカッコいいと、女性もカッコいいですよね。男性が本当に素敵なら、その男性に関わってくる女性達にもちゃんとフォーカスがいく。ちゃんと存在できるようになるんです

―確かに、め組の舞台に登場する女性たちはとても印象的ですね

合馬 ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいですね

日本人として、残していきたいもの

―時代劇が中心になったのも、やはり合馬さんの嗜好から?

与儀 ええ。そうですね・・・(合馬さんに)特色つけようと思ったの?

合馬 特色をつけよう、ということではなかったですね。やっぱり時代劇の方が私が描きたいテーマについても描きやすい、っていうことで。登場人物ももう大分前に亡くなっていますから、ある程度は自由に描いてもクレームが少ないですし(笑)。それに・・・これは海外を旅行した時に強く感じたんですけど、「あぁ、やっぱり私って日本人なんだ」っていうのがあるんです。ルックス的なこととかだけじゃなく、例えば、「これは白人の文化から出てくるもの」っていうのがあるんですよね。そして同じように、日本の伝統とか文化があり、そこから生まれ出るものがある。それを私はとても素敵なものだと思うんです。残しておきたい情緒とか風情とか、そうしたものが環境的に、表面に出難い時代ではありますよね。でも、そういうものはちゃんと形としても残していきたいな、と。

―だからこそ今の時代に時代劇を

合馬 ええ。・・・まず、言葉がきれいですよね。日本語が

―立ち姿も自然と・・・

合馬 そうですね。美しくなりますし・・・そうしたことって、みんな若いから経験したことないんですよね。で、新人で劇団に入ってきた時って、歩き方一つとっても難しいわけです。
役者さんが役になった時の歩き方っていうのがありますよね。例えば、エリートサラリーマンの歩き方、とか。そうしたことが出来るのが、役者としての基本条件だと思うんですよ。テレビに出ているタレントさんにしても、そうしたことはちゃんと出来るんですよね、きっと。それは器用にこなしていけるし、邪魔にならない存在として、美しくフォーカスの中に収まることも出来る。でも、それに憧れて入ってくる人達って、ある意味、自分が出来るか出来ないかという部分は度外視して来るわけです(笑)。「すぐに出来るんじゃないかな?」っていうのはあるのかもしれないけど、実際に人目に晒されて立った時に初めて、「こんなに何も出来ないのか?!」っていう現実を知るんですね
体を自在に操っていく。それはやっぱり役者さんの一つのお仕事です。そのことを教える上でも、時代劇という形は優れていると思います。極端な形ではありますけど、否応なくはっきりと、その部分が現れますからね。「座れないでしょ? 立てないでしょ? 歩けないでしょ? 『あれ』って指差すのも出来ないでしょ? 暖簾すらくぐれないでしょ?」というふうに。本人が確認できていきますからね。

「上手くなるしかないじゃないの、君たち」って

―確かに、体の使い方をものすごく意識するジャンルですね

合馬 ええ。そうですね

与儀 この人、うるさそうでしょう(笑)? いや、本当に凄いんですよ。自分が(そうした仕草が)綺麗ですから。「俺、劇団員じゃなくって良かった」って思う時、ありますもん(笑)。だから反町の話をしちゃうんですよね。「あいつはいいよ」みたいな(笑)

―でも、そうでないと成立しない世界でもあります

合馬 そうなんですね。・・・やっぱり役者さんには、最終的にはメディア、映画であったりテレビであったりで、日本全国にお顔が知れるところまで活躍して頂きたい、というのがあるんです。そのためには、日本一の美男・美女でもない限りは、やっぱり上手い人、何かちゃんと売りになるものがある人じゃないと、ですよね。だから「メジャーになるなら上手くなるしかないじゃないの、君たち」みたいな感じで、厳しく(笑)

与儀 ちょっとこの人(合馬さん)についてご説明しておきますとね、・・・例えば公演のポスターがありますよね。そのデザインが上がってきて気に入らないとなると、この人、ケチをつけるとかじゃなくって、自分で作っちゃうんですよ。あるいは任侠モノをやる時の背中の刺青、それもこの人が自分で書く。着物の着付けも凄いですよ。とにかく詳しい。そして、これは言っておかなければならないけれど、この人、演技は凄いです。まるで見たことのないような、凄い演技をします。・・・つまり、そういう人なんですよ。マルチなんです。何でも出来る。出来ないのはピアノくらい(笑)。こういう人っているんだなぁ、って思いましたね。
実は、今度の公演のポスターも自分で作ったんですよ。で、これを見た複数の人が「今度のポスターは【劇団め組】のカラーが全部出てますね」というようなことをおっしゃって下さる。そういうふうに、全部やっちゃう、出来ちゃう人。ちょっと厳しいけど、その分やる人なんです。・・・ただ、作品以外のことには頓着しない人でもあるんですね。食べ物の文句とかも言わないし(笑)。一度気に入れば、もうずっとそればっかり食べてますからね、迷わずに(笑)。・・・そんなところまでうるさかったらみんなも大変に思うんでしょうけど、その辺がバランスなんですね

夢を与えられるように

―では今作、『歌舞伎草紙 ひとり忠臣蔵』についてお聞かせ下さい。どういったお芝居になりそうですか?

合馬 ちょっと今までとは違う感じのお話しなんです。だからかもしれませんけど皆さん戸惑っているようなので、「どういうお芝居になるのか」というのはまだ・・・(笑)。私の中のイメージがどう伝わるか・・・これからですね。

―最後に、今公演への抱負をそれぞれ一言ずつお聞かせ下さい

与儀 このお芝居を通して、少しでも役者さんの人気が上がってくれればいいなって、そう思います

合馬 そして、観て頂けるお客様に「来て良かったな」って思って貰えるような、夢をお与え出来るようなお芝居にしたいですね

(文中、一部敬称略)
2003/11/18 文責・インタビュアー:北原登志喜  撮影・編集:鏡田伸幸

BACK STAGE REPORT 〜劇団め組 公演『歌舞伎草紙 ひとり忠臣蔵 』【取材リポート、与儀・合馬インタビュー】〜
→【取材リポート 主演俳優インタビュー】 →【取材リポート稽古風景

BACK


Questions?Problems?Suggestions?Contact backstage@land-navi.com
BACK STAGE【SideA】 Since 1999/09/01.2000/10/01.Presented by LAND−NAVI
Copyright (C) 2003 LAND-NAVI .All Rights Reserved.