劇団ARK】の稽古場で、【level-blue】主宰・いがらしだいすけさんと制作・久保田めぐみさんにお会いした。
level-blue】は野外演劇をプロデュースする為にいがらしさんが立ち上げた団体で、2003年8月に2度目の公演を行なうという。
場所は、ラフレシア円形劇場祭が催されるスペースの、すぐお隣。その縁で、円形劇場祭に参加する団体とも交流が生まれたという。
[deep-blue]公演写真等
BACK STAGE REPORT 〜level-blue[mist] 【取材リポートインタビュー】〜
取材リポートアトリエインタビュー〔mist〕公演写真
いがらしだいすけ 氏

久保田さんが、名刺代わりに一冊のバインダーを手渡して下さった。前回公演、『deep blue』の資料だという。開いてみると、舞台写真・平面図・イメージイラストなどがそこにはあったのだが・・・・・・まず、写真を見て驚いた。徹底的に創り込まれた空間。写真を一見しただけでも世界観が伝わってくる。こだわりが、スケールが、尋常ではない。野外演劇のメッカ・大阪の実力の一端が、そこには現れていた。
斎藤さんのはからいで、稽古場の一隅に席を用意して頂き、しばし御二人に野外公演についてのお話を伺う。

やりたい事を全て形に

― いやぁ、正直、ビックリしました。これほどのものを創り上げるのには相当な苦労もあったと思いますが・・・

いがらし 「・・・そうですね。建て込みだけで45日間かかりましたし・・・

 ラフスケッチからはじまり、図面をおこし、模型を組んで、建て込みへ。その建て込みが、45日間。しかも50人がかりだったという。途方も無いスケールだ。もちろん、費用もかさむ。ただ、その費用の一部は大阪市からの助成金でまかなえたそうだ。

― では、経済的負担はそれ程ではなかった?

いがらし 「いえ、決して軽くは・・・(笑)。やりたい事は出来る限りやろう、って思ってるんですけど・・・・・・際限が無くなるというか(笑)

 そのいがらしさんの言葉を、久保田さんが苦笑いしながら聞いている。制作の久保田さんは、さぞかしシンドイ思いもしたのだろう。

久保田  「ええ。確かに大変なんですけど・・・・・・ただやっぱり、私も、いがらしがやりたい事を全てやって欲しいと思ってますから

 だから敢えて経済的な苦労は口にしない。その気概が、気持ち良い。

贅沢な空間、贅沢な時間

― 野外公演の面白さってなんでしょう?

いがらし 「・・・その芝居専用の空間を創り出せる事ですね。頭の中にあるものをトータルで形に出来る。それが1番ですね

 1つの芝居を演じる、その為だけの劇場。確かにこれは自分達で作るしかないが、考えようによっては、とても贅沢な話である。

いがらし 「もちろん、天候が影響してくるので、何が起こるか分からない、という難しさはありますけど。実際、僕は10年くらい野外でやってきて、その中で、風で屋根が飛ばされたり、雨で公演が中止になったり、っていう事は何度もありましたから。けれども、小屋には無い、空気だとか、匂いだとかもその世界に採り込める。空間としてはやっぱり野外の方が深みが出ますね

― 大阪の野外演劇は風土に根差したお祭り的ノリが特徴、と聞きますが、そういう部分は感じますか?

いがらし 「それはもちろん。お客さんも、芝居を観る気持ち半分、お祭り的な空気を楽しむ気持ち半分という所があると思います。・・・僕がずっと所属していた【維新派】さんの場合だと、劇場の周りに屋台が立つんですね。縁日みたいに。
で、その縁日からお客さんが劇場に流れてくる。・・・だから、お芝居なんでどうでもいい、っていうお客さんも中にはいると思うんですよ(笑)。でも、野外という空の抜けた空間の下、ビールでも飲みながらなんとなく眼前でやってることに目を遊ばせる、そういう時間を、内容を超えた世界で楽しめるっていうのは、これもまた野外劇ならではだと思いますね

2年がかりのプロジェクト・『mist』

― 今作『mist』ですが、ラフレシア円形劇場祭への参加作品にする構想はなかったのですか?

いがらし 「ええ。・・・この作品は2年近くかけて準備してきたんですね。それが急遽、『円形劇場祭に参加する形で』となると、変更しなければならない部分も出てくる。それは避けたかったですから、もしお話を頂いていたとしても、参加は見送ったと思います。・・・ただ、演劇祭自体はすごく良い事だと思っています。これをきっかけに野外演劇という文化が広がっていくかもしれないという意味でも、とても期待しています

― 【level-blue】さんの公演はプロデュースの形をとっていますね。出演者やスタッフはどうやって集めるのですか?

久保田  「公募です。広告(チラシ)やWEB上で募集します

― 演技未経験者でも構わないのですか?

いがらし 「ええ、経験は問いません。大事なのは気持ち、ですね。チラシその他を見て、その世界観を好きになってくれて、関わりたい、作りたいっていう気持ちがあれば。技術的な事を言えば、僕らだってそんな、ムチャクチャ技術がある訳じゃないし・・・・・・素人根性でやってるみたいな所、ありますからね(笑)

 2年がかりで進めてきたプロジェクト、『mist〜不確かな言い伝えだけを頼りに〜』。
 それを支えるのは「素人根性」。すなわち、打算を知らず、‘程々’などという言葉も知らない情熱だ。
大阪市の助成も再び得て、【level-blue】はその情熱を胸に、前作同様、あるいはそれ以上のスケールで独自の世界観を紡ぎ上げることだろう。

いずれは大阪から世界へ

― 【level-blue】さんの公演にしろ、ラフレシア円形劇場祭にしろ、そのスケールの大きさに驚くと同時に、それを可能にする大阪という土地の懐の深さにも、改めて感銘を受けました

いがらし 「確かに僕らのやっている事を、例えば東京でやろうと思ったら・・・難しいでしょうね。土地代にしても、規制にしても、東京は厳しいですから。予算だけで考えても、3倍はかかるでしょう

― ただ一方で、その大阪で今、劇場が相次いで閉鎖されたりもしていますね

いがらし 「そうですね。僕は劇場でやった事はありませんけど、閉鎖された劇場にも、お客としては行っていましたから、やっぱり寂しいですね

久保田  「それと・・・制作的な話をすれば、野外でやる私達にとっても、劇場は情報の窓口なんです。お客さんに、私達の情報に触れて頂ける場、そういうインフォメーションの場が減る、という意味でも、劇場の閉鎖は残念ですね

いがらし 「・・・まぁ、でも、それで僕らのやりたい事が妨げられる、という事はないんですけどね


 自分のやりたい演劇の形、それを野外演劇に見出したいがらしさん。野外演劇をやる為に、東京から単身大阪に来たという。そんないがらしさんにとっては、大阪は変わらず、自らの表現に適した街のようだ。

いがらし 「・・・いずれは、東京といわず、海外でも公演が出来たらって・・・・・・夢なんですけどね

 横で聞いている久保田さんが再び浮かべる微苦笑。制作さんの、その複雑な心中を知ってか知らずか。いがらしさんの迷いのない眼は、『mist』の更に先にも向けられていた。その視線が、東京を飛び越さない事を、東京の人間としては願いたいのだが・・・
 だが、それはまた先の話。今は『mist』という架空の森を、その壮大なイメージの奔流を楽しみに、大阪の暑い夏を待ちたい。

主宰 いがらし だいすけ
野外劇で有名な劇団維新派に8年在籍し役者として又、スタッフとして活動してきた。
同じく野外劇団「プリティー・ヘイト・マシーン」
「インパクトドライブ」等にも参加し、舞台監督を務めるなど、野外劇の発展に力を注いできた。

制作 久保田 めぐみ
deep blueでは制作と飯場を担当。

(文中、一部敬称略)
2003/3/12 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

[deep-blue]公演写真等
BACK STAGE REPORT 〜level-blue[mist] 【取材リポートインタビュー】〜
取材リポートアトリエインタビュー〔mist〕公演写真

BACK


Questions?Problems?Suggestions?Contact backstage@land-navi.com
BACK STAGE【SideA】 Since 1999/09/01.2000/10/01.Presented by LAND−NAVI
Copyright (C) 2003 LAND-NAVI .All Rights Reserved.