BACK STAGE REPORT〜ラストクリエイターズプロダクション『落ちる飛行機の中で』【中津留章仁インタビュー(2)】〜
【TRASHMASTERS】でそうであるように、中津留さんは今公演でも脚色と同時に演出の仕事も手掛けている。
「自身で書く作品」と「原作のある作品」とでは、演出にも変化が生まれるのだろうか?
また、小説→舞台というメディアへの「移植」には、どういう意味、可能性があると考えているのだろうか?
中津留さんはアゴ髭をいじりつつ、真剣にその返答を考えてくれる。

中津留章仁インタビュー(1)
小説→舞台への「移植」という行為
―今公演もその一つなのですが、ある作品の別メディアへの「移植」という行為を、中津留さんはどのようにお考えでしょうか?

う〜ん……小説として書かれたものである以上は、小説として読むのが一番面白いはずなんですね。読み手の数だけイメージ、解釈があるでしょうし……それを視覚的に見せられたときに、やっぱりイメージと完璧にフィットすることってあまりないと思うんです。僕自身、そういうことはよくありますし……。
ただ個人的には、視覚的に見せる上で、舞台というのは抽象的な余地というのがまだ多くある媒体なんじゃないかな、と思っています。例えば、「舞台上のセット」であること自体が、ある意味すでに抽象的なものじゃないですか。
……そういう意味で、小説という同じメディアからの「移植」ではありますが、映画とはまた別物だと思いますね。ただ、乙一先生の小説に関しましては、ご自身が映画好きであったりすることもあって、ある程度最初から映画・舞台などの視覚化に適した作品になっているとは思います。


―今後も原作物を手掛けようという展望は?

そこら辺は、これからも勉強して探っていきながら、という感じで。例えば原作物を扱うにしても、設定などだけを使って全く違うオリジナルストーリーにしてしまって、観終わったときに原作と同じ気持ちになれれば、それは一つの方法論かもしれませんし……原作との向き合い方って、色々あると思うんです。
「脚本」の演出と、「脚色」の演出
―演出も同時に手掛けられていますが、ご自身で書く「脚本」と、今回のような「脚色」とで、演出に違いはありますか?

全体的なタッチさえ決めてしまえば、そんなに大きな違いはないですね。今回の作品は特に、まずコメディタッチということで、そこである程度の演出的な「アリ」「ナシ」というラインが自然と引かれますので……その線引きさえ間違わなければ、あとはそんなに違いというものはないです。

―小説で表現された活字による情景の、「視覚的な見せ方」の演出としてはどうでしょう?

演出的には、そこが一番大きな違いかもしれません。この作品、小説は主人公の「私」という視点から描かれているんですが、それを舞台で見せる場合、メインがやり取りをしている間にも周囲では当然すすり泣いている人、怖がっている人が実際にいるはずなんですね。主人公たちだけでなく、そんな周囲の乗客に対しても観る人の感情移入を分散させる。だからこそ、その中で主人公たちの「周りから妙に浮いた様子」がより際立つという……視点を全体的なものにすることによる、「物語を見る角度」の変化と言うのでしょうか? こういった演出作業は、自分が書く脚本ではありませんので。

―原作を知っている方にとっては、「あの状況が、舞台でどういう風に観られるのか?」という楽しみもありますね。

そうですね。原作にない役、エピソードというのがかなり多いんですけど(笑)。ただ、それだけに物語りの先読みもできつつ、同時に先読みできない展開もあるという面白さはあると思います。原作を知らない方にも、もちろん楽しめる芝居になっていますし。
豪華な出演者陣との芝居作り
―非常に豪華な出演者陣が名を列ねていますが、原作や脚色のイメージからオファーを出されたのですか?

はい。プロデューサーと話をして決めました。その時点ではまだ台本は出来上がってなかったんですが、「これはこういうキャラで」という各キャラクターのイメージを伝えながら決めていきましたね。

―各役者さんたちの役どころは?

え〜と……これは観てのお楽しみとしておいた方がいいのかな(笑)? バラしちゃわない方が面白いかもしれません。

―経験豊富な役者さんが多いと思いますが、稽古場などで「さすが」と思うことはありますか?

それはもう、多々ありますね。やっぱりいい役者さんたちと一緒にやっていると、どんどん高度な要求ができるといいますか……演出としても本当に楽しいですね。「あ、こういうこともできるかな?」「これもできないかな?」と、どんどん質の高いものにしていけるんです。

―役者さんたちの感性に触発される?

感性のセッションですよね。役者さんの「こうしたい」というものと、僕の「こうしたい」というやり取りが、より高次元で行なえる状態といいますか。役者さんとしては、時には演技の中でアドリブというものもあると思うんですが、僕としては芝居が壊れない限りは全くOKですし。

―最後になりますが、インタビューを読まれる方に今公演への意気込みなどがあればお願いします。

まだまだこれから作り込む部分もあるんですが……ただ、面白い、面白くないというのは人によって違うでしょうから、そういう意味でもなるべくたくさんの方が楽しめるように作ろうとは思っています。……こういうコメントって難しいですよね。あんまり強気なことは言えないんですけど、弱気すぎてもいけないし(笑)。

―(笑)。本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。
絶大な支持を持つ原作への敬意。稽古場で絶えず豊かな感性を見せる役者たちへの敬意。そして、これまで様々な「脚色」の形を提示してきた先達への敬意。中津留さんはそれらの敬意を常に心の中心に据えながら、自身の一表現者としての可能性を模索しているように見える。
確かに、原作への敬意がなければ、それを超える脚本を作るのは難しい。役者たちへの敬意がなければ、細部までこだわった緻密な演出を要求するのは難しい。そして、先達への敬意がなければ、それを認めた上で新たな道を目指すことも、また難しいのではないだろうか。
小説という媒体が舞台演劇に「移植」されたとき、一体どんな作品になるのか? それがライブで再現されたとき、一体どんな形になるのか? それは過去にも様々に試みられてきたことだが、中津留さんの真摯な姿勢を見ていると、舞台演劇というメディアにはまだまだ新しい形の可能性が残されているのだろうと素直に思えてくる。

その一方でこの『落ちる飛行機の中で』は、長時間に渡り稽古を見学した限り、一舞台作品としてもかなり見応えのある作品になっていると感じた。
原作を知っている方、知らない方、人により様々な楽しみ方があるだろうが、皆さん是非劇場に足を運んでみて、登場人物たちと共に擬似墜落を体験してみてはいかがだろうか?
(文中、一部敬称略)
2005/2/9 文責・インタビュアー:毛戸康弘 撮影・編集:鏡田伸幸

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中津留章仁インタビュー(1)

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