BACK STAGE REPORT〜ラストクリエイターズプロダクション『落ちる飛行機の中で』【中津留章仁インタビュー(1)】〜
インタビューの場所は、役者さんたちが勢揃いした稽古場のまさにど真ん中だった。周囲では汐風さん、樋渡さん、らっきょさんなど、そうそうたる顔触れが稽古に備えている。
二十人近い役者さんたちの熱気が充満する室内……そんなプロの仕事場の雰囲気に若干緊張しつつも、稽古休憩の合間を縫ってまずは今公演の経緯、そして「脚色」という仕事の詳細から伺うことにした。

中津留 章仁氏
last creators production主宰。
トム・アクターズスタジオを経て、99年last creators productionを設立。
以降KUUKANSHIJIN及びTRASHMASTERSの全ての作品に出演し、全ての脚本・演出も手掛ける。
lcpの頭脳
映画公開に先駆けた舞台公演
―今回はいつもの【TRASHMASTERS】ではなく、【ラストクリエイターズプロダクション(以下LCP)】という名前でのプロデュース公演になりますね。

はい。【LCP】としての公演は今回が初めてになるんですけど、元々舞台製作もやっていきたいと考えていましたので……ゆくゆくはこういったプロデュースができることを見越して、制作チームとしては【TRASHMASTERS】ではなく【LCP】という名前にしていたんです。

―その【LCP】の記念すべき第一回公演、『落ちる飛行機の中で』。原作は乙一(おついち)氏の短編小説ですが、この作品を舞台化するに至った経緯は?

3月に、今回の作品も収録されている乙一先生の『ZOO』という短編集がオムニバスの映画になるんですけど……たまたま僕の友人がその映画を作っている東映さんにいまして、映画公開と同時にコミックや演劇など他の媒体でも乙一先生を盛り上げていきたいと考えていたみたいで。その一環として、舞台をやってもらえないかという話を貰ったんです。

―『ZOO』の中から、この作品を選んだ理由は何でしょう?

好きな話を選んでいいということだったんですけど、やるなら映画には入っていない作品にしたいと思っていました。なので、それを前提に選択して、この『落ちる飛行機の中で』が面白いんじゃないかな? と。

―自作の舞台化に対する、乙一先生の反応はどうでしたか?

楽しみにされてましたね。自主映画をご自身で撮られているくらい映画が好きな方なんですけど、舞台化もかなり期待して頂けているみたいです。
原作物の「脚色」という仕事
―今回は「脚色」というお仕事になるのですが、ご自身で書かれる脚本と違う点は?

原作を知っている方にもいかに楽しんでもらえるかという工夫が一つ大きな作業になりますね。一方でもちろん原作を読まれていない方もいますし、乙一先生のファンの方や僕がやっている【Trash Masters】のファンの方、出演者さんたちのファンの方もいますので、そういった色んなお客さんの層を想定して色んな楽しみ方のできるものにしようとは思っています。

―具体的に、どのように小説を台本に起こしていくのでしょう?

まず大もとのストーリーがすでに原作としてありますので、その中の個々のドラマを抽出して、僕なりの解釈を入れながらドラマ性を広げていく作業が主になります。あまりにもそのままのお話にしてしまうと、「だったら僕じゃなくてもいいんじゃないか?」となってしまいますから(笑)。決められたお話の中で、いかに舞台脚本として僕なりの色・解釈といった作家性を出すかですね。
…でも、今回は割と原作に忠実になっているかな? もっと色んな部分を切り刻もうと思えばできたと思うんですけど……例えば普段【TRASHMASTERS】でやっているものというのは、比較的血の気の多い客層を対象にした、小劇場の先端・エッジの部分を狙って作るんですけど、今回はもう少し一般的な価値観といいますか……テレビで言うと【TRASHMASTERS】が深夜枠なら、今公演は22時辺りのプライムタイム枠のものにしたいな、と(笑)。


―「脚色」において心掛けていることはありますか?

そうですね……「原作物の脚色」の方法論というのは、すでに色んな偉大な先輩の方たちが様々に、巧みにやってこられていますので、僕ら若手が同じことをやっても仕方ないと思うんです。ですから、まだ耕されていない新しい道というのを、僕らは先輩たちに敬意を表す意味でも模索していかなくちゃいけないと思うんですね。

―中津留さんの中で、その道・方向というのは、現時点ですでに見えているのでしょうか?

一つの方向はやっぱり【TRASHMASTERS】にあるのかな、と。突き詰めれば、結局は作り手である僕のオリジナリティの追求になると思いますし……そんな僕が手掛ける脚色というのも、一つの方向性であるとは思います。脚色なんてやらなそうな、嫌がりそうな人間が手掛けた脚色であるという(笑)。

―既存の方法論に敬意を表するからこそ、違う形を目指すと……。

人と同じことはしたくないな、という思いが常にありますので。原作を脚色する以上、何らかの真新しさというものがないとやっぱり面白くないと思うんです。やるからには原作を知っている方のイマジネーションを超えたもの、捻りを加えたものをお見せしないと……ただ、あまりに新しい、奇抜なことをやろうとしすぎては失敗することもあると思いますので、そこはやっぱりバランス感覚も必要なんでしょうね。

―中津留さんの書かれる脚本は「人間ドラマ」が一つの持ち味だと思うのですが、今作ではどうですか?

ドラマはありますね。やっぱり人間が織り成す物語ならば、そこに必ずドラマというものは生まれると思いますので。
ただ、通常【TRASHMASTERS】でやっているドラマは、人間の汚い部分や見たくない部分など、言葉にできないようなディープなものが多いんですが、今回はそういった過激なものではなくあくまで原作本来の物語性を重視しています。


―それは通常公演とプロデュース公演の、一つの差別化でしょうか?

ええ。今回はもっと一般的に、より広い層にアクセスできるように考えていますので。そういう意味での差別化というのはあります。ただ、こうやって凄い役者さんたちと一緒に仕事をするチャンスを得ることで、僕を含めた【TRASHMASTERS】のメンバーたちのレベルもアップしていると思いますし……通常公演にもフィードバックできるであろう、芝居作りに関するいい影響というのは物凄く受けていますね。
人気作家・乙一氏のシチュエーション・コメディ
―今作はシチュエーション・コメディ的な要素の濃いお話ですね。乙一先生といえば、ホラーというイメージが強いのですが。

そうですね。乙一先生には、「白乙一」「黒乙一」という二面があるようでして……抒情的なノスタルジックな作風と、ホラーな作風のものを、ファンの方なんかが白と黒に分けてらっしゃるみたいなんですけど。今回は落ちる旅客機という緊迫した状況のパニック劇ですが、コメディテイストですので「黒乙一」というわけではないです。ですので、原作の「笑い」の部分であったり、「粋(いき)」な部分というのは、できるだけ残したいと思っています。原作ファンの方には、そういった部分を期待されて観に来られる方もいるでしょうし……。

―原作では、主に三人の人物を中心に物語が進行しますが、それに比べて今回は出演者が多いですね。

はい。メインはやっぱり原作通りの三人なんですが、あとの人物はほとんど全て脚色ですね(笑)。既存の人物の設定は、基本的には崩していないんですが。

―では、それだけオリジナルエピソードも多いのでしょうか?
そうですね。乙一先生からも「ある程度自由に作ってもらって構わない」と言って頂いてまして……そういう意味ではいっそエンディングまで変えてしまうという手もあったんですけど、そこはやっぱり原作通りの流れにしようと……言い換えれば、もとより流れを大きくいじる必要のない作品だと思っていますので。
中津留章仁インタビュー(2)
(文中、一部敬称略)
2005/2/9 文責・インタビュアー:毛戸康弘 撮影・編集:鏡田伸幸

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中津留章仁インタビュー(2)

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