BACK STAGE REPORT 〜北区つかこうへい劇団〜父親が挑む『蒲田行進曲』〜【山本哲也インタビュー2】
 つか氏の作品に出会ったからこそ、演劇の世界に足を踏み入れたと言う山本さん。
 彼は「つかこうへい」という人物の何に惹かれ、どんな影響を受けたのだろうか? そして、つか氏の遺伝子を受け継ぐ山本さんの指揮する稽古場とは、どのようなものなのだろうか?
 ……興味深い話の連続に、気付いた頃には予定のインタビュー時間を大きく経過してしまっていた。
山本哲也インタビュー(1)
つか氏からの期待、周囲からの期待
―山本さんにとって、つかこうへいさんとはどういう存在なのでしょう?

 難しいですね(笑)。僕はもともと「芝居」が好きというより「つか芝居」が好きで入ってきた人間ですし、劇団に入ってからも運転手であったり事務所の手伝いであったりと、四六時中ご一緒させて頂いていた時期がありまして……一言でいうなら師匠・先生であり、親父みたいな存在でしょうか。とにかく凄く優しい人で、凄く厳しい人で、凄く怖い人で、それでいて常に頭の中は回転していて、かと思えば周囲の僕らにもとても気を配ってくれたり……繊細でダンディーな方ですね。単純に男として格好いいです。

―つかさんから言われた「父親らしい仕事」とは、どういう仕事であるとお考えですか? 以前、HPでは「分からない」と言われていましたが……。

 まだ見えて来ないですね(笑)。この公演が終わった時に分かればと思います。例えば父親として、「守るべきものがあるから戦う」ということはあると思うんですが、反面そんな理由とは関係なく常に戦っているべきだろうとも思いますし……明確に決めたくない気持ちがあるんですね。そういう意味でも、終わった時に何かしら感じるものがあればなぁ、と……。

―今回に当たり、他につかさんからかけられた言葉はありますか?

 今のところないですね。ないからこそ怖くもあります(笑)。でもその反面、じっと見守っていてくれているのかな? と。

―周囲の方からはどうでしょう?

 みんなで盛り上げてくれていますね。今回、曲のアレンジをやってくれているバンドで「The Hundreds」がいるんですが、彼らのつながりのエンジニアの方やレコーディングスタジオの方たちからも「そういう話なら、俺らも協力するよ」と言って頂いたり……そういうことが凄く多くて、本当に感謝しています。。
【北区つかこうへい劇団】の稽古場
―現在はどんな稽古をされているのでしょうか?

 今日が全員が集まる最初の日です。これまでは構成を含めてメイン部分の芝居を中心に四、五人でやってきたんですが、今日から全員で仕切り直しましょうという感じですね。

―久し振りに戻ってきた【北区つかこうへい劇団】はいかがですか? 変わった部分、変わらない部分はありますか?

 変わらない部分の方が多いですね。本当にみんな、芝居が好きでつかさんが好きで……知らない若い子も増えていますので、これからの全体練習で僕も何かしら刺激を受けられるんじゃないかと期待しています。

―今回演じられる銀四郎とは、どういう人物だと捉えられていますか?

 一言で言うと、哀愁の男です(笑)。

―演出と役者を両方手掛けることでの、何かこれまでの稽古との違いはありますか? 特に苦労される点などは?

 う〜ん……本当に苦労するのは、多分これからなんでしょうね。これまでは少人数でやっていたので、視点が拡散しないで済んだんですけど、これからはもっと全体的に芝居を見渡さなくてはいけなくなる。加えて役者としての自分も作り上げていかなくてはいけませんし……これからその両立の難しさが出てくるんだと思います。最初は役者と演出の仕事に区切りをつけようと、演出として見る時は自分の役を誰かに代わってもらったりしていたんですけど、気付いたらいつの間にか自分でやっていたりしまして(笑)。

―ヤス役の吉浦陽二さんの印象をお聞かせ下さい。

 吉浦とは以前から一緒に芝居をやっていましたので、よく分かっているつもりです。ヤスに関してはもう、彼なりにやってもらえれば大丈夫だろうと思っています。細かい部分の要求は出てくると思いますが、大まかな部分での心配というのはほとんどないですね。今回も期待通りやってくれるだろうと。

―小夏役の高野愛さんの印象はいかがですか?

 高野は劇団員の中では珍しく結構頭で考えて芝居をするように感じてます。それはすごくいいことで、まあ、僕自身もそういうタイプだったりするんですが。その頭で考えたところと稽古しながら感じたところ、それらがうまくつながっていけたらなあと。まあ僕の仕事でもあるのですが。似た者同士、うまくやっていきたいと思っています。
役者として・演出家として・父親として
―山本さんは以前、劇団の養成所に在籍されていながら一度ご就職を経て入団されたり、二年前に退団なされてからまた今回のように公演に参加されたりと、非常に劇団との強い縁があるように感じます

 結局こういう風に気にして頂けるということは、僕は一番手のかかる子供なのかな、と(笑)。そういう意味でも、ここらでちゃんと一人立ちしたところを見せなくちゃいけないなと思っています。

―ご長女がお生まれになったことで、何か変わられた部分はありますか?

 どうでしょう……細かいことにあまりこだわらなくなってきたような気はします。「なるようになる」ではないんですが、細かいことをいちいち気にしていても、娘は日々成長するわけでして(笑)。あまり意識し過ぎても仕方ないんじゃないかと。

―今後も役者と並行して、演出の仕事をやっていかれるのでしょうか?

 そうですね。メインでの演出の仕事は今回が初めてなんですが、とても興味のある仕事ですので。もし今回いい感触が掴めて、その上で次の機会というものがあれば嬉しいですね。もちろん役者もやり続けたいです(笑)。
―……では、インタビューを読まれる方に、改めてPR、意気込みを。

 とにかく『蒲田行進曲』という作品は……つかこうへいの作品というのは面白いので、それを裏切らない作品にするつもりです。期待して観にきて頂きたいですね。

―最後に、父親としてご長女さんにもメッセージを……。

 今回こうやって「長女誕生特別公演」と世に謳っていますので、大きくなった彼女がこれをどういう風に思うかが少し心配ではありますが(笑)。……現時点でのメッセージとしては、「勝手に使ってゴメンね」というところでしょうか(笑)。

―(笑)。本日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。
 山本さんはつか氏のことを話す時に、まるで自分のことのように目を輝かせて話す。それはあたかも劇中で銀ちゃんのことを嬉々として語るヤスさながらである。
 しかし、お話を伺う中……ヤスがいつしか小夏とそのお腹の子を心から愛し始めたように、山本さんもまた『蒲田行進曲』という作品をつか氏の存在とは独立した形で改めて愛し始めつつあるように感じた。
 役者として、演出家として、そして父親として、一人立ちした山本さんの贈る『蒲田行進曲』……これは紛れもなく、山本哲也という一人の演劇人の戦う姿であり、同時に一人の父親の娘へと向ける行進曲なのではないだろうか。
2005/11/1 文責・インタビュアー:毛戸康弘 撮影・編集:鏡田伸幸
BACK STAGE REPORT 〜北区つかこうへい劇団〜父親が挑む『蒲田行進曲』〜【山本哲也インタビュー2】

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