「プロデュースユニット」…この言葉を小劇場界で目にするようになって久しい。
敢えて「劇団」という体裁をとらず、公演ごとに役者を集める演劇集団。「半劇団・半プロデュース団体」と言ってもいい。
当初は新鮮だったこの形態も、今では演劇を始める人たちにとって当たり前の選択肢となった。
今回のBACK STAGE REPORTで紹介する【クロム舎】も【ダムダム弾団】もそうしたプロデュースユニットの形をとる団体である。
その両団体の主宰、西山聡氏と藤森俊介氏に劇団未満(?)の面白さと難しさを、対談を通して語ってもらった。

BACK STAGE REPORT 〜クロム舎×ダムダム弾団〜【主宰対談レポート2】〜
ロム舎過去公演写真ムダム弾団過去公演写真主宰対談レポート1
森俊介 氏(ダムダム弾団 主宰)
1976年、静岡県出身。作家・演出家。
【劇団昴】の映画放送制作部や帝国劇場での舞台部などの勤務を経て、’02年、【劇団ダムダム弾団】を旗揚げする。
「壮大な世界観」を「過剰な笑い」と「壊れかけたセリフ」で脱構築する作風を得意とし、
近作『PARADISE★FISH/世界がもしアイツとアイツだけだったら』では2003年王子小劇場佐藤佐吉賞の優秀脚本賞を受賞。
現在、テアトルアカデミーにおいて講師を務めている。

主宰対談レポート1】→

ッキングが面白いですよ

―今回公演のお話を聞かせて下さい。まず【ダムダム弾団】さん。今回はどんな舞台に?

藤森 ちょっと話が離れますけど、初めにも言ったように、うちは旗揚げした時には横の繋がりは全く無かった。けれど僕個人の経歴として、色んな演劇の世界に足を突っ込んではいたんです。そこで新劇の人たち、ミュージカルの人たち、芸人さんたち、いろんな人たちの考え方に触れてきました。そんな僕がやりたいのはね…もう、本当に色んなジャンルの人が出る芝居のプロデュースユニットなんですね。アイドルがいてもいいっていうのもそういうことだし、芸人がいてもいいし、新劇の人がいてもいい

西山 どういう世界観ですか(笑)……雑食?

藤森 すごい雑食ですよ。例えば新劇の人にしかない雰囲気ってあって、それを持った人がこれをやるから面白い、というのがある。あるいはミュージカルの人がここでちゃんと踊れるから場が締まる、というのもあるわけですから。
で、今回の作品の話になりますけど、今回、その「ブッキング」という部分で、とても面白いことになっています。面白い作品になりますね

西山 プロレスラーとかは出るの? みちのくプロレスの人とか

藤森 いや、プロレスラーは出てこないけどさ(笑)

西山 残念。そこまで行ったら藤森さん、作家じゃなくて興行師になれるのに(笑)

藤森 (笑)……今回はみんな小劇場の人なんですけど、小劇場界の中でも、それぞれみんな違うんですよね、価値観が。そういう価値観の違う人たちが集まっている。しかも自分で劇団を主宰している人が2人も出演するんです。今、その人たちと稽古場で対峙していて、まだ僕のやり方に馴染んでいない。だから面白いですよ。これをどうやって馴染ませて、それぞれの良さをそのまま残すか。そこの演出的な作業が非常に楽しいですね。

西山 話は? どういう話なの?

藤森 何て言ったらいいんだろう? …うちは劇団のキャッチコピーが「混沌の中で生きるバカ」なんですけど…まぁ、こじつけなんですけど…

西山 「こじつけ」って…言葉選べよ、もうちょっと(笑)!

藤森 いや、そこがいいんだって(笑)。お客さんには軽い気持ちで見て貰いたいじゃない。…とにかく、今回も混沌の中で生きる人々の話です。その人々を、面白い役者が演じている。その姿を見て欲しいですね

いイメージを確認したい

―【クロム舎】さんは今回、敢えてオリジナルメンバー3人だけで舞台を作るそうですが

西山 そうですね。しかも通常、本公演は僕が作 / 演出をするんですけど、今回は3人が芝居なりコントなりをとにかく1本書いて、それを持ち寄って構成するんです。何故そんなことをやるかというと……例えば笑いをとる意欲だとか才能でいうと、武藤君や清水の方が僕より優れたものを持っていると思うんですね。それは元々この二人が役者として切ったスタートの違いから来るものでもある。特に武藤君に至っては学生時代、オールラウンドサークルに入っていたっていう(笑)……そんな奴、小劇場にはいないでしょう? そういう所で鍛えられた「場を盛り上げる嗅覚」みたいなものは僕なんかよりずっと凄いものがありますよ。でも、3人でやっていくという時に、この2人はこれまで僕に合わせてきたわけです。当然、「やりたいけど出来なかった」こともあったはずです。それを今回、全部やってしまおう、と。そうすることである意味、今まで以上の【クロム舎】の強いイメージ、「【クロム舎】ってこういう劇団なんだ」っていう強いイメージが見えてくるんじゃないかと期待しているんです。3人がやりたいことをやる。新しいスタートという意味合いでもあるんですね。で、そこで掴んだイメージを基に、9月末からの本公演ではまた僕が作 / 演出をする。これは今までのテイストと若干違ったものになると思います

―その9月からの本公演では、女性も出演するそうですね?

西山 ええ。うちはなんだか男性劇団みたいに思われてるんですけど。……僕ねぇ、実は「男だけの方が楽かな」と思ってたんですよ。でも、やってみたらそんなことなかった。男はねぇ…面倒臭い(笑)。傷つきやすい。「なんでこんなことで傷つくんだよ? 弱ぇ〜!」みたいな(笑)。

藤森 弱いところ見せちゃうんだよ。お互い男だから

西山 そうそう。ぶっちゃけ過ぎっていうか。だから飲み会だとそこかしこで喧嘩が起きてるし(笑)。やっぱりね、女の人がいないと男はどんどん駄目になりますね


―【ダムダム弾団】さんはいつも女性が出演しますよね

藤森 そうですね。基本的にうちは旗揚げから全作、主役は女の子ですし……だからと言って「女の子をどう描くか」ということを特に意識するわけではないんですけどね

西山 でも藤森さんの女性観が絶対出るでしょ?

藤森 うん、それはあるだろうね…って言うか、僕は女の子が好きなので、だから女の子を描いてるのかなぁ?

西山 なんだよ、その援交の匂いがするようなコメントは(笑)?

藤森 (笑)……だから、女の人しか出演しない舞台を作ってみたいという思いはありますね。アイドルも呼んで

西山 好きだよねぇ、アイドル……でも、女性の演出は楽しみですね。それとね、僕、亜流から始まった人のイキイキとした感じって楽しくて好きなんですよ。武藤君がいい例だけど。だからそういう、ダイアの原石のような人に出会いたいですね


い役者とは何か

―その「原石」を磨くということでもあるかと思いますが、両団体ともワークショップを積極的に行っていますね

西山 【ダムダム弾団】さんは月に1回くらいやってますよね?

藤森 うん、そのくらいはやってるね。例えば、1回出演してもらった役者さんにまた出演してもらう、その時には前回と違う部分を出して貰いたいという場合、やっぱりそれは定期的にやっておかなければならないことなんですよ。定期的に見ておきたい。それと、【クロム舎】さんは今回3人だけで公演を行うそうですけど、うちは【ダムダム弾団】のメンバーだけでの公演って、イメージが湧かないんですよね。だから、そういうイメージを湧かせる為にワークショップやっている、っていうのもあります。……もっとも役者達は客演してて全く出て来ないんですけど(笑)

西山 なに? 仲悪いの?

藤森 クロム舎よりは全然仲いいよ。クロム舎、仲悪いもん!

西山 いや、うちは仲が悪いんじゃなくて、距離を置いてんの。疲れるから。だってあいつ、オールラウンドサークルだよ? テンションが違うって。生き方が違い過ぎる(笑)

藤森 (笑)……とにかく、うちのワークショップでは、まず「いい役者とは何か」というところから始まります。もちろん「いい役者とは何か」っていうのは考え方・価値観、人それぞれですよね。そこを考えてもらう。例えば、面白い役者がいい役者なのかどうか。僕は「面白ければいい」という考え方もあると思うんです。笑いが取れればそれだけでいい役者、っていうのもあると思う。「だったらその部分を伸ばしましょう」と。で、目的に合わせたパターンの中から、必要に合わせて参加してもらうわけです。パターンは色々あって、エチュードをやる時もあれば、単純に体を動かすだけの時もあれば、吉本出身ですから漫才をやる時もある。それで「笑いは取れるようになったけれども、芝居が出来ない」ってなった時には、じゃあ芝居の部分はこっちのワークショップで伸ばしましょう、っていう具合に

西山 そんな風に目的別に設定してるんだ

藤森 いや、じゃないと定期的にやる意味がないし、やっぱり客演だとか普通の人も呼んでワークショップをやっているんだから、その人たちの来るメリットがなければいけないでしょ? ワークショップをやるメリットが劇団の側だけにあるっていうのはおかしいですから。だから、ある役者さんには「この回は来なくてもいいけど、この回はこういうことをやるので来て下さい」っていう風に言います。特性を伸ばす為、あるいは駄目なところを強化する為に。…例えばね、役者さんによっては「あなたはここは伸ばす必要はないよ、伸ばそうとしてもメリットないよ」っていう部分だってあると思うし

付くことって大事ですよ

西山 藤森さんの、そういう目的設定は意外でしたね。うちはそういうのはないですから。もちろん定期的にやっているわけじゃないというのもありますけど…。
僕がワークショップでやっていることっていうのは、芝居をしていない状況、台本を与えられていない状況で…つまり自由な情況でいかに役者さんが素を晒して面白がれるかっていうことです。コミュニケーションをとって、芝居というフィルターを通さない状況でその人の本質を見る、見てもらう。例えばエチュードをやって、そんなに面白くなかったりとか、間が持たないとか、そういうことも体験してもらいたいんですね。全く上手くいっていない瞬間、全く何も生まれない空間、そういうものもみんなに見て欲しい。その中で、例えば笑いを取れない役者さんが、そういう自分に気付く。気付くことって大事だと思うんですよ。気付けば自分はどんな形で演劇に携われるのか考える契機になりますし。自分はどういうあり方で、どんな佇まいで立っていられるかっていう根本的な部分に気付いて欲しい、そのためのワークショップなんです

藤森 自分の中にある負のものに気付く為のワークショップ。でも、それに気付くっていうのは本当にすごく大事な作業ですよね。まさに西山さんの芝居に出るためのワークショップでもある(笑)

西山 まぁ、オーディションって言ってるからね(笑)

藤森 そのオーディションに僕、モレちゃったんですよねぇ…

西山 またそういうことを言う……(笑)

ンガっていこう!
褄合わせ?

―そろそろ時間も押してまいりました。最後に、今回公演に向けての抱負を一言ずつお願いします

西山 抱負は…「トンガッていこう」ということと、「僕らに今できることって何だろう」っていうところを突き詰めてみたいですね。それと、うちは笑いというものをなおざりにしているところがあったので、そこを丁寧にやっていきたいと思います

藤森 今度の芝居で描いているものは、今の人たちがみんな持っている虚無感だとか、価値観が崩壊しているシステムだとかなんですね。でも、そういうもの全部ひっくるめて「みんな辻褄合わせなんだよ」っていう、そういうお芝居をお見せしたいですね


最後までローギアに入ることの無かった2人のトーク。その話題は2人の出会いから始まり、多岐にわたった。ここに紹介できたのは1時間半に及んだ対談のごく一部だが、プロデュースユニットという存在、その舵取りをする両主宰の本音を、読者の皆様に多少なりとも感じ取って頂けたなら幸いである。

ちなみに、この【クロム舎】の特集がフリーペーパー『KARA』6月号(こまばアゴラ劇場、早稲田どらま館その他で配布中)に掲載されたそうなので、興味がおありの方はKARA編集部seiren_kara@hotmail.comまで。
また7月号にも広告が載っているので、そちらも是非。


……それでは、ここから先は劇場で。

西山 ……ねぇ、「辻褄合わせ」って、作劇が「辻褄合わせ」ってことじゃないよね?

藤森 いやいやいや(笑)

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(文中、一部敬称略)
2004/6/26 文責・インタビュアー:北原登志喜  撮影・編集:鏡田伸幸

BACK STAGE REPORT 〜クロム舎×ダムダム弾団〜【主宰対談レポート2】〜
ロム舎過去公演写真ムダム弾団過去公演写真主宰対談レポート1

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