「プロデュースユニット」…この言葉を小劇場界で目にするようになって久しい。
敢えて「劇団」という体裁をとらず、公演ごとに役者を集める演劇集団。「半劇団・半プロデュース団体」と言ってもいい。
当初は新鮮だったこの形態も、今では演劇を始める人たちにとって当たり前の選択肢となった。
今回のBACK STAGE REPORTで紹介する【クロム舎】も【ダムダム弾団】もそうしたプロデュースユニットの形をとる団体である。
その両団体の主宰、西山聡氏と藤森俊介氏に劇団未満(?)の面白さと難しさを、対談を通して語ってもらった。

BACK STAGE REPORT 〜クロム舎×ダムダム弾団〜【主宰対談レポート1】〜
ロム舎過去公演写真ムダム弾団過去公演写真主宰対談レポート2
西山聡 氏(クロム舎 主宰)
1975年、福島県出身。作家・演出家・役者。
【クロム舎】の前身である【劇団アナテジ】に参加していた当時から作 / 演出をこなす。
‘99年『ブルータスブラザーズインロウ』、’00年『ワンコインリバルバーズ』を経て、’02年、【劇団アナテジ】を脱退。【クロム舎】を旗揚げする。
【クロム舎】も【ダムダム弾団】も稽古は大体いつも中野だとか。その中野、JR中野駅にほど近い某所。小さなテーブルを挟んで向かい合う西山聡氏(【クロム舎】主宰)と藤森俊介氏(【ダムダム弾団】主宰)。かたやスーツ姿。かたや芸人風カジュアル。その対比がまた面白い。その両氏に、それぞれの団体の広報担当、清水徹也氏と北原慎治氏を交え、対談は始まった。

ヴコールは送るんですよ

―まずはお二人の出会いからお聞かせ下さい

藤森 去年の暮れに【クロム舎】の清水さんと【ダイヤル911】主宰の山岡未絵さんの3人で企画公演をやりまして。ケチャップまみれになる企画(笑)。で、その公演の司会進行を西山さんにお願いした、というのが始まりですね

西山 舞台準備の合間にボクが喋るっていう形だったんですけど……本当に、ケチャップとか、とにかく異臭を放つ芝居で…(笑)


―その企画はどんな流れで始まったのですか?

清水 【ダイヤル911】の山岡さんは以前うち(クロム舎)のワークショップを受講されたことがあったんです。一方で山岡さんは【ダムダム弾団】さんの第2回公演に出演した方でもあった。その山岡さんの呼びかけで実現した企画でした

―そこから付き合いが始まって…

藤森 …あの、実は僕らにとってすごいコンプレックスだったのが、旗揚げの時に横の繋がりが全く無かったことなんです

西山 ああ、それは僕らも無かったな。だから無理矢理<早稲田系>にもぐりこんだ(笑)

藤森 でもね、僕らから見たら【クロム舎】さんはまだ旗揚げ時点で小劇場界での繋がりを持っていたと思う。羨ましかったですもん。僕らは本当に横の繋がりを持ってなくて、役者集めるのにも大変で……だから「とにかく横と繋がろう」と。そうして機会を見つけては横と繋がっていった。【クロム舎】さんとの繋がりもその中で生まれたんですけど……ただ、正直な話、そうして横と繋がってみると…

西山 いいことなんて何ひとつ無かった(笑)?

藤森 いや、そうじゃなくて(笑)。 ただ…劇団の主宰の方と会ってもね、仲良くなることってあんまりないんですよね

西山 ああ、それはあるかもしれない

藤森 ラヴコールは送るんですよ、仲良くなりたくて。でも反応があんまり……なんでだろう?

西山 あのね、藤森さんのラヴコールって鬱陶しいんだよ(笑)。だって、嘘ばっかりなんだもん(爆笑)。「俺、【クロム舎】入りたいんですよ!」とか、「俺、4人目のメンバーじゃないですか!」とか

藤森 いやいやいや……とにかく、そのラヴコールを比較的受けてくれたのが西山さんなんですよ。ボクは別に西山さんでなくても良かったんだけど(笑)。…でも、作品を観て、「ああ、【クロム舎】さんって面白いな」って思って。それで西山さんとお話ししてみたら、作っている作品は全然違うものだと思うんですけど、作品の作り方とか劇団の作り方とか、とても共感するところがあって…。僕ね、単純に小劇場界が好きなんですよ。他所の作品観てても面白いのがたくさんあるし……で、これまた単純に、面白い作品を作っている人たちとは仲良くなりたいんです

西山 ……藤森さんて、小演劇界には無いテンションの持ち主ですよね。あんまり小劇場界にはいないですよ、こういうバッタ屋みたいな人(笑)。フットワークが軽いというか。いいトシなのに変に前向きとか、あんまり危機感ないとか。貴重ですよね

藤森 でも鬱陶しがられる……

西山 ……いいひとなんですけどねぇ……スッゴイ悲しい‘まとめ’なんですけど(笑)。

が出ているか」って、大きいですよ

―「西山さんの芝居の作り方、劇団の作り方に共感する」というのは、具体的には?

藤森 「役者を見せる」っていうところですね。役者のポジショニング、その役者にどう対峙していくか、その対峙の仕方に非常に共感を覚えました。役者への対峙の仕方って本当に劇団によって様々で、例えばトップダウンのところがある。例えば主宰の作家性が強くて、自分が書いた作品をどう舞台にするかに意識を向けた作り方をするところがある。それはそれでいいんですよ。ただ、僕個人はそういった作り方はしていないんですね。これはプロデュースユニットであるということも関わってくるんですけど、僕は作り方として、まず役者を決めるんです。小劇場界で好きな人たち、出て貰いたい人たちに「あなたをこういう風に使いたい」と伝えて交渉する。それは劇団員に対しても同じで「次はあなたのこういう所を出してやってみようよ」って話して、それに合わせて台本を書いてるんですね。もちろん本に自信はある。けれども、それよりも役者さん、なんです

西山 確かに‘役者ありき’という所はありますね、プロデュースユニットとして。これは小劇場に限らないことかも知れないけれど、お客さんは確実に役者を観に来ている、っていう感覚が僕にはあるんです。作品を書いている人間としてはちょっと悲しいんですけど、作家の世界観よりも「誰が出ているか」っていうのが大きかったりする。でも確かに、お客さんは目の前で起きている現象から何かを感じ取るわけですから、そこにあるのが「作家の物語世界だけですよ」じゃ、やっぱり駄目なんじゃないでしょうか

藤森 そういうところ、共感するんです

終的には劇団にしたい

西山 ……そういえば、【ダムダム弾団】さん、今年劇団員増えますよね?

藤森 そうですね。今は劇団員5名、内、役者が3名でやってますけど……


―それは「ユニット」を「劇団」という枠組みにしていこうという意図で?

藤森 僕らはプロデュースユニットですけど、でもそれが効果的だからやっている、というわけではないんです。僕らだけじゃない。今の小劇場界で効果的にプロデュースユニットをやっている所って、本当にごく僅かだと思います。うちもプロデュースユニットだから良いのではなく、やっぱり劇団員になっていく方向が一番良いんですね。劇団自体を活性化させたい、というのもありますし。元々台本があって「じゃあこういう人をブッキングしよう」というのではなくて、「こういう人がいるからこういう作品をやりたい」「この人のこういう部分を出したいからこういう作品をやろう」っていう形で作品づくりが始まりますから、そうすると劇団員はやっぱり多い方がいいんですよ

西山 うちも増やしたいんですよ。最終的には劇団にしたい。プロデュースユニットではなくて

―では、現在は劇団へと至る過渡期?

西山 そうかもしれません。……プロデュースユニットって、別に目新しいシステムではないですしね。昔は相当新鮮だったですけど

藤森 そうそう

西山 今はやっているところがいくらでもあるから、むしろ劇団の方が目新しい気もする。…劇団だと作品を作っていく時に、皆で同じ方向を向きやすいですしね。どうしてもプロデュースユニットとして役者さんを呼んでやってると、皆が同じ方向を向くまで時間がかかるんです。僕も昔劇団に所属してましたから劇団というシステムの悪い面も見てきましたけど、作品を作る上では劇団の方が演出家と役者、あるいは役者同士がリンクしやすい、シンクロしやすいですよね。そうすると、劇団でやってみるのもいいのかなぁ、って考えるようになって


者さんが決まらないと不安ですよ

―話が前後しますが、現在両団体ともプロデュースユニットとして活動しています。プロデュースユニットの良い所、難しい所ってなんでしょう?

藤森 ……あの、僕って飽きっぽいところがあるんです。今、7月の公演に向けて稽古してますけど、出演者が13人いるんですね。その中で、劇団員を含めて、過去に一緒にお芝居をやったことのある人が6人。7人が新しいメンバーなんですね。で、これって正直ちょうどいいバランスなんですよ。半分くらいが今まで一緒にやったことのあるメンバーで、半分が新しいメンバー。「劇団員のこういう部分を今回は出したい」という時に、同じ人と組ませるよりも違う人と組ませることによって色々な新しい面が出てきますし。だから、劇団にしたいっていう気持ちはありますけど……もっとも、うちは「客演が多い」というだけであって、システムとしては元々劇団になっているんですが……とにかく、劇団として出演者が固定されてきても、やっぱり客演は毎回必要だと思っているんです。飽きなくていい。プロデュースユニットの良さってそこなんじゃないでしょうか

西山 同じようなことですけど、プロデュースユニットの良さって「付き合いの浅い人が必ず現場に居る」っていうことだと思います。その距離感とか緊張感が良いんですね。どうしても劇団員だけでいるとダレてきちゃう。僕は同じ繋がるにしても、プライベートでどうのではなく、作品で繋がっていたいというのがあるんです。作品でいかに繋がれるかっていう部分が大きいのがプロデュースユニットで、だからこそ「演劇やってるなぁ」っていう実感も強くなる。それが良い部分ですかね。
難しい部分は……プロデュースユニットって、1回集めて作り上げても、またバラケた時に0に戻ってしまうんですね。もちろん劇団員のスキルは別ですけど、その他の部分ではまた最初からになってしまう。例えば劇団だと、調子が良い時はやればやるほど良い方向に蓄積が増していく、そういう時期がある。ユニットではそれがないんですね。
あと、うちにしても【ダムダム弾団】さんにしても、それほど知名度があるわけじゃないでしょう? その僕らが、公演ごとに毎回魅力的な役者さんにオファーを出す。この、ユニットとして一番肝心な部分で、大変と言うか、不安に駆られますね

藤森 そう、そこですね。プロデュースユニットの一番大変なところは。制作がとにかく大変。役者さんが決まらないと作品が決まらないわけですから、本当に不安になりますよ

西山 台本で悩む以前の問題ですからね。人が決まらないっていうのは

藤森 あと、例えば十何人集めた時に、みんなに見せ場を作るということが必要になってくる。これも大変かもしれません。…もっとも、僕はその作業が大好きなんですけどね…とにかく、これが劇団だったら「じゃ、これは若手が」みたいなのってあるでしょう?

西山 「説明台詞」とか台本に書いてあったりするところね(笑)。クロム舎では僕がそれ担当なんですけど

藤森 でも僕、逆に劇団の芝居のそういうところは好きになれない。若手がいかにも若手っぽい扱いを受けるっていうところ

西山 難しいところですよね。スキルのない若手をどう扱うかっていうのは。ただ、その若手が育っていく過程を見つめる楽しさっていうのも劇団にはあると僕は思う

画力が問われてきますね

―今、小さいプロデュースユニットがたくさん有りますけど、将来的にはどうなっていくと思いますか?

西山 うちと【ダムダム弾団】さんはお互いの役者が客演することってほとんどないんですけど……結構ね、プロデュースユニットが役者をブッキングしている先って、仲の良い劇団だったりするじゃないですか。そういう、仲の良いユニットが4個くらいあったらその中で役者の貸し借りをしていれば、結局その4個で1個の劇団と言ってもいい状態になる。そういう感じで、固まって繋がっていくんじゃないかと思うんですよ。仲の良いところ同士固まれば楽になっていきますから

藤森 で、同じところをぐるぐる回っているような事態になってしまうと

西山 それが良いことか悪いことかはわかりませんけどね

藤森 それは絶対良くないですよ。…だから、淘汰はされていくと思うんです。で、基本的に劇団が潰れるのは主宰が潰れる時だと思うんで、主宰が何人か淘汰されていくんじゃないでしょうか。最終的には強い主宰者が残っていって、そこで強いチームがいくつか出来て、客演にアイドルを呼べるような劇団も出てくる。僕はそう思います

西山 いや、アイドルは別にいらないんだけど(笑)

藤森 そう? ……とにかく、そこですごく重要になってくるのが「企画力」ということになってくると思うんです。ただ単に繋がることのメリットって、ユニットの側にはあってもお客さんの側には無いことが多い。それを、お客さん側にどう提供するかっていうプロデューサー側の企画力が、これからもっと問われてくるんじゃないでしょうか


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(文中、一部敬称略)
2004/6/26 文責・インタビュアー:北原登志喜  撮影・編集:鏡田伸幸

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