BACK STAGE REPORT【ジャングルベルシアター】
〜ファンタジーだからこそ届けられるもの〜ジャンベル“犬化合宿”より〜【浅野 泰徳インタビュー】
 そもそも、なぜ“犬”なのか。
 それは、ジャングルベル・シアターの次回作のタイトルを見れば分かる。
 『DOGのBLUES』――文字通り、犬の話らしい。しかも、すべての登場人物が犬だという。登場人物ならぬ、登場犬、と呼ぶべきか。
 周囲の緑が放つ精気をはらんでピリリと冷たい空気が心地よい、そんな稽古場で、座長にして作/演出の浅野泰徳さんに話を聞いた。
浅野 泰徳
(あさの・やすのり)

ジャングルベル・シアター座長、俳優、作家、演出家。岡山県出身。
拓殖大学在学中、演劇研究会に所属。卒業後、同期とともに劇団ジャングルベル・シアターを結成。以後、同劇団全作品の脚本を担当し、1作品を除く全ての演出も手がける。俳優としても同劇団で怪演を見せるのみならず、他劇団への客演や一人芝居、映画への出演など、活躍の場を広げている。
鎌倉シネマワールドお笑いグランプリ優勝、という異色の経歴も持つ。
新作は
愛すべき犬たちの物語
――まず、次回作『DOGのBLUES』について聞かせて下さい。どんなお話?

 舞台は瀬戸内海に面した港町です。のんびりとしていて、でもちょっと寂れてきたかな、という感じの町ですね。時代背景は昭和50年くらい。その頃って、野犬狩りが激しくなるちょっと前なんですよ。だからまだ人間と野良犬が、お互いにちゃんと距離を保って、よい関係でいられた時代だったと思うんです。今だと野良犬って変にクローズアップされますよね。“崖っぷち犬”とか。そうじゃなくて、野良犬が当たり前にいた時代の港町で繰り広げられる、野良犬や、放し飼いにされている犬たちの物語です。これが猫だったら、時代背景は平成でも良かったんですけどね。猫は自由に動けますから。でも犬って、すごい無骨でしょう。本当に不自由だし。噛み付くから野犬狩りにあって保健所に送られたりするし。そんな、無骨にしか生きられない、でも愛すべき犬たちの話を今回はやりたいんです

――で、合宿ですけど、この高尾合宿の前には河口湖にも行ってますよね?

 ええ。あそこには《ドギーパーク》っていうのがあって、犬を借りて、散歩させることができるんですよ。そこに劇団員を連れて行って是非、あの犬独特の臭さを味わってもらおう、と(笑)。…でも、その臭さだって犬にとっては当たり前の世界。それに基づいたコミュニティーができているはずなんですよね。そういうのも感じ取ってもらいたかった。犬に接したことがない、「犬にさわれない」なんて劇団員までいましたからね、「じゃあ触れてもらおう」って思い立ったんです。
 それで実際に犬を散歩させると、例えば、散歩の途中に糞をする。それはいいんですけど、その糞の上に寝転がろうとする犬もいるわけです。そんなこと、映画の『101』を観ただけじゃ絶対に知りようが無いですよね。そういう、触れなければ分からない犬の行動も舞台に取り入れられれば、犬を飼っている人なら余計に楽しんでもらえると思うんですよ。だから、あれは本当にいい経験になりました

世界観の統一に
合宿は効果あり
――そしてこの高尾合宿。なぜ高尾だったんですか?

 まず、自然の中。解放される所がいいなって思ったんですよ。ここなら、例えば周囲の緑であるとか、目に入るものが都内とは変わります。そうすると気持ちだって変わっていく。特に今回は全員が犬にならなきゃいけないわけで、それはつまり、全員で変わった空間に行かなきゃいけない、ということです。だから稽古にしても変わった空間でやってみたかった

――自然の中で、ちょっと人間の部分を遠ざけてみたかった?

 そういうことですね。それに、犬としての動きの稽古なんていうのは、脚本にそった稽古に入ってしまうとなかなかできなくなります。だからその前に1回、犬ってこんな感じだよね、っていうのをみっちりとやっておきたかった。せっかく《ドギーパーク》で目にしたことも、ちゃんと全員で確認しておきたかったですし

――劇団員の“犬化”は順調?

 これから少しずつ、ですね。脚本の稽古になったときにはみんな人間の彼らではなく、ちゃんと犬のキャラの彼らになっているって期待してます




――そもそもジャンベルでは合宿はよくやるんですか?

 頻繁にではないですけど、たまにやります。世界観の統一や、やるべきことの再認識という部分で効果はあると思いますので。それに、こういう機会に普段、演技では見えないところを詰めていけるとも思ってますし。…分かりにくい喩えですけど、合宿は「綺麗なパンツに穿き替える」みたいな感じなんですよ(笑)。
 今回に関しては……ウチはファンタジー系の作風なので、動物や妖怪っていう登場キャラクターはもともと多かったんですね。でも、最近はちょっと人間の役が多くなっていた。人間しか出ない芝居までやりましたからね。で、劇団員が「また鳥がやりたい」とか「妖怪がやりたい」とか言い出したんで、「じゃあ久しぶりに全員動物でやろうか」ってなったのがこの『DOGのBLUES』なんですけど――やっぱり人間と動物では演技、アプローチの仕方が変わってくるんですね。動物だったらまず形や習性から入らなきゃいけない、とか。そこにしっかりとした統一感を持たせたかったので、合宿をやることに決めたんです

児童文学のような
 “物語”を届けたい
――劇団員は演じる役が犬と聞いて喜んだ?

 喜びましたねぇ。こういう劇団も珍しいですよね。人間の役をやるより喜んでる(笑)

――それはなぜだと思います?

 …僕がジャングルベル・シアターでやりたいのは、児童文学の世界なんですね。児童文学のような“物語”を作りたい。それはいつも考えています。ああいう物語の世界って、率直な言葉がすごく届きやすくなるんですよ。人間同士では嘘臭く聞こえる言葉も、例えば犬同士というフィルターをかければとても自然に聞こえたりする。児童文学のそういうところが僕はとても好きなんですけど、同じように、そうしたファンタジーの世界を好きな人間が、ウチには集まってきているということなんでしょうね

――そんな劇団員の皆さんに、今回の舞台で期待していることは?

 とにかく、暴れてくれることかな。「犬だから許される」みたいな部分も出してもらえたらいいですね。もっとも、当たり前のことですけど、芝居をする上で役者にはいろんな楽しみ方があるわけで、すごく真面目に脚本や役を突き詰めるのも楽しいでしょうし、脚本を逆手にとって暴れるのも面白いでしょう。そこはもう、自由でいいと思うんですよ。それぞれの自分の位置なり、自分の色なりを確認するための公演に、これがなればいいなと思っています

――では最後に、楽しみにされている皆さんにメッセージを!

 はい。久しぶりにジャングルベル・シアターが帰ってまいりました!
 出てくるのはすべて犬です。こういうのは4年ぶりくらいになるので、是非、期待して頂きたいですね。犬ですから『CATS』みたいに歌はありませんけど、その代わりにコントがあります(笑)。…とにかく泣けて笑えて、という相変わらずの“物語”の世界です。その「相変わらず」を大切にしながら作っていきますので、どうぞご覧になって、楽しんで下さい!
 犬の話は以前からやりたかった、と語った浅野さん。飼い犬と過ごした子ども時代の経験を反映させて、犬にまつわる面白い話をいくつも披露してくれた。そんな浅野さんが、「僕が拾ってきては『捨ててきなさい!』と言われた野良犬たちや、初めて飼った犬の思い出なんかもちょっとずつ入れて」描き上げる、ジャングルベル・シアター久々のオール動物芝居、『DOGのBLUES』。合宿で磨いたジャンベルメンバーの“犬っぷり”も楽しみなこの舞台で、彼らはどんな「物語」を紡(つむ)ぎ出してくれるのか――。
 ともあれ、ジャンベルらしさ全開になりそうなこの春の新作に、乞うご期待だ!
2007/4/6   文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

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