BACK STAGE REPORT〜InnocentSphere 『HELL FIGHTER』【西森英行インタビュー(2)】〜
ワークショップやシンポジウムなど、劇団のベース固めも充実させてきた【InnocentSphere】のこの数年。そうした地固めの末に生まれる挑戦が今回のAoyama First Act#5だ。インタビュー後半では作品作りの根幹に流れるものの話から、今作『HELL FIGHTER』の詳細へといたるまで、丁寧に語ってもらった。

西森英行インタビュー(1)
人に対する執着だと思う
―これまで【InnocentSphere】が一貫してテーマに掲げてきた「生命感」。この、作品を読み解く上で重要なキーワードとなる「生命感=混沌から浮かび上がるもの」という言葉について、少し解説して下さい

…僕は作品全体を通して極限状態に置かれた人たち、追い詰められた人たち、絶望と隣り合わせにいる人たちが、そのギリギリの狭間で何を生み出すのか、何に負けていくのか、あるいは何を乗り越えていくのか…そういう部分をあぶり出そうっていう感覚が強いんだと思うんですね。ギリギリの極限状態でその人たちが一瞬に見せるもの、そこを必ず抽出したいと考えていて、そういった意味でコンセプトとして出しているのが「混沌から浮かび上がるもの」であり「生命感」なんです。
……多分僕は、究極ギリギリのところまで人を追い詰めたところで、「それでも」という‘可能性’をあぶり出したいようなところがあるんだと思います。最後の最後に切りきれない部分をどれだけ汲み取れるか、っていう


―そうした欲求はどこから来るのでしょう?

……執着ですね。僕の中にある疑心暗鬼な部分は、人と人とが分かり合うなんて難しいって考えている。でも、そうでありながら根本的に捨てきれない部分、嫌いになりきれない部分があるんですよ。こんなに汚くて、こんなにえげつなくて醜くて、それでも切りきれない部分…「これでもお前は好きなのか?」っていうのを常に突きつけ続けているような感覚があるんですね。安直な答えは要らないけども、そこに何か可能性を見出したい……きっとね、人に対する執着なんだと思うんですよ。
今、‘現代の絶望を切り取る’というスタイルのお芝居は結構多いと思うんです。でも、それだけじゃ「やるせないよな」って。そこに抵抗し続けてる部分があると思うし、それがある意味、ドロ臭いと言われる所以でもあるんじゃないか、と。でもそこに、その追求の仕方に更にエッジをかけていきたいって思いますね
極・内向きになる戯曲執筆
―西森さんの戯曲の特徴としてよく挙げられるのが、練られた言葉の美しさですが……本を書くのは早い方ですか?

そんなに早い方ではないですね。実質的に書く時間はそれほどでもないですけど、考えている時間が長いので

―いつも苦しむポイントってありますか?

何点かあります。まず第一段階として、作品全体の構造を納得がいくまで考え続けることがありますね。何か1ポイントでいいんですけど、今まで自分が見たことがなくて、しかも演劇でしかできないようなもの。言ってみればその作品をやる理由ですよね。それを考えるのが第一段階。次に、全体の構成を立てて、キャラクターがどう動くのかを決める上でパズリングが上手くいかないときに、やっぱり悶々と悩みます。最後は書いていく段階。言葉を落とし込む段階で、自分の頭の中では「このリズムでこう落ちる」というのがあるので、それに合わせた言葉が出てくるのを待つ、というようなせめぎ合いがあって……って、三段階で悶々と考えているタイプなんです(笑)。演出している時なんかはすごく外向きに、学校で教えているのと同じ感覚なんですけど、もう書くとなったら極・内向きですよ。ヒドイもんです(笑)

―楽しみどころは?

やっぱり、キャラクターが立って喋ってくれる時ですね。「自分にこんな言葉が書けるんだろうか」とか「こんな回路は無いんじゃないか」っていう、そんな言葉がぶわっと出てくる時がやっぱりあるんです。そういう時が一番快感ですね。あと、書いている時に自分の思い描いていた構成を飛び越える時。……でも基本的に8割ぐらいは苦しみですね。いや、9割かな(笑)
演出するのは大好きです
―演出では苦しむことは?

基本的に、演出の場合は8割から9割が楽しいです。もうね、役者やスタッフさんと話しをしたり、稽古場にいることが大好きなんですよ。……かと言って、本を書くのが嫌いっていうんじゃないですけど(笑)

―稽古を拝見していても、西森さんからは楽しげにパズルを解いているような印象を受けました

そうなんですよね。今の段階、あれをデッサンとして、整理して、最終的にはもう、「一歩右にズレても違和感がある」っていうくらいまで詰めちゃうんですけど、そういうこともね、楽しいポイントは全部楽しいですね

―先ほども話の出た【Afro13】との競演で、改めてご自身の演出の特徴も感じたと思いますが

ええ。僕は多分、役の心理を追うという視点が強いんです。観ている人がそこの心理を追いやすいように持っていく方法は好きだし得意なんだと思うんですね。ただ、それが良さでもあり足かせになってもいるんだとは思います。これは自分で台本を書いているから尚更なんですが、例えばある役がそのシーンでそのセリフを言い終わった後に「急には動けないよな」なんていうところをすごく意識しちゃう。「こっちには捌けられないよな」とか。でも佐々木さんは画を動かす方なので、「明かりでそこは見えなくなるから捌けて!」って(笑)。そうか、そういうやり方があったのか、って(笑)。そういうところ、リスペクトしていますね
新作『HELL FIGHTER』について
―さて、今作『HELL FIGHTER』。ちょっと恐ろしげなタイトルですが、Hell Fighter(ヘルファイター)というのは特殊な職能集団を指す言葉だそうですね

そうなんです。油田火災の消防士を「ヘルファイター」と呼ぶんだそうです。国際チームらしいんですけど…そういう消防士たちから物語を連想していって…

―実際に消防士たちが登場するわけではないようですね。どんなお話になるのでしょう?

未来の話なんですけど…戦争などで一度地球がぶっ壊れちゃって、南半球が全部水没していて…あまりに未来になりすぎて古代になっちゃったっていう未来を舞台にしてます。その、いろんな国に分断されちゃった国の中の、一つの小さな村に住んでいるごく普通の少年が主人公です。理解し合うことをあきらめた世界、お互いの国が壁をめぐらせてしまった世界で、その一人の平凡な少年が、その国全てが繋がっていく一つの希望となり、一つの奇跡を起こしていく、っていう。行く国行く国で仲間が増えていくというエンターテイメントな構成をしているんですけど、その少年を突き動かしていく原動力になるのが、現代、2005年の日本で一人の少年が書いた日記なんですね。表向き、『ロード オブ ザ リング』のような構成を取っているんですけど、でもそこに【InnocentSphere】ならではの仕掛けがあって、っていう

―劇場が青山円形劇場。この劇場でやろうと考えた理由は?

最初にお話ししたように、鴻上さんのお芝居を青山円形劇場で観て影響を受けた、ということもあります。…ただ、そんなにすぐにはできないだろうとも思っていたんですね。でも自分たちがこれから先のステップをイメージした時に、「今ならいけるかな」と。また、小屋の方とお話をさせて頂いて、すごくいい方で、熱意を持って若手を見守ってくれていて…その方と出会えたこともすごく大きかったですね。とにかく僕らにとってはある意味、夢のような事で……この段階でこの劇場、やりたい劇場でやれるというのはすごくありがたいですね
円形ゆえの面白さ×【InnocentSphere】ゆえの面白さ
―実際に取り組んでみて、円形劇場の難しさは?

「円形であること」なんですよね。やっぱり視点の置き方とかも全然違うので…今、僕らも稽古で進めているところなんですけど、まず第一段階でデッサンを作った上で、更にそれをいろんな視点から見て成立するかっていう整理をつけていかなければいけない。そこが一番大きなところですね。
パフォーマンスなんかだと円形って普通に見られるんですけど、物語を追うお芝居の場合、円形って結構大変は大変なんですよ。物語を円形劇場で追える形にする、っていう部分ですね


―逆に、面白いのは?

それも「円形であること」なんだと思うんです。…お客さんとの距離が近いんですよ、円形に取り巻いている感じですから。そこで熱を持ってお芝居をしたら、それがすごく届きやすい。そういう、肉薄した形でやれるというところがすごく面白い部分ですね

―出演者が24名。稽古を拝見して、やはり人数の多さ、密度を感じました

もう、人数が多くてねぇ…(苦笑)。…まぁ、でも、それがやりたかったので。群集シーンをちゃんと作るお芝居を。少年や仲間たちが別の国に異文化として入っていく、という画をいくつも作りたかったので。更にそこにアクションも入ってきたりするので、その熱を伝えたいですね

―それでは最後に、今作『HELL FIGHTER』の見所を!

まず一点。【InnocentSphere】の中で王道としてあるエンターテイメントの構成をしっかりとっているので、どんな方にも楽しめるお芝居になっています。分かりやすい構造の、笑いあり涙ありのお芝居です。更にもう一点として【InnocentSphere】らしく、そこには一つ仕掛けがあって……最近起きた事件とあまりにタイムリーにリンクしちゃって、扱いをどうしよう?という部分もあるんですけど……とにかくちょっと、裏というかテーマがあるので、両面を見て頂けると更に楽しんでもらえると思います。ただ面白かったね、だけではなく、何かを持ち帰って考えてもらえる、残るお芝居としても楽しんで頂けると思いますので、是非観て頂きたいですね
インタビュー中、「うちのメンバーはみんな人が好くて生真面目なんですよ」と笑顔で語った西森さん。その言葉を主宰自らが証明
するように、西森さんはどんな質問にも丁寧に答えてくれた。

そんな生真面目な彼らが挑む、生真面目な挑戦。
――Aoyama First Act#5『HELL FIGHTER』

円形劇場という舞台を得て【InnocentSphere】がどんな進化を遂げるのか…今から楽しみである。
(文中、一部敬称略)
2005/2/23 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

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西森英行インタビュー(1)

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