BACK STAGE REPORT〜innerchild『遙<ニライ>』【稽古REPORT】
今回の芝居、出演者たちはとにかく覚えることが多い。楽器の演奏に、慣れない言葉。そうしたものへの対応も稽古を見る楽しみの一つだ。「立ち稽古に入ったばかりでまだまだこれから」という新鮮な稽古場で、出演者たちの表情を追った。
アップを終えると、まずは全員で行進。普通の速度で数回歩き、次に、スローモーションで。このスローモーションがなかなかに大変だ。歩く形をゆっくりにする、というよりも運動そのもの、もしくは時間の流れを遅くするような作業。手直ししては何度も繰り返される、無言の行進。前回公演時の稽古場でも目にした光景だ。この、歩く姿へのこだわりも【innerchild】の特色といえるかもしれない。
行進が一段落し、ここからはシーンの作り。まずは、沖縄のいずこかの島が舞台となる、生活感溢れる一コマ。
石村実伽さんが三線(さんしん)を爪弾きながら、遠くを見つめている。視線の先にあるのは海だろうか。その姿を見守る男達の言葉に、耳慣れない響きが混じる。ウチナーグチ(沖縄言葉)のようだ。
まだ立ち稽古に入って間がないので、しばしばズレる芝居。とくに、ウチナーグチのセリフで役者がつまづくことが多い。四苦八苦する出演者の様子を、楽しげに見物するのは、アイヌ・チームの面々。ノッキングが起こるたび、ギャラリーが笑いで沸く。こういうところ、とても雰囲気はいい。
   
車座になって酒を飲む島人たち。人が集まれば三線が鳴り、唄が始まる。いかにも沖縄らしい。情緒溢れる、楽しいシーンだ。唄の詞は難しい。節回しも独特。その唄にみなで合いの手を入れる……が、合いの手のタイミングが合わず、みんなでテープを聞いて確認。
このシーンを通したところで、小手さんがダメを出す。
「生活のリズムが早すぎて、“南”な感じじゃない。もっとおおらかに、ゆるやかな空気感を出して」
文化として根付いている感覚を大事にしたい……そうインタビューで語ったように、表現したいのは空気感だ。また、ここで“南”の気風・空気感を出すことは、“北”を描く上でも大事になってくる。そのため当然、この後に続いた個別のダメ出しは(自身が芝居に参加していたにしては意外なほど)、細かいところにまで及んだ。
   
短い休憩をはさんで、お次はアイヌ・チームの登場。先ほどの“南”とは雰囲気も言葉もガラリと変わる。ここでもアイヌ語に役者たちはかなり苦労しているようだ。
ただ正確に言葉をなぞるだけではなく、その言葉で何を伝えたいのかを考えて欲しい、と小手さん。英語も例にあげて、イントネーションの工夫など、“セリフ”ではなく“言葉”としての考察を促す。
   
役者同士が舞台の端で絡みんでいる最中、室内に響く、小手さんの不気味な発言。
「そこ、ちょっとバランス崩すと180(cm)落ちるからねー」
…インタビューにあった「壕」のことだろう。某プロレス団体の“なんとかデスマッチ”を髣髴させる、ちょっと怖い舞台でもある。慌ててあとずさる役者たち。
この、アイヌの地でのシーンに対するダメ出しは、
「バタバタしない。地に足が着いてる感じを大事にして」

沖縄のシーンがたゆとう海のおおらかさなら、こちらは大地のおおらかさ、という感じか。時に荒々しい顔も見せるこの北の地で、南から始まった物語は大きなうねりへと踏み出していく……
   
…この続きは劇場で。
稽古はまだこれから。だが、そのさわりに接しただけでも、ひどく心を惹きつけられる力強さを、いずれの世界も確かに持っていた。言葉と音楽を媒介に、沖縄とアイヌの世界に同時に触れられるいい機会でもあるこの芝居
――『遙<ニライ>』
【innerchild】が二つの世界の空気感を大事に大事に作り上げる、日本そのものへの探求を、是非、お見逃しなく!
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2005/8/27 文責:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

BACK STAGE REPORT〜innerchild『遙<ニライ>』【稽古REPORT】

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