東京を拠点としながら、積極的に行なっている札幌公演の評価も高い【劇団偉人舞台】。
結成7年目を迎える今年、彼等は大きな決断を下した。
次のステップへ進むため、それまでの男・女優混合劇団のスタイルを廃止し、男性のみのユニットとして再スタートを切ったのだ。

〜〜・・・いまや『ありがち』な男性だけの劇団として活動していくのは、賭けに近い、まさに『これから』を賭けた勝負と・・・〜〜
公演企画書より抜粋

この決断により、更なる飛翔が期待される【劇団偉人舞台】。
今回のBACK STAGE REPORTでは、東京公演を1ヶ月後に控えたその【劇団偉人舞台】の稽古場から、
主宰・我孫子泉さん、作 / 演出・我孫子令さんのインタヴューと、白熱の稽古風景をお届けする。
取材リポート、我孫子兄弟インタビュー
BACK STAGE REPORT 〜劇団偉人舞台公演「BUS JACK SHOW」 【取材リポート、稽古風景】〜



午後六時五分。
いよいよ本日の稽古が開始される。
令さんが真正面の席に着き、ゆっくりと劇団員たちを見回した。稽古場にピリッと引き締まった空気が立ち込めたその時……たちまち令さんが高く叫んだ。
「……あ! 台本忘れた!」
ずっこける団員たち。「おいっ!」と叱咤が令さんに浴びせられる中、いつしか稽古場にはリラックスした雰囲気が漂っていた。
さすがは演出家・我孫子令、力みの取り方も老獪(?)だ。
気を取り直し、まずはアップから。
「偉人舞台」の看板俳優・鹿島良太さんの「よし、やろう!」という一言で、劇団員が輪になった。
最初は腕立て&腹筋をしながらの発声。腹から声を出し、百近い回数を2セットずつこなすその様子は、見るからにきつそうだ。
中でも一番辛そうなのは、体重130キロを誇る小坂建二さん。苦悶の表情と共に、額には早くも汗が浮かんでいる。
続いては、「シリトリしながらその場でモモ上げダッシュ」。これもかなりきつそうである。全力疾走と同時に続けられるシリトリは、体力的余裕がなくなるに連れ次第に素っ頓狂なワードが増えていき、傍から見ている分にはとても楽しい。
疲れがピークになる頃、さらに追い討ちをかけるように令さんから「もっと腕振って!」と容赦ない檄が飛んだ。まるで運動部のごとき入念なウォームアップである。
……そういえば、「偉人舞台」は小坂さんを除く全メンバーが草野球チームに所属していると聞いた。このレベルのウォームアップは、もしかしたら彼らにとって日常茶飯事なのかもしれない。
普段から基礎体力を決しておろそかにしない……これもプロ集団「偉人舞台」としての、意識の現われに違いない。「単に野球が好きなんです」と泉さんが言っていたような気もしたが……いや、意識の現われに違いない。
二十五分にわたる密度の濃いアップが終わる頃には、すでに全員が汗だくになっていた。しかし、稽古の本番はこれからである。

「頭から止め止めで行こう」という泉さんの言葉で、立ち稽古が開始された。本日の稽古は、欠席の一名を除く八名で行われるとの事。
公演まではまだ一ヵ月以上あるが、芝居の骨格はすでに出来上がっているようである。足りない役を代わる代わる補いながら、本番さながらの熱の入った稽古が展開されていった。
立てこもる犯人とそれを説得する警官たちのシーン、そして喧々囂々と対策を練る救出班たちのシーン……合間合間にプロンプ(台詞補助)や令さんの指摘が入り、感情、表情を微調整していきながら、丁寧に物語を作り上げていく。
令さんのダメ出しは、役者として豊富なキャリアを持つ実兄の泉さんにも容赦なく飛ぶ。芝居作りに妥協を許さない事はおそらくどの劇団も同じであろうが、「偉人舞台」の特筆すべき所は、笑いの場面&弾ける場面の作り込みに、より一層のこだわりを持っている事ではないだろうか。
「今の台詞、もっとドモッた方がいい」
「動の演技ばかりじゃ駄目。静、動というテンポがないと、メリハリがつかない」
必要最低限の指示はもちろんの事、何もそこまで……という細やかな表情や、一瞬の間(ま)の取り方まで、試行錯誤を重ね何度も何度も繰り返し、実に緻密に「笑い」を煮詰めていくのだ。
確かに、「笑い」というものは難しい。台詞の言い回しはもちろん、僅かの間(ま)やタイミングだけで観客の「受け」は驚くほどに違う。豊富なキャリアを積み重ねてきた「偉人舞台」はそれを熟知しており、かつそれを最大限まで昇華する術を心得ているのではないだろうか。だからこそ、「笑い」の場面を綿密に作るのだ……目の前の彼らの真摯な姿勢が、それを雄弁に語っているように思えた。
もちろん、作り込むのは「笑い」の場面だけではない。
我孫子泉さん、令さん、そして鹿島さんが中心となり、様々な指示を出し合い、意図を伝え合い、役者たちはそれに真剣に耳を傾け、稽古はさらに白熱していく。
稽古風景を見学していて、改めて強く感じた事……それは、「偉人舞台」が「偉人舞台」たる所以は、やはり一にも二にも我孫子兄弟のコンビネーションにあるという事だ。
演出家としての客観的な目線から、大局的に芝居を見る令さん。
演じながら出演者としての目線で、内部から芝居を見る泉さん。
不適切な表現かもしれないが、一卵性兄弟ならではの呼吸が織りなす二人の絶妙な相互補完は、まるで一人の人間が内部と外部から同時に芝居を見つめているような、そんな感じさえするのである。……この二人の芝居を見つめる「目」こそが、実は「偉人舞台」の真髄なのではないだろうか。
そして鹿島さんをはじめとする団員たちがその「目」に感応し、ここに「偉人舞台」たる世界が確立されていくのである。まさにそれこそが、彼らの掲げるテーマ「SHO−GEKI(笑劇、衝撃、SHOW劇、小劇)」の体現なのだろう。
一時間、二時間と通し稽古が続き、いつしか取材を忘れて物語に引き込まれてしまっていたのだが、気が付けば残念ながら取材終了の時間……。物語の核心となる様々な「謎」もまさしく「謎」のまま、おいとまを告げる運びとなってしまった。
……はっきり言って、続きが物凄く気になる。
事件はどういう展開を見せるのか、そして脚本家・我孫子令が自信満々に「乞うご期待!」と語る予想外の結末とはどういったものなのか、ムチャクチャ気になる。
「まだまだ完成にはほど遠い段階です」と令さんは語ったが、稽古の段階でこれだけ観る者をのめり込ませるとは、これはかなり期待できるのではなかろうか?

劇団「偉人舞台」が送る「SHO‐GEKI」エンターテイメント、『バスジャック・ショウ』……一ヵ月後の公演が今からとても楽しみである。

2003/8/18 文責:毛戸康弘  撮影・編集:鏡田伸幸

取材リポート、我孫子兄弟インタビュー
BACK STAGE REPORT 〜劇団偉人舞台公演「BUS JACK SHOW」 【取材リポート、稽古風景】〜

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