東京を拠点としながら、積極的に行なっている札幌公演の評価も高い【劇団偉人舞台】。
結成7年目を迎える今年、彼等は大きな決断を下した。
次のステップへ進むため、それまでの男・女優混合劇団のスタイルを廃止し、男性のみのユニットとして再スタートを切ったのだ。

〜〜・・・いまや『ありがち』な男性だけの劇団として活動していくのは、賭けに近い、まさに『これから』を賭けた勝負と・・・〜〜
公演企画書より抜粋

この決断により、更なる飛翔が期待される【劇団偉人舞台】。
今回のBACK STAGE REPORTでは、東京公演を1ヶ月後に控えたその【劇団偉人舞台】の稽古場から、
主宰・我孫子泉さん、作 / 演出・我孫子令さんのインタヴューと、白熱の稽古風景をお届けする。
BACK STAGE REPORT 〜劇団偉人舞台公演「BUS JACK SHOW」 【取材リポート、我孫子兄弟インタビュー】〜
取材リポート、稽古風景
我孫子泉(写真 右)
主宰。19歳でヤマハのコンテスト北海道グランプリ最優秀歌唱賞受賞と、類まれな音楽センスを持ち、
社会風刺コント集団【ニュースペーパー】での活動等、様々な分野で能力を発揮する。無類の野球好き。
 
我孫子令(写真 左)
脚本・演出・出演と、オールマイティーにこなす天才肌。
多方面の仕事も多く、最近ではロールプレイングゲームの演出などでその才能を認められている。
役者としても、渡辺えり子氏の『ZENMAI』に出演するなど、その呼び声が高い。

Memo
劇団偉人舞台:北海道・紋別市のアマチュア劇団【劇団海鳴り】の創設メンバーだった両親から新劇の洗礼を受けた我孫子泉・我孫子令の兄弟が、役者を志して上京。前身のユニット【人格販売機】を経て、1997年に旗揚げする。東京での積極的な公演活動の傍ら、’00年からは故郷の北海道でも定期的に公演を打つ。新劇で培った確かな基礎に「SHO-GEKI(笑劇・衝撃・SHOW劇・小劇)」というキーワードをプラスしたスピード感溢れる舞台が特徴。男性ユニットとして本格始動した今年の第1弾、『PRISON VOICE!』は、東京公演・札幌公演ともにSold-Outの好評を博した。

新劇から小劇場へ

― まずは、劇団の成り立ちからお聞かせ下さい

我孫子泉さん(以下、泉)
 元々、両親が芝居をやってまして、それを見ながら育ちましたから、僕ら兄弟も「役者になりたい」っていう気持ちはずっと、漠然とですけどあったんです。だた、どうしても北海道だと‘プロの役者’っていう形では難しかった。だから「やっぱり東京に出なきゃだめだろう」って思って上京したんです。それで東京に出て来てすぐに【青年劇場】の養成所に入りまして…

― 新劇の老舗ですね

 そうですね。両親が新劇だったんで、自分達も新劇をやるのが当たり前、っていう感覚がやっぱりあったんですね

― けれどもそこから、小劇場の世界に移りますね。きっかけのようなものはあったんでしょうか?

 ええ。……実は、それまで北海道にいて、小劇場というジャンルが存在する事自体、知らなかったんですね。両親の知り合いも含めて、周りがみんな新劇でしたから。僕、紋別から札幌に出てからも芝居やってたんですけど、それもやっぱり新劇だった。そんなふうですから、全然、小劇場って知らなくて。で、東京で初めて小劇場系の芝居を観て……【離風霊船】だったんですけど、それで衝撃を受けましてね。「なんだ、これは!?」って

― 具体的にどんなところに衝撃を?

 ……正直に言って、青年劇場で勉強していて、ちょっと古さも感じていたんですね。もっとも、それが当たり前だとも思ってはいたんですけど。でも、小劇場の芝居を観て、その爆発力のある演劇に触れて、「やっぱり違う! こんな事が芝居では出来るんだ!」と

― それは表現の仕方ですか? それとも扱っているテーマについて?

我孫子令さん(以下、令)
 テーマもそうだし、表現についても、ですね。……やっぱり新劇的リアリズムっていうのを念頭にずっとやってきたんで、突拍子も無い事をやるっていうのを、まず考えていなかった(笑)。例えば、普段流れている時間を流れている通りにやる、というのは新劇では当たり前なんですけど、そういう事に全く囚われていなかったり。そういう事が刺激的だったんですね

 そうして改めて【青年劇場】の芝居を見ると、演劇をやっている人には面白い芝居だと思いますけど、そうではない人、特に若い人達には、やっぱり物足りないんじゃないかって思えて。だから、僕ら兄弟に対しては【青年劇場】も早い時点で「(劇団に)残ってくれ」って言ってくれたんですけど……結局出て行くことにしました

― その時点ではもう自分達で劇団を作ろうと決めていたのですか?

 まだその時点では、旗揚げは考えてなかったですね

 そもそも、どういう形で始めていけばいいのか、っていうのも分からなかったですから。それで、いろいろ、小劇場の劇団とかを観つつ、1年間留年というか……フリーで色んな人達と芝居をやったりしていました。【人格販売機】っていうユニットでも活動して ……そうするうちに、頃合が来たって言うんですかね、【青年劇場】の養成所時代の仲間が5人で集まって、それじゃあ旗揚げしようか、となったんです

「これから」を賭けた勝負の決断

― そうして、【劇団偉人舞台】が誕生して、東京、札幌でと、公演を重ねて来ました。その【劇団偉人舞台】が、今年の初めから男性のみのユニットとして活動することになったわけですね。「これからを賭けた勝負」ともおっしゃっているように、大きな決断だったと思いますが?

 確かに、自分達の「これから」を賭けた勝負、という意識はありますね。ただそれは、例えば現状に対する危機感だとか、焦りだとか、そういう所から迫られての決断ではなかったんですけど……

 「今がそのタイミングなんじゃないかな?」っていう、漠然とした感覚なんですけどね(笑)。こういう体制、男優のみの体制になる前に1回、『一億円』っていう、男性のみの芝居を再演で打ったんです。で、その時に……妙にマッチしたんですよね、みんなの感覚が

 極端に言えば、「あ、気付いちゃったな」みたいな(笑)

 うん。ちょっと、「コレじゃないか?」っていう、フィット感みたいなものが妙にあって。そこからでしょうね、なんとなく、男性のみで濃くやってみたいな、って考えたのは。で、ちょうど動員も増えてきて、支持してくれる声も沢山出てきて、っていう時期で、そんなタイミング的にもね……今、本当にやりたい事ってなんだろう、何がベストなんだろうって考えた時に、自然と「男性のみなのかなぁ」と。だから、年齢的な事考えたら焦らなきゃいけない気もしますけど(笑)、別にそういう、切羽詰った感じではないんですね

― 『一億円』で「コレじゃないか?」と思った。では、ある意味では前作『PRISON VOICE!』は、その感覚を確認する為の舞台でもあった?

 そうですね。で、やってみて「やっぱり間違ってなかった」と。「この方向だろう」という手応えがそこではっきりと感じ取れましたね

 ……劇団が小さい頃って、やっぱり集客のために、キャスト出すじゃないですか(笑)。で、キャストにノルマを課して、まずはなんとかお客さんを増やさないと、って。そういうやり方にも、もう限界が来てたんでしょうね。キャストを出せば出すだけ、物語の密度が薄くなるし……まぁ、これはもちろん芝居のスタイルにもよるんでしょうけど。僕、出てくれる役者さん達には全員に書いてあげたくなるんです。優しいですから(笑)。でもそうなると、どうしても主になる部分が薄くなっちゃう。で、もうこれ以上キャスト増やして薄い芝居を創るよりも、思い切って改革をして、凄くフィーリングが合う男優同士で、密度の濃い芝居を創りたい。そういう流れで、今の形になったんです

新劇出身であることに誇りを持って

― では、数多ある男性ユニットの中で、【劇団偉人舞台】の最大の売りをアピールして頂きましょう

 いろんなキャラクターがいることですね。全員が美男子なわけではないし。体重が130キロある奴までいますからね(笑)。本当にみんな、上手い具合にキャラが被ってないんですよ。……面白い事に結成以来、男は1回も募集した事がないんです。自然に集まってきて、殆ど全員残ってる。自分の劇団を旗揚げするために辞めたのが1人いるだけですね

 女優はね、入れ替わり立ち替わりなんですよ。なぜか生え抜きがいない。でも男優は全く変わってないし、旗揚げ当時から殆どこのメンバーでやってきていますから……やっぱりどこか、合うんでしょうねぇ

― 他の男性ユニットで、「ここには負けたくない」なんていう所はありますか?

 ……「ドコには負けたくない」みたいな、そういう、ライバル心はないですね。僕らは僕らのやりたいコトをやろうじゃないか、って思っていますから

― その「やりたいコト」ですが、毎回、ずいぶん趣向が違いますね。歴史物の次はオカマバー、というように。これは意図して変化をつけているのですか?

 これは自然にそうなるんですよ。お客さんに楽しんで貰えるエンターテインメントな作品、っていう事だけは根底にありますけど、題材に関しては拘ったところはないですね

 「エンターテインメント」に関して言うと、どうしても僕ら若い…って言って良いのか分からないですけど(笑)…若い劇団って「若いお客さん向けに何かやってやろう」みたいな部分が凄くあると思うんですね。けれども、僕らの芝居には60代、70代のお客さんもたくさん来て下さるし、だから、どの年代の人が観ても理解して貰える芝居作りを心がけています。<シュール>の名の許に訳の解らない事やっているような奴らとは違う、っていう……その辺は新劇出身である事に誇りを持っていますし、リアルなものはリアルに、且つ小劇場の面白さも取り入れて……って、良いトコ取りなんですけどね(笑)

東京と札幌の違い

― 東京を拠点にしながら、札幌でも公演を重ねていますね。東京と札幌、違いは感じますか?

 最近は感じないですね。むしろ札幌の方が盛り上がっている位かな?

― 客層は?

 客層はもう全然変わらないです。東京と同じで、幅広い年零層の方々に観に来て頂いています

 ただ、向こうはまだ演劇が東京ほど盛んじゃないので、そういう意味では僕らがやっているような芝居、エネルギッシュでスピーディーで、っていう小劇場スタイルの芝居は新鮮に映っているかもしれませんね。だからこそ支持されているという面もあるんじゃないかな。……ただ逆に、演劇を観慣れていないが故に、純粋に芝居を楽しんでくださる部分もあるようですね。とにかく土地柄的に、凄く温かい人達ばかりなんで

― 東京と札幌で、特に芝居が変わるということはない?

 少しは変わるかな? 北海道では北海道用のネタを使ったり、とか(笑)

プロデューサーとディレクター

― ちなみに、ご兄弟が中心となってお芝居を創ってらっしゃいますけど、やり易さ、あるいはやり難さはありますか?

 やり難さは全くないですね

 うん

― お互いの役割分担ははっきりしている?

 ええ。映画で言うとしたら、製作総指揮が彼(泉)で、監督が僕っていう感じですかね。プロデューサーとディレクターというか。現場での演出だとかは僕が受け持って、全てを統括してるのがこの人かな、と。

― その「プロデューサー」の眼から見て、「ディレクター」の令さんは?

 優秀だと思いますよ。あんまり言いたくないですけど(笑)

― ではその「ディレクター」から見て、役者、我孫子泉さんは?

 う〜ん、これからもっともっと……この人、あんまり努力しないんですよね(笑)

― 大好きな野球の方に行っちゃう?

 そうですね(笑)……力の入れドコロがどうも違う(笑)。もっと真面目にやってくれたら、もっともっと面白くなるのに、とは思ってます。これからもっと本気を出して欲しいな、と

 ……はい(苦笑)

『バスジャック・ショウ』

― それでは今回の公演について伺います。タイトルが『バスジャック・ショウ』。不穏なタイトルがついていますが……

 不穏ですよねぇ……このタイトルにも実はちょっと意味があるんですよ。バスジャックになぜ「ショウ」がつくのか

 不謹慎な感じもするんですけど……全ての謎は観ていただければ分かります

― そういえば、この間も長野でバスジャックがありましたね。少し社会的な要素が強くなるのでしょうか?

 強さは別にして、社会的な要素は常にあります。どこかしらでそういうものは根底に置いておきたい

― 「社会的」という事では、泉さんは以前インタヴューで「少数派と多数派のボーダーを取り払う、その両者の視線が交錯する表現を目指したい」とおっしゃっていましたね

 はい。それは今も変わっていません

 コメディーをやるにしても、ただのドタバタコメディーにして、お客さんは確かに笑ったけれども頭の中にはギャグしか残らなかった、そういうのは本意ではありません。笑って貰いつつも、やっぱり何かしら、発信源として僕らがこれから伝えていかなきゃいけない事があるんじゃないかって思いますから。いち役者として、いち作家として、世の中に何かしらのメッセージを投げかけていきたい。だから今回も、社会的なものはやっぱり含まれていますね

― 今作の見所を一つ挙げて頂くとすると

 今回はクライム・コメディー、つまりコメディーって謳っているんですけど……バスジャックって、人質がとられて、命に関わる緊迫した状況なわけですよね。それがどうコメディーになるのか。それが見所の一つですね

― 今回は東京公演と札幌公演でWキャストですよね。札幌公演に出演する役者さん達はあちらで活動している方達なのですか?

 ええ。札幌で芝居やってますね

 僕の幼なじみなんですよ。僕の影響で芝居始めちゃって……危険な道に引きずり込んじゃったなぁ、って(笑)。なんでわざわざ食えない道に来るんだ!って(笑) ……でも、前回、『PRISON VOICE!』の札幌公演で初めて彼らに出て貰ったんですけど、思っていた以上に良い役者さんだったんですね。だから今回も絶対出て貰いたい、と。……基本的に、うちの劇団で補えない部分を客演でお願いするわけですよね。だったら、東京では東京の役者さん、札幌では札幌の役者さんを客演に迎えたい。それによって、その土地が持つ空気だとかも補えるんじゃないか、と

― では、最後に、今公演へ向けての抱負を

 僕自身、これだけ「稽古をやりたい!」って思ったことは過去にないんですよ。僕、稽古が嫌いなんで(笑)。しかも、セリフの入りも一番遅いのに、その僕がもう完璧にセリフ入ってますから……なんて言っちゃっていいのかな?

 ……(無言)

 ……と、とにかく、それだけこの本にかける意気込みが違う、と! ぜひ期待して頂きたい、間違いない、って言えるぐらいの作品だと思ってるんです。おもいっきり笑って、最後にはちょっと考えて帰って貰えるような。だから、本当にたくさんの方に観に来て頂きたいですね

― ありがとうございました

(文中、一部敬称略)
2003/8/18 文責・インタビュアー:北原登志喜  撮影・編集:鏡田伸幸

BACK STAGE REPORT 〜劇団偉人舞台公演「BUS JACK SHOW」 【取材リポート、我孫子兄弟インタビュー】〜
取材リポート、稽古風景

BACK


Questions?Problems?Suggestions?Contact backstage@land-navi.com
BACK STAGE【SideA】 Since 1999/09/01.2000/10/01.Presented by LAND−NAVI
Copyright (C) 2003 LAND-NAVI .All Rights Reserved.