【演劇ユニットCool*Flower】に立ち上げから参加し、今回公演では作 / 演出 / 出演と三役をこなす山口喬司(キョウジ)さん。小劇場の舞台を知る山口さんの目に、このユニットはどう映っているのだろう? 稽古風景も交えつつ、山口さんのお話をお届けする。

BACK STAGE REPORT
〜【演劇ユニットCool*Flower】公演『白雪姫子と7人のオンナ』〜【口喬司インタビュー+稽古風景】〜
山さゆりインタビュー


口喬司 氏(【演劇ユニットCool*Flower】 作 / 演出)
劇に触れてもらえる場
―前回公演『Doll』でも演出 / 出演をしていますね。そもそもこのユニットに関わることになったきっかけは?

『Doll』の時にネットに募集が出てまして、チョイ役の募集だったんですけど、それに応募したんですね。だから、最初は単に役者として応募したわけです。でも実際に稽古に参加してみると女の子達がみんな……どうしても仲間内でやっている感があったんですね。で、「これはまずいな」と思っていたら、「演出のほうでも手伝って下さい」という話しになって、それで演出も担当することになったんです。今回はその流れで、作 / 演出も受け持つことになりました

―参加する前と後。このユニットに対する印象はどう変わりました?

もう、全然変わりましたね。実は、参加する前は「どこかの事務所がやっている劇団だろう」と思ってたんですよ。でも入ってみたら、本当に仲間内で初めて立ち上げて、右も左も分からないっていう劇団だったんですね。だから『Doll』の時はただもう必死で、本当にお観せできるものを作るまでの道のりっていうのが大変でした。
ちなみに、今回は基礎もしっかりしてきたんで、やりやすいというか、演出に集中できるっていうのがありますね


―山口さんはこのユニットのどこに魅力を感じますか?


やっぱり、よその劇団と違ってここは一般のお客様、演劇を観たことのないお客様がたくさん来ると思うんですけど、そこが関わる立場としては魅力だと思いますね。今まで演劇を知らなかった人に、演劇に触れてもらえる場ということで。
……僕が初めて演劇を観に行った時のことですけど、正直、あまり良い印象がなかったんですよ。その後、自分が演劇を始めてから観た芝居にはすごく面白い作品がたくさんあったんですけどね。だから、これから初めて演劇を観る人には是非面白い芝居を観てもらいたい。そういう、自分の挑戦ができる場ではありますね
主演の小野茜さんと、急遽参加の茂木かをりさんに、山口さんが演出をつける。
山口さんは台本のト書きに当たる部分をすべて、その場その場で動きを交え、口頭で伝えていく。
いわゆる口伝(くでん)だ。その様子を一言で表現すると“熱い演出”
「ちゃんと気持ちを相手に返して!」「ここで空気を換えなきゃ!」
見ているのは形ではなく心の動きだ。
イドルはとにかく本番に強いんです
―山口さんはこれまで小劇場の舞台に出演してきたわけですが、いわゆる「普通の劇団」と「アイドルユニット」。両者に違いは感じますか?

なんら変わることはないですね。僕は普通の劇団として考えてます。演出していても、相手がアイドルであることを特に意識はしませんし

―そうした山口さんの態度に対して、女性キャストたちの反応は?

僕が、普通の役者さんと同じ扱い…と言ったら嘘になりますけど、結構プロとして、役者として扱っていますので、逆に女の子達の方に戸惑いがある感じですね。僕は、というか劇団の演出家っていうのは、女の子達が今まで仕事をしてきた相手とはかなり違うタイプの人間だと思いますので。だからその部分で女の子達も戸惑いはあると思います

―役者として女性キャストを見るとどうでしょう?

…アイドルの女の子達はライブや撮影会といった、一般のお客様の前で自分を見せるという場を結構持っているんですね。だからでしょうか、とにかく本番に強いんですよ。
芝居でもライブでも僕が一番大事にしたいのは、お客様を絶対に置いていかないものを出して欲しいということです。その部分…お客様の空気を感じて、その芝居でお客様と会話をするっていうことにおいて、アイドルの女の子達は何というか……秀でていますね。何かちょっと違うものを持っている。それは『Doll』の時に強く感じました


―他の劇団に比べて、ここだけは負けない、というのは?


女の子が可愛いです(笑)。水着のシーンとかもあって、それは他の劇団でもやろうと思えばできるんでしょうけど、それをなんの恥かしげも無くやってしまえるところが面白いと思いますね。
それと、他にもアイドルの演劇ユニットはあるかと思いますし、そうした団体の事はよく知りませんけども、【演劇ユニットCool*Flower】に関して言えば、ここはアイドル以外にも小劇場の役者さんがたくさん出演するんですね。だから、かなり本格的な「演劇」をお見せできるんじゃないかと思います
台本を前に、稽古を見つめる役者達。なごやかさと真剣さがいい塩梅。
インタビューで話の出た「戸惑い」はもはや感じられない。
キツいダメを出されたばかりの役者にも萎縮した様子がないのが頼もしい。
……それにしても、華やかな稽古場だ。
本は柔軟に変えていきます
―今作『白雪姫子と7人のオンナ』についてお聞きします。『白雪姫』のアイデアは青山さんから出たとか

そうですね。2人で次に何をやろうかという話をしている時に。…僕はアクションがやりたかったんですけどね(笑)。とにかく、コスプレ劇のような印象もあるんですけど、いろんな職業の女の子達を出して、王子様をみんなで取り合ったらどうかっていう。最初は軽いコメディー調で進めていったんですけど、徐々に重い話も組み込んでいって

―キャラクター重視の作劇と聞きましたが

そうですね。台本は出演者が決まる前に一度書いていたんですけど、出演者が決まってから結構変えた部分がありますからね。キャラに合った人がいればキャスティングして、キャラの合わない人や、役者の技量に合わせて柔軟に書き換えたり、思いつきで役やシーンを増やしたりしました。
事務所さんに「その役はちょっとイメージが……」とか言われて凹みながら書き換えたりもしましたしね(笑)


―稽古の雰囲気はどうですか?

本番が近付いてきて、かなり締まって来ましたね。良くなってますよ
経験豊かな男優陣は稽古場のムードメーカーにもなっている。
彼らの軽妙な芝居に、頻繁に笑いの華が咲く。
男性陣・女性陣ともに、芝居は刻々と変わっていく。
「固めない芝居」…その一端が垣間見えた気がした。
作で目指すもの
―今作の見所や、ユニットとしてチャレンジしていることは?

楽しい芝居を、というのはもちろんですけど、今作では「病院」という命を扱う現場を舞台に、感動できる作品を目指しました。
前回『Doll』で目指したのは、まず観られる舞台を作ることもそうですけど、「徹底した段取りによる緻密な演技」と「笑い」だったんです。楽しい、笑い溢れるコメディシーンを散りばめて、その上で「自殺」や「死」に対する僕の個人的な思想から、写実的に描写することで「死」に対する虚無感を出したかった。そういう理由から台本を大幅にアレンジしたんです。…結果、如月小春さんのファンの方々からいろいろ、苦情とか、お叱りの言葉も頂いたりはしましたけど(笑)…良かったって言って下さるお客様もたくさんいらして……。
で、今回は「自然な会話」と「心のやり取り」を目標にして、前回とはかなり毛色の違った演出をしています。とにかく役者達に「その人間として存在する事」に集中してもらって、あえて少ない稽古時間で、変に固めない自然な芝居をやってみたいな、と。それでお客さんが安心して観られる舞台が出来るか否かという、一種の挑戦をしていますね


―では最後に、公演を楽しみにしている皆さんに向けて一言

とにかく、作品の質においても他の劇団に負けないものを作っていこうって頑張ってますので……やっぱりアイドルの舞台っていうと結構、馬鹿にされるって言ったら変なんですけど、「ファン向けのイベント・ショーなんじゃないの?」って言われたりもするんですね。でも、そんなことはなくて、本当に「芝居」を作ろうとしていますので、是非その部分も楽しみにして劇場に来て頂けたらと思います
演出面で、この公演では敢えて前回とは違うものを出演者に要求する、という山口さん。それを山口さんは「挑戦」と呼んだ。この挑戦の意思がある限り、【演劇ユニットCool*Flower】の演劇は成長を続けることだろう。単なるイベントとしての成功を、このユニットの成功とは考えない山口さんの視線は、そのまま座長・青山さんの視線にも重なる。

【演劇ユニットCool*Flower】―「本格的な演劇を観せたい」と胸を張るこの涼やかな花が、この秋、どんな実を結び、どんな種を観客達の心に贈るのか。一人の演劇ファンとして、大いに期待したい。
(文中、一部敬称略)
2004/10/07 文責・インタビュアー:北原登志喜  撮影・編集:鏡田伸幸

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