今回のBACK STAGE REPORTは、練馬区にある【劇団黒テント】のアトリエからお送りする。
奇しくも、前回までの「ラフレシア円形劇場祭レポート」に続き、野外(テント)公演を間近に控えた劇団の稽古場にお邪魔することとなった。
テント公演の<東の雄>、【黒テント】が今回取り組む舞台は、その名も『絶対飛行機』。あの、‘9・11’を、演劇の言葉で語る、そういう芝居である。
アメリカのイラク攻撃が続く中、あの日に立ち帰る【黒テント】、その意気込みや如何に。
充実の稽古風景と共に、役者さん、作・演出の佐藤信氏、プロデューサーの宗重博之氏へのインタビューをお届けする。
このページでは、2003年4月29日の楽日公演後、打上げの場でのインタビューを紹介します。

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BACK STAGE REPORT 〜黒テント公演「絶対飛行機」 【打ち上げ潜入インタビュー】〜


 2003年4月29日。『絶対飛行機』の10日間に渡る公演が幕を閉じた。
公演終了後、テント内で行なわれた打ち上げに潜り込み、公演に携わった方々にお話を伺う事が出来たので、その一部を紹介する。


川内 哲二郎さん <ガイド>
<>内は今公演での役名

この場所だからこそ、という芝居になった

― 無事、公演が終りましたね。振りかえってみて思うことは?

 テントに入ってからは早かったですね。あと一週間くらいやってもいいかなって(笑)。・・・やっぱり、稽古場で出来る事は半分くらい、あとはテントに入ってからなんだってつくづく思いましたね。テントに入って、毎日状況も変わって・・・終ってみれば、この場所、この北千住という街だからこそ出来た芝居になったんじゃないかって思います

― 改めて感じたテントの面白さは?

 ・・・何日か前、最後のシーンの時にちょうど頭上を飛行機がゴーって通ったんですよ。そのタイミングがまた・・・『すげぇなぁ』って思って。そういう面白さがやっぱりテントならではですね。今回、風が強かったりで外の音が結構あって。で、最初はそういう音に「負けちゃいかん」って力んじゃったりしたんですけど、(佐藤)信さんに、『外の音を邪魔だと思わないで、利用するぐらいに思え』って言われたんです。『ああ、なるほど』って思いましたね

― うまく利用できました?

 う〜ん・・・やっぱり、あと一週間くらい欲しかったですね(笑)

宮崎 恵治さん <カワセミ>
足立 昌弥さん <彼>

やり足りない、っていう想いはいつもある

― この公演を振りかえってみて、今、思うことは?

宮崎 「・・・最高のテキストと向き合えた、っていうのが1番ですね。最後までテキストと向き合えた

足立 「僕は・・・毎日、まだまだやらなきゃいけない事、課題がたくさん見つかりました。昨日『良かった』って言われたからって、じゃあ今日同じ事をしたら、きっと良いものにはならない。そういう、変わらなきゃいけない部分も毎日出てきました

― テントは特に芝居の変化の振幅が大きいといいますね

宮崎 「そうですね。まずテントに入った時点で大きく変わったし、毎日意識的に変えていく部分もありました。変える、と言うよりプラスする、ですね。芝居を進化させる。同じ事の繰り返しでは駄目になってしまいますからね。常に新鮮さを求めて。・・・・・・でも、本当に彼(足立さん)はこの10日間で変わりましたねぇ。良くなっていった

足立 「おぉ〜!? 嬉しいですね

― 外の音は気になりませんでしたか?

足立 「やっぱり風の音は・・・でもそれもテントの面白いところなんでしょうね。それによってまた変わる

― 観る側としては、そういう外の音も芝居に取り込まれていく様で面白く感じました

宮崎 「それは、磯田(収)さんの音楽の力もありますね

足立 「うん、そうですね。・・・だから、磯田さんも絶対同じ事はやらないんですよ。そういう磯田さんの音楽と、相手役との繋がりが噛み合う瞬間がまた・・・凄く楽しかった

― もっとやりたかった、という想いは?

宮崎 「やり足りない、っていう想いはどんな芝居でも当然あります。だから僕、千秋楽って大嫌いなんですよ。『畜生、これで終っちゃうのかよ。もっと芝居してぇ』って思いますからね。でも、この芝居はこれで終っても、ここで得た課題は、新たなステップとして次に繋がっていく。(佐藤)信さんが『テントで得たものはテントに還す』っておっしゃってるように、次に還せばいいんです

山下 順子さん <鳥の神官>
宮地 成子さん <私>

終ってみれば、「絶対」だった

― テントを立ててから、随分天候が荒れましたね

山下 「(佐藤)信さんが雨男なんです(笑)。『ほとんど雨だと思った方がいいよ』って、自分で言ってましたから

― 天候もそうですが、芝居も日々、変わっていったようですね?

山下 「そうじゃないと、新鮮じゃなくなりますからね。でも、形で変えるのではなくて、それでも日々新鮮に、っていうのは難しい。そこを考えさせられました。特に今回は、テーマがテーマでしたから・・・本番前に演出家から言われたんです。『9・11を忘れるな』と

宮地 「でも私の場合は逆に、やっていてずっと安定することができなかったという反省もあるんです。出来にムラがあったような気がします。コンディションの持って行き方が凄く難しいんだなって思いました

山下 「でも自分が良く出来たからと言って、芝居全体が良いかは分からないよね。よくあるんですよ。自分が駄目だった日に限って『今日の芝居、面白かったよ』って(笑)。そこが全体のアンサンブル、なんでしょうね

― 音楽も磯田収さんの即興でしたね

宮地 「私、(音楽に)負けっぱなしでしたね〜。友達が磯田さんに、私が出てくる場面の音楽、『ピンクフロイドみたいでした』って言ったんですよ。そうしたら次の日、いきなりブルースみたいな感じできたんですよ。も〜、ホントに動揺しました(笑)

山下 「(音楽を)聞く余裕があれば、その即興が楽しくなるんだけど。『あ、今日はこう来たな。じゃあ・・・』っていうふうに返していければ、音楽に助けられる事も多い。それでまた、1回1回が新鮮になりますしね

― この公演を振りかえってみて、今、思うことは?

山下 「この芝居は『絶対』にこだわっていたんですけど・・・終ってみたら、うん、『絶対』だったな、と。満足してます

宮地 「・・・長かったようで、短かったようで。まだ終わった気がしませんね

― では、もう一週間くらいやりたい?

宮地 「いや、もういいんですけど(笑)

山下 「もう一週間となると・・・やっぱり大変ですね。それにこの芝居は再演も無いでしょう。今この時だけのものですからね

宮地 「・・・とにかく、楽しかったです・・・・・・結構、辛かった事って忘れるんですね。信さんのキツイ駄目出しは頭に残ってるけど(笑)

山下 「まだエバリエーション(再評価)が残ってるからね

宮地 「あぁ〜、そうだった・・・



斎藤 茂男さん (照明)

自由度が高い、そこが面白い

― テントでの照明となると、劇場には無い苦労も多そうですが?

 そうですね。天井の事だとか、テントならではの制約がありますからね。それは難しい所です。あとは・・・・・・雨。客席にケーブルは通せないから、テントの端に張るわけです。そうすると、どうしても雨の時濡れてしまう。だから濡れても大丈夫なように処置は万全にしておきます。

― 今回は風も随分吹きましたね

 風の影響ももちろんありました。本当に風の強い日が多かったから、吊るしている照明が揺れてねぇ(笑)

― 音楽が即興だったり、芝居が日々変化したり・・・対応は大変ではなかったですか?
 
 いえ、それは照明にはあまり関係ありませんでしたね。もちろん細かい調整はしますけど、基本的な所が変わるわけではありませんでしたから。

― テントの面白い所は?

 テントは空間的に解放されているんで、制約は別にして、自由度は高いんですね。そこが面白いですね。



磯田 収さん (音楽)

腹八分目くらいがちょうどいい

― 演奏は即興ですよね。音楽で役者さんをいじってやろう、なんていう部分もありました?

 ええ、それはありました。セッションですからね。ただ、常に舞台横にいますから、どうしても1番舞台を見ている立場になる。だから、主導権は僕に寄ってしまったかもしれませんね。期間が少し短かったかな。

― では、もう少しやりたかった?

 いや・・・・・・やっぱり、腹八分目くらいがちょうどいいんじゃないでしょうか(笑)

― 外の音は演奏の邪魔になりませんでしたか?

ええ、別に邪魔にはなりませんでしたね。出来るだけ(演奏に)取り込むようしていましたし。

― 公演を振りかえって、今、思うことは?

う〜ん・・・役者さんとのセッション、ということでは、もっと出来たんじゃないかって思うんです。だから次にやるときは、もっと役者さんとからめたらいいですね。

佐藤 信さん (作・演出)

テントだからこそ出来る芝居だった

― やっぱり、テントはワクワク感が違いますね
 
 ええ、そういう点でも、テントは有利ですね。

― 今日はまた一段と風が強かったんですが、外の音って余り気にならないものですね

 ええ。風が強ければ逆にお客さんは集注しますね。しっかり聞き取ろうって、身を乗り出したりしてくれますから。車の音にしてもそうですけど、ある意味でテントは外の音に助けられている部分があります。だから、無理に風の音に負けまいとして荒い芝居をしてはいけないんですよ。

― 最後、表に出て全員で絶対飛行機のテーマソングを演奏してらっしゃいましたけど・・・・・・結構な音量で、ちょっと驚きました

 アレが出来る、やらせてもらえる。足立区はすごいって、つくづく思いますね。人の繋がりがあるからこそなんですよね。これが‘個人’しかいないような場所だったら、絶対に直接僕等に「ウルサイ!」って言って来ますよ。

― 公演を終えられて、今、思うことは?

 こういう芝居はテントだからこそ出来るものだったと思いますね。これが劇場だったら、不条理な実験演劇ととられてしまうかも知れませんから。かしこまってないテントだから、お客さんにも集中して、楽しみながら観てもらえる。電車の中で本を読むようなモノですよ。

― 若い役者さん達はいかがでしたか? 

 僕はテントで30年やってきてその経験があるわけだけど、経験がない良さ、というのもあるんですね。佃煮じゃないんで(笑)。そういう経験と、経験のない良さとが合わさって、より面白いものを産み出せる。これが大学なら、どうしても先生と生徒になってしまうけれども、テントは教える・教えないの世界じゃないんです。・・・・・・色んな年齢の役者が混じっている。【黒テント】の良さはその年齢層 ― 色んな年齢の人間が共同で何かを創っていくという所 ― にあるんだと思います。「人間は共同で生きる生き物なんだ」と再確認するのが芝居ですからね。

記憶に残るもの

― 今回のお芝居ですが、幾つものシークエンスの連なりで構成されていますね

 9・11のあの時、何かが壊れた。その時に散らばった欠片を拾い集めてみよう、というイメージが最初にあったんです。そのことによって、では何が壊れたのか検証しよう、と。

― 拝見して、正直、分からない所もたくさんありました。けれども、あの9・11の時と違って、誰に邪魔される事無く、自分で答えを探せる喜びもありました

 「分からない」とちゃんと言うことは、とても大事だと思います。僕はよく、「留保の権利」って言うんですけど。人間は留保の権利を持っている・・・民主主義は留保を許さないんですよね。多数決で結論を出してしまう。でも自分の中で結論が出ないなら、無理に結論に至ろうとすることはないんで、留保すればいいんですよ。
だから、分からないというのは、それはそれで良いんです。ただ、お客さんの記憶に何かを残す、その事には執着したい。そして、この芝居を観て下さった方の記憶にはきっと、何かしら残ると思います。


― HP上で、新しいイメージについて言及されてらっしゃいますが

 テントは街に影響を与えられる、という事を今回、改めて感じました。だから、こちらの都合でテントを張るだけじゃなく、もっと街に関われる芝居を創りたい、って思いましてね。そうすることで、例えば外から入りこんでくるモノで街が壊されていく時に、そこにテントを張る事が何かしらの意味を持てるんじゃないか。・・・・・・今考えているのは、もっと派手な芝居を創ることです。おもいっきり派手な芝居をやって、もっともっとお客さんを呼びたいですね。

 23時、テントをおいとまする。
フィクションの舞台を囲っていた外幕を1歩出れば、そこは既に眠りに就きつつある静かな街の中。そのギャップに、夢から抜け出た時の様な軽い眩暈を覚える。
 まさしく薄皮一枚で分かたれた二つの世界。1つは、明日、解体されるテントと供に消える。けれども、そこで見た夢は、いつまでも見た者の記憶に刻まれる事だろう。

2003/4/29 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

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