| 今回のBACK STAGE REPORTは、練馬区にある【劇団黒テント】のアトリエからお送りする。 奇しくも、前回までの「ラフレシア円形劇場祭レポート」に続き、野外(テント)公演を間近に控えた劇団の稽古場にお邪魔することとなった。 テント公演の<東の雄>、【黒テント】が今回取り組む舞台は、その名も『絶対飛行機』。あの、‘9・11’を、演劇の言葉で語る、そういう芝居である。 アメリカのイラク攻撃が続く中、あの日に立ち帰る【黒テント】、その意気込みや如何に。 充実の稽古風景と共に、役者さん、作・演出の佐藤信氏、プロデューサーの宗重博之氏へのインタビューをお届けする。 |
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| 宗重さんへのインタビュー終了後、1階の稽古場にお邪魔する。入室した途端、鼻腔をくすぐる甘やかな匂い。見れば、演出席に着いた佐藤信さんのパイプから、紫煙が柔らかく広がっていた。 | ![]() |
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演出席には佐藤さんの他にも、舞台監督の森下紀彦さん、この秋に演出家として本公演デビューする南俊一さん、坂口瑞穂さんの顔も見える。その演出席の前、3段上がった舞台上に居並ぶ役者さん達。舞台は決して狭くないが、さすがに24人(今日は1人お休みか)が一斉に立つと、はちきれそうな圧力を感じる。その舞台奥が、通りに面したシャッターだ。シャッターのむこうから、セットを組み立てる音だろう、ドリルが木に穴を穿つ時の叫びにも似た高音が響いてきて、部屋の空気をかき回していた。 | ||||
| 斎藤さんが、「ちょうど『絶対飛行機』のテーマソングが始まるところです」と耳打ちして下さった。グッドタイミングだ。 | |||||
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| 曲が始まる。先ほど小林さんが「音楽では素人の集まりですから」と謙遜していたが、中々どうして、玄人はだしの演奏だ。その演奏に合わせ、力強い群唱が至近距離で鼓膜を打つ。そのプリミティブな波動が心地良い。歌の内容は・・・・・・本番で御確認を。 | |||||
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| テーマソングが終ると、佐藤さんが舞台に上がった。 ・・・・・・佐藤さんは、まるで散歩をするように舞台上を歩く。パイプをくゆらせながら、時折、役者さん達と言葉を交しつつ、ゆるゆると一回り。何とも軽やかだ。 この後、劇中の楽曲を一巡通して、音楽稽古終了。1時間半続いた音楽稽古はそのまま、良い暖気にもなっているようで、10分の休憩をはさんで、すぐさまシークエンスの発表に入った。 |
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| 冒頭。オフィスに佇む宮地さん(私)が、コーヒーカップを片手にふと振りかえる。そこには目出し帽をかぶった足立さん(彼)。世界が、一変する・・・・・・ | ![]() |
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佐藤さんの細かいダメ出しが始まった。その口調はとても穏やかで、年齢差や立場をかさに一方的になる事は決して無い。同じ目線のコミュニケーションを、とても大切にしている事が伺える。けれども、出される指摘や注文は相当に細かい。間(ま)を問い、動きを問う。SE(効果音)に関しても、タイミングその他、数々の指示を出す。・・・・・・いや、「注文」だとか「指示を出す」だとか言うのはちょっと違うかもしれない。むしろ「提案する」が近い。 「こうしたらどう?」 「これでちょっとやってみようよ」 |
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| ワクワクしながら若い役者さん達と共同でシークエンスを創っている。そんな感が強くて、その姿は、自身が書いた台本を演出している風には見えなかった。 5回程やって、宮地さんと足立さんがいくつかの課題を得たところで、このシークエンス終了。次は宮地さんが1人で創るシークエンスだ。……ここでは主にSEのタイミング調整をして、更に次のシークエンスへ。きっかけと同時に舞台に駆け上がる足立さんと重盛次郎さん。1つ苦笑して、佐藤さんが言った。 「・・・・・・そんなに慌てなくていいよ」 笑いに、緊張がほぐれていく。 |
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| こんな感じで、佐藤さんの前で次々にシークエンスが披露されていった。自信と不安をかかえて舞台に上がり、たくさんの宿題を手渡されて舞台を降りていく役者さん達。舞台を降りた役者さんの中には、すぐさま部屋を出ていく人もある。おそらく2階の稽古場でさっそく自主練習に入るのだろう。 斎藤さんがお声をかけて下さった。 「折角ですから、2階の自主練習の様子も御覧になりませんか?」 ぜひにと、斎藤さんに付き従い、目礼だけして1階の稽古場を後にした。 |
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| 2階稽古場のドアを開けるとまず、幾つものポスターが目に飛び込んで来た。【黒テント】が過去に行なってきた幾多の公演、そのポスターだった。それが、壁をぐるりと飾っている。そんな‘劇団の歴史’に見守られながら、部屋の中では10人程の役者さんが、それぞれの自主練習に没入していた。 | |||||
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| 羽らしきものを背中につけて、神妙に不思議な動作を繰り返している2人組。その横では、1人の役者さんが膝を抱えて椅子に座り、ぶつぶつとセリフをつぶやいていた。5人で本読みをしているむこうのグループは、アコーディオンの伴奏にリズムを取りつつ、何やら楽しげだ。そこからちょっと離れて、独り床にしゃがむ役者さんの手元を見れば、一心不乱に台本に何か書き込んでいる・・・・・・ 「いつもこんな感じで、もう外だろうがどこだろうが、それぞれ場所を見つけて稽古してます」 斎藤さんの言葉に耳を傾けながら、なんとも言えない居心地の良さを感じていた。学生時代に入り浸った部室を彷彿させる空気感。誰もこちらに気を使わないで下さるので、有り難い。板敷きの床に胡座をかいて、しばらくその雰囲気に身を浸した。。 |
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| 16:00。アトリエを退出する。 1歩外に出れば、そこは閑静な住宅街。西に傾いた日が作る、光と影のコントラストも整然とした家並が続く。 混沌から秩序へ。 振り返って、今出てきた建物を眺めてみる。なるほど、この日常の中に佇むアトリエは、いかにもいかがわしい。知らずに前を通る人は、きっと足を止めるだろう。 いかがわしく。もっと、もっと、いかがわしく。 テントが立つ日が待ち遠しい。 |
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| 2003/4/6 文責:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸 | |||||
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