今回のBACK STAGE REPORTは、練馬区にある【劇団黒テント】のアトリエからお送りする。
奇しくも、前回までの「ラフレシア円形劇場祭レポート」に続き、野外(テント)公演を間近に控えた劇団の稽古場にお邪魔することとなった。
テント公演の<東の雄>、【黒テント】が今回取り組む舞台は、その名も『絶対飛行機』。あの、‘9・11’を、演劇の言葉で語る、そういう芝居である。
アメリカのイラク攻撃が続く中、あの日に立ち帰る【黒テント】、その意気込みや如何に。
充実の稽古風景と共に、役者さん、作・演出の佐藤信氏、プロデューサーの宗重博之氏へのインタビューをお届けする。
BACK STAGE REPORT 〜黒テント公演「絶対飛行機」 【取材リポート役者インタビュー】〜
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宮崎恵治(写真上段左)
山下順子
(写真上段右)
足立昌弥
(写真下段左)
宮地成子
(写真上段右)

2003年4月6日、12時。
公演を2週間先に控えて慌ただしい空気が漂う中、アトリエの2階にある事務所へと案内された。インタビューの準備が整う間、制作の斎藤俊明さん、役者の小林恵さんとしばし談笑する。
黒テント】の芝居では必ず、役者さんが楽器を演奏し歌う、というシーンが挿入されるが、小林さんはその演奏パートのチーフ的存在(斎藤さんは「バンマス」と呼んでいた)だそうだ。「エレクトーンが弾ける」と言ってしまったが故に、現在のポジションを任された小林さんの苦労話が面白い。
詳しく知りたい方は、今公演のパンフレットに小林さんが「黒テントの音楽について」の記事を書くそうなので、そちらをお楽しみに。
なお、この時、斎藤さんが興味深い事を口にした。
「うちもそろそろ世代交代を睨む時期にきていますからね。その意味でも今回の公演はなんとしても成功させないと・・・・・・」

小林恵さん

制作の斎藤俊明さん
さて、準備も整い、まずは役者さんにお話を伺う。お相手をして下さったのは、【黒テント】在籍11年目を迎える宮崎恵治さんと山下順子さん、在籍2年目の足立昌弥さんと宮地成子さんの4人。

考える事が大切

― まず、今作について伺います。今作は佐藤信さんが書いてらっしゃいますね。ト書きも句読点も一切無い台本を拝読して、正直「手強い本だ」と感じましたが、皆さんの印象は?

宮崎 「確かに、すごく断片的に書かれてるんですけど、それは同時に進行しているモノが切り取られて繋がっている。だから1つの役にはちゃんと1つの流れがあるので、戸惑いはなかったですね

足立 「僕は・・・・・・やっぱり難解でした(笑)

宮地 「今回は、当て書き(注)して下さるっていう事だったんです。で、出来あがった本を見たら・・・・・・『え〜!? こうなっちゃったの!?』って(笑)。ビックリもしたし、恥ずかしさもありました

― その台本に取り組んでみて、役者として感じた面白さは?

宮崎 「これは『面白い』と言うかは分かりませんけど・・・・・・あの事件について―

― ‘9・11’ですね?

宮崎 「ええ。あの事件に対して僕らが考えた事、それが(芝居を)創っていく材料になる。役者一人一人が、当然何かしら持ってる訳ですよ、あの出来事に対して。それをもって、作品と向き合う。そういう部分にやり応えの様なものを感じています。とにかく、考える事が大切ですね

常に新しい視点を

― 【黒テント】さんのお芝居の創り方には一定の型があるのでしょうか?

宮崎 「全く無いですね(笑)・・・・・・演出の(佐藤)信さんなり、元さんなり、それぞれ毎回考えている事があって、それに応えるために『では役者は今、何を考えなければいけないか』、その答え合せみたいな事は常にやるんですが、創り方に関して言えば、公演毎に違います。しっかり台本を読み込んで創る事もあれば、ワークショップ的にエチュードを創って、積み上げていく事もありますし

― では、今回はどういった創り方をしているのでしょう?

宮崎 「今回は芝居を構成するシークエンスを役者がそれぞれ自分達で創り上げて、皆の前で発表する。そして、それを皆であーでもない、こーでもない、て評価し合ってから、信さんに見てもらう。そういう創り方ですね

宮地
 「だから、最初は恐かったんですよ。やってても、見ている人達に『何言われるんだろう?』って気になって。最近はようやく慣れて・・・

足立 「毎日が面白いですね

― 他の役者さんのシークエンスを評価する(エバリュエーション)のもまた、大変な試練だと思いますが

山下 「ええ。それは‘最初の観客’になる、という事でもある訳ですからね。その‘最初の観客’に新しい視点がなければ、出来あがって世に出す物にも新鮮さ・新しさが無くなってしまうでしょう。だから、見る側にまわるのも大変です。常に新鮮なものを・・・・・・実は今、集団としてもそこの部分が問われていると思うんですよ。そこに『新鮮さ』が求められなければ、いくら何かを積み重ねたところで、集団はつまらないものにしかならない。だから、特に今回の稽古では新しい試みをどんどん取り入れていこうって・・・・・・ほんと、試される部分が多くて、大変ですけどね(笑)

『楽しむ』と『観てやる』

― 今回はテント公演ですね。劇場公演との違いは?

足立 「単純に・・・・・・寒いんですよ(笑)。雨が降れば―

山下
 「―水をかき出したり(笑)。ワクワク感はありますね。普通はやらない事をやっている、っていう。裏側が見物ですよ〜

宮地 「前回(昨年9月のテント公演)を経験して思ったのは、そこで1つ劇団員がグッとまとまった、っていうか。あれがあったからこそ今回、また違ったチームワークで出来るように感じてます

山下 「やっぱり、大変な経験なんで・・・・・・面白さといえば、例えば、災害の後だとか、そういった状況下に置かれた人の役を、掴みやすくなる(笑)。体験としては同じようなものですから

宮崎 「(笑)・・・・・・あと、明らかに『違うな』と思うのは、演じる側と観る側の関係が、より密接になる、ということですね。お客さんと一緒に創り上げていく演劇、という感覚が強くなります

山下 「楽に観てもらえる劇場と違って、野外やテントだとお客さんもそれなりに気持ちの用意をして来ないとでしょう? 本当に寒いし、外の雑音もあるし・・・・・・負けないぞ、みたいな(笑)。そういうエネルギー、『観てやる』っていうエネルギーが舞台の上のエネルギーと一緒になるんだと思います

宮崎 「うん。野外やテントの場合、本当にお客さんは『観てやる』、ですね。劇場は『楽しむ』ですけど、テントは『観てやる』

「夢が叶った」で終らせたくない

― では、最後に今公演への意気込みをお聞かせ下さい

宮地 「今回は衣装が下着なんで、腹筋を割ろうと(笑)!

足立
 「まだ新人ですし、今までと変わらずにがむしゃらにいって、それでいい舞台に出来ればと思います

山下 「・・・・・・当て書きしてもらうのって私は今回初めてなんです。で、出来あがった本を見て、24人分、本当に当て書きしてきたなぁって(笑)。そういうところがまた新鮮だし、楽しみですね。とにかく、佐藤信、久々の作・久々のテントです。過激で危険な芝居にしたいと思ってます!

宮崎 「・・・・・・僕が【黒テント】に入ってずっと抱いていた夢の1つ、それが『佐藤信さんの戯曲をやる』ということだったんですね。で、その願いが今回ようやく叶った。ただ、『だから嬉しい』で満足しているだけじゃなく、今度は僕ら若い人間の考えている事を作品に出していかないと、信さんだってつまらないと思うんですよ。それが出来た時、この作品は絶対に面白くなるし、その世代間の結び付きが僕等のみならず『これからの演劇』に何かしら繋がっていく。そう思っています
【劇団黒テント】の次代を担う役者さん達。彼等の事をより深く知る上でも、今公演は見逃せない。なにせ台本は当て書きされているのだから。
佐藤信さんの戯曲を手に彼らはこの春、北千住のテントから演劇に、世界に、何を発信するのだろうか。
(注)当て書き:役者のパーソナリティ、或いはその役者が喚起するイメージを基にして、登場人物を設定する事。
2003/4/6 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸
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