この四月、東京の名刹・池上本門寺の大堂横グラウンドに、真っ黒いテントが立つ。

昨年秋に二人の若手演出家をデビューさせた劇団【黒テント】。
その【黒テント】、今年は創立メンバー三人の演出による、まったく趣の異なった三作品を上演するという。
その第一弾が、佐藤信氏が演出する『三文オペラ 新装黒テント版』だ。
今回のBACK STAGE REPORTは、公演を間近に控えたその【黒テント】のアトリエから、演出の佐藤信氏と、今作では剃刀左平次(原作でのマック)を演じる【黒テント】代表 / 斎藤晴彦氏のインタビュー、更には緊張感漂う稽古の模様をお届けする。

BACK STAGE REPORT 〜三文オペラ 新装黒テント版〜【番直前!テント内稽古REPORT】〜
藤晴彦インタビュー】【藤信インタビュー】【重博之インタビュー】【古REPORT
東急池上線池上駅から歩いて10分。日蓮宗大本山池上本門寺。
九十六段ある此経難持坂(シキョウナンジザカ)の石段を昇って行くと、中学生の部活動らしい一団が駆け上って通り過ぎていく。
石段や境内の中にある坂道を使って、走り込みをしている。
石段を昇りきり、境内に入ると、犬の散歩やウォーキングをしている地元の人も何人か見える。
強い風が吹いていて、汗ばんだ顔に気持ち良い。石段の上から池上の街が見下ろせる。
三門を通り、本門寺の本殿を右に折れ、突き当たった五重塔を左手に下ると、大きな広場に建てられ、いくつものライトに照らされた真っ黒のテントが見えてきた。
黒いテントの前には、明かりの点いた二列に並んでいる提灯と、白い、小さな普通のテントも二つ見える。
入り口に「Black Tent Theater」の文字。後ろには五重塔が赤くライトアップされているのが見える。
テントの中では、すでに通し稽古が行われていた。
役者さんたちは本番と同じ衣装・メイクをしていて、照明・音響などもすべてが本番通りに準備されている。
舞台左側にスクリーン。下手に花道があり、観客を二つに分けている。右側にはピアノと、楽器たち。それらすべてが百人は軽々と入るだろう客席から見渡せる。
舞台の上には、木でできた牢屋があり、三十名近い役者さんたちが表情豊かに歌い、演じている。
稽古中、大勢の裏方の人たちが真剣に舞台を見守り、稽古が休憩になると、舞台を掃除したり、照明を動かしたりと、気ぜわしく立ち働いている。マスクをした人が目立つ。
休憩中に佐藤氏が、「風もすごいけど、風邪もひどい。みんな一回ずつ掛かっている」と仰っていた。
風がさらに強くなり、テントの屋根や壁のビニールが激しく波打つ。
バタバタと音がする中、テント自体は丈夫にできていて、びくともしていない。
たくさんの人が、おもしろい舞台を作ろうと真剣になっているのを見ながら、テントというものに、不思議な感覚を覚えた。

小劇場とは違う。大きくて高級な劇場とも違う。

小劇場の狭苦しさがなく、解放感があり、大劇場よりも舞台に集中できる。
そして、風の音や、木々のざわめきや、地面の微かな振動などが舞台と混じり合っているから、観客はテントの中の芝居を見ながら、同時にテントの外側の世界を体感することになる。
それはなぜか、不思議と夏の夜祭を思い起こさせる。盆踊りや太鼓の音。楽しそうな顔をした、行きかう大勢の人々。夜店で買った綿菓子や焼きそばを境内の冷たい石段や、草の上に座って食べながら、打ち上げ花火や大道芸人の芸を見ていたことなどを……。そのような気安さと親しみやすさと、何かが起こりそうな気がして、心が浮き立つような怪しさをテントの通し稽古を見学させてもらいながら連想してしまった。
一時間半ほどの見学を終えてテントを後にする時には、祭はまだ続くのに、夜遅いために家に帰される子どものような気分にさえなった。宗重氏が「地方の時は、ホテルに戻るのは朝の三時くらいで、次の日また七時にはテントに入っていた」と仰っていたので、きっとこの後も本番ぎりぎりまで、妥協のない稽古が続けられたのだろう。
2004/4/20 文責:浅井貴仁 撮影・編集:鏡田伸幸

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