この四月、東京の名刹・池上本門寺の大堂横グラウンドに、真っ黒いテントが立つ。

昨年秋に二人の若手演出家をデビューさせた劇団【黒テント】。
その【黒テント】、今年は創立メンバー三人の演出による、まったく趣の異なった三作品を上演するという。
その第一弾が、佐藤信氏が演出する『三文オペラ 新装黒テント版』だ。
今回のBACK STAGE REPORTは、公演を間近に控えたその【黒テント】のアトリエから、演出の佐藤信氏と、今作では剃刀左平次(原作でのマック)を演じる【黒テント】代表 / 斎藤晴彦氏のインタビュー、更には緊張感漂う稽古の模様をお届けする。

BACK STAGE REPORT 〜三文オペラ 新装黒テント版〜【重博之インタビュー】〜
藤晴彦インタビュー藤信インタビュー】【古REPORT番直前!テント内稽古REPORT
重博之 氏(プロデューサー)
今回、劇団【黒テント】がその名の通りの真っ黒なテントを張るのは、東京の名刹・池上本門寺の敷地内。総門を抜け、長い石段を登った先にある大堂、その横のグラウンドに突如として怪しげなテントが現れる、という寸法だ。
『三文オペラ 新装黒テント版』の舞台は明治。日露戦争の大勝利に沸きかえっていた頃の東京だ。その時代を生きた人々・まさにその日露戦争で命を落とした人々が、きっと周囲に墓石を抱き、眠っている、そんな場所でのテント公演。観客は、石段を一段一段上がるごとに、芝居の中に入り込む気分を味わえること間違いない。
この、見事なロケーションをセッティングしたプロデューサーの宗重博之氏に、公演場所決定の経緯などを聞いた。
寺は元々地域のシンボル
―今回はお寺さん、池上本門寺の敷地内にテントを張るそうですね。なんでも、公演の前にお坊様がお説教をして下さるとか

ええ、ええ。そうなんです。

―どういった経緯でこの場所に?

お寺っていうのは元々、地域のシンボルでもあり、コミュニケーションの場でもあったわけですね。更には寺子屋で学問を教えるといったように、地域の文化面を支えていた歴史もあるわけです。そういった歴史が今に続く形で、本門寺さんの方で色々な企画をして、音楽公演などの文化活動をしていらした。池上本門寺の大堂横にグラウンドがあって、お寺としてそこは開放して、ジャズだとかのコンサートなどを企画されてやっているんですね。ただ、お寺ですからね、布教活動と結び付けられるような誤解を避けるためにも、そのグラウンドの有効的な利用法などは“イキイキ推進委員会“というところが一括して決定しているんですね。そこを紹介して頂いて、「それだったらそこに演劇も入り込めないかな」というお話をしたんです。そうしたら「いいですよ」となりまして。だから、直接に本門寺さんとお話をする、ということではなく、イキイキできる街づくりを目指す“イキイキ推進委員会”と一緒にやろうということになったんです。
治体、お寺
― そうした文化的な活動が地域の結びつきの中心になっている様子は感じられました?

そうですね。“イキイキ推進委員会”というのは出来て三年目になるそうですけれども、その活動によって、人も集まってきますしね。本門寺には力道山、松本幸四郎一族、古くは幸田露伴ですとか、そういった著名人の墓も数多くあって、そこを訪れるお客さんも元々いらっしゃるわけですが、こうした文化的な活動によってまた、新たに訪なう方も増えるでしょうし、それはまた、地域の商店街などにとってもプラスになることですからね

―では、“イキイキ推進委員会”を通すことで、地域との関係作りもわりとスムーズに?

ええ。そういった点では北千住の例に近かったですね。場所の持ち主が自治体じゃなくてお寺さんだったわけだけれども、地域に根ざした活動をしているということでは同じでしたからね。
っとテントが黒くなりました(笑)
―前回のインタビューで「芝居の内容が場所を選ぶ」というお話を伺いましたが

ええ。……今回も、ぴったりですね(笑)。あの、百段近い石段もあるし、五重の塔もあるし、周りにはお墓がたくさんあるし……ちょうど今回の作品は明治の、日露戦争のすぐ後ですけど、そういう雰囲気の漂うところがありますからね。お客様には足を運んでいただく段階で心の中が高揚していくような、そんな設定がなされているのではないかと思っています。

―その階段を上がっていくと、真っ黒いテントが姿を現すわけですね。この「真っ黒いテント」、探すのは大変ではなかったですか?

大変だったです(笑)。これはもう、4〜5年前から目をつけていたテントがあったんですけれど、今回、やっと(笑)
年はもう、全く違う顔ぶれで!?
―その真っ黒いテントで、山元清多さんが台本を書き、斎藤晴彦さんが出演し、佐藤信さんが演出する。70年代から90年代にかけての【黒テント】の姿を彷彿させる公演になりそうですが

これがね、一番の修羅場になりますね。これをいかに越えるかっていうのが、これからの僕たちの課題になるわけです。今は創立メンバーが頑張ってやっている。これを抜く若い人たちが出てくるための、これは準備だと思うんですね。次からは若い人たちの名前がトップに出てくるように集団の色を作り変えたいな、と思っています。
……今年、この創立メンバー三人が春・夏・秋と連続でやりますけれども、来年はもう全く違う顔ぶれで、なおかつ今年に負けないようなレパートリーですとか、活動をやっていけるような集団にしたいですね。


―では、去年からの劇団全体の流れを、世代交代の一つのプロセスと考えている

そうですね。それはありますね。ただ、まったく年寄りが(笑)……昔からのメンバーがいなくなって、若い人たちだけでやるっていうのではないんですけどね。そうしたメンバーも囲みつつ、コミュニケーションをとりながら、刺激し合いながらやっていければいいな、と。ただ、主力部分は ― 演出も、代表も ― 若いところに持っていきたい、ということです。

―最後に、今作『三文オペラ 新装黒テント版』の宣伝をひとつ

とにかく大衆喜劇、面白い芝居になると思うんです。『三文オペラ』ですから、かなりネームバリューもありますし、面白いっていうのは分かって頂けると思うんですが、今までの『三文オペラ』とは違う、黒テントにしかできない『三文オペラ』にしたいと思っていますので、年齢を問わず、観て頂きたいですね
劇団の世代交代をにらむ【黒テント】。その【黒テント】にとって、今年は大きな意味を持つ一年になるだろう。だが、この春、真っ黒いテントの裂け目を抜ける時、我々観客は「桜が花から葉へと装いを変える季節」に、無理に隠喩を見出だす必要はない。
ただ、楽しむこと。
芝居が場所を選ぶ。その面白さを存分に堪能したい。
「ここが修羅場」と語る宗重さんの、どこか楽しげな表情が印象的だった。
(文中、一部敬称略)
2004/4/9 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

BACK STAGE REPORT 〜三文オペラ 新装黒テント版〜【重博之インタビュー】〜
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