BACK STAGE REPORT 〜劇団ブサイコロジカル。〜ネットが繋ぐ宴と縁〜【宮崎 拓海インタビュー1】
 【劇団ブサイコロジカル。】の生みの親、宮崎拓海氏が「舞台をやりたい」と思い立ってから一年を迎えようとしている。
 その一つの言葉がネット上で成長し具現化して、来月(11月)に劇場というリアルな場へと舞い降りて姿を現す。
 ネットからリアルへのダイビングだ。
 IT劇団【劇団ブサイコロジカル。】……その特異な劇団誕生の軌跡、ユニークな組織体系とその活動内容を、座長の視点から宮崎拓海氏に語ってもらった。
宮崎 拓海 氏
【劇団ブサイコロジカル。】座長・演出

1981年6月24日高知県生まれ。
暗黒の3ヶ月を乗り越えて
―コミュニティ型のwebサイト、いわゆるSNS(トップページ解説参照)から始まった【劇団ブサイコロジカル。】。……そもそも、なぜ演劇だったのでしょう?

  まず、いろいろなスタッフが集まってモノを作る総合芸術みたいなことをやりたかったんです。
 僕は中学校時代に演劇部に所属していたんですが、その後進学した高校が男子校で、部員がいないということもあって、舞台演劇を続けることができなかった。それで悔いというか、もう少しやりたいという気持ちがありました。だから、総合芸術ということでは“映画”という選択肢もあったんですけど、同じやるなら舞台演劇をやりたいな、と。それも本格的にお金をかけて、しっかりお客さんを呼んで、興行的にも成功させる形でやりたいなと思って、舞台演劇をチョイスしました


―そうして、2004年11月10日、SNSのGREEで、コミュニティ『素人ですが舞台とかやりたい』をスタートさせました。次の日の11日には脚本の工藤りょう さんが決まっていますが、これは前から話があったんですか?

  いえ、まったく。思いたったようにノリでGREEにコミュニティ(『素人ですが舞台とかやりたい』)を立てて、この場で動かないと企画倒れというか、自己満足で終わると思って、その日のうちに以前ネットで知り合った工藤さんに連絡を取りました

―その後、2月のスタッフ募集から5月のblog立ち上げまでの3ヶ月間はどんな準備を?

 その時期は“暗黒の3ヵ月間”と呼んでいます(笑)。
 初めに「やる」と決めた時から“ネットの企画ありき”で、それによって他の小演劇と差別化を図ろうと考えていました。だからこそ新しい切り口でやりたい……そういう企画を、なかなか人が集まらない中で、どんどん出していかなきゃいけない時期だったんですね。
 …でも、この“暗黒期”に出てきた企画が6・7月くらいまでずっと使われていましたから、あそこで燻ぶっていた時期も、実はうまくいっていた時間だったんだと思ってます
『素人だけど舞台とかやりたい』というアンチテーゼ
―公式サイトのblogを見ていると、ドキュメント担当とか、マーケティング担当とか、スタッフワークが非常に充実していると感じます

 これはもう、スタッフに恵まれたとしか言い様がないですね。
 うちの劇団に集まったスタッフは当初、「本当に演劇をやりたい!」というのは一握りで、「演劇は知らないけど、そういう現場に身をおきたい」という人が多かったんです。それぞれの目標も全然違うところにありました。例えば、エンターテイメントをネットで伝えたい人もいれば、ネットラジオを作りたい人もいる、という具合に。そういう人たちが集まって、“演劇”という一つのテーマに向かっていった。それが現在の活動につながっている訳ですから、今ではむしろ、演劇に携わっている人に絞って募集をかけなくてよかったと思っていますね。
 もっとも、「演劇は知らない」って言っても、演劇の場に触れるようになればやっぱりみんな徐々に演劇にハマっていくんですよ。それがまた嬉しくて。もともと演劇好きだった人間としては、「演劇はこんなに明るいエンターテイメントなのに、なんでそんなに受け入れられないんだろう?」と思っていたので、そのマイナスイメージをみんなが払拭していく様子を見ることができて、改めて演劇やってよかったと思いましたね。やっぱり演劇の力はすごいんだな、って

―そのスタッフの中には、SNS書籍等で有名な原田和英さんや、blog界で有名な中川早紀(=さきっちょ)さん。元学生社長の古川健介さんやパソナアイ社長の長谷川智紀さんなど、今後日本のネット業界を背負うであろう人材が名を連ねていますが、宮崎さんがオファーを出したのでしょうか?

 中川早紀(さきっちょ)に関してはもともと接点がありました。彼女もエンターテインメント寄りの人間で、そういう企画ものが好きですから、なんとか引き入れたいと思って一緒に飲みに行って……飲んだら大体、何とかなります(笑)。
 パソナアイの長谷川さんは役者の中川(中川水帆)の紹介で、彼とも飲みました。飲んで意気投合して(笑)


―『素人だけど演劇とかやりたい』というキャッチコピーは目を引きますね

 「素人」というのは「舞台に立ったことが無い」という意味です。お金を貰って公演をやるにあたっては、皆プロだと思っています。
 このキャッチで何を言いたいかというと……ただ観るのでさえも敷居の高い演劇、やるのはもっと敷居が高くて、「やりたい」と思ったときにできない人は沢山いると思うんですよ。けれど、僕らは「やりたいと思ったときに、ネットというツールをつかって仲間を集めて、実際にやっていますよ」「素人だけど舞台とか出来てますよ」っていうことを言いたいんです。つまり「素人だけど、っていうことを言い訳にしちゃ駄目なんだよ」っていうアンチテーゼなんですよね。……でも、これは公演が終わって初めて言えることなんですけどね(笑)
 僕も劇団員や自分自身を戒める上で言っているのは、実際公演当日にお客さんからお金をもらって演技をする時点でみんなプロだ、その時点で「素人だけど……」っていう言い訳は通用しない。お客さんは2500円払って2時間ずっと座っているわけですから、そこだけは絶対忘れてはいけないよって話は何回もしていますね
   
blog――間口を広げるために
―【劇団ブサイコロジカル。】はIT劇団と呼ばれるだけあって、blogやポッドキャスティングなどを活用して、丁寧に活動内容を報告していますね

 実際にネットを使ってドキュメンタリーをやってみると、ネタバレのこともあって、本当の“モノづくり”の部分はなかなか伝えるのが難しいんですね。でも、blogなどで一人ひとりの役者、あるいは僕の“もがいている姿”をちゃんと描けているのなら、それを見て感情移入して下さる人はきっといるんじゃないかと思うんですよ。
 作品の面白さを宣伝することで人を集めるのが従来の舞台演劇のセオリーだと思うんですけど、うちは「何で人を集めるか」という部分を“人間”に絞った。「この人を見たい」「この脚本家が作る話が観たい」「このキャストが演じるところを見たい」というような興味をお客さんに持って頂きたくて、(blog等で)一人ひとりの人間にフォーカスを当てたんです。そのどこにお客さんが興味を持つかはバラバラでいい。最終的に劇場に来て下さったお客さん全員が作品を観て楽しんで下さればそれでいいので、そこに至るプロセスは広げていこうと思って、いろいろやったんです


―その際、大事にしたことは?

 すごく現実的な話をすると、単に稽古の状態だけを上げているblogだとヒットしないと思うんですよ。面白みにかけてしまう。だから「いかに切り口をキャッチーにするか」ということを、まず考えました。
 例えばうちは『B-ガールズ』という、ばか企画があるんです(笑)。あれ、時々、「演劇と何の関係も無いじゃないか!」って叩かれたりもするんですけど、実はすごく意味があるんですよ。あれをやることで演劇とは何の関係も無いお客さんがblogを見てくれていますからね。そうしたお客さんの何割かは、稽古日誌など他のコンテンツに流れてくれるかもしれない。だから、キャッチーで面白い“入り口”として、あれはとても重要なコンテンツなんです。とにかく、どれだけ間口を広げられるかを一つのテーマとして僕たちはやっていて、その点では僕たちが“素人”だというのも強みになっていますね
次へのアウトプット
―そのblogでのドキュメンタリーが読み物としても大変充実しておりますが、今回のプロジェクトの二次媒体(書籍化やDVD化)へのお考えはありますか?

 実は、一番最初は書籍化を前提として始めたんですよ。これはいつか食いついてもらおうって(笑)。…でも、プロジェクトを進めていく過程で流れもどんどん変わっていって。書籍化と言っても結局は終わった後の話だし、まずどこに目標を置くかと言ったらやっぱり公演です。だったら、書籍化のためのblogではなく、公演にお客さんを呼ぶためのblogにしようってなって……だから、書籍化というおいしい話は1回消したんです。
 ただ、「素人の団体でも舞台演劇を作り上げることが出来たんだよ」っていうことを、やりたいけどできないでいる人たちに伝えたい……それも今回のテーマの一つではあるので、そういう意味では書籍化を含め、僕たちがやってきたことを公演後にアウトプットできればいいな、とは思っています


―今回の公演プロジェクトの第二回というのは?

 考えてないです。「やりたい」という気持ちはあっても、物理的にみんな社会人であったりだとか、これから社会人になるって子が多いですし。
 …理想の形として、「今度は僕たちがやりたい!」っていうような新しい人たちが出てきて、そこに託して名前が持続する……そんなことがあればいいなと思ってはいるんですけど、僕が今の段階で思っているだけなので、終わってみないと分からないですね
   
→【宮崎拓海インタビュー(2)
2005/10/1 文責・撮影・編集:鏡田伸幸  インタビュアー:浅井貴仁  監修:北原登志喜
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