BACK TO THE STAGE〜 【RONNIE ROCKET】高多康一郎インタビュー
 「青春の砂鉄」を観た直後に思ったことは「この人は良い人に違いない!」ということでした。良い人と言うか真面目と言うか・・・とにかくそんな心の根っこがキレイな人が作ったお芝居だと感じたのです。
 そんな思いを抱きつつ、今回のインタビューはいきなりこんな直球的な質問から始めてみました。
2005/7/10 文責・インタビュアー:工藤喬才 撮影・編集:鏡田伸幸
高多康一郎
(RONNIE ROCKET主宰)

1974年11月6日生まれ。 

1997年に早稲田大学演劇倶楽部のサークル内ユニットとして【RONNIE ROCKET】を旗揚げ。

以降、これまでの【RONNIE ROCKET】全作品で作/演出を受け持つ。

役者として他団体への客演も数多く、様々な舞台で独特の存在感を発揮している。

鳥取県出身。B型。
真面目・・・ですかねぇ。
―まず唐突なんですが、高多さんがご自分の性格を自己分析するとしたら、どんな性格だと思われます?

真面目・・・ですかねぇ。真面目、でしょうね。でも、同時に不真面目な所もあったりする・・・そんな真面目さですかね。

―では、そんな高多さんの真面目さは、自身の作品に大きく反映されていると思いますか?

う〜〜〜ん・・・。そうだって言えばそうですけど、そうじゃないと言えばそうじゃないし・・・。難しいですね。

―“実はですね。僕は「青春の砂鉄」を観て、作品の端々から高多さんの「人柄の良さ」みたいなものを感じたんですよ。それでいきなり先程のような質問をしてみたんです。

偶然ですけど、同じような事を言っていた女性がいたんですよ。初対面の方だったんですけど、打ち上げの席で声をかけてくれて、『こんな作品を作る高多さんはきっと凄く優しくてロマンティックな方に違いない』って。でも、色々お話していたらその10分後に、『前言撤回します』と言われちゃいました(笑)。きっと僕のダークサイドが出ちゃったんでしょうね。
特に田舎にいるダメ人間が好きで
―ところで、今回のチラシ(注1)は凄く良いですよね!あのキャッチフレーズもかっこいいですし(注2)

そうですね。チラシは毎回色々こだわって作ってるんですけど、例えば、あのチラシでざくろちゃん(注3)が持ってる磁石は、よく見るとS極とM極になっているんですよ。二人の関係性を意識して「SM」みたいな。今回の話はボーイミーツガールというテーマでストーリーを作っていったので、二人の関係性(注4)みたいなものには色々な要素を盛り込んでみました。

―二人の関係性と言えば・・・噛み癖のある女の子(注5)って実際に会った事はあります?

これはまぁ・・・『噛む女』(注6)っていう映画があったんですよ。今作のタイトルの元になった『青春の蹉跌』という映画を撮った神代辰巳監督(注7)の作品なんですけど、そういうオマージュでもあるんです。それと、これはあまり関係ないんだけど、くしくも今回の舞台と電車男(注8)は少し被ってるんじゃないかなと勝手に思ってまして。オタク青年が女子と出会って変わっていく・・・みたいな。別に電車男をパクったとか、そういうんじゃないんですけど。

―確かに両方ともオタク青年が主人公ですね。

オタクが好きというよりも、ダメ人間が好きなんですよ。基本的に主人公の周りもダメ人間が多い(注9)じゃないですか。色々なダメな人が出てくるって話が好きなんです。特に田舎にいるダメ人間が好きで。僕自身が田舎の人間なんですけど、田舎のダメさ加減って独特だと思うんですよ。だから、僕自身が感じた田舎の煮詰まったようなものを投影している部分もありますね。

―ちなみにご出身はどちらですか?

鳥取です。その辺りが須那岡町のモデルになっていて・・・すなおかって書き換えたら砂丘ですよね。砂丘のある街をデフォルメしたって感じですね。

―やはり、地方への思い入れというのは強いですか?

自分自身が18年間田舎に住んでいたので、それはやっぱり財産だと思うんです。その時に持った感覚は大事にしたいなと思って。だから、東京生まれの東京育ちの人には得られない感覚というのが僕にはあって、その感覚を上手くエンターテイメントとして昇華出来たらなと思ってます。
僕がやりたいのは「裏ディズニー」なんですよね
―今回の作品を観まして、高多さんのそういった真面目さも含めた「内面性」が作品によく反映されていて、凄く魅力的だなぁと思ったんですよ。例えば、狂気じみてはいるけれど、実はそうでもない、というような世界観は非常に魅力的だと思うんですが、そういうものも高多さんの内面性が反映されている所が大きいのでしょうか?それとも作家のテクニックとして、意識的に書かれてる部分が大きいのでしょうか?

いやぁ、どっちかなぁ。多分、両方だと思いますよ。最初は監禁じみてはいるけれど、結局監禁したわけじゃないし(注10)。ざくろも途中で言ってるんですけど、今まで自分は男性に性的な対象としてしか見られなかったけれども、鉄郎はくしくも手を出せなくて、しかも献身的に一緒に過ごしてくれたこと(注11)が彼女からすると新鮮で。それでなんか親近感が芽生えたっていう、そういう奇妙な軟禁のお話で。竹中直人と小島聖の監禁ものの映画で『完全なる飼育』(注12)っていうのがあるんですね。その映画は、監禁関係が徐々に奇妙な愛情に変わっていくという内容なんですけど、そこまでは濃密じゃないにしろ、それに近い世界を描きたかったというのがありました。

―鉄郎とざくろの場合は、設定としては軟禁みたいな形ですけど、触れあいとしてはいかにもピュアというか、青春っぽいですよね。「手を出したくて出せない男の子とそれをちょっと逆手にとってるいたずら好きな女の子」みたいな所はなんか甘酸っぱいというか、妙な爽やかさがあって良いなぁと。そして、今までの質問も諸々含めまして、高多さんは性善説論者かも?という仮説を勝手に立てたんですけど、その辺はいかがでしょうか?

う〜〜ん・・・。いやぁ、どうなんだろう?・・・でも、僕がやりたいのは「裏ディズニー」なんですよね。ディズニーをまんまやっちゃうと何の影も無い、ピュアで前向きな話になっちゃうんですけど、そうじゃなくて。ちょっと人間の裏の部分も嫌な部分もあるディズニーというか。だから、王道でいて、ちょっとなんかどよ〜んとしているというか。
それが正しいとしても、それはつまんないなってのを含めて、僕の考え
―「裏ディズニー」というのは今作を表現するのに非常に良い言葉ですね。そんな裏ディズニーな今回の作品のテーマは、やはり劇中に何度も登場した、『心と体』なんでしょうか?(注13)

そうですね。今回はそれをテーマにしようという気持ちはありました。ざくろってヘルス嬢なんですけど、風俗嬢ってどういう心境で仕事をしてるのかなっていう疑問が僕にはあって。風俗嬢の方も普通に彼氏がいたりしますよね。風俗嬢の彼氏とはこれいかに?みたいに思ってて。あ、あとね。これはもう10年以上前に遡るんですけど、実は10代の頃に自分と付き合っていた彼女が言った言葉なんですよ、「心と体は別なの」(注14)ってのは。その頃まだ10代ですから、「別なのかー」って思ってすごい混乱したんですよね。僕の場合、普段はあんまりテーマとか考えて芝居を作らないんですけど、今回はその言葉を舞台の上に乗っけたいという気持ちがありました。10年前に自分の心をかき乱した言葉に対してケリをつけたいみたいな。結局、最後に鉄郎に言わせたのが僕の本心なんですけど(注15)

―実は僕はその台詞の後半の部分が好きなんですよね(注16)。前半の正論ともとれる台詞が後半のやり取りによって凄く魅力的なものとして受け取れる気がするんです。それこそディズニー的な方法論ではなく、裏ディズニー的方法論と言いますか。

あの台詞に自分の考えが集約されてると思うんですよね。それが正しいとしても、それはつまんないなってのを含めて、僕の考えなんですよね。
この二人が単純にハッピーになってしまうのは申し訳が立たないというか
主役の2人がそれぞれ耳と目を失った(注17)というのは作品の中でどういう意味を持たせていたのですか?

あの二人には何かしらの困難というか、災難が降りかかるべきかなぁと思って。鉄郎は人の命令だったとはいえ爆弾を置いていたという罪(注18)があるし、ざくろはざくろで、人の男を寝取ったり(注19)とか色々している中で、この二人が単純にハッピーになってしまうのは申し訳が立たないというか・・・。作品を作る上での神様としては何かこいつらにもペナルティーを与えないとなと思って。

―そういう発想ひとつとっても、やっぱり高多さんは良い人だと思いますよ〜(笑)。

そういうバランスを考えて、何か災難が降りかかる方が僕らしいかなと。まぁ結局心はハッピーになるんですけど、そういう流れの方が腑に落ちるといいますか。あと今回の企画名が「2×9(にじゅうく)」で9人の芝居をダブルキャストでやるというものだったんですけど、プラス「盲目と聴力障害」で二重苦という意味もあって。そのこと自体が「苦」がどうかは一概には言えませんし、今回のお話でも鉄郎もざくろもハッピーになるんですけどね。これは、昔、深夜のドキュメンタリー番組で本当にそういう夫婦がいたのを見たんですよ。盲目の父親と耳の聞こえない母親で、生まれた子供は健常者という。そんな家庭を追いかけているドキュメントがありまして、それがひとつのモデルみたいなものにもなっていますね。
うん、良いエンディングだ(笑)
―今回のエンディング(注20)は割と最初から決まってました?

いや、エンディングは書きながら途中で変更したんですけど。何か可愛いなと思えるエンディングでしたね。色々あったけれども、鉄郎君の何も見えない世界で、ざくろちゃんの顔だけはいつまでも残っているという・・・。あ、そうか、これはロマンティックだなぁ。だから、あれは回想と言うよりもあの時鉄郎にはあんな風に見えていた。で、自分に見えているざくろと向き合って微笑みあってみたいな。まぁ、ちょっと幻想的と言ったらあれだけれども、鉄郎の脳内シーンという感じですかね。

―そういうお話を聞いちゃうとやっぱりロマンティックな方なんだなと思っちゃうんですが(笑)。

そうですね。ロマンティックなエンディングなんだなぁ・・・。あんまり自覚してなかったかもしれない。うん、良いエンディングだ(笑)。
中心にある鉄郎とざくろの奇妙な恋愛が・・・
―では・・・これはちょっと変な質問なんですけど、気軽にお答え下さい。今回の作品を何か具体的なモノに例えて欲しいんですね。そこで難しい例えになるかもしれませんが、「ハンバーガー」で例えたらどんな感じになると思います?

そうですね・・・。色々てんこ盛りだとは思うんですけど、パンは・・・街ですね。須那岡町というパンに挟まれた色んな人の悲喜交々なんですけど、その中心にある鉄郎とざくろの奇妙な恋愛が、中に挟んであるミートだと思うんですよね。それに対してトマトやらレタスやらオニオンやらというのが回りの人間で、そういう人の色んなエピソードがお肉の美味しさを引き立てているというか。今回「青春の砂鉄」というタイトルをつけながらも、ブルーバージョン(注21)は設定上全員30代なんですよ。だから、今回の青春というのは、20歳の頃のトラウマによってストップしてしまった鉄郎の「青春時計」が長い時間を経て再び動き出すって意味での青春であって。だから・・・ちょっと煮詰まっていて、だいぶ賞味期限がきれたバーガーって感じですかね。賞味期限は切れてるけど、美味しいよみたいな。

―(笑)腐りかけも意外といけるよと。

腐りかけのね、ジューシーな旨みがたっぷり出ているようなバーガーだと思います。

―少し変な質問でしたが、素晴らしいお答えありがとうございます。では最後に、月並みですが今後の目標等をお聞かせください。

次回作は今回とはまた違うアプローチになるかもしれませんが、来年辺りにやる予定です。まだ現時点ではノープランですけど。基本はまぁ、裏ディズニー(注22)ってことで。王道でありながら、どことなくいびつで汚いというか、エンターテイメントしているけれど、真っ直ぐじゃないというか、一筋縄ではいかないものを常に作り続けていきたいと思っています。
 高多さんは「正しき地方発作家」だと思います。・・・なんかいきなり意味不明なコトを書いていますが、なんかそんな感じがするのです。僕自身も地方出身の人間ですが、地方にはやはり地方独特の雰囲気があります。
 それについて何が良くて何が悪いとかは全然わからないのですが、少なくとも東京の持つ「温度感」と地方のそれは随分と違う気がするのです。そのような地方の温度感を舞台上で再現しつつ、かつ終演まで観客を飽きさせない物語というのは、実はなかなかバランスが難しい訳でありまして、それを上手く創作出来る人は「正しき地方発作家」と言えるのではないでしょーか?と僕は(勝手に)思っている訳です、ハイ。
 東京も地方も、そこに暮らす人々も、色んなモノを愛せないとこういう作品は作れないと思います。
 気が早いかもしれませんが、今から来年の『裏ディズニー』が楽しみです!

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