BACK STAGE REPORT 〜にしすがも創造舎演劇上演プロジェクトVol.1
アートネットワーク・ジャパン+Ort-d.dプロデュース 『サーカス物語』〜【蓮池奈緒子インタビュー】
 ――「創造(稽古場)から発信(劇場)」へ。
 廃校校舎を転用して稽古場施設にするという画期的な試みをしている【にしすがも創造舎】。稽古場だけでなく、子どもと大人、アートと地域住民をつなぐ様々なプログラムも行っている。
 そして今秋、【にしすがも創造舎】は今公演で「稽古場」から「劇場」へと進化を遂げようとしている。今公演、そして廃校プロジェクトについて、アートネットワーク・ジャパン事務局長・蓮池奈緒子氏に話を聞いた。
蓮池奈緒子インタビュー
(アートネットワーク・ジャパン事務局長)
NPO法人化、
そして廃校プロジェクトへ
―アートネットワーク・ジャパン(以下ANJ)のそもそもの設立の経緯は?

 私どもANJは現在NPO法人ですが、元々は活動の主軸でもある東京国際芸術祭の実行委員会が母体になっています。しかし、実行委員会形式ですと、通年に渡って色々な事業を展開することが難しく、資金調達の面でも、どうしても無理が出てきます。
 東京国際芸術祭以外のプロジェクトの立ち上げ、国際的な交流を元にしたネットワーク作りといった様々なアイデアが出て来て、法人化を考えていたちょうどその頃、NPO法人の法制化が整い始めていたので、NPOとして法人化することにしました。


―ANJでは、さまざまなプロジェクトが行われていますね。少し紹介して戴けますか?

 まず、国際的なネットワーク作りによる東京国際芸術祭などの国際プログラム。それから、今回行っております廃校プロジェクトが発足して【にしすがも創造舎】を立ち上げました。
 更には若手の育成として、YAMP (Youth Arts Management Projects)というプロジェクトも行っています。これは登録制になっていて、若い学生さんたちに実践の場を提供するというプロジェクトです。今回の『サーカス物語』でも2人ほど制作助手として参加しています。
 その他にも、昨年8月に【にしすがも創造舎】をオープンさせてから、ここでしかできないプログラム、ここで必要とされているプログラムを、共同でやっている豊島区、NPO法人で出会った方たちと話し合いながら組み立て、立ち上げています。


―また、この【にしすがも創造舎】では地域との関係性作りも試行していますね。今回の「にしすがも創造舎演劇上演プロジェクト」にもそういう面があるかと思います。それと、なんでも『サーカス物語』の役者さんたちが地域のお祭りに参加されるとか?

 ええ。今回の芝居は題材が『サーカス物語』ということで、劇中で楽器の演奏やジャグリング(曲芸)などがあるんです。それで、自発的に役者の方から「演奏とジャグリングをしながら、近くにある巣鴨の地蔵通りを練り歩きたい」という提案が出てきたんです。
 稽古はまだ始まったばかりで、芸が未熟な部分があるので、まずそのパレードを行う前に地域のお祭りでやってみようということになりました。今回の公演はここの体育館で行うので、地域の方々に知っていただくという狙いもあります。町内会の集まりで提案させていただいたら「ぜひ」と許可を戴けたんです。
 そうしたら、衣装なども揃えて、みんなすごい力が入ってしまって(笑)。役者たちの自発的な企画だったので、町内会の方との段取りなど、すべて役者に任せています。青年会の方たちもとても歓迎してくれていますね。


―そんな【にしすがも創造舎】ですが、豊島区文化芸術創造支援事業として認可されて早1年が経ちました。稽古場利用の応募団体数が上半期と下半期で増えているように、認知度もどんどん上がっているようです

 そうですね。おかげさまで、段々、若い方にも知られるようにもなってきまして、ご利用数的にも増えてきていますし、質的にも一つひとついいものが出来ていると思っています。演出家の蜷川幸雄さんにも「いいところだ」と言って戴きました

―ちなみに、稽古場転用にあたって改装はされたんですか? また、音の問題などは?

 建物は豊島区から借りているので、手は加えていません。ただ、体育館だけはどうしても熱がこもってしまうので、空調だけ付けました。あと、音の方は体育館の後ろが幸い、というのもなんですが墓地でしたので、問題はありませんでした
演劇上演プロジェクト、
今後の展開
―利用されている団体からの反応は?

 教室が小さいということもあって、ここを使っているのは小さな劇場で公演をしている若手のカンパニーが多いんです。彼らは公民館などを転々としているため、「毎日同じところに通って稽古をする」という、本来であれば当たり前の環境がまったくない状態なんですね。その当たり前の環境をここで叶えられて、稽古に集中できる分「作品作りが変わってきた」という声をよく戴きます。みんなで集中して考えられる時間と、自主稽古ができる空間が取れて、期間の長い公演の場合でも役立つようです。
 それと、稽古場以外にも休憩のできるサロンなどがありますので、「打ち合わせなどを綿密にする時間が取れる」とよく言われます。サロンでは、他の劇団も休憩や打ち合わせに来ているので、そこで交流が生まれて「今度、客演出てみない?」なんていう会話もあるようですね(笑)


―今回、【にしすがも創造舎】の体育館で公演が行われるわけですが、体育館の劇場・稽古場転用も元々計画されていたのでしょうか?

 実は、いつ立ち上がるかわからずに廃校プロジェクトを進めていたんです。しかも豊島区との話が予想より上手く進んでしまって、トントン拍子というより、ガタガタと急いで立ち上がってしまった。ですから、入ってみないと「何ができるのか、何が出来ないのか」がわからない状況でした。
 体育館については、剣道やバレーといったスポーツ団体が入ってしまうと運営ができないので、稽古場や公演に使わせて欲しいと最初から豊島区にお願いをしてはいました。
 実際に上演プロジェクトを立ち上げられるか、大きな公演ができるかといったことはわからなかったんですが、「蜷川幸雄さんの舞台で使いたい」という話がホリプロさんの方からあったんです。
 その蜷川さんとのプロジェクトの中で、私達もこの空間(体育館)が稽古場として機能していると実感できましたし、この空間に興味を持ってくださる演出家の方が何人も出てきたんです。それで毎年、東京国際芸術祭を行っているので、その中で体育館を使った演劇上演プログラムをやってみようということになりました。
 だから、最初から考えていたわけではなかったんです。…実は前回の公演『昏睡』に冠した「にしすがも創造舎演劇上演プロジェクトVol.0」というタイトルも、後づけだったんですよ(笑)


―その前回の『Vol.0『昏睡』』、そして「読み聞かせ実践講座『心に響くドラマリーディング』」と続いて、演出家の倉迫康史さんを起用していますね。きっかけは?

一番最初は私が倉迫さんとアゴラ劇場のイベントで知り合って、その後別のイベントやメールなどを通じてずっと交流はしていました。それで、倉迫さんの演劇に対する考え方や行っている活動と私どもの活動が一致してきたので、一緒に何かやりましょうということで、企画を立ち上げていきました。
倉迫さんの魅力は、演出家として「何を求められているのか」ということをよく理解されているということですね。なお、倉迫さんには来年の2月からの東京国際芸術祭でも『ガラスの動物園』の演出をお願いしています。


―2006年2月からの東京国際芸術祭で演劇上演プログラムは『vol.2』『vol.3』と続いていくわけですね。他に今後の展開としては?

 計画は色々あります。『vol.2』では阿部初美(演劇集団円)さんに演出をお願いしています。倉迫さん以外にも、一緒にやってみたい方はいますので、少しずつそういう関係性を作りながら、このにしすがも創造舎で作品を作っていければいいですね。実際に個々の団体とのやり取り、地域の方とのやり取りを含めて本当にできるかどうかを決定します。ゆっくりではありますが、色々な計画が進行中というところです。
 廃校プロジェクトの立ち上げから1年経ちましたが、管理の面でもプロジェクトの面でも、現在は試行錯誤の状態です。5年間という期限で地域再生計画に認定されているのですが、もちろん10年計画・長期計画というものも提出していますので、それに一歩でも近づけたいと思っています。
 インタビューの後、さっそく町内会のお祭りに向かうと、広場でサーカス団の衣装を着た役者たちが演奏とジャグリングをしていた。子ども達は目を輝かせてその様子を見つめている。町内会の父兄からは「観に行くよ!」と声を掛けられていた。
 子どもとアーティスト、地域住民とアートを結ぶ様々なプロジェクトを行っているNPO法人アートネットワーク・ジャパン。そのプロジェクトの1つである、【にしすがも創造舎】はまだオープン1年目だが、すっかり西巣鴨の街に溶け込んでいる。
2005/9/17 文責・インタビュアー:浅井貴仁 撮影・編集:鏡田伸幸
稽古場等の大きな画像をご覧になりたい方は、【稽古REPORT】へ

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