BACK STAGE REPORT
(稽古見学記)


「劇団Pl.(プル)」の稽古風景を見学に行ってきました。


今回の稽古場見学日記、そのターゲットは【劇団Pl.(プル)】。
「Pl.」は文法用語で「複数形」を意味する〔plural〕の略。「自立した単数系が集まったもの」の意が込められているそうだ。

〜〜変わること。全てを疑うこと。マイナーチェンジではなく、バージョンアップ〜〜
(メールマガジン『演劇人成り上がり日記!《以下、メルマガ》』(2002.4.19/22より抜粋)

この決意のもと、2001年から劇団リニューアルに取り組んできた【劇団Pl.】。その【劇団Pl.】が、幾多の試行と葛藤を経て、この2月末、遂に公演を行なうという。実に1年7ヶ月ぶりの公演である。

〜〜Pl.にしかできない新しい何かを作る〜〜(メルマガ・2002.1.11)

〜〜新しい演劇なんて、たかだか1年や2年の努力で作れないことなんて百も承知している。僕は「執事サンセット」で、ほんの一瞬でも新しい何かが見えれば、それで良しだと思っている。大切なことは、誰の真似でもない演劇を目指す、その意思だ〜〜(メルマガ・2002.1.27)

意思を形に変えるため、今作『執事サンセット』の稽古では、台本を使ってのそれに5ヶ月、本番を見据えてのワークショップ的なものも含めれば10ヶ月もの時間を費やしたという。そんな【劇団Pl.】の試みが結実へと向かう最後の道程、公演10日前の通し稽古に、我々BACK STAGEの鏡田と北原がお邪魔した。


荒川区某所。

19時25分。千代田線の駅で合流した【劇団Pl.】主宰・小野正昭さんと連れ立って、本日の稽古場、某公民館の一室へと足を踏み入れた。
と、いきなり耳を打つセリフの応酬。目の前には、やや上気した顔でシーンの確認に没入する役者さん達がいた。室内に充満する人いきれ、熱、何より緊張感。これはもうアップという段階ではない。聞けば、今日の稽古は18時から始まっているそうだ。それにしては演出の小野さん、随分遅い登場なのでは? と思ったら、「身体訓練(ストレッチ、筋トレ、発声)と感情開放やコミュニケーションを主眼においた、いわば台本以外の稽古」は全て、演出補の菊池香名さんに任せているという。今は臨戦態勢が整った役者さん達が、自己錬に励んでいる時間。これからが小野さんの仕事、と言う訳だ。
挨拶を終えるとすぐさま、年始のハワイで芸能人を取り囲むレポーターさながら、全員で輪になって小野さんに向き合う役者さん達。どうやら、これから始まる通し稽古に対して、小野さんからの一言を待っているようだ。
やがて、おもむろに、小野さんが口を開いた。

(座長・小野正昭さん)
小野  「大事なのは、『小劇場に収まりきらないスケール』、それと、『気配(けはい)』、な」

この「気配」という言葉、今公演、いや、今の【劇団Pl.】にとって重要なテーマとなっているようだ。

〜〜決定的にPl.に足りないものが・・・・・・"五感では感知できない領域の何か"だった・・・・・・・・・・・・演劇はライブだから、五感では捉えきることが不可能な領域の表現に向いている〜〜(メルマガ・2003.2.5)

その"五感では感知できない領域の何か"、すなわち「気配」を、舞台の上に現象させる。それが「Pl.にしかできない新しい何かを作る」と言った小野さんの、1つの答えなのだろう。 
小野さんの話はまだ続いていた。

小野  「真剣さ、な! 高みを目指そうなんて考えるより、まず真剣にやって欲しい。
真剣にやってくれれば、気配なんてついてくるから!」

その言葉には、これまでの稽古に対する小野さんの自信が垣間見えた。そして役者さん達への信頼も。

小野  「ま、さっきの今井(今井梢平さん)の芝居見てたら、こんなこと言う必要もないと思うけど」
そして、通しが始まっ・・・・・・と、その前に、小野さん、我々への役者さんの紹介を兼ねて、カーテンコールを披露してくれるという。・・・・・・カーテンコールって、あの、終演後に役者さんが客席に向かって挨拶する、あれの事だろうか。

小野  「じゃ、ロングバージョンね(笑)」

一瞬、戸惑いの色を見せる役者さん達。が、室内にテンポの良い音楽が流れ出すと、すぐさま戸惑いを振り払って、全員がリズムに合わせてステップを踏み出した。それにしても普通、カーテンコールと言えば、ただ役者さん達が出てきて挨拶をするだけだが・・・・・・

小野  「いやぁ、稽古の時間だけはたっぷりありましたから、どうせならカーテンコー
ルも完成度を高めようと思いまして(笑)」
躍動のなかで、自己紹介をしていく役者さん達。凝った趣向だ。それにしても、このカーテンコールを見ていて思う。この【劇団Pl.】、随分と"種類(匂い)の違う人達"が集まっているようだ。その、普通なら自然に住み分けしそうな面々が、こうして全員で同じステップを踏んでいると、一体感と不均等感(デコボコ感)が同時に感じられて妙に面白い。
ふいに小野さんが語りかけてきた。

小野  「『メジャーリーグ』っていう映画、御存知ですか?」
北原  「はぁ・・・」
小野  「僕が今度の芝居に臨む上でまず考えたのは、あれなんですよ」
北原  「・・・・・・と、言うと?」
小野  「例えば、足が速いだけの奴、パワーだけの奴。そういった、バランスは悪いけれど、何か1つ飛び出たモノを持った連中が集まって、最高のチームを産み出す。そんな風に劇団を持って行けたら、と」

(今井梢平さん)

(平井正行さん)
なるほど、と頷いた。小野さんがわざわざカーテンコールを我々に見せてくれたのは、今の説明の前振りでもあったのだろう。文法用語の単数形=singularは、形容詞として〔唯一無二の〕という意味も持っている。この、一見デコボコな面々が、pluralという単語に込めた小野さんの想いに符号する。

(空倉哲さん)

(冨田琴恵さん)
小野  「ホント、うちはバランス悪いのが集まってますからね(笑)」

・・・・・・それはそうと、小野さん。そろそろ止めてあげないと。「ロングバージョン」って、これ、エンドレスじゃないですか。役者さん達、顔が白くなってきたし・・・・・・

19時45分。いよいよ、通し稽古が始まった。
・・・・・・この通し、かなり本格的だ。なにせ、前説(まえせつ)から始まるのだから。

前説が終り、舞台中央に歩み出る菊池さん。伏せた顔が徐々に上がっていき、手にした剣を掲げ・・・・・・芝居の幕が上がった。

(菊池香名さん)

(元也さん)

(大野仁志さんと空倉さん)
〜〜「執事サンセット」は、何かが終わって、何かが始まる物語だ〜〜
劇団Pl.第6回本公演「執事サンセット」特設HP.

(俵みさこさん)
・・・・・・舞台は、まだ貴族が、そして腰に剣を刷いた者達がいた時代・いた所。とある貴族に仕える執事、サンセットを中心に物語は展開する・・・・・・やがて、舞台上で交錯する登場人物達の、想い、情念。触れ合う剣。ぶつかり合う剣。そして、訪れる、終わりと始まり。

(西村恵さん)

(信宗里枝さん)
お話の内容についてはこれくらいにして、舞台の外の様子を少し書くと、なにより面白かったのが、稽古の始めに小野さんが言った「真剣に!」という言葉、その言葉に役者さんそれぞれの応え方が(見た目に)違うことだった。舞台を降りると、今の自分の演技を省みているのか、頭を頻繁に抱える人がいる。かと思えば、演技に集中した反動か、シーンが終ると放心したようになる人もいる。小道具その他を意識していない役者の動きに腹を立てている人がいれば、役に入り込んでいるのか、舞台袖から舞台を見詰める様子が怖い、というかヤバイ人もいる。けれども真剣さはそれぞれに一様で、ヒリリとした緊張感が全体を包んでいる。こんなところでも、デコボコぶりと一体感が並立していることを感ぜられた。
  
・・・・・・およそ2時間後。さっき見せて頂いたカーテンコール(今度は短いバージョン)をもって、通し稽古が終った。
小野さんが、簡潔に総評する。

小野  「力ずくで、いいと思います」

役者さん達が破顔してその言葉を受け取った。ここで、小野さんもちょっと相好をほころばせ、

小野  「ほんと、力ずくだよね(笑) ねじ伏せてるよね・・・・・・」

笑いの波が室内に広がった。この後、「これはこれで良かったけど」と前置きした上で、いくつかの細かい、ダメ未満のダメを出してから、小野さんは最後にこう締めくくった。

小野  「まだ何か探せるよね」

すかさず、元也さんが声を上げた。

元也  「表現者として!」

一斉に沸き起こった笑いの中、この日の稽古が終了した。
退室間際に、小野さんに今公演への抱負を頂いた。

小野  「わかりやすくて、力強く、喜びに満ちている。この3拍子が揃った芝居にします!」
 (文中、一部敬称略)
2003/2/18 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸 



劇団Pl.(プル)
劇団Pl.(プル) 2月28日(金)〜3月2日(日) 執事サンセット 千本桜ホール strike_lucky@lycos.jp HP 詳細
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メルマガ「演劇人成り上がり日記!」の作者・小野正昭が、20ヶ月ぶりに新作を打ちます!

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