BACK STAGE REPORT
(稽古見学記)


「ミスタースリムカムパニー」の稽古風景を見学に行ってきました。


12月6日、午後6時をやや過ぎた頃、我々BACK STAGEの二人(鏡田、北原)は西武新宿線沼袋駅に降り立った。北風が冷たさをいや増すなか、地図を確認しながら歩く事約5分、沼袋地域センターに到着。ここが今日のMSN(ミスタースリムカムパニー)の稽古場である。

案内に従い地下の音楽室へ。防音壁を超えて熱のこもった声が既に廊下にまで響いている。
果たしていま入って良いものか―しばらく逡巡するも、約束の時間でもあることだし、思いきって扉をノックしてみる。
ややあって開いた扉の向こうには、気さくな笑みを浮かべた山本さんの顔があった。
ほっ。この山本さんこそ、今日我々を招待してくれたその人。
背後では依然稽古が進行中なので、小声で挨拶しつつ中へ入る。
用意された椅子に落ち着き、初めて周囲を見まわす。
我々の左手すぐの椅子に作・演出の深水龍作氏、
その深水氏を扇の要として役者さん達が半円形に、思い思いの格好で座っている。
場の中央に、立ってセリフを読み上げている面田さん。随時チェックしながらの遣り取り。
どうやら大まかな動きの確認をしている様子。突然の闖入者を気に掛けるふうもなく、稽古は続いていく。
ミスタースリムカムパニーは来年で創立25年を迎える、
知る人ぞしるミュージカル劇団の老舗である。
主催の深水龍作さんはニューヨーク『 カフェ・ラママ』 の
インターナショナルエキスベリメンタルシアターに参加など活躍する、
演出家としても名の聞こえた方。
この度の公演(12月20日〜24日・六本木アトリエフォンテーヌ、詳細別項参照)に際して、
当BACK STAGEのBAKET(演劇クーポンシステム)をご利用頂くことになり、その縁で稽古場に招待頂いた。
やはりまだ役者の動きに関しては細かい
演出を施す段階に至っていなかったのだろう。
この後、稽古は全員が椅子に座ってのセリフの読み合わせになる。
ここから、深水氏の演出が熱を帯びてくる。
心の乗らない「セリフ」を口にした役者に対しては、氏の容赦無いダメ出しが飛ぶ。
「お前が見えないっ!」
氏は言う。
「観客に助けられるような芝居はするな。(虚構の人物である)役の、
喜びや悲しみ、これまで生きてきた人生、役の背後にある全てを表現して観せろ。」
芝居を観る時、観客は時として、役者の言いたい事、
やりたい事を頭の中で補い、自分なりの翻訳を加えて納得する。解釈する。
その時、実は観客は役者を「見て」いない。いや、場合によっては舞台すら「見て」いない。
それが芝居の約束事、という認識を持つ人さえいる。
そこに<演じる技術>としての「演技」が入り込む余地が生まれる。
氏は、この「演技」を嫌う。そして「演技」に敏感に反応しては、
あたかも飼い猫の蚤を爪の先で一匹ずつ潰すように、退けていく。
ある女優さんにダメ出しが集中しだした。場のテンションが下がる。
そこですかさず深水氏の一喝。
「(瞬間とも言える)芝居の時間の中で、役の背後にある時間や感情、
あらゆるものを凝縮して観せなければならない。
それを可能にするのは何か? それはテンションだよっ!」

誤解があるといけないので言っておくと、深水氏は決して鬼軍曹のような方ではない。
むしろユーモアに富んだ方と御見受けした。
もちろん、たった3時間の見学、しかも稽古も佳境に至る以前とあって、
はっきり断言はできないが。
やがて、ただのセリフの読み合いが、肉を持った人格の会話に聞こえる瞬間。
それが徐々に増えるのを新鮮な驚きと共に感じながら、稽古を見ることの面白さに入り込んだ頃、
センター閉館の鐘がなり、午後9時45分、この日の稽古が終了した。
総じてこの稽古の間中、深水氏は各役者のテンションを高めるためにかなり気を使っているように感じられた。
時に厳しく、時にユーモアを交えて、場を引っ張っていく。
笑顔と緊張感のある稽古風景。非常に良いものを見せて頂いた、そんな稽古場見学だった。
最後に邪魔者を快く受け入れて下さったミスタースリムカムパニーの皆さんに、この場を借りて一言お礼を。
大変勉強になりました。有り難う御座いました。

(ん?差し入れの日本酒の封がもう開いてるぞ?!)

2000/12/6 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

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