BACK STAGE REPORT
(稽古見学記)


「劇団MCR」の稽古風景を見学に行ってきました。


2001年7月03日―(取材スタッフ 北原・鏡田)
西武新宿線野方駅からほど近い「旧野方青年館」。野方図書館の敷地内にあるここが、今回お邪魔するMCRの稽古場である。
19時を少し回った頃、制作の八田氏の案内に従い、稽古場となっている会議室に足を踏み入れた。
中では既に本読みが始まっていた。事前に八田氏に伺ったところでは、今日、漸く台本が全て上がったという。その、出来あがった最後の部分を読み合わせているようだ。
四角く並べた長机に、主宰・演出の櫻井ドリル氏をはじめ12人の役者さん、スタッフさんが着座して台本を読み上げている。大学のゼミの研究会、といった趣きだが、一つ、明かに違うのは、頻繁に笑いが興ること。初見の台本、そのセリフに皆がつい吹き出してしまう場面がしばしばあり、かなりリラックスした雰囲気。皆さん年齢が近く互いに気心の知れた仲であることが感ぜられ、それが読み合わせの段階から小気味良い間となって覗われる。
一つ気になったのは、セリフ中に「戦争」という言葉が度々聞かれたことだ。事前に頂いた資料から想像していた芝居とは大分違うような・・・
19時30分。本読みが終わり、休憩。この休憩の間に、机が端に寄せられ舞台が作られる。いよいよ立ち稽古に入るようだ。
舞台は第二次世界大戦中のとある研究所、という設定らしい。う〜ん、やっぱりなんか違うぞ。
・・・けれども直ぐにそんな事も気にならなくなる。前半部分はある程度作り上がっているらしく、殆ど通しだったのだが、直ぐにその内容に惹き込まれてしまったからだ。笑いの要素がふんだんにちりばめられていて、とにかく可笑しい。ついついこちらも吹き出してしまう。その芝居の中心で、周りをぐいぐい引っ張っていく櫻井氏。
まだ役者さんの手から台本が離れていない段階であるにも関わらず、芝居を止めて演出をつける、といった事がここまでは全く無い。と言って、他の役者さんの演技に安心しきって自分も役者に徹している、というのでもない。明らかに氏は、高圧のエネルギーを周囲に振り撒く事によって、それに周囲を感染させ、導いている。時には奔放に、時には繊細に。ある種のカリスマを感じさせるそのキャラクターによって、芝居を支配し、文字通り「引っ張って」行く。これが櫻井氏の「演出」なのかもしれない。そんな事を頭の片隅で考えながら、笑って観ていたその立ち稽古は、結局1時間以上続いた。
21時。櫻井氏の「はい、じゃあ取り敢えずここまで」の声で漸く芝居が止められる。
芝居の中でガンガン飛ばしていた櫻井氏が一転、静かにうつむいて何か考えに没入する。やがて、おもむろに全員に対してこう告げた。
「まぁ、(役者の手から)本が離れてから、ちゃんとやります」
これからが大変だぞ。そんなカツ入れにも取れるその一言の後、一人の役者さんを捕まえてダメを出す櫻井氏。笑える場面の多い芝居なので、テンポや間(ま)に対する指摘があるかと思ったが、そういったものは一切無く、ダメ出しは役者の感情面に終始した。
「観客はお前のセリフが聞きたい訳じゃないんだよ。お前の苦悩を見せないでどうすんだよ!」
「例えば最高の○○○ーの時のあの感じ、解るだろ? それなんだよ!」
非常に解り易い(難い?)例えを交えながら、繰り返し感情の表出に関しての説明を繰り返す櫻井氏。内に入って引っ張るだけで無く、外からもしっかり観ていることがよく解る。この辺は、劇団設立当初、氏が芝居には出ず、演出に専念していた頃に身に着けた眼が生きているのだろう。

やがてダメ出しも終わり、氏も休憩に入る。さっそく制作の八田氏が櫻井氏を呼んで来て話をさせて下さった。
燃えるように赤いアントニオ猪木のTシャツを着た櫻井氏に早速質問をしてみる。
筆者 「あの、お芝居の内容が随分想像していたのと―」
櫻井氏「ああっ(笑)! そうです。実は大幅に変わってしまいまして・・・」
どうやらこの台本に落ち着くまでに内容が二転三転したらしい。実はその都度ちゃんと稽古もしたので、稽古は今日で既に15回目になるそうだ。今回の芝居は最終的に過去に公演したもののリメイクとなったそうだが、そうまでして上演するからにはかなり思い入れのある作品なのだろう。(新しいあらすじに関しては此方を御参照
筆者 「ずっと(芝居の)中に入ってらっしゃいましたけど、外から、例えば椅子に座って演出をつけるといったようなことはなさらないんですか?」
櫻井氏「ええ、(劇団設立の)最初の頃はそういうふうにもやってましたけど、今では自分も出演するものですから、中に入って、先ず自分がやって見せて、それで引っ張っていく、という感じですね」
筆者 「他の役者さん達はそれに直ぐ反応します?」
櫻井氏「ええ、そうですね。もう長い付き合いですし」
聞けば学生の頃からで、もうそれぞれ9年の付き合いになるという。
筆者 「では、脚本を書く時にも割と当て書きを?」
櫻井氏「いや、それはないです。それだとつまらないでしょう?」
誰がどの役をどう演じるか。その辺りも櫻井氏にとっての楽しみらしい。とにかく話していて強く感じたのは氏の役者さん達への信頼感。そして、その中で氏が芝居作りを本当に楽しんでいるという事だった
櫻井氏「うちは役者が自分で結構動いてくれますから、例えばアドリブなんかも受け入れられる様に作っていきます」
だから楽だ、という事ではもちろん無い。時には役者のアドリブをも受け入れつつ、作品のクオリティーを高い所で維持する為には、櫻井氏はかなりの気を使わねばならないだろう。そして、それに櫻井氏が成功しているからこそ、稽古の段階であるにも関わらず、拝見している筆者は笑いを堪えられなかったのだ。
最後に猪木の話しを少しして(実は筆者も猪木信者)、本日の我々の見学は終了となった。退出する我々の背中に「ありがとうございました!」と、気持ちの良い声がその場の全員からかけられる。本当に楽しげで、小気味良い稽古風景。それを見せて頂いた稽古見学だった。

2001/7/3 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

劇団MCR
劇団MCR 2000年7月13日(金)〜7月17日(火) VeryBlueBerry 池袋シアターグリーン mcr@pos.to ★★★
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笑って笑って何だか切ない。

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