BACK STAGE REPORT
(稽古見学記)


「即興集団E.D.O」の稽古風景を見学に行ってきました。


前回に続き、今回もインプロ・グループの稽古風景をお届けする。
今回ご紹介するのは、「即興集団E.D.O」。
〜インプロをやりたい。ロングフォームをやりたい〜
そんな想いを同じくするちょっとオトナの人たちが集まって、2002年、即興集団E.D.Oは結成された。それから1年。日本初となるインプロフェスティバル「Tokyo Impro Festival 2003」に参加する形で、遂に初の単独公演を行うという。そんな彼らの、本番直前の稽古場にお邪魔した。
なお、インプロの説明に関しては、前回の稽古見学記事内でも触れているので、今回は割愛する。


場所は世田谷。とある公民館の一室。

広い室内。並んだ机と椅子をよけて、舞台が作られている。その舞台ぎわ、砂被りの席に着いた我々の目の前では、19時からの稽古に備えて明石光弘さん(写真上・右)、佐原哲郎さん(写真上・左)、野島竜太郎さん(写真下)が、それぞれのペースでウォーミングアップをしていた。3人とも、とてもリラックスしている様子。「本番間際!」という張り詰めた感じは見られない。

明石(以下、敬称略)「本番が近いと言っても、芝居そのものはその日・その場で作られますからね」

だから、今、何を緊張するということもありません。そう言って明石さんは笑った。イマジネーションの豊さと、瞬間の反応が芝居を紡ぐインプロ。求められるのは柔軟さだ。 
19時を少し回ったころ、グループ結成の立役者、大塚海月さんが登場。これで本日のメンバーが揃った。本番ではもう1人、落合由人さんが出演するが、落合さんは今日の稽古は欠席するそうだ。そこはやはり、ちょっとオトナの集団。皆さん、仕事その他でお忙しいらしい。

なお、この5人に、今回の公演には出演しない平瀬くにはるさんを加えた6名が、現在の「即興集団E.D.O」のフルメンバーとのこと。

一点の紅が混ざり、次第に高まる室内のテンション。大塚さんの支度が整うのを待って、19時20分、稽古が始まった。まずはウォーミングアップのゲームから。
@【架空の名前オニ】
基本は鬼ごっこ。ただし、誰かに名前を呼ばれた者が瞬時に鬼になる。当然、鬼がめまぐるしく入れ替わる事に。なおかつこの場合、全員が仮の名前を直前につけられているので(例:野島さん=チーズチキンカツバーガー)更にややこしくなる。
A【色オニ】
これも鬼ごっこ。鬼が「右手で赤いモノ」と言えば、皆で室内にある赤いモノ(消火器など)を右手で触らねばならない。見つけられなかったらタッチされて鬼交代。

鬼の指定は色に関するもので無くともよい。例えば、「右膝で硬いモノ」「頭のてっぺんで冷たいモノ」という具合に。それにしても、鬼が「左手で、ふざけたモノ」と言った時、皆が佐原さんに優しく触れたのは印象的だった……
B【連想回し】
輪になって連想を回していく。同じ言葉が出てきたら終わり?終わった後、全員で誰が何を言ったか確認するのが面白い。が、子供には聞かせられない単語が頻繁に出現。う〜ん、オトナだ。それと、野島さん。「左手」からの連想が「スプーン」って……
C【何やってんの?】
1人がある動作をする。そこにもう1人がやってきて、「なにやってんの?」と尋ねる。訊かれた方は、その動作と全く関係のない答えを返して去る。尋ねた方はその答えに沿った動作を繰り出す。これのループ。

例えば、Aが畑を耕す動作をする。そこにBが来て「なにしてるんですか?」と訊く。Aが答える。「マニキュア塗ってるのよ」…すると今度はBはマニキュアを塗る仕草をする。そこにCが来て「何してんの?」……
D【フリーズタッグ】
AとBでちょっとした芝居を(もちろん即興で)演じる。そこに、外で見ているCやDが「フリーズ!」と声をかける。その瞬間、AとBは文字通り凍りついたように動きを止める。そして、CもしくはDが、AもしくはBと入れ替わり、同じポーズから全く違う場面を作り出す。これを繰り返す。
(ちなみに、B・C・Dは前回お邪魔したインプロモーティブの稽古でも行われていた)
この【フリーズタッグ】が、やがてちょっと艶っぽいエンディングを迎えたところで、ウォーミングアップが終了。

佐原  「どうしてもそっち(アダルト方面)に行くんだよなぁ」

佐原さんの苦笑いに、こちらも笑いを誘われながら時計を見れば、20時。我々に少しでも多くのものを見てもらいたい、楽しんでもらいたいという気遣いから、ここまで大分<巻き>でやって下さったようだ。明石さんが我々に向かって申し訳なさそうに「3分だけ休憩を下さい」とおっしゃった事からも、その心遣いがうかがえた。
休憩を終えて、いよいよ本番で公開するゲームの稽古に突入。なお、本番では、短いゲームを数種類と、長いもの(ロングフォーム)を2本行なう予定だそうだ。で、まずは短いものから。本番を想定して、我々は観客の役に。

明石  「今、1番行きたい国はどこですか?」
北原  「・・・・・・キューバ」
明石  「あぁ、いいですねぇ、キューバ! では、お題です。『キューバに行く!』」

こうして、最初のゲーム、【ワン・ワード(one word)】が始まった。これは演者が一言ずつ言葉を発して、それを繋げてストーリーにするゲーム。
こんな感じだ。
明石  「ここが」
野島  「キューバか!」
大塚  「やっぱり」
佐原  「暑いな!」
もちろん事前の打ち合わせなど一切ないから、前の人の一語を受けて、その場で瞬時に繋ぐ語を見つけなければならない。これで果たしてストーリーを描く所まで行くのだろうか・・・・・・が、イマジネーションがイマジネーションを呼び、見る間に1人の男がキューバを訪れ、行き当たりばったりでミュージシャンに弟子入りするまでの話が出来あがってしまった。う〜ん、息、合ってますねぇ。
もう1本ワン・ワード(お題は「ニーチェに会う!」・・・・・・鏡田。皆さんに謝れ!)をやって、次のゲームへ。

今度は【秘密の目的】。これは、2人1組で、互いが互いに秘密にしている「ある事」をやらせる、やるように仕向ける、というもの。何をやってもらうかを決める時は、その当人は部屋の外に出るなりして、それを耳にしないような措置をとる。

まずこのゲームに挑むのは大塚さんと野島さん。大塚さんに与えられたミッションは「(野島さんに)寄り目をしてもらう」、野島さんのそれは「(大塚さんに)千羽鶴を折ってもらう」というもの。「千羽鶴〜」っていうのは相当難しそうだ。と、いきなり病人に扮する野島さん。
野島  「・・・俺はもう長くないかもしれん・・・・・・あれがあればいいんだが・・・・・・」
大塚  「分かったわ。林檎ね。すぐ剥くわ」
野島  「違う! もっと、こう、おまじない的な・・・・・・」
大塚  「ごめんなさい、気付かなくて。御払いね。今するわ!」

・・・・・・案の定、苦労する両人。この後も大塚さんはハリセンで野島さんをぶっ叩いたり、重病人の野島さんを外に連れ出そうとしたり、しまいには、

大塚  「分かったわ! 私、産むわっ。卵をっっ!!」

と、卵まで産んでしまう。こうして、傍目には可笑しい限りの悪戦苦闘が続いたが、やがて佐原さん、明石さんが舞台に飛びこんで助け舟を出した事もあり、ようやくミッション1つクリアー。野島さんも無事に寄り目をやって、1本目が終了。2本目、明石・佐原組も、紆余曲折を経つつ、互いに「自分の耳を引っ張らせる」「靴下を脱がせる」というミッションを成功させ、このゲームが終った。
面白かったのは、ゲームとはいえ、ちゃんと1つのストーリーを持った芝居に仕上げていた点。単なる当てっこにならないよう、例えばまず2人の関係性を確立する、などといった工夫が随所にみられ、門外漢の我々にも奥の深さが感ぜられた。

ショートゲームの最後は【ペーパーズ】。これは前回の稽古見学でも紹介したのでゲーム内容については省くが、観客にとっては「いつ自分の書いたセリフが読まれるか」というドキドキ感も味わえて、とにかく楽しいゲームだ。今回も「豚の角煮」「杭を打て!」「君の歌をもう1度聞かせてくれ!」といった出鱈目なセリフが、時にスムーズに、時に力技で芝居に取り入れられていって、取材に来ている事も忘れて大笑いしてしまった。それと、今回も発見した事が1つあった。どうも、変に奇をてらったセリフよりも、割と普通のセリフの方が、ツボにハマッた時に断然おかしみを持つようだ。

20時30分。短いゲームは一旦終了。上に紹介したもの以外にも本番ではいくつか披露するそうだが、あと30分でおいとましなければならない我々の為に、20分のロングフォームを1本、実演して頂ける事になった。お心遣い、いたみいるばかりである。
やって下さるのは、今回の公演の表題にもなっている【もみくちゃなの】。
これは【アルマンド・ディアス】というインプロの既存の形態に、即興集団E.D.Oが若干のアレンジを加えた、いわば独自のフォームだそうだ。
その内容は、1つのキーワードから連想されるシーンを次々と演じていく、というもの。そして、それぞれのシーンが、繋がり、離れ・・・・・・
とにかく、見ていこう。

明石  「では、そのキーワードなんですが・・・・・・はいっ、北原さん。今、頭に浮かんだ言葉を聞かせてください」
北原  「・・・・・・しゅ、手裏剣・・・」

・・・言った途端に後悔した。30過ぎの男の口から咄嗟に出てきた言葉が「手裏剣」というのも問題だが、それ以上の問題として、なんて広がりのなさそうなキーワードなんだろう。こんなキーワードで20分も持つのだろうか・・・・・・が、そんな懸念をよそに、ロングフォーム・インプロ【もみくちゃなの】は始まった。
まずは4人が横1列に並んで立ち、1人ずつ、手裏剣にまつわるそれぞれの想い出などを簡単に披露した。
昔、忍者の本で見て憧れた奇怪な道具の数々。折り紙で作った手裏剣の、あの頼りない手触り。あれは、なんて言ったっけ? あぁ、撒きビシだ。・・・・・・キーワードからそれぞれが喚起したイメージを一旦紹介して、そして、芝居へと移行した。
いきなり舞台に置いた椅子に腰を掛け、明石さんが呼ばわる。

明石  「はい。次の人〜」
大塚  「は〜い! よろしくお願いしま〜すっ!」
・・・・・・忍者映画のオーディション・シーンからスタートして、忍者スクールの一コマ、雪山での遭難者達、宇宙ステーションでのトラブルと、入れ替わり立ち代りで目まぐるしく展開される数々のシーン。全く別のシーンに飛んだと思ったら、次にはかなり前に出てきたシーンの続きが来たり、まさしく舞台上は「もみくちゃ」状態だった。
観ていると、なんというか、多チャンネルのテレビをザッピングしているような気分にもなる。けれども、やがて幾つかのシーンは、互いに引かれ合うように繋がりだし、「多チャンネル」が「民放5局」ぐらいに感じられるようになって・・・・・・終いにはシーンの垣根は朧になり、イメージの広がりと収束が描いた軌跡だけを意識はなぞっていた。
気がつけば、幕を引くエンディング。あっと言う間に、20分が経っていた。

明石  「と、まぁ、こんな感じです」
北原  「・・・・・・いやぁ、申し訳ありませんでした。『手裏剣』なんてキーワード、広げるの、大変だったでしょう?」
明石  「そんな事ありませんよ。宇宙まで行ったじゃないですか(笑)」

受け入れて膨らませる。膨らませれば、イメージは宇宙までも届く。インプロの真骨頂を見せて頂いた気がした。


去り際に、今回の公演で披露するもう1つのロングフォームについて訊いてみた。

北原  「もう1本のロングフォームも先ほどの様な形態になるのですか?」
大塚  「いえ、もう1本の方はもっとストーリー重視のものになります」

なんでも、それぞれが架空の町の住人に扮して、そこで起こる出来事を綴っていくという。それもまた、どのようになるのか楽しみである。いずれにしても、公演はバラエティーに富んだ内容になりそうだ。


・・・・・・それはそうと、大塚さん。重病人の眼前で卵を産むのは、やっぱりいかがなものかと(笑)。
いや、でも、その発想の豊かさこそがインプロの生命線、なんですよね?

2003/2/04 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸 




即興集団E.D.O
即興集団E.D.O 2月10日(月) THE IMPROTAINMENT 〜インプロテイメント〜 しもきた空間リバティ netedo@hotmail.com HP 詳細
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日常に無いパワーと日常には無いスピード、そして日常には無い楽しさで、もみくちゃなの。

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