BACK STAGE REPORT
(稽古見学記)


「仲野恵子&ダンスミュージアム山羊」の稽古風景
を見学に行ってきました。


今回はこれまでとちょっと違った稽古見学になります。
仲野恵子&ダンスミュージアム山羊」、創作舞踊の団体です。
創作舞踊、と聞くと難解なイメージがあり、その稽古風景もなかなか想像がつきませんが、果たしてどんな見学記になりますか。
ドキドキしながらのスタートです。
なお、今回もメンバーはBACK STAGEの鏡田・北原にTeam engekizinの小野氏を交えた3人です。
10月20日、午後5時40分。場所は多摩美術大学八王子校舎。
日も落ちて秋風に冷たさが増す中、構内の長い坂を登る。稽古はデッサン棟の一室で行なわれるとのこと。モダンな校舎は夜目に区別がつきにくく、多少迷ったものの、なんとか約束の時間、6時に稽古場となっている教室のドアをノックする事ができた。

最初に顔を出してくださったのが衣装の常盤十夢さん。来訪の旨を告げると、隣室で会議中の仲野恵子さんを呼んでくださった。

国内外で作品を発表し続ける現代舞踊家、と聞いて、かってに大柄な女性をイメージしていたが、出てきた仲野さんは驚くほど小柄だった。身体を使った表現活動には身体そのものが大きい方が有利、という先入観がどこかにあったのだろう。そんな自分を恥じつつ、御挨拶。
気さくに応えてくださる仲野さん。ただ、急なスタッフ会議のため、稽古開始が1時間ほど遅れるとのこと。
ではまたその頃に伺います、ということで、一旦退室する。
 ・・・・秋、八王子の夜は寒い。邪魔にならないようにと出て来たは良いが、行くところも無く、暖を求めて暗い構内をさまよう3人。
その物悲しい有様についての描写は・・・・・もちろん割愛する。
19時。再び稽古場を訪れる。担当の鴨志田さんに導かれて入室。
室内は真っ暗で、フォグ・マシーンによるスモークが眼一杯焚かれていた。その暗い中を仮想舞台の客席側まで案内され、腰を落ち着ける。
直ぐにも稽古が始まる様子、と思ったが、テストだったらしく、直ぐに電気がついて、スタッフの打ち合わせがこの後もしばらく続く。


今日の稽古は公演間近ともあって、リハーサルに近いものになると聞いていた。照明は無理としても、出来るだけ本番に近い形で進める予定なのだろう。スモークも焚いたし、舞台中央奥にはスクリーンが据えられているから、映像も本番同様に流すようだ。
19時36分。ようやくスタッフ間の打ち合わせが一段落し、稽古が始まる。

ペーター・ガーン氏の音楽が重く空間を包んでいくなか、舞台上に配置された肉体達がゆっくりと、目覚めのようにゆっくりと動き出す。
徐々にその動きは烈しさを増し、その中央で産声を上げる仲野さんの身体。胎動から鳴動のイメージ・・・
 
内容についてはこれ以上触れないでおこう。本番をお楽しみに、ということで・・。
ただ、感じた事をいくつか。
まず演者達の踊りの質に微妙な差異があること。
統一感に欠ける、ということでは、無い。各々のキャラクター、― ある物事に対する感応の個性 ― が表出している、とでも言おうか。
そして、舞台が始まった瞬間から、「小柄な仲野さん」という最初に感じた印象はどこかに飛んでしまっていたこと。仲野さんの内部に凝ったエネルギーが、時にゆるやかに、時に烈しく舞台上に湧出する。
身体の動きもさる事ながら、その高圧のエネルギーに圧倒される想いだった。
ことに、舞台上で語られる世界に秩序と混乱をもたらすシルベスター・パマルディさんとのからみは圧巻だった。インドネシア伝統舞踊のオーソリティーであるパルマディさんの踊りは、気高く、力強い。
そのパマルディさんの舞と、仲野さんのエネルギッシュな舞が拮抗する。そこに生じる緊張感が観る者に息を飲ませる。
やがて、仲野さんが一旦進行を止める。時計を見ると開始から既に1時間近くが経過していた。一切の言葉が排除された1時間。あっという間だった。
稽古を止めたのは段取りの確認のためで、この後しばらくスタッフとのすり合わせが続く。また、この期を利用して何人かの演者にも細かい指摘を丁寧な口調で語りかける仲野さん。振りつけに関しては既に出来上がっているので、指摘は主に内面的な部分に関わるもののようだった。
20分程して、再開。ここからは映像その他、技術的な問題を詰めながらの進行となる。きっかけの掴み方などセリフ劇に比べてかなり難しいだろうから、技術パートと演者の打ち合わせは入念に入念を重ねて行なわれる。もちろん、「手探り」というような段階ではとうに無いので、互いの意志の疎通もスムーズ、進行は早い。
それにしても、言葉が「異物」である舞台上の世界と、技術的な言葉の遣り取りで構成される舞台の外の世界。このギャップが面白い。
よく、船の底にガラス張りの客室を設えて観光客に海中を見せる遊覧船があるが、この独特な舞台の稽古風景を拝見していると、なにかそんな船に乗って海を覗いているようにも感じられる。自らに感じる違和感と、心地良さ。稽古見学者の特権であろう。
9時20分。そろそろ帰りの最終バスを意識する時間である。ちょうど稽古が途切れたので近くの人に聞いてみると、今日の稽古は何時までかかるか判らない、という。それはそうだ。舞台完成前の、技術的な詰めの作業という意味合いの今稽古、当然照明さんその他、技術スタッフが勢揃いしている。とにかく最後まで通さなければ終れないだろう。やむなく、退出の旨を申し出る。

打ち合わせを置いて、挨拶に来てくださる仲野さん。パマルディさんも呼んで、舞台に関してのお話しもしてくださった。
仲野さん「私達の舞台では、振り付けは当然ありますけど、やはり身体表現、その個々の身体が表現するもの、を大事にしています」
 小野  「では、創り方としては、セリフ劇に近い?」
 仲野さん「ええ。そう言えると思います。物事に対する感じ方には個性が当然ありますからね」
 小野  「それがキャラクターとなって表れる、と」
 仲野さん「はい」
 
最初に感じた、演者ごとに踊りに微妙な差異がある、という印象にもこれで納得がいった。
最後にパマルディさんにも少しお話しを。聞けば、海外での公演は過去多く経験しているが、その国の人とのコラボレーションは初めてとのこと。その印象は、と尋ねると、

パマルディさん「こういう形で公演に参加するのは自分にとって大変勉強になるし、とても面白い」

という応え。いかにも大学で教鞭を振るう人らしい、おだやかで、誠実さのこもった声だった。

 
当初、現代舞踊と聞いて、戸惑う事も多いのではという懸念を多少なりとも抱いていた。けれども終ってみれば、「表現」という一点において、演劇も舞踊も違いは無いと言う事、「解るかどうか」ではなく「楽しむかどうか」である事を強く認識させてくれた、そんな稽古見学だった。

2001/10/20 文責:北原登志喜 インタビュアー:小野正昭  撮影・編集:鏡田伸幸

仲野恵子ダンスミュージアム
仲野恵子ダンスミュージアム 10月24日(水)〜10月25日(木) 未知の贈り物 国際交流基金フォーラム お問い合わせ hp -
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ライワル・ワトソン「未知の贈り物」をテキストにおくる、ダンス&アートパフォーマンス。それは地図のどこにもない、けれど世界のどこかにある、踊る島の物語。

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