BACK STAGE REPORT
(稽古見学記)


「うるとら2B団」の稽古風景を見学に行ってきました。


2001年6月21日―(取材スタッフ 北原・鏡田)
JR錦糸町駅から歩いて15分程の所にある「すみだパークスタジオ」。この、倉庫を改装したスペースが今日の訪問先、『うるとら2B団』の稽古場である。 
16時ちょうど、折りから降り出した雨を避けながら、第3スタジオの扉をくぐる。
扉の中は全面黒く塗られた60畳程の空間になっており、その中央、仮組みされた舞台セットの上では、10人以上の役者さんが入り乱れての稽古の真っ最中だった。
直ぐに野崎さんと笹渡さんが駆けつけて出迎えて下さり、その場で挨拶を交わす。野崎さんは役者、笹渡さんは今公演では舞台監督を務める。お二人に用意して頂いた席に着座し、改めて周囲に目をやる。
我々の斜め前に演出の門間利夫氏。眼前で繰り広げられる芝居にじっと厳しい視線を送っている。その氏のすぐ左の壁には大きなスケジュール表が貼ってあり、それによると、今日は第2回目の通し稽古が予定されているらしい。我々の背後の壁に貼ってあるたくさんのスケッチはどうやら舞台衣装のデザイン画のようだ。今作はSFと聞いていたが、魚屋のような格好のものもあり、楽しい。
正面が仮想舞台で、その舞台を大量の舞台セットのピースが取り囲んでいる。まだ作りかけでベニヤの地肌もほとんどそのままのそれら。その物量に圧倒されつつ、視線を舞台上へ向けた。
・・・それにしても人数が多い。数えてみると12人。その12人が舞台上を文字通り所狭しと動き回るのだから、それだけで迫力がある。本番ではここに演出の門間氏も加わるのだろうから、総勢13名の役者さんで一つの場面を作ることになる。もちろん最初から最後までこうではないのだろうが、少なくともこの場面(芝居の冒頭のようだ)に関してはかなり賑やかなものになりそうだ。
門間氏が役者さん一人一人に細かい指示を出したところで一旦休憩に入る。
この間に門間氏に御挨拶と、見学を快諾して下さったお礼を述べる。
氏は「何かお話しましょうか?」と、気さくに応じて下さった。恐縮しつつ、「それでは後ほどいくつか質問させてください」とお願いすると、「では、もう少ししたら夕食休憩に入るので、その時に」と、門間氏。活力に満ちた笑顔が印象に残った。

笹渡さんに舞台セットの図面などを見せて頂いてるうちに、再び稽古開始。引き続き冒頭部分の作りである。

門間氏が役者さん一人一人に手を振ってきっかけを送る。その姿がタクティシャンに重なることも手伝ってか、次第に目の前で繰り広げられる芝居に交響曲の趣きを感じ始める筆者。
最初は、悪く言えば雑然とも見えた舞台の上に、いくつもの糸が通されていくようだった。その「糸」を一言で説明すると「リアルな感情の流れ」とでも言おうか。もちろんそれなくして当然芝居は成り立たないのだが、これだけの人数が一度に喋り、動く中でその全ての登場人物の気持ちのあり様を引き出し、整理し、観る者にきちんと伝わるようにする。これはやはり大変な作業である。ともすれば動きの中で気持ちが抜けてしまう役者さんもいる。それでも段取り通りに動こうとする。そういう動きを門間氏は見逃さない。
「お前は何をやりたいの?」
すぐさま舞台上に飛び出して行って、何がいけなかったのか、とことん説明する。そして説明に入った門間氏は、とにかく喋る、喋る、喋る。動く、動く、動く。自分の身体を使ってエネルギッシュに、且つ事細かに、相手が納得するまで説明し続ける。
「逆に言うとだから今のは〜」
逆からだって説明する。
面白いのは、細部をなおざりにしない門間氏ではあるけれども、役者の動き自体やセリフ自体には実はそれ程細かくは言及しないこと。問題にするのは動きの意味やセリフの意味、それが観る側にどう伝わるか、であってそこがきちんとしていれば、ある程度は役者の身体感覚に任せている感がある。
17時20分、夕食休憩に入る。
すぐさま門間氏が我々の机の前に自分の椅子を持って来て、話をして下さった。
北原 「お食事はいいんですか?」
門間氏「ええ、もう、私は全然・・」
(気を使って頂いて、ありがとうございます。)
北原 「いや〜、(演出が)細かいですねぇ」
思わず口を突いて出た筆者のこの言葉に門間氏は照れ笑いしながら、
門間氏「ええ、言ってみれば今は、これまで一通り作ってきた中で抜け落ちてしまったものをもう一度拾い上げる、といった作業に入ってますから特に細かくなってしまいますね」
北原 「ある程度山場は越えました?」
門間氏「ええ、そうですね」
役者さんが芝居の全体像をしっかりと掴んだ手応えが門間さんにはあるようだ。公演を一週間後に控えながら、皆さん意外なほどリラックスしている様子は稽古からも覗えた。
その後、今公演について丁寧に解説して下さる門間氏。
舞台セットの事、衣装の事、舞台設定について。詳しくはネタばれになるので敢えて伏せるけれども、一つだけ。とにかく細かい! 細部に徹底的にこだわっている。おそらく観客もそこまでは気付かないだろう、というような所にまで手を入れていて、驚くばかりである。
門間氏は言う。
「うちはスピルバーグをやりたいんです」
リアルなディテールの積み重ねが特にSFでは求められる。だから大変なんですよ。そう言って氏は笑った。確かに小劇場でスピルバーグを目指したら、経済的な面でも相当大変である事は想像に難くない。でも、なぜSFなのか。それについては門間氏はこんなことを言っていた。
門間氏「結局、人間ドラマなんです。最初にあるのも、描きたいのも。SFの舞台はそれをより浮彫りにしてくれるんです」
それから話は過去の公演の事から、現在の演劇を取り巻く状況、果てはメセナの事にまで及んだ。色々と楽しい話を聞かせて頂いたが、内容はここでは割愛する。
最後に、こちらの劇団のHPを見て気になっていたことを聞いてみた。
北原 「こちらの劇団では稽古の折り、立ち稽古に入る前に本の読み合わせに大分時間を割くとありましたが、それはなぜでしょう」
門間氏「ああ、それはですね、役者が身体を媒介にする前に想像の中で膨らませたものがあるでしょう。それが面白いんだけど、動くとどうしてもどこかにいっちゃう。だから少しでもそれを防ぐために本読みを入念にやるんです」
一口に芝居と言っても、理は様々である。
18時、稽古再開。

「ここは今はめちゃくちゃになっても構わない。そこはオレが後で必ずきっちりさせるから、とにかく今はちゃんと動けよ」
「セリフを他の人に渡すっていう意識がなくなってるよ。聞き取れないセリフは全部アウト!」

こうした全体へのダメ出しに、一人一人への細かい指摘が続く。門間氏は相変わらず動き回り、説きまくる。その声に役者さんも敏感に反応。互いの信頼関係が覗える。
やがてこの場面を止めずに流すようになり、18時40分、休憩となる。この休憩の後、いよいよ通し稽古となるそうなのだが、残念ながら我々はここでおいとますることとなった。
「また何時でも遊びに来て下さい」
門間氏の声に感謝しつつ、とても狭く感じるその60畳の倉庫を後にする。
雨は何時の間にか上がっていた。

今回は非常に気持ちのいい稽古見学であった。門間さんをはじめ役者・スタッフの皆様この場を借りて一言お礼を。
本当に有難う御座いました。→→→→公演観劇記は此方

2001/6/21 文責・インタビュアー:北原登志喜 撮影・編集:鏡田伸幸

うるとら2B団公演
うるとら2B団 6月27日(水)〜7月3日(火) COPY 大塚萬スタジオ u2bd@mac.com ★★★
キャッチコピー
そこにいるのは確かに…あなたですか?


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